Scarlet・Moon |
紅い霧に包まれた湖のほとりに微かな光に照らされた、妖しく、紅に染まっている館があった。その館には土地の領主達と、領主が来る前からこの館で暮らしていた二人の幼い姉妹が居た。領主は二人を無理やり養女にして、虐待を行っていた。館の端の部屋に幽閉され、食事も粗末なものしか与えられなかった。それでも、姉妹は耐えていた。最初は耐えられないものだったが、館のメイドの一人が、こっそりと、自分で気付かれないように作った料理を持ってきてくれていたから、耐えることができていた。
ある日、珍しく領主の部屋へと呼び出された。呼び出された姉妹を待ち受けていたのは、今まで行われた虐待より、もっと酷く、それこそ拷問と呼べるものだった。二人は襤褸切れの様になって、部屋に戻された。
「御姉様、いつまで、この生活は続くの?」
そう姉に問いかけたのは妹である「フランドール」。体には痣が刻まれ、所々切れて血が流れていた。
「分からないわ。でも今は、耐えるしかないのよ、フラン。」
こう言って、姉の「レミリア」は目を伏せた。妹の傷付いた姿を見たくなかった。
「耐えるしかないって、これで何回目!?もうあいつが来てから一ヶ月経つのよ!?もう・・・私、耐えられないよぉ・・・うぅ・・・。」
妹は限界だった。妹の言い分を聞いたレミリアもまた限界であった。二人はどちらからとも無く抱き合いながら涙を流した。
どのくらいの時間が経っただろうか。ふと、レミリアが顔を上げると、鉄格子の窓からいつもとは違う紅い月明りが部屋に入っていた。雲に少し隠れているのだろうか。光は薄い。もっと近くで眺めようとレミリアは窓に近寄った。すると、さっきまで空を覆っていた雲が晴れ、灼眼のような紅い月が姿を現した。それを見たレミリアは
「綺麗な月ね・・・。でも、何か何時もとは違う雰囲気を感じるわ・・・。」
と感嘆の念を漏らした。だが、
「っ!?な・・・に・・・これ・・・くる・・・し・・・い。」
レミリアは意識を手放した。レミリアの背中からは蝙蝠の羽根が飛び出し、眼球は紅に染まり生気は消えうせ、そして、行き場を失った力は、暴走を始めた。
レミリアは、窓を砕き、館の時計台の上で空を仰いだ。すると、館を覆っていた霧が羽に収束し、巨大な魔方陣を形成した。自身の力を増幅させる魔方陣を展開したレミリアは、館の人間を殺していった。ある者は体を引き裂かれ、またある者は首を引きちぎられていた。憎しみに突き動かされ、本能のままに、妹の居る部屋へとレミリアは向かった。そこには、自分が飛び出したときと同じ光景ではなく、自分が最も憎んでいた相手の生首を持った妹の姿があった。冷静になって、その場に立ち尽くしていた妹が体を震わせながら、
「御姉様・・・私、どうしちゃったの?気が付いたら、こいつの首を引きちぎってて・・・。」
といい、首を投げ捨てた・・・。レミリアは狂気に当てられた妹を抱きしめた。
「大丈夫よ、フラン。私が居るから、安心しなさい。私が貴女を守るから。だから、ね?ここで待ってて。」
「うん・・・。」
全ては妹を守るため。レミリアは修羅の道を歩むことを決めた。レミリアの心の中にある目的は
「館の人間を皆殺しにすること。」
レミリアは妹に、
「すぐに戻ってくるから」
と言い、部屋を出た。レミリアは手当たり次第自分の前に現れる人間を殺していった。そして・・・、館に静寂が訪れた・・・。レミリアは、ふと足元に見えるものを見て立ち止まった。それは、いつも自分達のことを気遣ってくれたあのメイドの懐中時計だった。彼女は、柱に寄りかかって倒れていた。その姿を見たとき、レミリアの脳裏を過ぎったのは、3人で笑顔を混ぜながら話していた毎日の光景・・・。レミリアは、自分の犯した愚行に気が付いた。憎しみで自分の中にあった思い出さえも潰していたことに。
「さく・・・や・・・、私は・・・大切な、人を・・・。」
レミリアは咲夜と呼ばれたメイドを抱きしめた。レミリアの頬に雫が伝う・・・。
「さくやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
レミリアは声を枯らさんがごとく叫んだ。自分の愚行を戒めるようにそれは見えた。その時だった・・・。
「御、嬢・・・様、無事・・・正気に、戻られたのですね・・・。」
咲夜がぼそりと、そう呟いていた。自分の大切な人を殺めてしまった幼き少女にこの声が届いたのかどうかは分からない。
「うっ・・・うぁ・・・っ!?」
そっと頬を撫でる感触でレミリアはうっすらと瞳を開ける。空には満月が浮かんでいた。はっと、今の夢で起こったことが起こらないかと思い、レミリアは恐る恐る満月を見つめた。満月は紅くは無く、青白い光を湛えていた。しばらくレミリアは満月を見つめていた。そんなレミリアを傍らで、十六夜 咲夜は見つめていた。
「(御嬢様は一体どのような夢をみてらっしゃたのだろう。さっきはうわ言で私の名前をしきりに呼んでいたし、それに加えて辛そうな顔を見れば、ただ事ではないというのは容易に分かる。この前の月の事件以来、御嬢様は月をよくみつめてらっしゃる。私には未だその理由はわからない・・・。)」
咲夜は自分の後ろ向きな考えに嫌気が差し、主の為に紅茶を淹れた。
「御嬢様、御茶を淹れました。」
「・・・・・・。」
レミリアは彼女に反応せず、ただ一心に月を見つめていた。
「御嬢様?」
「えっ?あ、あぁ、咲夜、有難う。」
声を改めてかけられ受け取ったレミリアだが、心ここに在らずといった状態だった。心配そうに見つめる従者を見て、レミリアは、何も語らずただ、
「心配しないで。」
と言って、このままで居ようと固く心に誓ったのだった
Fin
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とある東方の作品を小説にして見ました。批判コメは御控えください。お願いします。 | ||
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東方project Priere レミリア・スカーレット 2次創作 | ||
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