PROJECT DARK(仮称) |
色の無い濃霧が世界を覆っている。
かつて、老王オーラントが解き放った原初の猛毒はゆっくりと世界に広がり。
霧は世界を無数に溶かし拡散し、やがて世界は滅んだ。
そこには唯、色の無い濃霧だけが残された。
私はその中で在りし日を夢見たまま、ただ其処に存在している。
あの霧の裂け目を目指し、ボーレタリアにやって来たのは……一体何の為だったろう。
今となっては、もう思い出す事は出来ない。
誰かを追っていた気もする。
唯、富と名声を求めていた気もする。
世界を救いたいと言う高名な野心だった気もする。
しかし“楔”と言う枷に繋がれた私に待っていたのは繰り返される殺戮の日だけだった。
悪魔の尖兵に斃され、失った生身の肉体。
代わりに手に入れたのは楔に繋がれ死ぬ事も叶わぬ儚い幽星(アストラル)の身体。
肉体を取り戻す為には、霧を生み出すデーモンの長を斃すか、同じ様にこの世界で戦う肉体を備えた戦士から奪うしかない。
だから私は戦った。
生者を妬む不死者(イモータル)の様に肉体を供える者に襲い掛かった。
失った生身の身体を取り戻す為に、黒い欲望に身を燃やし、鬼人となって戦った。
されど、勝利する機会は少なく、敗北する事は多く……。
初めは勝つ事に執念を燃やした私だったが、何時しか勝利する事が目的ではなくなり。
唯、戦う事に悦びを見出すようになっていた。
殺して、殺されて、斬られて、斬り返す……。
命の遣り取りに明け暮れる日々。
滅亡へと向かう世界の中で、戦う事が私の悦びだった。
だが、今となってはそれは叶わぬ望み。
濃霧に支配され、終焉を迎えた世界で戦いを求める事すら叶わず―――。
私は此処で在りし日を夢見たまま、ただ存在している。
ふと―――火が見えた。
疾うに滅びた筈の世界に炎が見えた。
濃霧の中で彷徨う者を導くかのように揺らめく灯火。
訝しむ私の意識に、炎が爆ぜる微かな音色に交じり声が聞こえる。
正しくは声ではないが、意識に直接呼び掛ける声が―――。
さ……げ……。
さ……さ……よ……。
ささげよ……。
捧げよ……。
在りし日を夢見る者よ……。
汝が真に、その過去への回帰を望むのであれば……を捧げよ……。
声は次第にはっきりと理解できるようになっていく。
では、何を捧げよと言うのか?
『人間性を捧げよ―――』
人の心を捧げよと、声は言う。
人間としての質(たち)―――。
正義、勇気、誠実、友情、感謝、礼儀、思いやり、信頼、助け合い、感謝、謙虚……。
そんな物を捨て去るだけで……それだけで戻れるのか?
斯くも容易な贄と引き換えに、あの忘れられぬ戦いの日々に戻れると言うのか?
もし、本当にそれが叶うと言うのなら……。
我が身は既に外道と化し、修羅道へと堕ちたる鬼畜だ。
今更、何も躊躇う事ではない。
故に―――。
『捧げ……る』
“応えた”声に驚いた。
それは濃霧の中で頭上から、背後から、足下から、近くから、遥か遠くから……姿形は見えずとも無数の反響となって意識に届く。
ああ、待っていたのは自分だけではないのだと笑う。
こんなにも多くの同胞(はらから)も望んでいたのだ。
巨大な石積みで建てられた古城の苔むす臭い……。
赤い砂礫と高炉に解けた溶鉄の臭い……。
錆と血に塗れた拷問器具に残る鉄の臭い……
乾いた潮風が運ぶ死の臭い……。
光届かぬ谷の底で澱み腐り果てた水の臭い……。
その世界で繰り広げた、あの、戦いの日々を―――。
熱に浮かされたような狂乱の中、血の飛沫と苦悶の呻きに酔った、あの日々を―――!
信者の祈りが合唱めいた調和を生み、それを聞き届けた炎は満足したのだろうか?
やがて……炎は静かに明滅し声と共に消えて行った……。
どうやら、まだ“その時”ではないらしい。
だが、その時は何れ訪れるだろう。
だから私は待っている。
この胸を焦がし待っている。
新たな戦いをもたらし約束の地へと導いてくれる道標……。
―――あの“炎”を―――
説明 | ||
東京ゲームショーで発表された、デモンズソウルの血を引く直系のゲーム PROJECT DARK(仮称)の短編です デモンス→PD(仮称)を繋ぐと言った感じの作品です ディザームービーしか発表されてないけど、重度フロム脳患者の私には何でもないぜッス!(゚∀゚) |
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