恋姫†無双 『蒼天已死 黄天當立』 参 |
注意
・今回は多少、過激な表現が含まれています。
・ご飯前の方はご遠慮ください。
古城の大きさや状態を確認した一刀達は行動を起こすことにした。
目を付けたのは古城から一里ほど離れている村。
そこまで物がある村ではないようだが一刀達にはあまり余裕がない。
道中で攅刀や蘭花が多量に酒を飲むのだ。
飲むだけならまだいい。
しかし、攅刀達は新しい酒を勝手に購入していたのだ。
攅刀達が買っていたのは高級酒。
曰く
「いや、村を襲っても高級な酒はねぇだろ?だ、だから、久しぶりに飲みたくなってな?」
問答無用で説教を行った。
資金的にも余裕がなくなってきたので近くの村から手当たり次第に襲撃することにしたのだ。
「この大きさなら百人いれば大丈夫かな」
「んな、ちいせぇ村を襲うのかよ?」
「だ・れ・の・せ・い・だ!」
「さーて、部隊の確認でもしとくかぁ」
攅刀はあさっての方向を見ながら仲間のところに去っていく。
「今回は俺の部隊で行く。いいかい?」
「うん、いいんじゃない?私の部隊も龍盟の部隊もこの前、したし」
「俺にも異論はないな」
「それで俺と後1人は誰が来る?」
一刀達は一刀の部隊、龍盟の部隊、蘭花の部隊に別れている。
拠点を一部隊が守り二部隊は襲撃に向かう。
もし、一部隊で襲撃に向かう場合は部隊長が2人付くことになっている。
これは部隊長が何らかの原因で部隊を指揮出来なくなった場合に他の部隊長が指揮を行うためだ。
「んー、今回は私が行こっかな」
「分かった。龍盟はそれでいい?」
「構わん」
「それじゃあ、一刻後にここを出るよ」
一刀達は村にある程度、近づいたところで異変に気づく。
村の方が赤いのだ。
「急ぐぞっ!!」
そう言うと一刀は速度を上げた。
周りも一刀に遅れぬように速度を上げる。
そして、一刀達が村に到着する。
だが、そこに襲うべき対象は無かった。
村は既に襲撃されていたのだ。
道ばたには多くの屍がある。
「ちっ、別のとこが早かったか」
一刀は苛立ちを覚えながら部隊に指示を出す。
「俺と20人程付いてこい!残りは蘭花とここで待機だ!」
それだけ言うと一刀は走って村の奥へと進んでいく。
ざっと見て千人くらいだろう。
一刀はこの村を襲撃したであろう賊の一団を発見していた。
賊は全員、黄色い布を着けていた。
集団の中心には頭らしき男が居た。
村から奪ったであろう酒を飲んでいた。
「バカだなぁ。逃げておけば俺に見つかることもなかったのに・・・」
一刀は腰に据えられている武器に手を掛けようとすると女性の声が聞こえて来た。
「止めてっ!!この子だけは・・・・・・この子だけは・・・・・・」
見ると女性が何人かの男に連れられて頭らしき男に近づいてきていた。
女性は何かを抱えているようだった。
「ほぉ、上物じゃねぇかよ」
頭らしき男は女性に近づく。
女性は男に怯えて震えている。
「なんだぁ?んなにその餓鬼が大切かぁ?」
頭らしき男は女性の腕の中にいた『それ』を奪い取った。
「返してっ!!」
女性が叫ぶが頭らしき男は笑みを浮べるだけだった。
一刀はその光景を見て動けなかった。
「ふん、こんな餓鬼」
頭らしき男は武器を振り上げた。
「止めてっ!!何でもするから、その子はっ―――」
女性が言葉を繋ごうとするが頭らしき男は行動を止めない。
そして、武器を振り下ろした。
ブシュッ
肉が切れる音と共に赤い血が辺りを染める。
女性は絶望に満ちた表情。
男は悦んだ表情。
だが、そんな表情も次の瞬間には絶望に変わる。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭らしき男が叫ぶ。
さっきとは一転して痛みに顔を歪ませている。
男が振り下ろした剣は子供を掴んでいた左腕を切断していた。
そして、頭らしき男の手にもその足下にも子供の姿はない。
その時に初めて賊の1人が気づく。
女性の近くに青年がいることを。
一刀`s 視点
俺は両腕で抱えていた子供女性の元へと返す。
女性はどこか唖然とした表情を浮べていた。
たぶん、何が起きたのかを理解できていないのだろう。
でも、今は悠長にしている時間はない。
俺は女性を抱えて賊から離れたところに跳んで連れて行く。
女性を降ろして出来るだけ遠くに行くように言うと俺はさっきの頭らしき男のところへと戻る。
男は腕の止血をしていた。
包帯を切断された部分に着けている。
「お前のせいかっ!!!!」
男は俺の姿を見るなりいきなり叫んできた。
どうやら頭に血が上っていて冷静な判断が出来ていないようだ。
「だったら、どうした?」
普段は決して出さないような低い声。
別に意図として出している訳じゃない。
勝手にそんな声になっているのだ。
「殺すっ!!!お前らっ!こいつをぶっ殺せっ!!!」
頭らしき男は大声で叫んだ。
それに反応して周りの賊が動き始める。
1人が真後ろから突っ込んでくる。
俺は相手が当たる寸前に体を少しだけずらし回避する。
相手は突っ込んできた勢いのまま前に倒れそうになる。
俺はすれ違いざまに突っ込んできた奴の左手を掴み足を引っ掻ける。
さらに相手が宙に浮いたとき背中をある程度の力で踏んだ。
バキッ
骨が折れる音が辺りに響く。
倒れた男は虫の息だった。
それを見て俺はもう一度、男を踏み付けた。
男の息は完全に停止した。
辺りが急に静かになる。
賊は完全に動きを停止していた。
「無くなれ」
俺は静かに呟いた。
蘭花は戻ってきた20人の話を聞き待機をしていた。
彼らがもたらした情報は千人程の賊の集団がいたこと。
一刀が暴走状態になったこと。
蘭花はその二つを聞いた。
「はぁ、最近、多くなってきてるなぁ」
蘭花は一刀の暴走したことを思い出していた。
一刀はある強いトラウマを持っていた。
そのトラウマの対象が子供だ。
と言っても主に赤ちゃんなのだが。
一刀は攅刀から拾われたことを聞いている。
最初は衝撃を受けていた一刀も次第に落ち着いて今まで通りになった。
――――はずだった。
ある日のことだった。
一刀と蘭花は部隊を連れて村を襲撃していた。
いつも通りにその日も終わるはずだった。
突如、そこに別の賊が乱入してきた。
賊は一刀達の姿を確認するなりいきなり襲ってきた。
一刀達は慌てることなく対処して賊を追い返そうとしていた。
しかし、賊の放った一本の矢が一刀達の後ろに居た親子の子供に当たった。
親は子供を抱えていたので子供に矢が当たるだけでケガはしていないようだった。
それだけを確認して蘭花は視線を前に戻そうとしていた。
だが、途中で動きを止めた。
一刀の様子がおかしいのだ。
親子を凝視したまま動かない。
表情は何かに怯えているような表情だ。
そのまま、俯いてしまう。
蘭花は不審に思って顔をのぞき込む。
一刀の顔が見えたとき蘭花は地面にへたり込んでいた。
そこには狂喜の笑みがあった。
あまりにも純粋。
故に兇悪過ぎる。
賊は一刀によって全員が殺されていた。
蘭花は拠点に戻って一刀の話を攅刀と龍盟にした。
そして、ある仮説が浮かんだ。
一刀は子供と自分自身を重ねているのではないのだろうか。
もし、攅刀に拾われなければどうなっていたのか。
そんな思いが自分と子供の姿を重ねてしまう。
すると、子供の身に起きたことは全て自分に起きたことだと認識する。
つまり、自分の身に危険が及ぶ、と。
「今回は子供が救えたから随分とマシなほうかな」
おそらく賊であろう叫び声を聞き蘭花は震えながら言った。
一刀`s 視点
怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い―――
死への恐怖が俺を襲う。
恐怖から抜け出したい。
なら、どうすればいいか?
簡単だ、恐怖の対象を無くしてしまえばいい。
残り50。
俺は近くのやつの腕を掴む。
そして、そいつで他の奴を殴る。
相手が完全に停止するまで殴り続ける。
バキッ
音と共に掴んでいた奴の腕が変な方向へと曲がる。
俺は使えないと判断しそれを捨てる。
また、別の奴の腕を掴む。
さっきから、同じ事の繰り返し。
それでも俺は続ける。
危険なものを無くすために。
気づいたら立っているのは俺と頭らしき男だけになっていた。
他は地に伏せたまま微動だにしない。
「ひっ」
頭らしき男は俺が近づいていくと怯えた表情をする。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
頭らしき男は武器を捨てて走り去ろうとする。
勿論、そんなことは許さない。
危険なものは全て無くす。
俺は右足に力を込めて一気に開放する。
一瞬で男の後ろ姿に追いつき頭を掴む。
そして、地面に叩きつけた。
耳を塞ぎたくなるような音と共に男は動きを停止していた。
蘭花は静かになったのを確認して1人だけで賊のいた場所へと向かう。
大雑把な説明しか聞かなかったがそれでもすぐに場所は分かった。
あまりにも血生臭いのだ。
鼻をつくような臭いが特定の方向からしてくる。
それを頼りに蘭花はその場所へ向かう。
その場に着くとあまりにも悲惨な光景が広がっていた。
地獄――そんな言葉すら頭を過ぎる。
辺りを見回すと呆然と立ち尽くしている一刀の姿を見つけた。
蘭花は少しだけ震えている自分に“大丈夫”と言い聞かせ一刀に近づいていく。
一刀の姿はまるで鬼だった。
全身に血を浴びて皮膚も服も赤く染まっている。
蘭花がある程度、近づくと一刀は蘭花のほうを振り返った。
蘭花は一瞬だけ身を硬くする。
一刀の表情が無かったのだ。
だが、一刀は蘭花の姿を捉えると表情が現れる。
「蘭花・・・・・・」
弱々しい声。
そして、今にも泣き出しそうな顔。
震えが完全に止まった蘭花は一刀に更に近づいていく。
一刀は蘭花のほうに体の向きを変えると近づいてきた蘭花に抱きついた。
蘭花は抱きついてきた一刀を受け止める。
そして、蘭花は一刀の頭を撫で始めた。
それに合わせて一刀は泣き始めた。
「大丈夫。もう、大丈夫だから」
蘭花はそう言いながら一刀が泣き止むまで頭を撫で続けた。
一刀が泣いた理由。
それは自分の存在がどこにあるのか分からなくなったため。
子供と姿を重ねて迫る危険を排除した後は自分が何者なのか混乱をするのだ。
一刀なのか、子供なのか、それとも―――。
これはあくまで攅刀達の推測である。
本当のことは一刀自身にも分からない。
昔、一刀が危険を排除した後、一刀達の仲間である賊が1人で一刀の近づいた。
その時、その男は一刀に襲われかけた。
龍盟が止めに入らなければその男は死んでいたであろう。
一刀は龍盟が止めに入ると龍盟に抱きついて泣き始めたのだ。
その後、何回かそのようなことがあり一刀が暴走した後は攅刀、龍盟、蘭花の誰かに抱きついて泣かなければ暴走が止まらないことが判明。
蘭花は“特に親しい者に抱きつかなければいけない”と認識している。
一刀が泣き終え蘭花は部隊に指示を出し始める。
それを合図に部隊は早急に動き物資を確保。
そのまま、拠点に戻っていった。
『懺悔室』
どうも、イタズラ小僧です。
今回は戦闘シーン、と言っていいのかは分かりませんがそれっぽい何かです。
最初はこれより少し残酷な表現だったんですけど、
友人に見せたら「やり過ぎ」と言われたのでかなり抑えました。
ちなみにこれで3度目のアップロードにチャレンジしてます……
心が折れそうです……
まぁ、それはどうでもいいんですけど
それではここまで見て下さった皆様に多大なる感謝を!!
説明 | ||
今回は戦闘シーンです。 いや、あれは戦闘シーンなのか? 多少、残酷な表現が含まれています。 苦手な方はすみません。 では、どうぞ! |
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コメント | ||
hokuhinさん 闇は無くなるのかはたまた深くなっていくのか…。満足頂けるようにがんばります!(イタズラ小僧) 一刀の抱えるやみが、今後どのようになるのか気になります。(hokuhin) はりまえさん はい、過去の傷はなかなか癒えません。どんなに過ぎたことでも(イタズラ小僧) スイッチが子供自分を重ねているからこそ起きるボタンか・・・・・(黄昏☆ハリマエ) |
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