真・恋姫†無双 悠久の追憶・番外編 〜〜蜀の日常 其の四〜〜
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 番外編・蜀の日常 〜〜其の四 北郷一刀殺人未遂事件!?〜〜

 

 

――――――――――――太陽が空のてっぺんを少し通り過ぎた昼頃。

 

一刀の部屋の前に立つ、小さな人影がひとつ。

 

”コンコン”

 

 「ご主人様ー。」

 

扉をノックしながら、部屋の主を呼んでいるのは朱里だった。

 

手には、彼女の小さな体でなんとか持てる程度の書簡が抱えられている。

 

 ”コンコン”

 

 「ご主人様ー、いらっしゃいませんかー?」

 

もう一度ノック。

 

もう一度、とは言っても、実際にはこれで4、5回目になる。

 

片手で抱えた書簡が崩れ落ちないようにアゴで支えながら、空いた片手で必死に扉を叩く朱里の顔には、少しだけ疲労の色。

 

体力の無い朱里には、これだけでも結構な重労働なのだ。

 

 「おかしいなぁ。 部屋にいるっておっしゃってたのに・・・・」

 

午前中のうちに、昼から部屋を訪ねることは一刀にあらかじめ伝えてある。

 

そして一刀も了承して、その時間は部屋に居ると言ったのだが、実際に来て見たらこのとおり。

 

 ”コンコン”

 

 「ご主人様ぁ〜?」

 

再度呼びかけるが、当然のごとく返事は無い。

 

 「・・・・いないのかなぁ。」

 

そう呟きつつも、やはりこのまま帰るのも気がとがめるので扉に手をかける。

 

すると、予想外にも扉は”ガチャッ”と音をたてて開いた。

 

 「あれ? 開いてる・・・・」

 

普段一刀は、部屋を留守にするときは必ず鍵をかけているので、鍵が開いているということは一刀は中にいるはずなのだ。

 

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中を覗き込むようにしながら、おずおずと部屋に入る。

 

 「ご主人様、午前中お話した件で・・・・・・っ! ご主人様っ!?」

 

部屋に入るなり、朱里は目の前の光景に目を見開いた。

 

驚くのも無理は無い・・・・朱里が目にしたのは、部屋の床に力なく倒れこんでいる一刀の姿だった。

 

朱里は抱えていた書簡を放り出し、すぐさま一刀のもとへと駆け寄った。

 

 「ご主人様! どうなさったんですかご主人様!」

 

 「・・・・・・あ゛・・・・・・あ゛ぁ、朱里・・・・・か・・・・・・」

 

倒れいいる一刀の頭を抱いて呼びかけると、うっすらと一刀の目が開いた。

 

しかし目の周りは青ざめていて、とても無事といえるような状態ではない。

 

 「ご主人様、いったい何があったんですか!?」

 

 「・・・・・・・ごめん、俺・・・・・もう・・・・・・・」

 

”ガクッ”

 

朱里の問いに答えようとするも空しく、一刀は再び力なく目を閉じた。

 

 「ご主人様!? ご主人様ーーっ!!」

 

何度も繰り返し一刀の名を呼ぶ朱里の目には、涙が浮かんでいる。

 

 「誰か・・・・っ、誰か来てくださいっ!!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 「フム・・・・つまり、朱里が仕事のために部屋を訪れたときには、主はすでにここで倒れていた、と?」

 

 「・・・・・はい。」

 

一刀の倒れていた床を見つめながら、星は眉をひそめている。

 

一刀が倒れた・・・・・という知らせを聞いて、一刀の部屋には第一発見者の朱里を含め、仲間たちが全員集まっていた。

 

当の一刀はというと、朱里の叫びで駆けつけた兵たちによって急いで医務室に運ばれ、今は寝台でぐっすりと眠っている。

 

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 「でも、いったいなんだってご主人様は倒れたんだ?」

 

 「ん〜・・・・ご主人様のことだから、そのへんに落ちてたへんな物でも拾って食べたんじゃないの?」

 

翠の疑問にテキトーに答えたのは雪だった。

 

きっとこの場に一刀がこの場にいたら声を上げて怒るところだろうが、それができないからこの状況な訳で。

 

医師の話によると、一刀は特に大事はなく、寝ていればすぐに良くなるということなので、皆それほど真剣には考えていないのだ。

 

 「雪ちゃん・・・・それは無いと思うよ。」

 

 「そぉ?」

 

 「そーそー。 お兄ちゃんは拾い食いくらいで倒れたりしないのだ。」

 

 「いや、鈴々。 そういう問題じゃないと思うぞ?」

 

それぞれが思い思いに、冗談交じりに話を進める。

 

もはや一刀が倒れたことなど、たいした問題ではないという雰囲気だ。

 

 「もぉ〜、皆さん真面目に考えてくださいっ! いくらたいしたこと無くても、ご主人様が倒れたのは大事件なんですよ!?」

 

 「フム、朱里の言うとおりだ。 少なくとも主が何故倒れたのか・・・・その原因は突き止めねばならんな。」

 

少し呆れたように怒る朱里の隣で、星もうなずく。

 

 「医者の話では、病の類ではないらしい。」

 

 「じゃあ、まさかどこかの国の刺客とか・・・・・」

 

頭をよぎったその考えに、楽観的だった翠の表情が引き締まる。

 

 「いえ・・・・それは無いと思います。」

 

 「・・・なんでだ?」

 

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翠の意見に、口を開いたのは雛里だった。

 

 

 

これは余談だが、一刀が倒れたと聞いて一番取り乱していたのは雛里だ。

 

一刀に付き添う朱里の横で、朱里以上に悲痛の表情で一刀の名を呼んでいた。

 

大事は無いと医者から聞くまでは、寝台で眠る一刀の横でずっと涙を流していたのだ。

 

一刀の無事を聞いてなんとか涙も止まり、ついさっきやっとまともに喋れるまで落ち着いたところ。

 

 

 

 「もし刺客なら、襲われた時点でご主人様は生きてはいないはずです。」

 

 「確かに、ケガひとつ無しで倒れてるだけなんておかしいよねぇ。」

 

 「フム・・・・そうなると、ますます原因は分からなくなるな。」

 

深まるばかりのなぞに、それぞれの表情は曇り始めた。

 

そんな中、たんぽぽが何かに気づいたように声をあげた。

 

 「あ。 ねぇねぇ、床に何か落ちてるよ?」

 

 「何?」

 

たんぽぽは床に落ちていた何かを広い、顔に近づけてじっと見つめる。

 

 「これ・・・・お米・・・・・かな?」

 

 「米ぇ?」

 

一刀が倒れた原因の手がかりかもしれないと期待していただけに、その場にいた全員が落胆の表情を浮かべた。

 

しかしそんな中、星だけは少し考えるように眉をひそめた。

 

 「米・・・・・か。」

 

 「?・・・星さん、どうかしたんですか?」

 

 「いや・・・・・まさかとは思うのだが・・・・・」

 

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”ガチャ”

 

 

 「ん?・・・・・どうしたのだ、皆でご主人様の部屋に集まって・・・・・」

 

 「!・・・・愛紗!」

 

星たちが真剣な表情を浮かべる中、扉を開けて部屋に入ってきたのは愛紗だった。

 

考えることに夢中で星たちも気づいていなかったが、仲間が皆集まっているなかに愛紗のすがたは無かったのだ。

 

 「愛紗、この非常時にいったいどこにいたのだ?」

 

 「す、すまん。 厨房にいたので、連絡が来なかったのだ・・・・非常時とは、まさかご主人様に何かあったのか!?」

 

全員が一刀の部屋に集まっているというこの状況にどこか嫌な予感を感じたのか、愛紗の表情は困惑から焦りへと変わった。

 

 「ああ、実は・・・・・・いや、ちょっと待て。 愛紗、お主は今までどこにいたと言った?」

 

 「?・・・・だから、厨房だとさっき言っただろう。」

 

 「・・・・・何故、お主が厨房に?」

 

聞きながら、星の顔が引きつっていく。

 

星の中では、さっき床の米粒を見つけたときに感じた予感が現実になりつつあった。

 

 「へ!? いや、それは、その・・・・・・」

 

眉をひそめる星とは対照的に、問いかけられた愛紗はあわてた様子で顔を赤くする。

 

そして少し恥ずかしそうに、口ごもりながら答えた。

 

 「その・・・・昼食をだな・・・・作っていたのだ。」

 

 「・・・・昼食とは、お主自身のか?」

 

問いかける星の顔にはさらに険しさが増す。

 

愛紗が自分の料理を自分で食べる分には被害は最小限ですむが、愛紗の答えは星の予想していた最悪のものだった。

 

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 「いや、ご主人様の分だ。 ご主人様がお腹が空いたとおっしゃったのでな、それでたまたま・・・・たまたまだぞ? 手の空いていた私がチャーハンでも作って差し上げようと・・・・」

 

 「それで・・・・主はそれを食べたのか?」

 

 「あ、ああ。 よほどお腹を空かせておられたようでな、一言も喋ることなく一気に食べきられて、今ちょうど食器を片付けていたところだ。」

 

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

その瞬間、おそらくその場にいた全員の頭では同じことを考えていただろう。

 

部屋の中は一気に沈黙に包まれた。

 

 「・・・・どうしたのだ? 皆いきなり黙って・・・・」

 

みんなの反応の意味を理解していない愛紗は、不思議そうに首をかしげている。

 

 「あの・・・・・星さん・・・・・」

 

 「うむ。 どうやら見つかったな・・・・・・この事件の犯人が。」

 

 「あー・・・・確かに、それならご主人様が倒れたのも納得だな。」

 

 「まったく・・・・主もとことん損な性分を持ったものだ。」

 

目を閉じると、愛紗のつくったあのチャーハンという名の殺人兵器を引きつった笑顔で食べる一刀の姿が用意に思い浮かぶ。

 

しかも前回の料理対決のときはたった一口で倒れたというのに、愛紗が食器を片付けに部屋を出るまで精神力だけでなんとか耐え続けたのだろう。

 

愛紗の前で倒れるわけには行かないと、最後の最後まで愛紗への優しさを貫いたのだ。

 

そんな北郷一刀という一人の戦士に、皆心の中で合掌した。

 

 「(ねぇねぇたんぽぽ、いまいち話が見えないんだけど・・・・愛紗の料理ってそんなにやばいの?)」

 

仲間になったばかりの雪は愛紗をのぞいてただ一人この状況を理解できていないので、隣に立つたんぽぽに”ヒソヒソ”と問いかける。

 

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 「(あ、そっか。 雪は知らないんだっけ。 実はね・・・・”ゴニョゴニョ”・・・・・・)」

 

 「・・・・・・まじ?」

 

たんぽぽから聞いた愛紗の料理の予想以上の破壊力に、さすがの雪も恐怖を覚えたらしい。

 

先ほど雪が冗談で言った『ヘンな物でも拾って食べたんじゃないの?』という意見はあながち間違ってなかったと言えるだろう。

 

むしろまともな食べ物であったなら、落ちているものを食べたほうがいくらか安全だったはずだ。

 

 「な、なんだ皆! なぜそんな目で私を見るのだ!?」

 

周りから向けられる冷たい視線に、その理由を知る由もない愛紗はうろたえている。

 

 「いったい、私が何をしたと言うのだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

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ちなみに、この後丸一日後に目を覚ました一刀はしばらくチャーハン恐怖症になった。

 

そして今回も、誰も愛紗に事実を伝えることはできず、一刀はもう二度と愛紗の前で腹が減ったとは言わないでおこうと、一人静かに誓った。

 

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はい、拠点話四話目でした。

 

この話はパッと思いつきで書いたので、なんかあまり言い出来ではない気がします。(まぁもともとたいした話は書いてませんが・・・・汗)

 

ちなみに、ちらっとだけオリキャラの雪が登場してますが、分からないという方は本編の方を呼んでいただけるといいと思います。

 

それから、これは前回の拠点話の続編みたいな形なので、拠点三話目も読んでいただけるとよいかと。

 

恥ずかしながら、本編のほうの展開をまだ決めかねているので、あと一、二回は拠点話を入れたいと思っています。

 

支援よろしくおねがいしますww

 

 

説明
大分更新が遅れてしまって申し訳ありません 汗

前回のあとがきにも書きましたが、最近いろいろと忙しくてなかなか話し書く時間も無いので、読んでいただいている皆さんには大変ご迷惑おかけします。

さて、今回は拠点話第四弾。

冒頭の部分はちょっとシリアスな感じがしますが、もちろんギャグですww

上記の理由により、ちょっといつもより短いですがご了承ください 汗
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コメント
一撃必殺の料理をも取得している愛紗は文武両道・・・なのか?^^; 一刀もよく頑張った^^>(深緑)
砂のお城さん=愛紗は戦場でも厨房でも一騎当千ですww(jes)
namenekoさん=指摘感謝します 汗 この作品では愛紗の料理の腕はあがるんでしょうかねww(jes)
愛紗の作ったゴハンは相変わらずの殺人兵器ですね。これだけで暗殺とかはラクなのでは?(VVV計画の被験者)
誤字、たった一口倒れたというのに・・・→たった一口で倒れたというのに・・・では?(VVV計画の被験者)
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真・恋姫†無双 悠久の追憶 一刀 愛紗 朱里  

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