大好きだから… 〜They who are awkward〜 第7話 |
翌日、俺の家にて。ちなみに学校は休みである。
「いいか、俺らの夏はお前にかかってるんだからな?」
「わ、私も出来る限りお手伝いします!!」
「ああ、佐久島先輩がいないなんて不安すぎるわ……」
それぞれ勝手にのたまっていらっしゃられるがだったら自分で勉強しろと。
俺だって勉強得意じゃないってのに。
今日は以前に約束していた勉強会の日であった。
「ま、なんだまず悠樹の部屋に行くか…」
「いやいや行く必要ないだろ?居間のほうが広いんだし」
「これは純粋な興味だ。はっきりしないと勉強に集中できん。
美樹や茉莉子ちゃんも快く承諾してくれるはずだ。」
「ま、まぁ恭一が見たいっていうなら付いていくのもやぶさかではないわ」
「兄さんの部屋ですか…朝に入るくらいでちゃんと見たことありません」
「待て。お前ら勉強しに来たんじゃないのか?」
俺は三人の前に手を広げ立ちはだかる。
「いや、だからな一応チェックしようかと思ってな」
なにをだよ。
「普段俺のことなんだかんだと言ってるがそういうモノがお前の部屋で発見されたらどうする?
俺はこれからは同士って呼んでやるからな」
「…………最低」
「そんなものは一切ないわ!!」
恭一のやつ…っていうか美樹さんボソッと言うのはやめてください怖いです。
「別にやましいものがないんでしょ?」
「いやなんもないけど…」
「じゃぁいいじゃない」
美樹さん背後からオーラが。
っていうか俺のプライベートはくずかごにポイですか。
「兄さんの部屋楽しみだなぁ」
茉莉子、そんなに期待しても俺の部屋には何も無いのお前はわかってるはずなんだが…
「見たところ何もなさそうね…………」
一通り俺の部屋をチェックした美樹が言った。
「ちぇ、つまんねぇの。これだから尻に敷かれるんだよ……」
どういう意味だ恭一。
「兄さんの部屋…………兄さんの匂いがたくさん…………」
もしもーし茉莉子さーん?ものすごいトリップしてませんかー?
「お、これアルバムか?懐かしいな」
恭一が俺の部屋からアルバムを引っ張り出した。
「懐かしーい。これあたし達が出会った頃じゃん」
「今見返すとこの頃から俺はかっこよかったな、流石俺」
「はいはい、勝手に言ってなさい」
美樹が恭一のことを流すが実際この頃からかっこよかったのである。
「悠樹可愛いなぁー」
美樹が目をキラキラさせる。
「あぁ懐かしいですね兄さんの小さい時ですね」
気づいたらトリップから戻ってきていたのか茉莉子もアルバムを見ていた。
「あのさぁ恥ずかしいからそろそろ見るのをやめてだね……」
「あー、この悠樹の写真の顔生意気だなぁ」
「でもそんな顔も愛嬌があっていいです」
「うーん、あ!!この時ってさ確か恭一と悠樹が…………」
「お、そうだな。悠樹と俺が下級生の教室に行って…………」
聞く耳持たないのかこいつ等は。
しかし子供の時か。
あまり思い出したくないことばかり出てくるな。
「っ!!!!!!」
するどい痛みが頭に奔る。
―――が居たのに忘れてしまったのか?
―――ってだれだ?
おいおい、いつも俺を―――は守ってくれていただろう?
俺?俺って俺か?
他に誰が居るんだよ俺はお前以外の誰でもないだろう?
そうなのか?お前も俺で俺も俺なんだな?
細かいことは気にしないで早く―――のこと思い出せよ
―――、―――、……わからないわからないよ
最低な野郎だな―――が可哀想だ
俺だって―――のこと思い出したいよ!!!
……しょうがねぇな いいか、お前が忘れてんのはなぁ……
「…………ね…………え……………さ……ん」
俺の部屋だ。
どうやら俺は少しの間意識がなかったらしい。
3人はまだアルバムに夢中で俺のことには気づいていなかったみたいだ。
好都合ではあるけど。
と、覚醒すると同時に猛烈な吐き気に襲われた。
「ちょっとごめん」
俺は急いでトイレに入り堪えきれずに胃の中の物を吐き出した。
「……ぅぇ………ぐ…………ぉぅぇ…」
しばらくするともう胃液しか出ない状態になっていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……そろそろ大丈夫かな……」
それでも喉は痛いが……
のど〇プレーあったかなぁ…
俺がトイレから出ると三人とも居間にいた。
「おい、悠樹具合悪いんなら言えよ。昨日も頭痛で倒れてっつってたし。
やっぱり病院行くか?」
「いや、病院はいいや。それよりも茉莉子、のど〇プレーあるか?」
「い、今持ってくるから」
茉莉子が急いで救急箱を見に行った。
「ねぇ悠樹やっぱり心配だよ。今日はお開きにしよう?」
「兄さんっ、はいこれ」
茉莉子が急いで持ってきたスプレーを早速使う。
「ん"ん"っっ。あ"ー」
少しマシになった。
不安そうに3人は俺を見る。
「まぁ、なんというか平気だから心配しないでくれ。
それにここでやんなかったらお前らも俺も夏休みなくなるだろうが?
俺は嫌だぞ?補習で顔あわせる羽目になるのは」
3人は顔を見合わせる。
「じゃぁこうしよう。少し俺は休んでるから具合が悪くなったら解散。
そうじゃなかったら続けて勉強。おーけー?」
「ちっ……わーったよ」
「お、おーけー…かな」
「兄さんがそういうなら…」
ようやく勉強会が始まった。
俺の体調がどうなのかと言えば、確かに頭に鈍い痛みは残っている。
喉も痛いし。でもなんだか大丈夫なような気がした。
実際休んでたらどんどん回復していったのである。
そんなわけで皆に参加して勉強をすることにした。
「「「つかれたーーー」」」
「お疲れ様です皆さん」
とりあえず今日のところはもう無理だ。二人の精神的な意味で。
正直、教えられるとこは教えたけど後は頑張ってもらうしかない。
「やっぱ悠樹の教え方下手くそなんだよなー」
「佐久島先輩と比べるのもおこがましいわ」
「だったら落ちて夏休み補習に行け!!」
文句垂れるとはずうずうしいな。
まぁ、冗談で言っているのはわかる。
勉強中俺の体調何度も聞いてきやがって。心配しすぎだ。
「じゃ、そろそろ帰るぜ俺は。これ以上は俺の頭が破裂する」
「私も帰るかな。明日予定あるし」
「そっか、じゃぁまたな二人とも。勉強はちゃんとしろよ?」
「気が向いたらなー」
「ど、努力はするわ…」
なんとも不安の残る返事だ。
そうして二人は帰っていった。
「んーー、私も疲れたな。兄さんお腹空いてる?」
茉莉子が伸びをする。
「晩御飯は軽いものでいいかなぁ」
「そっか。じゃぁ準備するね」
と、茉莉子が晩御飯の支度をする。
「じゃあ俺もなんかてつだ
「ううん、兄さんは座って待ってて。一応病人なんだから」
茉莉子に止められる。
「それに今まで思ってたんだけどこれって新婚夫婦みたいだよね…」
と、自分で言って顔を赤くする。
ヤバイ、茉莉子がトリップモードに入ってしまう。止めなければ。
そうだ茉莉子に聞こうと思ってたことを聞こう。
「茉莉子ちょっといいか?」
「うん?どうしたの兄さん」
俺の方へ笑顔で振り向く。
「そういえば今日さみんなでアルバム見てただろ?
そのときに思ったんだけど俺に姉さんっていなかったっけ?」
俺がそう聞いた途端、茉莉子の顔の笑顔が――――消えた
「ううん、いないよ。うちは私一人だったし兄さんが来た時も一人だけだったよ?」
そういうと茉莉子は俺に背を向け料理を作り始める。
やっぱりあれはただの………?
「そうだっけか? なんか俺の小さいときに姉さんがいた気がしたんだけどよく思い出せなくてさ。
でもいたような気がしたんだよなぁ。姉さん。いたとしたらどんなのかなぁ。
澪先輩みたいな感じかなぁ。いや、あの人は姉さんって感じはするところもあるけど違うかなあ。
もしかしたら兄さんとか……。でもやっぱり姉さんの気がしてならな…
「だからいないってば!!!!!!いい加減にしてよ!!!!!!」
茉莉子が大声を出して叫んだひょうしに皿が落ちて耳障りな音を立てる。
料理を作る手が止まり、茉莉子は俺に背を向けて沈黙する。
その場に耐え切れなくなった俺は、
「あ、ごめんな茉莉子、俺がしつこかったよ。そうだ、なぁ俺もやっぱり手伝おうか?」
「…………いい。私が作るから待ってて?」
茉莉子が割れた皿を拾い料理を再開する。
失言…だったのだろうか?
でもどうして……?
俺が何気なくテレビを見ていると、いつの間に後ろに来たのだろうか。
ソファーに座っている俺に茉莉子がしなだれかかってくる。
「兄さんごめんね。私そんなに荒らげるつもりはなかったの」
茉莉子と視線を合わせる。
俺は寒気を覚えた。
「喉大丈夫?痛かったよね?」
茉莉子が喉をさする。
だがその動きは蛇がぬたくっているようで粘質的だった。
「ねぇ兄さん、小さいときに私いじめられていたの覚えているでしょ?
あのとき、兄さん私のこと守ってくれた。
後から兄さんと一緒に美樹さんや恭一さんも守ってくれたけど。
私ねあのときにひとつ決めたの。この人が困ってたら私が守ろうって」
茉莉子はいじめられていた。
元来のおとなしい性格が災いし、何を言われても反論できずどんどんいじめは、エスカレートしていっていた。
傍にいた俺がいち早く気づき茉莉子を助けようとした。
最初は、教科書に落書きや物を隠したりする程度だったが、
俺が庇うようになってからは暴力を振るうようにまでなっていた。
いじめっ子達と話をしてやめるように約束したが守るわけも無く続いていった。
美樹と恭一が俺が茉莉子を庇いいじめられている現場に遭遇し、俺らを救ってくれた。
そこで初めて会ったわけだが兄弟ともども感謝してもしきれない。
現実に戻る。
「いい?兄さんは心配しないでただ普通にいてくれればいいの。
そうしたら私何でも出来るから。だから万事一切任せて、ね?」
俺に回していた手を離さないと言わんばかりに強くする。
今日の茉莉子は変だ。一体どうしたというのか。
かと思ったら次の瞬間手を緩め、
「………………ご飯できたよ。食べよう?」
「あぁ、そうだな…」
結局俺はそう答えることしか出来なかった。
茉莉子は食卓に向かい、俺も茉莉子に着いて行く様に向かった。
ご飯はいつもどおり美味しかった。
食事が終わり就寝のためそれぞれの部屋に行ったが、俺の心の中にモヤモヤしたものが残り、
後味が悪い気分を感じていた。
*** あとがき ***
7話完成です。
いい感じにそろそろなってきたなぁと私は思ってるんですけど私だけでしょうか(汗)
まぁ紹介文の方にも書きましたが転機になっていければと思ってます。
早く続きが書きたいです。
今回はこの辺にて
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