ぽつりぽつり |
雨がふる。ぽつぽつと。雨のあたらない屋根の下から手をそっとさしだす。ぽつりと時折掌に小さな雨粒があたる。この程度なら大丈夫だろうと歩きだす。
雨がふる。ざーざーと。流石にこの雨のなかを歩いたらすぐに髪も服もびしょ濡れになる。とりあえず木の下で雨宿り。根っこの上に座って灰色の雲がおおう空を眺めて一つ溜め息。サルファは足元の乾いた地面で丸くなっている。
雨がふる。相変らずざーざーと。横を向く。少し濡れた長い髪はおでこや頬、服にはりついている。腕を組んでじっと空を睨みつけている。話しかけたいのだけれども何を話したらいいものかと考えながら、いつのまにか抱え上げたサルファの前足をふにふにとしていた。
自分が木の下に避難してすぐに金色の長い髪がすっかりたれさがってしまった彼が走ってきた。僕のことを見て口をあけたがすぐにきゅっとへのじにとじてしまった。
二つ目の溜息をつきながらはやくやまないものかなと空をうかがう。
「暫くやみそうもないな。」
「…ん?、あぁ、そうだね。」
ぼそりと話しかけられて一瞬なにを言われたかわからなかったが返事をする。
天気の話、授業の話、調合の話…いわゆるあたりさわりのない会話を途切れがちになりながらもぽつりぽつりとお互いに話す。
二人並んで座る。ロクシスのマナはヴェインの膝の上に顎と前足をのせてくつろいでいる。サルファはここは自分の場所だと主張するかのようにヴェインの膝の上で丸くならずに伸びている。
ロクシスはそれを見て呆れたように目を細める。
「邪魔ならどけてくれて構わないよ。」
「え、いや。別に大丈夫だよ。」
マナはちらとロクシスの方を見たがすぐに目をとじると鼻をならした。
「いつまでふり続けるのか分らないし…濡れるのを覚悟して寮まで走るか。」
「うーん、そうだね。」
『そんなに忙ぐ必要もないじゃろう。いずれやむ。ゆっくり話でもしてればよかろうに。』
『濡れるのは嫌だぞ。』
ロクシスのマナもサルファも膝の上でくつろいだまま動こうとしなかった。そのためお互いまた話はじめる。ありきたりの話題はとっくにつきてしまったため自分のことなどをぽつりぽつりと話はじめた。
説明 | ||
マナケミアのロクシスとヴェインがまだそれ程打ち解けていない頃の話です。 | ||
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