大好きだから… 〜They who are awkward〜 第11話 |
「澪先輩明日も来ても大丈夫ですか?」
「私なら暇だからな、いつでも来てもいいぞ。ただ本当に教えるとは思わなかったけどな」
勢いで言ってしまったのことなのだが、流れでそうなってしまった。
多分お互いまだ少し会わない間が会ったから気恥ずかしいというかどういうノリで話しかければいいか掴めなかったんだろう。
それでも慣れてきたか澪先輩は教えているときノリノリだったな。
「佐久島先輩ありがとうございましたっ!!」
「マジで澪サン助かるわ。これで全国の妹達を泣かせるようなことは起きなさそうだぜ」
「私も本当に感謝してます。ありがとうございます」
「別に気にするな。もともと教える約束だったし、ただ時間と場所がずれただけだからな」
強気にそうは言ってるものの多分照れ隠しだろう。
誰一人として澪先輩を心配するそぶりを見せずにいつもどおりに接していたが俺らにはこれがちょうどいいんだろうと思う。
「そういえばいつ退院できるんですか?」
美樹が尋ねる。
「んー… 私は平気なんだが経過を見ないといけないからまだ時間はかかるな」
「そうですか……」
「そんなしょんぼりするな。私ならすぐに回復するさ。安心してくれ」
「まぁ澪サンなら死にそうにないからな」
「む、どういう意味だ?私は可憐な乙女なんだぞ、そこらへんの奴より十倍くらいな」
「へいへい。それは失礼しましたね。だったら茉莉子ちゃんに向けて伸ばしている手を止めてくれよ?
乙女なんだからオヤジみたいな真似は出来ねぇよな?」
そろそろと茉莉子の後ろに伸びていた手を恭一が制止する。
「私も少しくらいの役得をだな」
「はい佐久島先輩、茉莉子ちゃんに手を出さないでくださいねー」
美樹が茉莉子を守る協力な守護者となった。
「なんだよ。勉強教えさせるだけさせといて後は用済みか?うう、ひどい奴等だ」
「佐久島先輩とは言えセクハラは許しませんから」
「むむ、しょうがない。今日のところはこれで諦めるが次はないぞ?だからさっさと帰れ。ホラ、しっしっし」
澪先輩が触れないとみると逆にお払い箱だと言わんばかりに俺らを帰そうとする。
「じゃ、じゃぁとりあえずまた明日来ますからね澪先輩」
「…普通見舞いにきたらなにか持ってくるものだよなぁ…まさか明日も持ってこないとか…それはないよなぁ……」
そういいつつ俺らジト目で見る。
「だって……なぁ?」
「悠樹が急がせたからな」
「悠樹が急がせたせいね」
「あ、明日は持ってきますから拗ねないでくださいね佐久島先輩」
だってしょうがないじゃないか………
「そうか?別に催促したわけじゃないんだが悪いな」
澪先輩、満面の笑みである。
「あ、やばい。携帯忘れてきた」
病院から出た俺は忘れてきたことに気づいた。
「さっさと取ってこいよ。面会時間いつまでかは知らないが早くしたほうがいいんじゃないか?」
「ごめん。なんなら先に帰っててもいいぞ?」
「バカ。それぐらい待つってーの」
「早く取ってきなさいよ。佐久島先輩に苦労かけるんじゃないわよ」
「いってらっしゃい兄さん」
「すぐ取って来るよ」
俺は急いで澪先輩の病室に逆戻りする。
流石に病院のなかでは走らず、急いで歩いた。
そうして俺はまたもや澪先輩の病室の前までたどり着き今日二度目のノックをする。
「誰だ?」
「あ、すいません俺です悠樹です。入ってもいいですか?」
声が聞こえるようにドアを少し開けて澪先輩に許可を得ようとする。
「悠樹………?何の用だ?」
「あ、携帯忘れちゃって取りに来たんですよ」
「そうか…なら入っていいぞ」
「失礼します」
先ほどとは変わりはないが二つだけ違うのが置いてきぼりにされた俺の携帯が椅子の上にあることと、
よく見ないとわからなかったがすぐ澪先輩がナースコールを出来るように手に持っていることだった。
「あ、俺邪魔でしたか?看護師さん呼ぼうとしてたんですよね?」
「いや、気にするな。もしかして悠樹の名を語った変態かと思って身構えてたんだ」
真面目に言っていてちょっと悲しい。
「声でわかってくださいよ…。それよりも今日はすいません。ホントは俺らの相手しんどかったですよね?つい嬉しくて」
「少しだけ…な。それよりも私もみんなと会えて嬉しかったよ」
声色に少し疲れを含んでいたが笑っていてくれた。
「それならよかったですよ。これから澪先輩が暇しないように毎日でも行きますから」
「はは、それは…退屈しなさそうだ。……ところで悠樹」
苦笑いをしながら俺をまっすぐに見つめてくる。
「どうしました澪先輩?」
「………んー…やっぱりなんでもない」
「どうしたんですか?気になりますよ」
「なんでもないさ。さ、携帯を回収したら早く行ったほうがいいぞ?みんなを待たせてるんだろう?」
「気になるけど…待たせてるんで帰ります。また明日来ますからね」
「あぁ。また明日な」
俺は病室を後にした。
「…………ふぅ」
悠樹は行ったようだ。私は一息つく。
体力が落ちているのがわかる。少し勉強を教えて話をしただけで疲労を感じているからだ。
それにしても………
「悠樹…」
やはり彼のことを考えてしまう。
彼を事を考えると色々ごちゃごちゃした感情が浮かんでくるがその中で一番は好きという感情だ。
屋上での一件は本当に感謝している。私を救ってくれたと言ってもいい。
それで恋愛感情が芽生えるのは自然だと思う。
私も普通に恋をするどこにでもいる女の子だ。
そんな自分の一面があったことが嬉しくもある。
今までそんな感情を抱いたことなどなかったからな。
だからあながち恭一にいったことも間違いではないと自分では思っている。
「乙女……か。自分で言って笑ってしまうな」
それをいうなら私は美樹なんじゃないかと思う。
あの子のそういう一面があると知ったとき驚くとともに可愛いと思ったっけな。
うん、美樹は乙女だ。私の中でそう認定した。
だったら私は呼ばれるとしたらなんだろうか?
美女?高嶺の花?才女?
まぁ呼び方なんてどうだっていいんだけど。
話がズレ過ぎたが、話を戻して悠樹のことだ。
「どうしようか……」
まず協力者が必要だ。一人だと無理だろうな。
と、すると誰だろうか。
「ん、ふわぁあ……ぁ……」
あくびが出てしまう。疲れたし少し休息を取るか。
また後で考えよう。ただし早急に決めて行動しなければならないが。
「さて昨日に引き続き今日もまたここにやってきたわけだが。
昨日の俺と違い今日の俺は一味違う。なにせ澪サンの加護を受けているからな。これで勝ったも同然だ」
毎日ここには来てるけどな、と心の中でツッコミをいれる。
日付は変わり昨日の明日。俺らはまた校門の前に居るわけだが。
「ねぇだったら早く行かない?私確認したいところあるんだけど」
美樹が昨日のノリをぶった切る。
「こういうのは勢いが大切だと思うんだがな。まぁ、行くか」
教室に向かった。
日ごろの勉強の賜物って言うにはおこがましいが一応やってきたし、澪先輩にも教えてもらったし今日はおそらく4人全員余裕だったんじゃないだろうかと手応えを俺は得た。
「いいか俺はやれば出来る子なんだ。やらないだけで。それが証明されたな」
既に学校を出て病院に着き、病室に向かっている最中恭一がふんぞり返る。
「だったら初めからちゃんとやれよ」
「必要に迫られればやるさ。ただ俺の全力は基本全て他の事に向けてるんでな」
ちっちゃい子とか妹にか…
「くだらないわね」
「他人からみればくだらないかもしれない。が、でも俺にとっては大事なことなんだ。よく言うだろ?たまたま好きになったのがそういう子達だったってだけさ」
「ちょうどここ病院だし、この際あんたも入院したら?」
今日の美樹は辛辣だな。
「それは遠慮しておくぜ。俺は至って正常なんでね」
「…ロリコンは病気です」
茉莉子がぼそっと言う。
「……ごめん茉莉子ちゃん。なんて言ったか俺には理解出来なかったんからもう一度頼む」
地味にダメージを受けている恭一が聞き返す。
「え?私何か言いました?多分変な電波を受信しちゃったかもなので気にしないでくださいね恭一さん」
「あ、あぁ……まぁ茉莉子ちゃんがそんな変なこと言うわけないもんな」
「メガネっ娘なめんな」
今度は美樹がわけのわからないことを言う。
「いや、お前メガネつけてないだろ…」
「何でかわからないけど言わなきゃいけない気がしたの。気にしないで」
変な二人だった。
「じゃあ私達はこれで。また何か会ったらさっき渡した紙に連絡をください」
どうやら先客がいたらしく今帰るところらしい。
廊下から体が半分見えていたが、話が終わり病室から出てきた。
「おや、君たちは佐久島さんのご学友かな?」
二人組みの男だ。
一人は恰幅のいい人当たりのよさそうな30歳後半くらいの男。
もうひとりは身長の高い25歳くらいだろうか?筋肉質で寡黙な雰囲気が漂っている。
「そうですけどあなた達は?」
多少警戒しながら俺が答える。
「そうですか。いやぁやっぱり若々しいねぇ。今を大事にしてくださいよ。
失われた過去は今はもう遠くってね。私達にも青春ってもんがあったなぁ。
あの時はまだ青かった。そんな年老いたやつらの話はお呼びでないって?これは失礼。
いぇね、私達は通りすがりなんで気にしないでくださいよ。では今しかない素晴らしい青春を過ごしてください」
そういうと二人組は帰っていった。
帰り際に背の高い男が礼をしていったが終止もう一人の方だけが喋っていたな。
「なんなの、あれ?」
美樹がそう漏らす。
「さぁな?ただの通りすがりってことはないんだろうが……」
恭一が二人が帰った後を見つめていた。
気になりつつも俺らは本来の目的を果たすべく澪先輩の病室にお邪魔することにした。
「ん?会ったのかお前達?」
「ええ、澪先輩の病室の前でバッタリと」
例の二人組みについて聞いてみた。
「気にするな。あれは…そう、父様の知り合いなんだ。意識が戻ったと知って、来れない母様や父様に代わって様子を見に来てくれたんだ」
「それにしちゃぁなんか変な雰囲気だったけどな」
恭一が口を挟む。
「色んな人がいるんだ。気にするなよ。ところで今日はどうだったんだ?」
そして今日の結果を報告し、明日の最終日に向けて俺ら澪先輩のご指導を受けることになった。
澪先輩の負担を考え昨日より早めに切り上げることにしたが。
「澪先輩ありがとうございます」
「うむ、最後まで気を抜くなよ?居眠り小僧」
「う……はい」
澪先輩がニヤニヤと笑う。
「3人は間違ってもそんな真似はしないだろうが気をつけろよ?」
「当ったり前だぜ」
「当然だわ」
「はい!」
「うん、いい返事だ。またな4人とも」
そして病院を背に明日の最終日に思いを馳せる。
「「「明日で終わりだぁ…」」」
万感の思いを込めて俺ら三人は呟く。
茉莉子だけはキョトンとしていたが、まぁ点数のいい奴にはわからないこともあるんだ。
その夜。
誰しもが寝ているであろう深夜。
一本の電話が届く。
「…………」
私は電話を取る。
「あの二人組みは何者?ただの知り合いってわけじゃないでしょ?」
「…いきなりのご挨拶だな。さぁな? というかこんな時間にかけてくるなんて常識知らずも大概にしろ。私は眠いしお前もさっさと寝たらどうだ?身体に良くないぞ?」
「うるさいわね。私が聞いてるのよ。ま、答える気はないんでしょうけど」
多少のイライラを含んでいる。
「わかってるんだったら聞かなくてもよかったんじゃないか?早く本題話したらどうだ?それを聞くために電話してきたわけじゃあるまい?」
「そうね。私言ったわよね?近づくなって」
「そうだな。で、それが?」
「…………」
「おいおい。私から近づいているわけじゃないだろうが?ま、近づかなかったら私からいくから関係は
ないが」
「…………ふふ。せっかく拾った命、捨てたいのね?もともと殺すつもりだったから別に構わないけど」
「捨てるつもりはないさ。今度はやられるつもりはない」
「そう?ま、どちらにしろあなたが私に物理的に手を出せるとは思えないわ」
「ま、それはそれ。とりあえず私は切るぞ、眠いし」
「……………………近づくだけならまだ許してあげたのに。好意を持つなど………許すはずがないわ」
「勝手に言っててくれ。だがお前のそれは違う気がするがな。じゃあな」
私は電話を切った。
まったく迷惑な奴だ。
それに病院の中だというのに携帯電話を使ってしまったではないか。
反省文だな。
それよりも早く退院出来るといいなあ。
などどのんきなことを考えてしまったが実際のところ強くそう私は思っている。
** あとがき ***
あれ、更新速度があまり上がってない………
どうも作者です。ちと休みの開放感に浮かれて遊びすぎました。
それもあるんですが一つの話を書いていると他の話のネタが思い浮かぶという現象に悩まされます。
とりあえず二つほど浮かんだんですが今日夢でなんか話になりそうな夢をみたんで三つ…いや二つで。
一つは皆さんお馴染みの童話をモチーフにしたやつと、なんかバトルものですかね。
個人的にはバトルもの書きてーって感じですけどまぁ難しいですよねww
その前に早くこれを完成させろって?はい、すいません(汗
明日も休みだし書いちゃうぜってところで次回話にて
説明 | ||
説明文考えてなかった(汗 とりあえず11話です!! |
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