真・恋姫無双紅竜王伝赤壁合戦編I〜曹家の翁〜
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それは、少し時間をさかのぼる。事前の打ち合わせ通り魏軍敗北の報を樊城で受け取った曹仁は、同時に自分が派遣した斥候からもう一つの報告を受け取っていた。

「なに?張飛と馬超が?」

「は。張飛隊と馬超隊が本隊より離脱。先回りして本隊を叩くつもりのようです。さらに後発として呂布と陳宮が動き出しました」

斥候の報告に曹仁はむぅ、と唸った。計画的な敗北とはいえ、雑兵たちは追われるという恐怖に駆られている。そんな精神状態の時に追撃してくるのは『燕人張飛』に『錦馬超』、そして天下無双の『飛将軍呂布』である。

「わしも出るぞ。城の守りは息子どもに任せる」

曹仁は馬を曳いてこさせると、3千騎を率いて樊城から出陣。出陣間際、心配そうな顔で見送りに出た息子の曹泰に笑って告げた。

「案ずるな息子よ。曹家の翁が孫どもを出迎えに行くだけじゃ」

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(とは言うたものの)

華琳が進軍時に架けた橋に向かう途中、曹仁は内心自身に問いかけていた。

(呂布は言うに及ばず、この老体が張飛や馬超とまともに戦って勝てるわけがないのだがな)

曹仁隊は橋に到達すると、まず斥候を出して敵勢の位置を探らせた。そして敵味方ともにしばらく到達しない事を確認すると、橋を中央に鶴翼に開く様に塹壕を掘らせた。

「殿、何ゆえこの様な事を?」

「見ておればわかる」

そして3千の兵を本隊・右翼・左翼に分け、人が伏せられるくらいの深さに掘らせた塹壕に右翼・左翼の弓を持たせた兵を伏せさせる。伏せた兵士の上には楯を乗せ、土をかぶせてカモフラージュ。

「敵勢が現れたら、正面と左右で挟み打ち・・・となればいいがのぅ」

必要なのは時間稼ぎ。混乱させて撃退させればそれでいい。

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「申し上げます!接近して来る一隊があります!旗印は『呉』!呉軍の部隊と思われますが詳細は不明!」

「よし、戦闘準備を整えよ」

休ませていた兵を配置につかせ、敵襲に備えさせる。表面は静かに、しかし心は誰よりも激情に理性を委ねて。

さて、人生の集大成の合戦だ。

 

説明
赤壁戦第10話です。そろそろ、主人公を出したいと思うこの頃です。
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コメント
渋い・・・こういう先達はこれからも頑張ってもらわないと^^b(深緑)
執筆お疲れ様です。何故か異様に格好良い曹仁・・・。呉の意志が如何か次第ですが・・・そして最近舞人の活躍が少ない・・・ 次作期待(クォーツ)
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