ドラゴン由香里
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 私の名前はドラゴン由香里。16歳。乙女だ。

 生まれつき右手が不自由な私は友達が1人もいない。高校に入ったからには私だって友達が欲しい。

 そこで学園祭というわけである。

 ここで一発デカイことかませば有名になれるだろう。そして、有名人はモテる。つまり、友達百人、というわけだ。

 そして、学園祭で一番目立つイベントといったらバンドだ。

 なので私は決心した。この夏、私はバンドをやるのだ!

 しかし、グーグル先生にバンドについて聞いてみたら、驚愕の事実が浮き彫りになった。バンドとは、つまり、1人ではできないのだ。友達をつくるためにバンドをやるのに、バンドをやる友達がいない。

 ああ、神よ! 私はこの試練に打ち勝てるのだろうか!

 

 そうして私は、ギターを買った。

 バンドはどうやらできないらしいが、弾き語りならなんとかなりそうだったのだ。

 しかし、またしても驚愕の事実が私を打ちのめす。

 不自由な右手では、とてもギターなど引けそうにないのだった。

 神よ! 私は絶望した!!

 そうして私は楽器を諦め、ただ歌を歌うことにした。清らかな乙女の歌である。これはウケるに違いない。

 屋上はいつも私の練習用のステージになった。

 そうして幾日かたったころ、屋上に訪問者が現れた。

 見知らぬ男の子だった。

「あの……ドラゴン、さん? 毎日なにやってるの?」

 遠慮がちに尋ねてくる男の子。これは早くも春の到来だろうか。夏なのに、春。私の青春は、今まさに冬眠から目覚めたようだ。

「あの……毎日一生懸命何かやってるとこ悪いんだけど、屋上って立ち入り禁止なんだよね……」

 ぬか喜び! 自意識が過剰だった! 人生そんなに甘くなかった!

 生徒会の役員だという男の子に叱られ、仕方なく屋上を後にする私。もうこれで練習する場所がなくなってしまった。

 しかし、私は思いつく。

 もう十分なのではないかと。もう精一杯がんばったのではないか、と。

 引っ込み思案な私がここまでやったのだ、もう十分だろう。

 そう、歌の練習はもうこれで十分だ。あとは本番に臨むだけ。

 あの男の子はそう思って、私の過剰な練習による体力の損耗を防いでくれたのだろう。なんていい人!

 

 そして本番の日はやってきた。

 私が体育館のステージに登場するなり、観客がどよめく。

「ドラゴンだ……」「なんでドラゴンが……」「あれって……ドラゴン?」

 悲鳴のようなざわめき。

 これが温まった舞台という奴なのだろうか。なるほど、心地よい緊張感だ。やれる。私はやれる。誰よりも上手く!

 熱唱だった。

 魂を振るわせるような、熱いステージだった。

 世界はまさに、私を中心にまわっていた。

 

 しかし、私に友達ができることはなかった。

 やはり、この右腕のドラゴンの爪がいけないのだろうか。

 しかし、私は諦めない。

 きっとどこかに、私の友達はいるはずだから。

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もしも生まれ変わっても また私にうまれたい
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