レベル1なんてもういない 2−2
[全4ページ]
-1ページ-

はぐらかされた数多の疑問が浮かび出てきた瞬間

 

ゴロゴロ…

 

空から雷の音がした。

ここからそう遠くない

はずなのに周囲の人には気付いていない。

…目の前のフミだけはその音に感付いたのか、2人だけで同じ方向の空を見やっている。

 

「おや、あなたも気付きましたか。

 フフフ…

 エルさんでしたか。

 あなたは面白い感覚を持っていますね。

 どうやら私の待ち合わせはアチラのようなので

 僭越ですがここで失礼します」

 

フミは言うだけ言うとさっさとこの場を去って雷の音の方向へ消えていってしまった。

 

 

「…なあ、葵」

 

「…エル、宿に行こう」

 

「その前にさ!

 うちらはどこに向かっているの?」

 

「宿に向かおうとしている」

 

「今はそんな目先の事じゃなくってさ

 ウチが来たあの地からどこに向かって!

 どうしたらいいのか!

 今ちゃんと教えてよ」

 

「…」

 

「言ってくれないのかよ…」

 

「…」

 

「ブルク=セラに向かってる」

 

「そこに世界の危機の元凶が待ってるの?

 そこでウチらの旅は終わりになるの?

 そこで…」

 

「終わりにはならない

 そこがスタート地点」

 

「は」

-2ページ-

 

既に10日近くも歩いてきて、ようやく大きな町に着いて、

未だスタートにも立っていないとラフォードは言う。

それに…

 

「世界の危機は今は未だやってきてはいない」

 

それは驚きの情報だ。

 

「でも世界の危機は絶対に迫ってくる」

 

「その時までエルは世界を知る事が大事」

 

「…知ってどうするのさ

 結局やることは変わらないんでしょ

 どうやってかは解らないけどウチが世界を救うって…」

 

「この世界を救うか救わないかを決められる」

 

「待って!

 そんな事をウチが決められるわけないよ

 選ぶとかなんとかなんてもう決まっているじゃない」

 

「救う救わないはこの先の旅で決めればいい

 その為の旅でもある。

 私は旅と戦闘の助けをする」

 

そこまで言うとラフォードは歩き始めた。

 

「…」

 

ラフォードが言っている事は

この時もまだ解らない事だらけだった。

 

世界あってこそのヒト、

だけどヒトあってこその世界ではないと言いたいのだろうか。

世界を救う権利…

確かにヒトなんかいなくてもこの星は生き続けることが出来る。

いやむしろ…

 

いやいや、飛躍した考えを始めたら終わりがなくなってしまう。

 

 

-3ページ-

 

少し歩くと5階建ての周囲に比べるとひときわ大きな建物に辿り着いた。

 

「こちらへどうぞ」

 

その中の最上階の一室に案内された。

ベッドやテーブルなど、必要なもの以外は削除した、とても部屋が広く感じる、それで居て小奇麗な印象の部屋だった。

もっと狭苦しい部屋で2人ぎゅうぎゅうになると予想していたけど、

 

ラフォードの奴、意外と資金の使い方は解っているようだ。

休む時は贅沢をしてでも休まないと。

次はいつゆっくり出来るできるかも解らない。

 

「とりあえずはここでゆっくりと寝れるんだな。いやあ疲れたな〜」

 

「エル、毎晩あんなに寝言を言っておいてゆっくりと寝ていなかったなんて変」

 

荷物を降ろしながら呟くように言ってくる。

 

「え?ウチが?そんな事言ってた?

 言ってないよ

 どう見ても寝言なんていう感じじゃないでしょ」

 

「寝ながらだから気付いていないだけ」

 

「え〜?例えばなんて言ってたのさ?」

 

「ウチは寝ていない」

 

「え?」

 

「寝ながらそう言っていた

 他には動物園の話とか親子丼が食べたいとかトロッコが止まらないとか…」

 

「あ〜わかった!

 わかったからもういいよ」

 

自分自身の寝ているときは解らないものだが改めて説明されると照れる所がある。

っていうかトロッコってどんな夢だったんだ。

 

「そういえば寝言って眠りが浅い時に見る夢にそって言うんじゃなかったっけ?」

 

「さあ」

 

まあいいか。

これ以上寝言で恥ずかしい目にあうのもゴメンだし。

 

-4ページ-

 

チェックインを済ませ荷物を置いてひと段落して

これからする事と言えば…

 

「エル、どこに行く」

 

「そうだな…

 服を着替えたいしな

 お腹も空いたし…

 今のうちに仮眠してもいいかもな」

 

「エルがどこから行くか決めて」

 

とっさに3つ思いついたがここは…

 

「服を探しに行きたいな」

 

「わかった。こっち」

 

服屋はこの宿を出て街の反対側にあるという。

 

昼間から祭り騒ぎのような喧騒が響いている。

人が歌い、踊り、叫び、皆笑っている。

数々の露店も並んでいて

途中美味しそうな匂いのする店を幾度も横切ったりもしているとやっぱご飯がいいかな、と優柔不断がでてしまう。

いや別に優柔不断の「優柔」の部分は良い事だと思うのだが。

 

そういえば親父もよく言っていたっけ。

男の仕事の8割は決断、後はおまけみたいなもんだ。

…いや7割だったか。

だとすると後半の「不断」は「優柔」に対しては相当なマイナスなんだろう。

 

生憎男じゃないから今ひとつピンと来ない。

 

「いちいち店ごとに建物とか面倒くさいな。

 デパートとかないのかよ〜」

 

「デパート?知らない」

 

「ほら、色んなお店がさ、1つの建物の中に集まっているの

 利用する人らはそこだけに行けばいいんだよ」

 

「そこの店主は何でも出来る、便利屋?」

 

「そうじゃなくって

 ん〜ほら、店主が何人もいるんだよ。

 食べるところなら食べるところの店主、

 服屋ならその店主

 武器屋ならその店主

 それが1つの建物の中にあるのがデパートなんだよ」

 

「へえ」

 

素直に驚いている。

 

「エル」

 

「なあに?」

 

「話をしていたら服屋通り過ぎた」

 

やれやれ、驚きすぎだよ…

 

説明
まだまだ暑さは終わっちゃいない、ってな感じです。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
455 382 0
タグ
オリジナル レベル1 小説 

hutsyさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com