私のことを、夢の中へと 第四話
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河南省開封市陳留県――――

 

総人口80万人の観光地として栄えている都市であり、俺と華琳が出会った場所でもある。

 

 

「そういえば風や稟と出会ったのもここだよな……」

 

 

あの時は、いきなり真名を呼んでしまい趙雲さんに斬られそうになったんだっけ……

 

三国同盟を記念した宴で趙雲さんにそのことをからかわれながら、

天の御使いと分かっていたなら篭絡しておけばよかったと言われた時の皆の反応を思い出す。

 

三羽烏なんてジト目で俺のこと睨んでいたからな……俺ってそんなに信用ないのかよ!

 

 

そんな思い出に浸りながら市街を見て回っても、あの世界の面影はなく別の世界であることを実感する。

 

 

それからも色々な場所を巡った。

 

黄巾党最後の地である青州――――

 

董卓軍との激戦を繰り広げた虎牢関と水関――――

 

正史とは違う終わりを迎える決め手となった赤壁の戦いの地とされる赤壁山――――

 

そのどれもがやはり別の世界であることを認識させられるばかりで……

 

でも、これで良かったと思っている自分がいる。

 

帰る手段も、ましてや夢だったのかさえわからないあの体験……

 

それにやっと区切りを付けることができると思っていた。

 

あの場所を見るまでは――――

 

 

 

 

『私のことを、夢の中へと 第四話』

 

 

 

 

中華人民共和国四川省の成都市から少し外れた森の中を走っている。

 

あるはずがないと思っていた……

 

都市化が進むこの中国で森なんてものが残っているはずがないと。

 

でも、眼前に存在する見知った光景、見知った匂い。

 

この道を抜けた先には――――

 

 

「この場所は……」

 

 

知っている。

 

この場所を知っている。

 

それは、寂しがり屋の少女と別れを交わしたあの小川だった――――

 

 

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荒げた息を整える。

 

自分の心に落ち着けと言い聞かせる。

 

少し考えればわかるはずだ。

似ている景色なんて山ほどある、そんなものに期待を持ってはいけない。

 

疲れた身体を休める為に、近くにある岩山に背を預ける。

 

 

「なに考えてるんだよ……」

 

 

自分の馬鹿さ加減に呆れながら下を見つめる。

 

 

「……琳?」

 

 

見つめた先には、張り付いた苔の隙間から岩に刻まれている文字がはみだしていた。

 

心臓が跳ねるような衝撃を覚える。

 

張り付いた苔を剥がす。指に擦り傷ができようと爪の間に苔が入ろうと構わず剥がす。

 

そこには――――

 

 

 

 

晨(あした)に上る散関の山

この道のけわしきことよ

晨に上る散関の山

この道のけわしきことよ

牛はたおれて起きず

車は谷間に堕ちぬ

盤石の上に巫して

五弦の琴をつまびかん

作り為すは清角の韻

意の中に迷い煩う

歌いて以て志を詠べん

晨に上る散関の山

 

いかなるおきなにおわしますや

ふと現われて我が傍らに立つ

いかなるおきなにおわしますや

ふと現われて我が傍らに立つ

袂をかかげ皮衣をはおり

つねの人にあらざるがごとし

我に謂う「きみなにゆえに

苦しみて自ら怨み

何を求めてさまよいつ

このあたりに到れるや」と

歌いて以て志を詠べん

いかなるおきなにおわしますや

 

「我は崑崙の山に居り

真人とひとは呼ぶ

我は崑崙の山に居り

真人とひとは呼ぶ

深き道理を究めんと

名山をめぐり観て

国のはてまで気ままに遊び

石に枕し 流れに漱ぎ 泉に飲みて

沈吟して決めざりしが

やがて高きみそらに上りぬ」

歌いて以て志を詠べん

我は崑崙の山に居り

 

去り去りて追いもならず

ひきとめんとて長く恨む

去り去りて追いもならず

ひきとめんとて長く恨む

夜ごと夜ごとに寐ねもやらず

くやみつつ自ら憐れむ

桓公正にしてあざむかず

うたいしものの依りて因る

駅より駅へ遠く馳せ

西の方より還るを思う

歌いて以て志を詠べん

去り去りて追いもならず

 

華琳

 

 

 

 

感情が溢れ出す。

岩に刻まれた一字一字から彼女の想いが流れ込む。

 

 

「あったんだ!……夢なんかじゃなかった!……俺はたしかにそこに居たんだ!」

 

 

言葉にならない声を発し、泣き叫ぶ。

 

だから、気づかなかった。

 

気づくことが出来なかった。後ろから迫る人の存在に――――

 

 

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『あとがき』

 

 

現代のお話は終わりませんでした。もう開き直るしかないです。

頑張ったんですけどね、頑張ったんですよ?

 

でも、仕方ないじゃないですか。終わらないんですから。

 

 

と寝違えてしまい首が痛いのでちょっとテンション高めになってしまいましたが、

あと1話で現代のお話は終わりますのでしばしご辛抱ください。

 

第四話で使っている詩についてですが、これは曹操が残した詩から引用したものです。

興味ある人は調べてみてください。

 

もっと、一刀と華琳を表現した詩があったはずなんですけど度忘れしちゃいまして……

知っている方がいたら教えてください!

 

 

それと小説について一番重要なことをお伝えしていませんでしたね。

 

まず、主人公である一刀の設定ですが、

剣術については原作に毛が生えた程度でまったく成長しておりません。

知識についても彼女達に適うほど能力は高くないつもりです。

 

現代の知識で活躍することがあるかも?程度だと思います。

 

また、オリジナルキャラクターについてですが、

三国志に登場した人物から出していくつもりです。

ただ、メインは一刀と華琳であるため、脇役か悪役程度になると思います。

もちろん、一刀と愛し合うなんてことはありません。

 

 

私個人としましては、主人公がもの凄く強いとか頭が良いとか、

オリジナルキャラクターが活躍するといったものが好きではないので……

 

単に考えるのがめんどく……なんでもないです。

 

 

あとは……お話の内容ですかね、

当初考えていた予定から全体の規模が3倍ほど膨れてしまいました。

これを文字に書き出すのは大変ですね……

 

考えれば考えるほど色々付け足してしまって……

 

 

愚痴もこれくらいにしてまた、『私のことを、夢の中へと 第五話』でお会いしましょう!

 

 

説明
『私のことを、夢の中へと 第三話』の続きです。

中国大陸にて一刀のお話になっております。

楽しんで頂けたら幸いです。
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コメント
こんなモノを発見してしまったらそれこそ諦めるなんて出来る訳ありませんものね・・・さてさて後ろの方は何する人ぞ?(深緑)
自分も凡人だからこそ一刀なんだと思います(aoirann)
限られた能力をいかに駆使して戦うか、というのは燃えますね(yosi)
タグ
真・恋姫無双 一刀 

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