恋姫†無双 『蒼天已死 黄天當立』 四
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一刀達が拠点を手に入れて結構な日にちが経過した頃、一刀は一人で何かを思案していた。

 

「んー・・・」

 

顎に手を当てて唸っている。

 

一刀が何かを考えるときは大抵、この体勢である。

 

「どうしたんだ?んなに、唸って?」

 

「ん?父さんか。いやぁ、最近、黄色が目障りだなぁって」

 

一刀が言った黄色とは最近、勢力を伸ばしてきている賊の一団。

 

名を黄巾党。

 

その数は5万とも10万とも言われている。

 

「目障りって・・・。んなこと言っても向こうのが数が多いから仕方ねぇっちゃ仕方ねぇぞ?」

 

「問題は数か・・・」

 

「いや、なんで戦うことが前提なんだよ」

 

「・・・・・・・・・なんとなく?」

 

さすがの攅刀もこれには呆れた。

 

「まさか、お前の口からんな言葉を聞くことになるとは」

 

長生きはしてみるもんだな、などと軽口を言っている。

 

「というか、実際問題、かなり目障りだよ?こっちが襲おうとした村が既に襲撃済みだなんて」

 

「あー、そんなことも何回かあったな」

 

攅刀は空を見て思い出しながら言った。

 

「・・・なぁ、一刀」

 

攅刀が呟くように言う。

 

「ん?」

 

「いっそ、黄巾党に入っちまえば?」

 

「へ?」

 

一刀には珍しく素っ頓狂な声を出していた。

 

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「というか、あれからそんなに日も経ってないのになんですぐに黄巾党の本隊と合流できるわけ?」

 

「いやぁ、偶然にも近くにいたらしいからな。そのまま、合流しちゃえと」

 

攅刀の言葉に一刀は呆れて何も言えなかった。

 

古城での攅刀の発言がきっかけとなり一刀達は黄巾党と合流することにした。

 

その時、街に武器の調整に行っていた龍盟と蘭花はこの決定を後で知らせれて怒り多量の酒を飲んでいた話は割愛させていただく。

 

「んで、龍盟と蘭花はまだ怒ってるの?」

 

「ん?俺はなんとなく怒ってただけだからなんでもないぞ」

 

龍盟は笑顔で返す。

 

「蘭花は?」

 

「別に怒ってない」

 

蘭花は顔を背けながら答える。

 

「怒ってるじゃん・・・・・・」

 

一刀はため息をつく。

 

「蘭花達が居ない間に決めたのは本当に悪いと思ってる。ごめん」

 

「その言葉は聞き飽きた」

 

一刀は同じ言葉を昨日から十数回、蘭花に言っている。

 

「じゃあ、どうしたらいいんだよ?」

 

「だから、怒ってないって!!」

 

そんな様子に一刀は最終奥義を使う。

 

一刀は蘭花の頭に手を乗せると優しく撫で始めた。

 

すると、蘭花は気持ちの良さそうな顔をする。

 

一刀が女性や子供の頭を撫でると相手はとても気持ちがよくなる。

 

子供は無邪気に喜んでくれる。

 

しかし、女性の場合は希に顔を赤くして潤んだ瞳になる人もいた。

 

故に一刀の手は他の男の憧れとなっていた。

 

一刀はそのことを未だに知らない。

 

「それであっちとはあとどんくらいで合流できんだ?」

 

話が一段落したところで攅刀が声をかける。

 

「もうすぐ、っていうかそろそろ見えてもおかしくはないんだけどなぁ」

 

一刀は辺りを見回す。

 

「もしかしてウソの情報だった、とか?」

 

蘭花が突拍子もないことを言い始めた。

 

「向こうにするだけの利益が見えないから、可能性は低いな。でもまぁ、ウソの情報だとしたら・・・」

 

「だとしたら?」

 

「そんな情報を持ってきた父さんにそれ相応の罰が必要かな?」

 

一刀はすごく気持ちの良い笑顔で言った。

 

それを聞き攅刀は頬が引き攣っていた。

 

「お、お前達っ!!早く黄巾党を見つけろっ!!つか、人を見かけたらそいつが黄巾党だっ!!」

 

「父さん、そんな必要はなくなったみたい」

 

一刀は正面を指さす。

 

そこには黄色が波のように押し寄せて来ていた。

 

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「待て!お前達は何者だ!!」

 

一刀・攅刀・龍盟・蘭花が4人で黄巾党の代表に会いに行こうとしていた。

 

「俺たちゃぁ、ここら一帯で賊稼業をやってるもんだ。お前達の頭に会いに来た」

 

「どういった用だ?」

 

「なぁに、俺たちも仲間にしてほしいだけだ」

 

「ちょっと待ってろ」

 

そう言うとそいつは近くの男に指示を出していた。

 

「ダメね、こいつら」

 

蘭花が呟く。

 

「ああ、指示されてからしか行動しない。俺たちだったら周りのヤツはすぐに動いてる」

 

「大きくなるってのも考え物ね」

 

一刀と蘭花が雑談しているとさっきの男が戻ってくる。

 

「付いてこい」

 

それだけ言うとその男は奥へと進み始めた。

 

一刀達もそれに続く。

 

歩いていくと蘭花が気持ち悪そうにしていた。

 

一刀が訊くと

 

「人に酔った。多すぎ。キモイ」

 

と最後には一刀が理解できない言葉を言っていた。

 

男は天幕の前で止まる。

 

「連れて参りました!」

 

「わかりました。通してください」

 

「はっ」

 

すると、男は入口の横に立った。

 

一刀達は天幕の中へと入っていった。

 

「「「「「あ」」」」」

 

入って第一声が“あ”だった。

 

「おう、嬢ちゃん達、久しぶりじゃねぇか」

 

「久しぶり〜、攅刀さん達は元気だった?」

 

一刀達を迎えたのは天和・地和・人和の三人だった。

 

「元気っちゃ、元気かな」

 

「そっか、一刀は?」

 

「ん?ああ、これといって何にもなく元気だよ」

 

一刀は笑顔で答える。

 

一刀は女性や子供に対しては基本的に笑顔で接すると決めている。

 

「ところで」

 

人和が切り出す。

 

「合流したいと言っている一団とは攅刀さん達なんですね?」

 

「ま、そうだな」

 

「どうして私たちと?」

 

人和は歳に合わない鋭い視線を向けてくる。

 

「君たちの一団がここら辺でたくさん暴れてるおかげでこっちが襲撃するとこが無くなってるんだよね。だから、黄巾党の頭に会って良い奴なら付いていく、馬鹿なら殺しちゃえと思ってね」

 

一刀の発言に三人とも緊張が走る。

 

「まぁ、君たちなら合格かな?」

 

そう言って一刀は攅刀を見る。

 

一刀達の賊の頭はあくまで攅刀なのだ。

 

「あー、そうだな。まぁ、大丈夫なんじゃねぇか?」

 

「それじゃあ、俺たちの頭の許可は下りたけど」

 

一刀は再び三人に視線を戻す。

 

「そっちはどうかな?」

 

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「・・・・・・一刀さん、あなたは賊なんですね?」

 

「うん、そうだよ」

 

一刀の答えに天和と地和は表情を硬くした。

 

「私たちは村を襲う気なんてありませんよ?」

 

「それでも構わないよ。俺たちだって襲いたくはない。だけど、襲わなければ明日がなかったんだよ。そして、道を外れたんだ。だから、君たちに俺たちは望みを託そう。俺たちの道標となってくれ」

 

一刀と攅刀、龍盟、蘭花は膝をついて家臣の礼をとる。

 

これに地和は慌て始めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!ちぃ達はただ、歌を歌いたいだけなんだよ!?それを道標になってなんて無理だよ!」

 

「それでは何故、歌を歌う?」

 

「そ、それは歌うのが楽しいから」

 

「何故、楽しい?」

 

「・・・・・・みんなが笑顔になってくれるから」

 

少しだけ照れながら地和は答える。

 

「なら、簡単だ。君たちの歌を歌うのを望めばいい。それはそのまま、俺たちの望みとなる」

 

「でもっ――」

 

と、地和は言葉を続けようとするが

 

「待って、ちーちゃん」

 

天和がそれを遮る。

 

「一刀さん、あなたは何を望みますか?」

 

天和の雰囲気に地和は黙るしかなかった。

 

「俺は自分自身の幸せを望みます」

 

一刀は笑顔で答える。

 

そして、2人の会話に誰も口を挟まない。

 

いや、挟めない。

 

「あなたの幸せは何ですか?」

 

「みんなが笑顔でいることです。その為ならどんなことでもする」

 

「では、もし、あなたの大切な人がそれぞれ別の場所で危険にさらされています。あなたはどうしますか?」

 

「片方には俺が。もう片方には蘭花――慶眞を出させます」

 

「では、もし、慶眞さんと攅刀さんが危険にあってるとしたら?」

 

「まず、そのような状況にはさせません。仮に危険になるとしてもその役は俺がします」

 

「では、攅刀さん達を傷つける人がいたら?」

 

「・・・・・・この世の地獄を見せる」

 

一刀に覚悟に地和と人和は気圧される。

 

「一刀さんは優しいんだね」

 

「自分だけにはね」

 

一刀と天和は笑い合う。

 

「分かったわ。一刀さん達と合流しましょう」

 

人和は微笑んでいた。

 

「こうなったら、何が何でも大陸一になってやるんだから!!」

 

地和は高らかに宣言をしていた。

 

「・・・なぁ、龍盟、蘭花」

 

攅刀が小声で話しかける。

 

龍盟と蘭花は攅刀を向く。

 

「俺って一応、頭だよなぁ。完全に無視されてる気がするんだけどよ」

 

龍盟と蘭花は何事も無かったかのように顔を前に向ける。

 

今回の一件でいじけた攅刀が全員に説得されていた話は割愛させていただく。

 

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一刀達の一団は無事に黄巾党の本隊に合流した。

 

そして、一刀、攅刀、龍盟、蘭花、天和、地和、人和は現状の把握を始める。

 

「まず、この本隊の人数は3万。食料に関してはあと、10日は保つわ」

 

「で、そいつらの鍛練なんかは?」

 

「現状では行われていないわ。出来る人がいないし、いたとしても彼らが鍛練を受け入れてくれるかどうか・・・・・・」

 

人和は首を横に振りながら答える。

 

「つまり、どこかの軍に当たれば数でゴリ押しになると?」

 

「ええ、私も兵法を少ししか知らないし詳しい者がいるわけでもないから」

 

「これからの行動については?」

 

「今のところは未定よ」

 

「そうか」

 

一刀は机に広げている地図を見ながら顎に手を当てる。

 

「まず、鍛練は行ってもらう。天和達の為に身を捧げられる奴だけ残れ、とか言って残った者にだけ鍛練すれば大丈夫だろう。次に今後の行動だけど、取り合えずここの刺史でも潰そうかなって」

 

「それだと数が減っちゃうじゃない」

 

「それは問題ないよ。彼らは一度でもその手を血で染めている。そんな人間はまともな方法で生きてはいけなくなる。まぁ、正義とか大儀のための行いなら戻れるかもしれないけど」

 

一刀の言葉に地和は黙る。

 

「ここの刺史を潰すってどういうことなの?」

 

「歌を歌うにしても場所を準備したりして費用がかかるでしょ?その資金と食料を暴政を行ってる刺史から奪うんだよ」

 

「そんなことが可能なの?いくらこちらの人数が三万と言っても相手は軍よ?」

 

「大丈夫。正面からやる訳じゃないから」

 

人和が心配するのを見て一刀は笑顔で答える。

 

その笑顔に人和は一瞬だけ惚ける。

 

そして、一刀の発案で刺史から物資を奪うことが決定された。

 

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「後、俺たちはそれぞれ天和達の親衛隊を行うから」

 

「親衛隊?」

 

地和が聞き返す。

 

「そ、今の黄巾党じゃ天和達が危ないから百人ずつ親衛隊を就ける。俺が『張角親衛隊』、昏酋が『張宝親衛隊』、慶眞が『張梁親衛隊』を務める。異論は?」

 

「何で姉さんの隊を一刀が!!」

 

「黄巾党の頭役の天和が一番、危険だろ?」

 

「だから、何よ!?」

 

「いや、だから、危険な役は俺がやるって」

 

一刀は尚も文句を言おうとする地和に微笑む。

 

地和はめずらしく頬を朱く染めていた。

 

「一刀さん」

 

人和から声を掛けられる。

 

「ん?どうした?」

 

「私たちが黄巾党を率いてたことについて訊かないんですか?」

 

「あー、うん」

 

「どうしてですか?」

 

人和は探るような視線を一刀に向ける。

 

「こんなご時世だし誰がどんなことをしていてもおかしくはないでしょ。それに俺も人のことを言えるような立場じゃないし」

 

一刀は苦笑した。

 

そんなことを言われては人和も何も言えなくなった。

 

「分かりました。これ以上は訊きません」

 

人和はそのまま立ち去った。

 

その態度に一刀は更に苦笑する。

 

そして、彼らの行動は混沌をより深めていくものだった。

 

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『懺悔室』

 

言い訳です・・・

 

最初は黄巾党とのVSも考えてたんですけど

 

どうもしっくり来るものがなくて・・・

 

こんなに単純に合流しちゃいました(本当は作者が戦闘シーンが苦手なだけ)

 

ん?今、本音が聞こえた気が・・・

 

取りあえず、一刀達と天和達が合流しました。

 

これからはちょくちょく戦闘シーンが出てきます(苦手だけども)

 

がんばるので見捨てないでくれるとありがたいです・・・

 

 

それではここまで見て下さった皆様に多大なる感謝を!!

 

 

説明
黄巾党とどうやって合流するのか考えたんですけど・・・

良い案が思いつかずにこうなりました。

では、ご覧下さい↓
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コメント
根黒宅さん ですね。案外、近いです(イタズラ小僧)
ふむ、つまり割とすぐに一刀vs恋の闘いをみれるってことか(根黒宅)
hokuhin 一刀ならやってくれるハズです!!・・・たぶん(イタズラ小僧)
天和達に合流して、黄巾党強化しましたか・・・問題は華琳達が来るまでに間に合うかな?(hokuhin)
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恋姫†無双 黄巾党 蒼天已死 一刀 

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