少女探偵レモン
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「少女探偵レモン対ミステリ倶楽部」

 

 

「わたしは人を殺してしまったのよ」と隣近所に住むメイプル婆さんが、テラスでお茶を飲んでいる、黒髪ロングの少女探偵レモンに血相を変えて、慌てながら告げた。彼女はレモンの住んでいる家の裏手から入ってきたのだ。

 

「え、いったいどういうことなのかしら?」

 

と午後のお茶を読んでいた、子ども相手専業の少女探偵のレモンは驚いてしまった。いくつもの事件を解決してきたレモンでも、実際の殺人事件ははじめてだ。

 

「倒れた人がいたのよ」

 

二人はメイプルさんの家に向かった。

 

「いないじゃない?」とレモンがメイプル婆さんに告げる。レモンとメイプル婆さんは、その事件があった、というメイプル婆さんの家で現場検証をしている。

 

「倒れていた人は、あなたの知り合い?」

 

「そう、本の友達のね」

 

メイプル婆さんは本が好きだ。とくにミステリものが。サラタウンに住む友人とミステリ倶楽部を作っていた。

 

「あなたの友人はお芝居をしたのじゃないかしら? ……うん?」

 

倒れていた人がいたという台所には血のあとがあった。赤い。

 

「でも血のにおいはしない。これはインクだわ」

 

「一体どういうことなのかしらね?」

 

困ったわね。と黒髪ロングに黒衣のミニドレス、キトンのシルクハットのレモンは感じた。

 

これは挑戦状だ。探偵である自分への、ミステリ倶楽部からの。

 

「メイプルさんはわたしの味方ですよね?」

 

「ええそうですとも。わたしは確かに人を殺しました」

 

「ああ」

 

そして、レモンは静かにいった。

 

「メイプルさん。あなたはミステリの読みすぎで現実と妄想の区別がつかなくなったんですよ」

 

「可哀想なことをいわないでおくれ。わたしは探偵が好きだし、だからあんたが好きなんだ。わたしがあいつを殺したのではない証拠を見せておくれ」

 

たしかにミステリ倶楽部は厄介な人間を抱えている、という噂だったがそういった人にメイプルさんは協力しているのだ。

 

「可哀想なメイプル婆さん……あなたが殺したのは誰?」

 

「覚えてないね」

 

それはそうだろう。演技なんだから。

 

さて一体どうしようか? とレモンは思った。

 

おそらくミステリ倶楽部は調子に乗りすぎたのだ。いつもの理屈を試してみたくなったに違いない。そしてその相手として少女探偵であるレモンが選ばれたのだろう。

 

「これはインクだわ。違うわ、これは血よ。では死体はどこにいってしまったのでしょう?」

 

突然少女探偵レモンにはルールが分かった。警察を呼んでは駄目だ。これはただの悪戯なんだから。少女探偵とはいえミステリ好きと探偵としての沽券にかかわる。

 

では一体どうやって手がかりを探して。というのかこのコスプレめいた芝居を終わらせる、となるとレモンにも検討がつかない。

 

「レモン! これはダイニングメッセージだわ!」

 

と素人探偵ぶりと殺人犯を演じていたメイプル婆さんが叫ぶ。

 

「Q・・・」と赤いインク(血)で床(死体が置いてあった場所)に書かれていた。

 

「簡単だわ」とレモンはいう。

 

「クエスチョンのQね」

 

「そうなのかしら?」

 

「じゃあなによ?」

 

「さあなにかしら?」

 

q・・・?とレモンは首をひねる。

 

「探求(クエスト)?」

 

とレモンが自信なさげにいう。とふと視線をそらすと。

 

「あら」とレモンがテーブルのうえを見る。

 

どうやら設定では、メイプル婆さんと被害者の二人はポーカーをしていたらしい。トランプが散らばっている。

 

「QueenのQ……」

 

そこでレモンは顔をあげて微笑む。

 

「メイプル婆さん、あなたのミステリ倶楽部の会員番号は何かしら?」

 

「よく分かったわね。11番目よ。だからわたしはQueen(王女様)よ。」

 

とメイプル婆さんがにっこりと微笑んだ。

 

少女探偵のレモンが微笑む。

 

「あなたがあなたを殺した、というのはありえませんわね。ですから!あなたは無罪です!」

 

「そう報告しますわ」

 

とミステリ倶楽部の「クィーン」がいった。

 

レモンの報告書:やれやれ、厄介である。

説明
隣近所のメイプル婆さんが読書会のメンバーを殺してしまった、とレモンに告げる。しかし事件の現場には死体はなかった。レモンはメイプル婆さんを追い詰めた、ミステリ倶楽部を解散に追い込むべくトリックを打つ。
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少女探偵レモン 黒髪ロング コージー ミステリ倶楽部 

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