少女探偵レモンと謎の一族
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わたしの一族は繰り返す存在、つまり<不死者>であると言われています。

 

”わたしたち”は死をしらぬもの。わたしの母親はそう言いました。

 

「わたしたちは死を知らないのよ」

 

けれど母親、エービス・グリム・ミスフィールドは30を超えぬうちに、流行り病で、死んでしまいました。子どものわたしは

 

いつしかそれを夢のような、おとぎのお話だと思うようになりました。

 

実際それはその通りだったのかもしれません、でも。

 

あるときサラタウンの我が一族の屋敷で一葉の肖像画を見つけました。

 

それはわたしの記憶どおりの母親の肖像画です。それは今から100年以上前の日付です。

 

そうすると母親は古くから生きてきたものでしょうか?

 

それには確かに母親の名前がありました。エービス・グリム・ミスフィールド、と。

 

この肖像画はニセモノなのでしょうか? 本物なのでしょうか?

 

それは古い絵画のように縹渺と、白黒のモノトーンで描かれていました。

 

その日を境にわたしは死と孤独を恐れるようになりました。

 

今のまま変わり続けぬ世界はないでしょう。わたしは世界から取り残された一族なのです。

 

そして、ある日、わたしは町の中でレモンという少女の噂を聞きました。

 

子どもの悩みや事件を解決する、少女探偵レモンです。

 

わたしは叔母に頼んでそこをつれていってもらい、”秘密”を教えてもらうことにしました。

 

(わたしは子どもですから彼女しか助けを呼べぬのです。)

 

 

 

 

わたしことレモンは目の前の小さな女の子、ファービー・グリム・ミスフィールドことF・G・ミスフィールドの訴えを聞いた。

「子ども」だからといって、おろかで馬鹿な考え方をもっているわけではない。ときには子どもは真の意味で世界のなかで”考えていること”があるのだ。

その怯える、ファービーをつけれてきたのは、ファービーを育てている亡くなった母方の姉にあたる、叔母のデービス・グリム・ミスフィールド(D・G・ミスフィールド)という穏やかな年配の女性だった。

 

レモンは慎重に告げた。少女の恐怖がなくなり楽しい遊戯の世界に戻れるように。

 

「よく見て御覧なさい」とレモンは事務所の机から一冊の画集を取り出していった。それは写真のように精密に描かれた絵画の画集だ。

 

「あなたの母親はね。こんなふうにあとで描かれたんじゃないかしら? 日付なんてあてにならないわよ」

 

とにっこりとする。

 

だが後日、その少女たちのもってきた絵画の材質は経年劣化しており、100年以上前のものに思えた。

 

A・G・ミスフィールドとある。ミスフィールド家のAはたしかにエイビスだろう……。

 

レモンはファービーの手をとった。

 

「あなたの手は暖かい。それはあなたが生きている証拠。そうね。もし本当だったとしても、わたしはあなたを恐れないわよ。あなたはいい子だもん」

 

「ファービーの血……は異質なの……?」

 

これはレモンにとっても解けぬ謎となった。数年前のことだ。ファービーの悩みは精神科医が担当することになり、レモンは挫折に似たものを味わい、あるいは恐怖を味わったのだ。それはファービーたちの一族が感じさせているのだ、と。

 

もっともデービス・グリム・ミスフィールドは笑いながら、いったもの。

 

「わたしたちの一族では誰もが掛かる麻疹(はしか)みたいなものですよ……」

 

「そうなんですか?」

 

「それに実際に、違っているでしょう?」

 

「なにが?」

 

とレモンは怪訝そうに聞いた。

 

「この家のファーストネームには規則があるのよ。まあ普通の人からみれば変でしょうけれど」

 

にっこりと大人の笑顔でそういったファービーの叔母はいった。それは100年前の肖像画の母親の笑顔に似ていた。

 

いつの間にか、ファービーたちの一族は静かにサラタウンを去っていった。なにも残さずに。

 

そして、今。

 

黒髪ロングで、キトンのシルクハットの少女探偵レモンはファービーと再開した。

 

サラタウンの街角で、ファービーたちと再開したレモンは笑いながら、叫んだ。

 

「この謎、解けましたわよ!」

 

「まあそれはなんなのかかしら?」

 

とファービーもいらずらっぽく笑う。彼女は、悩みの無い、可愛らしい少女になっていた。

 

レモンは告げた。

 

「この一族は出生順に、ABCDEFG……の繰り返しで女性の頭文字をつけているのね?」

 

したがって、ファービーの母は、Fの前のE、単純に、エービス(Eebys)という綴りであろう。一方、肖像画の女性はAbys(エイビス)という綴りなのだ。

 

小さかったころの、ファービーはまだアルファベットを理解していなかったため、

アルファベットの読み方の規則性が分からなかったのだ。そのため、名前を誤読した結果、母親とよく似た肖像画の女性と母親を同一視したのだ。

 

レモンの報告書:それにしても別の意味で、驚いたわ。大きくなった、ファービーは肖像画の女性とそっくりになっているのよね。

 

おそらく、肖像画の絵画の日付は正しい。そしておそらく、この家族たちはみんなあるとき、そっくりな時期を迎えるのである。

説明
わたしは繰り返すことを恐れました。今はいない、わたしの母親は古くに描かれた肖像画に似ています。彼女は繰り返す存在、つまり不死者だったのでしょうか? その答えを求めて、わたしは少女探偵レモンのもとを訪ねました。
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ミステリ 怪奇 児童文学 少女探偵レモン 少女探偵 サラタウン 

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