真・恋姫†無双 魏after〜天の道化師〜 第壱章
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  ---人には、それぞれ物語が存在する…

 

  それは現実であったり、夢であったり、はたまた幻であったり、あらゆる形で確かに存在している…

 

  形は違えど、その物語を生きている人にとって、それはかけがえのないものである…

 

  だが、物語には必ず終焉がある…

 

  その終焉は、あまりに儚く、あまりに切なく、突然に訪れる…

 

  今まで積み上げてきたものが、音を立てて呆気なく崩れ落ちる…---

 

 

 

 

 

 ---まるで…今の俺みたいに…---

 

 

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  ……ん…眩しぃ……

 

  もう朝なのか…………

 

  …体が重い………

 

  でも早く起きないと華琳にどやされるし……

 

  仕方ない…………

 

 

  「んっ……………」

 

 

  体の気だるさと睡魔という最悪の2段攻撃に耐えつつ、俺はゆっくりと瞼を開いた

  まずはじめに目に入ったのが白い天井、そしてなぜかやけに懐かしく感じる蛍光灯の姿が目に入った

  

  ん…?………蛍光灯……?

 

  そこで俺はガバッと勢いよく起き上がり、周りを見渡した

 

  

  「……どうなってんだよ………」

 

 

  そこは見間違えることのない………寮の俺の部屋だった

  正面の鏡に映っていた俺……北郷一刀は、驚愕に満ちた表情のまま、しばらく動けずにいた………

 

 

 

  

  「…そうだ……俺……役目を…終えたんだっけ…………」

 

  

  朝の冷たい空気が、少しずつ俺の頭に冷静さを取り戻させてくれた

  そして、その頭の中を駆け巡るのは華琳と…魏のみんなと一緒に戦い、駆け抜けてきた日々……

  春蘭に追い回されたり……

  秋蘭に笑われたり……

  桂花に罵られたり…

  風に種馬と言われたり……

  凪・真桜・沙和の3人と警邏をしたり……

  霞に甘えられたり……

  季衣と街で食べ歩いたり……

  流琉の料理を食べたり……

  稟に溜め息つかれたり……

 

  そして…………

 

  

  「俺の物語……終わっちまったよ……華琳………」

 

  

  そのまま俺は……こみ上げてくるものを抑えることができず……声をあげて泣いた………

 

 

  

  

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  散々泣き晴らした俺の頭はやけにスッキリとしていた

  

  吹っ切れることができたのか……?

  いや…違う………わかったんだ

  こんな俺の姿を華琳が見たらどう思うかが

  きっと呆れかえるに違いない

  このままでいる訳にはいかない

  前へ……とにかく前へ進むしかない…

  それが今の俺に出来る唯一の行動であり誓いだ

  そしてまたいつか………

 

 

  「華琳のもとへ!」

 

  心にもう迷いはなかった

 

 

 

 

 

 

  「じいちゃん、俺に剣術を教えてくれ!!」

 

  

  どうやら向こうにいる間、こっちでは全くと言っていいほど時間が経ってなかったようで、次の日、俺はじいちゃんのもとへ行き、剣術を教えてもらうために頭を下げた

  …じいちゃん相手にここまで真剣に頭下げたのは初めてかもしれないな…

  そしてじいちゃんはというと、見事に鳩が豆鉄砲くらったような表情になっていた

  …そりゃそうだよなぁ…

 

  俺のじいちゃん…北郷一虎は北郷流操気剣術の12代目当主だ

  うちの流派は意外と歴史深く、じいちゃんもそれを重んじ、誇りに思っていた

  俺の親父は、俺が物心つく前に病気で他界しちまって、そのためなのか、じいちゃんは何度も俺に剣術を習えだの跡を継げだの言い続けてきた

  だけどそのころ俺は剣術に一切興味がなく、じいちゃんがそのことを言うたびに知らん顔してきた

  そんな人間が今さらになって自分から剣術教えてくれって頭下げてんだから驚かないわけがない      

  しばらく驚いた表情をしていたじいちゃんだったが、その表情はすぐに真剣なものとなった

 

 

  「おぬしがそう言ってくれるのはとても喜ばしいが、今まで剣術に見向きもしなかったおぬしが、何故いきなり?」

  

  俺はじいちゃんの目を真っ直ぐ見て答えた

 

  「……どうしても、守りたい人がいるんだ。その人は俺なんかよりも強く、誇り高い。俺の助けなんか要らないのかもしれない…。でも、まだ何ひとつ返せてないんだ!だから、今度は俺が守る!守り通す!それがっ……おれに出来る…唯一の恩返しだから……。そのためにも今俺には、どうしても力が必要なんだ!だからじいちゃん、俺に剣を教えてください!!」

 

  俺はもう一度、大きく頭を下げた

 

  じいちゃんはしばらく考える素振りをみせ、そして声をあげて笑い始めた

 

  「がっはっはっはっはっは!!」

 

  「じ、じいちゃん!?俺は真剣に………!!」

 

  「はっはっは!いやすまんのう。…あの小童がしばらく見んうちに良い面構えになったもんじゃわい……」

 

  「?なんか言った?じいちゃん」

 

  「何でもないわい。それよりも剣術を教えてほしいのじゃろう?良かろう。おぬしに北郷流操気剣術の全てを叩き込んでやろう」

 

  「本当!?ありがとうじいちゃん!!」 

 

  「そのかわり、わしのしごきは生半可な覚悟じゃついて来れんぞ。それでも耐え抜く覚悟はあるか?」

 

  俺は迷うことなく言った

 

  「うん。俺はもう逃げない。守り抜くって…決めたんだ」

 

  俺がそう言うと、じいちゃんはまた声を上げて笑った

 

  「がっはっはっは!本当にいい男の顔になったもんじゃわい!よかろう。さっそく明日から開始するぞ。覚悟せい!」

 

  「よろしくお願いしますっ!!」

 

 

  見ててくれ華琳……俺、頑張るから……!

 

  空に手を掲げ、俺はそう誓った

 

 

  

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  その後のじいちゃんのしごきが半端ではなかった

  ウォーミングアップで42.195km走らされたり、熊の出没する山に武器もなしに放り出されたり、いきなり崖から突き落とされたり、風船でくくりつけられて空にとばされたりと、ただのいじめではないかと思うことばかりやらされた

  …てか、よく生きてたな…俺…

  自分の生命力が少し怖くなった

 

  そしてそんな無茶苦茶な鍛錬を始めてから早半年、俺は朝からじいちゃんに呼ばれていた

  …こんな朝早くから何の用だ?まさか…また何かいじめか?

  もはやトラウマになりつつあった

  そんなことを考えてる間に道場にたどり着いた。

 

  「じいちゃん、言われたとおり来たよ」

 

  じいちゃんは道場の真ん中で瞑想をしていた

  …こういうときは師匠っぽいんだけどなあ…

  そう思ったが口には出さないでおく

 

  「おお、きたか」

 

  じいちゃんはゆっくりと立ち上がり、俺の方を向いた

  そして口を開いた

 

  「一刀よ、おぬしはこの半年信じられない早さで成長した。おそらく歴代の中で最も才に愛されておるのじゃろう。もうおぬしに教えることは何もない。よって、今から免許皆伝のための最終試験を行う」

 

  突然のことに俺は混乱した

 

  「え!?免許皆伝!?最終試験!?…何!?どういうこと!?」

 

  「そう慌てるでない。免許皆伝といってもおぬしが弟子を持って教えるわけではない。これはあくまで卒業試験のようなものじゃ」

 

  「卒業試験?」

 

  「そうじゃ。といっても別に打ち合うわけではない。それではわしが歯がたたないからな。今から行うのは、おぬしの気の性質を見極めることじゃ」

 

  「性質?気に性質なんてあるの?」

 

  俺は少し驚いていた。今まで気の部分集中や放出、気による身体能力強化などさまざまな特訓を行ってきたが、性質についてなど全くふれてなかったからだ

 

  「うむ。この世には火・水・風・土の4つの気の性質が存在しておる。これら4つの気にはそれぞれ特徴があってのう、例えば………」

 

  そこまで言ってじいちゃんは木刀をもって表へと出て行った。俺もそれについて行く

  そして2mはあるのではないかと思われる大きな岩の前で止まった

 

  「うむ、これならちょうどよいかのう」

 

  「?いったい何をするの?じいちゃん」

 

  「なに、今から気の形質を見極めることでどれほどの力が出せるのかということを実践しようと思ってのう。とにかく見ておれ」

 

  そこまでいうとじいちゃんは岩のほうへ向き直り、集中を始めた

  その集中力は凄まじいもので、ピリピリとした空気と、すごい熱気が伝わってくる

  そしてそれが限界まで高まった瞬間……

 

  「せやぁぁぁぁっ!!!」

 

  じいちゃんは岩に向かって木刀を振りぬいた。そして岩と木刀とがまじわる瞬間、木刀から光が放たれた

  ピカッッッッッ!!

 

  「うっっ………」

 

  あまりの眩しさに俺はたじろいだ。だが次の瞬間轟音が響いたので驚いて顔をあげると、岩が見事なまでに粉々になっていた

 

  …っな!ぼ、木刀で……!?

 

  あまりの光景に俺が動けずにいると…

 

  「これが気の性質を見極め、その特性を最大限にまで極めた結果じゃ」

 

  その声で俺は現実へと引き戻される

 

  「じいちゃん…今のって……」

 

  「今のが北郷家より代々受け継がれてきた気の性質…強化と破壊に特化した性質、すなわち「火」じゃ」

 

  そう言うと、「あいたたた…歳には勝てぬわい……」などと言いながら腰をたたいた

 

  …俺に…出来るのか……?

  そのようなことを考えていると、

 

  「いや、今のをやれと言っている訳ではないわ。ただ、おぬしが4つのうちのどの性質に特化した体質なのか…それを見極めることこそが今回の試験の最大の目的じゃ」

 

  その言葉に俺は疑問を抱いた

 

  「?さっきのじいちゃんの口ぶりからして、北郷家は火に特化した体質なんだろう?だったら…」

 

  火じゃないのかと言おうとしたところを、じいちゃんに遮られた

 

  「うむ。確かに我が北郷家は代々火を受け継いできた。じゃがのう一刀よ、おぬしの気を見る限り、「火」では狭苦しいように見える」

 

  「……つまり?」

 

  「おぬしは北郷家の伝統を超えれるのかもしれんということじゃ」

 

  そういうとなにやら小さな水晶玉のようなものを取り出した

 

  「一刀よ、これを見るのじゃ」

 

  そう言うとじいちゃんは水晶玉に気を送り込み始めた。すると……

 

  「…あっ!赤くなった!」 

 

  さっきまで透明だった水晶玉が真っ赤に染まったのだ

 

  「これは気の性質に応じて色を変える水晶でのう、火なら赤、水なら青、土なら黄、そして風なら緑に変わる。これを今からおぬしにもやってもらう」 

 

  そう言うと、俺にもう色のもどった水晶玉を渡してきた

 

  「いいか?その水晶を持ちながら、自分の気にあった力のイメージをするのじゃ。火ならば炎、とかのう」

 

  それを聞いて俺は目を閉じ、自分の気にあった力のイメージを始める

 

  …なんだろう…なんだかとても清々しい…それに体がすごく軽い…今なら飛べそうな気すらする……………そうか分かった…俺の気の姿が…誰にも邪魔されることがなく…何よりも疾く…何よりも軽く…そして…自由………そう…その姿はまさしく……………!!

 

  そして目をカッと開く。すると……

 

  「…緑……色………」

 

  水晶玉は、鮮やかな翡翠の色に染まっていた

 

  「うむ。やはりのう」

  

  じいちゃんは満足そうにうなずきながらそう言った

 

  「……やはり?」

 

  「うむ。おぬしの気は、どうにも火の型にははまらないように見えてのう。じゃからもしかしてとは思っとたんじゃが…まさか風じゃとはな」

 

  「…何かおかしいのか……?」

 

  「いや、むしろその逆じゃよ。風に特化した人間は滅多にいなくてのう、わしもこの目で見たのは初めてじゃ。じゃから風は、扱う人間を選ぶ気、とまで言われておる。じゃがおぬしは選ばれたんじゃ。その力にのう」

 

  …選ばれた?…俺が?

  俺は少し信じられずにいた。風の気がそれほどまでに希少なもので、俺がそれに選ばれたなんて………。

  そう考えていると、じいちゃんが口を開いた

 

  「そのような顔をするな。おぬしのことはわしが1番よく知っておる。おぬしにはその力に選ばれるだけのものを持っておる。じゃから負い目に感じることなどない。むしろもっと胸を張って誇らしく思っとればいいんじゃ」

 

  じいちゃんはそう言うと、がっはっはと声をあげて笑った。

 

  …じいちゃん……

  俺はこの人が師匠で本当によかった…そう心から思った。

 

  「…うん、そうだね。ありがとう、じいちゃん!」

 

  「なに、礼を言われるほどのことではないわい。…よぉし!これにて最終試験終了じゃ!これでおぬしは立派な剣士となった。あとはその力に溺れず、精進し続けるんじゃ。……半年間、よくぞ頑張ってくれたな」

 

  そう言うとクシャクシャと俺の頭を乱暴になでた

 

  …やべ…俺今泣きそう……

  じいちゃんの暖かな優しさがその手から伝わり、俺の目から熱いものがこみ上げてきた

 

  「なんじゃ、泣いておるのか?」

 

  「泣いてなんかないよっ!!」

 

  俺はそう言うと目を乱暴にこすった

 

  「がっはっはっは!まあそう恥ずかしがるな。とりあえずこれでおぬしはわしの弟子卒業というわけじゃが、これからどうするつもりじゃ?」

 

  それを聞いて俺は自分のこれからについての考えを話した

 

  「まだ具体的に決まってるわけじゃないけど、俺…アメリカに行きたいと思ってるんだ」

 

  そう言うとじいちゃんは少し驚くような顔をした

 

  「アメリカとはまたいきなりじゃな」

 

  「まあ、結構前から考えてたことなんだけどね。アメリカへ渡って、日本とは違う他国の文化っていうのを学びたいと思ってる。それは伝統だったり、政治のことだったりいろいろあるけど、たくさんのことを学んで、その知識を今後に役立てたいんだ。もちろん、そこでも剣の修行は続けるつもりだよ。風の気も扱えるようにしなくちゃいけないしね。とにかく、俺はもっともっと自分を磨かなくちゃいけないんだ」

 

  そこまで言うと、じいちゃんが真剣な表情になった

 

  「それは…守りたい人のためか?」

 

  俺はその問いに迷うことなく答える

 

  「ああ、その人に恩を返すためにも…守るためにも俺はもっと強くならなくちゃいけない。だからじいちゃん、アメリカへ行くこと、許してくれないかな…?」

 

  俺の答えを聞いて、真剣だった表情が優しい笑みへと変わる

 

  「許すも何も、お前が自分で決めたことなんじゃ、わしがそれを止めることなぞするか。自分が決めたその道を、真っ直ぐ歩いていけ。そして後悔だけはするな。歩いて歩いて歩き続けろ!それがわしの師匠として…おぬしのじいちゃんとしての、唯一の願いじゃ」

 

  …本当に…この人が師匠で…俺のじいちゃんでよかった……

  俺はあふれてくる涙を拭うこともせず、じいちゃんに抱きついた

 

  「…ありがっ…と…うっ……じいちゃんっ……おれ…がんばるっ……から…!」

 

  「うむ、行って来い。そしてもっと大きな男になって、戻ってくるんじゃ」

 

  俺は、「…うんっ!…うんっ!」と涙ながらに頷きながら、じいちゃんの暖かさを噛み締めていた

 

  「よぉし!!そうと決まれば今夜はおぬしの弟子卒業と、新たな門出の祝いとして宴会じゃ!!家族みんなでな!!」

 

  じいちゃんはそういうと急いで準備をしなくてはと、家のほうへと走っていった

残された俺は、そのじいちゃんの切り替えに唖然としていたが、やがて我に帰ると、おかしくて吹き出してしまった

 

  「くっくっく、何が急いで準備だよ…まだ朝の7時だっての」

 

  今日はなんだか騒がしくなりそうだ…

  そう思いながら、俺は家へと足を運んでいった

 

 

  

-5ページ-

 

あとがき

 

 

  なんとか書き上がりました!\('∀'*)/

 

  まずは未完の状態で投稿したことについて謝罪いたします。

  本当にすみませんでした<(_ _)>

 

  この第壱章も、本当はあっちの世界に飛ばされる手前くらいまで書きたかったんですが、それだと相当長くなりそうだったので、とりあえずここで切りました(*´ι`*)

 

  次回は、場面がアメリカに移ります!一刀くんのさらなる成長にこう御期待(^∇^;)v

 

  

  では第弐章で会いましょうヾ(´ー`)ノ

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

 

  

 

  

  

 

    

 

  

 

    

   

  

 

 

 

  

    

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

 

  

 

  

 

  

説明
とりあえず一刀が祖父のもとで修行するとこまでです。

予定よりも短くなりましたが、今後どんどん話を展開していきます。

それではどうぞ!
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コメント
続きまだですかぁー(睦月)
とりあえず続きを書いたのでよかったらどうぞ(有里 湊)
ウォーミングアップでフルマラソンってww(2828)
刀銃氣士みたいな感じに育つのですね〜w(十狼佐)
更新乙♪ 面白そうだ! 次も期待してます♪ ところで4P目の最後の空白多くないですか?まだセリフあるのかと期待してしまった。orz(アラトリ)
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恋姫 一刀 一虎 北郷流操気剣術 真・恋姫†無双 

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