真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第五十一話
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 「ちょっと!一体どういうことなわけ?!」

 

 「……どうもこうもないわよ。仲達さまのご命令なんだから、しょうがないでしょう」

 

 「だからって、ただでさえ少ない戦力を、さらに分散して当たれだなんて」

 

 許の玉座の間。

 

 五神将の一人で、第五席である情報処理担当の禰衡に対し、同じく五神将の第二席を冠する貂蝉が、すさまじい勢いでつかみかかっていた。

 

 「……漢中、徐州、そしてここ許。それぞれに五万づつを配し、北上してくるであろう、三国同盟軍を迎え撃て、か」

 

 「それに、あたしら五神将も、メンテ中で動けない籍を除いた四人で、別々にやつらの相手をしろって、仲達さまはおっしゃっているわ」

 

 真の主である仲達からの命令を受け取った禰衡が、この場にいない五神将筆頭の項羽以外の者に、その内容を伝えていた。

 

 「……何をお考えなのかしらね、仲達さまは」

 

 その手に琴を抱いた、五神将第三席の蔡?が、自分たちの生みの親である仲達の考えを図りきれず、眉をひそめる。

 

 「……私はいつも言っている筈だぞ、蔡?。私たちは、仲達さまのお考えを理解する、その必要はないと。命じられたことを、ただ実行してさえいればいいとな」

 

 「……”人形”の私たちには、そのほうが似合いだと?」

 

 「……そういう事だ」

 

 五神将の第四席・祝融の言に、目を細めて蔡?が問い、それに何の迷いもなく答える祝融。

 

 「……祝融の言うとおりね。私たちは仲達さまの御為だけに存在する、ただの”道具”に過ぎないのだから。……今この場にいない、籍もね」

 

 「そうね。……それじゃ、だれがどこに行く?」

 

 「徐州には私が行く」

 

 「なら、漢中には私が行きましょ」

 

 貂蝉に、それぞれ答える祝融と蔡?。

 

 「……なら、許には私と禰衡が残ると。それで良いのね?」

 

 コクリ、と。それぞれにうなずく、禰衡、蔡?、そして貂蝉の三人。

 

 「……呼廚泉のおっさんは?」

 

 「都に戻ったわ。……自分の役目は、帝を守ることだと言ってね」

 

 「あっそ」

 

 「じゃ、動くとしますか」

 

 「ええ。……仲達さまのために」

 

 『仲達さまのために』

 

 こうして、その日のうちに、漢中と徐州、それぞれに向けて五万づつの晋軍が出発した。

 

 そして、その知らせは襄陽の一刀たちの下にも、すぐさま届けられた。

 

 

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 「わざわざ戦力を分散してくれるなんてね」

 

 「私たち、遊ばれているのかな?」

 

 晋軍が戦力を分けて、漢中と徐州に動いたという報告を聞いた曹操と劉備は、そう反応を示した。

 

 「……」

 

 「どうしたの、一刀?」

 

 先の二人とほぼ同様の反応をしている一同の中。ただ一人一刀だけが、腕を組んだまま思案にふけっていることに、孫策が気づいて声をかける。

 

 「……なあ、貂蝉。あんたさっき、仲達は虎豹騎の兵たちを、”兵器”として売っていたって、そう言ったよな」

 

 「ええ」

 

 「あと、あんたたち、じ、時空……管理局、だっけ?そこの連中は、好きなようにいろんな世界を見れるんだよな?」

 

 筋肉だるま−もとい、漢女の貂蝉に、突然そんなことを問う一刀。

 

 「そうよん。まあ、ある程度は規制があるけどね」

 

 「ならさ、その管理局とか言う組織以外でも、この世界を覗くことが出来るんじゃないか?……非合法だとしても、さ」

 

 「それは、まあ。……可能性は零では、無いけど」

 

 「……もしかしたら、仲達の狙いはそこにあるのかも知れないな」

 

 「!!……まさか、密売相手のための、デモンストレーション?」

 

 一刀から発せられた、思ってもいなかった言葉に、貂蝉は驚愕の表情を浮かべる。

 

 「その、でもんすとれーしょん、って言葉は解らないですけど、会話の流れから察するに、宣伝行為とか、そんな感じですか?」

 

 珍しく、長い台詞を噛まずに、一気に言い切って諸葛亮が問う。

 

 「大体、そんな意味だと思ってもらって良いわ。……そうね。ご主人様の言うとおりだとすれば、いくらか辻褄が合ってくるわね」

 

 「……つまり、虎豹騎の”兵器”としての有意性を、その商売相手に見せるために、この世界を宣伝の場として、選んだと?」

 

 「そう考えると、仲達がこれまで、色々と裏で動いてしてきたことに、戦乱を長引かせてきた事に、説明がつくんだ」

 

 「戦いが長引けば長引くほど、宣伝の場と機会が増えるものね」

 

 もし、仲達の目的が本当にそうであるなら、これほど自分たちを馬鹿にしたことは無い。

 

 一刀たちの心に、徐々に怒りの感情がわきあがってくる。生命を”物”としか見ておらず、そして、自分たちをその実験台ぐらいにしか思っていない、諸悪の根源である仲達に。

  

 

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 「もちろん、現状ではすべて推測に過ぎない。もっと最初、それこそ黄巾の乱が起きていたころには、虎豹騎はまだ、その姿を現していなかったしな」

 

 「……そういえば、あの時変なやつがいたよね?一刀のことを、”この世界の北郷一刀”なんてよんで」

 

 何年か前の、黄巾討伐の折の事を思い出す劉備。

 

 「……つまり、他の世界を知るやつが、あの時から動いていた、と?」

 

 「あいつも、仲達の一味だったのかな?」

 

 「それは解んないわね。向こうの構成員がどれほどいるのか、私にも把握出来ていないしね」

 

 「結局、真実を知るためには、やつらから直接、話を聞くしかないってわけだ」

 

 ん、と。一刀にうなずいて見せる一同。

 

 「けど一刀?兵数は確かに分散したことで減っているけど、本当に問題なのは五神将の連中よ?あの化け物たち、どうやって倒すと?」

 

 「……一人ぐらいなら、俺が何とか出来るかもしれない。”こいつ”の封印さえ解けば」

 

 曹操の質問に対し、自身の腰に掛かっている靖王伝家に手をやり、そうつぶやく一刀。

 

 「封印……?」

 

 「ああ。こいつはさ、今は、その本来の姿ではないんだ。その威力があまりにも強力すぎて、封印せざるを得無かったんだ。……師匠から、そう言われた」

 

 「一刀のお師匠さんねえ。……名前は?なんて言うの?」

 

 「知らない」

 

 「へ?」

 

 「結局一度も名乗らなかったからなあ。……問いただすような、そんな余裕も当時は無かったし。……生き続けるだけで精一杯だったからな、俺は」

 

 懐かしそうに、しんみりとする一刀を、

 

 (……どんな修行をしてたのやら)

 

 と、そんな風に思いながら見る、曹操たちであった。

 

 「それはともかく、今なら、こいつを”本来の姿”で扱える自信はある。その為の修行も、毎日続けてきたしね。ただ、他の二箇所にいる連中までとなると」

 

 「……一刀。お前、大切なことを忘れていないか?」

 

 「え?」

 

 沈痛な面持ちになっていた一刀に、華雄が一歩歩み出て、その瞳をまっすぐに見据える。

 

 「私たちがそんなに、当てにならないか?ともに戦ってきた、私や愛紗、鈴々に星、紫苑や他のみなが」

 

 「いや、そんなことは」

 

 「ならばもっと、私たちを信じてください、義兄上」

 

 「鈴々だって、今度は絶対に負けないのだ!!」

 

 「私とて、それなりに修行は積んでおりますぞ、主?」

 

 ずい、と。

 

 華雄に並んで、一刀に微笑む関羽たち。

 

 

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 「そう、だね。おれが、みんなをもっと、信じなきゃ、だな」

 

 「そー言うことよ、一刀。ってことで、徐州の方はあたしらに任せてもらうわ。いいね、雪蓮、蓮華、冥琳」

 

 『はい、母様(文台様)』

 

 一刀に微笑みながら、娘たちに孫堅が問い、それに孫策たちがこちらも満面の笑顔で答える。

 

 「漢中は、私がいくね」

 

 「……良いのか、桃香」

 

 「うん。確かに、武ではみんなより遥かに劣るけど、あたしだって、それなりに用兵を心得てることは、一刀だってよく知ってるでしょ?」

 

 にっこり、と。笑顔で一刀に語りかける劉備。

 

 「……わかった。愛紗、鈴々、蒼華。君たちは桃香についてやってくれ。……みんな、無事で」

 

 『御意(なのだ)!!』

 

 「なら、許へは私が、一刀と同行するって事で良いのかしら?」

 

 一刀に曹操が問いかける。

 

 「いや。華琳は後発に回ってほしい』

 

 「……なぜ?」

 

 「春蘭たちはどうするのさ。それに、魏軍の兵達も、暫くは動けないだろ?」

 

 「それは……。はあ〜、わかったわよ。なら、春蘭たちが回復次第、あなたの後を追うわ。それでいいのね?」

 

 不承不承、一刀の支持に従う曹操。

 

 「うん。……美羽、七乃さん、それと、袁紹さん達。……やれますか?」

 

 「任せておくのじゃ、一刀兄!のう、七乃?」

 

 「はい〜。ばっちり、頑張らせてもらいますよ〜」

 

 「おーっほっほっほっほ!この私がいれば、百、いえ、万人力でしてよ!」

 

 「いいね〜、姫のその根拠の無い自信」

 

 「……文ちゃん、もちょっと歯に衣着せようよ〜」

 

 高笑いの袁紹・袁術の従姉妹コンビと、緊張感のなさげなその部下達。

 

 「……これで本当に、大丈夫なの?一刀」

 

 「……ははは。……ちょっとだけ、不安かも」

 

 

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 晋と三国同盟が、それぞれに決戦の準備にいそしむころ。

 

 とある場所にて。

 

 ぼこっ。ぼこぼこっ。

 

 何かしらの液体が入った透明な筒から聞こえる、その音。

 

 その筒の中には、一糸まとわぬ姿の、一人の女性。

 

 「……ふむ。さすがはボクの最高傑作。ロールアウトから一年。これだけ安定した状態を保てているとはね。……まったく、ボクってほんと、天才だよねえ。あははは」

 

 不思議なことに、筒の正面の空中に文字と数字が浮かんで羅列されており、それを見た男が、一人満足そうに笑う。

 

 「刷り込んだ記憶も安定しているみたいだし。くくく。……君は今、どんな夢を見ているのかな?」

 

 そう言いつつ、筒の中の女性を見上げる男。

 

 筒の中の女性は微動だにしない。ときおり、その閉じたまぶたが、ピクリと動くのみである。

 

 「次に目が覚めたとき、君が最初に見るのは誰の顔だろうねぇ。ボクか、姉妹達の誰かか。それとも……?クク、クハハハハハハハ!!」

 

 闇の中に響き渡る、狂気とも取れる、その笑い声。

 

 その声が響く中、筒の中の彼女が見るのは、いかなる夢か。

 

 彼女はただ眠り続ける。

 

 幼子の如く、今ひと時、その安らぎの中に。

 

 

                                  〜続く〜

 

説明
晋との決戦を決意した一刀。

その晋でも、戦いに向けて五神将たちが動き出す。

大戦の前のそのひと時、両者は何を思うのか。

では、ご覧ください。

・・・ちょっと短いですが^^。
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コメント
とりあえず、キャラの呼び方変えるの止めようぜい。 あと、管理者チート過ぎ 左慈や于吉もここまで強くないよ?(多重分岐)
死の商人なのかマッドなのか、刷り込んだ記憶とやらも気になりますし、どちらにしても厄介な相手ですね。次回から各方面での戦闘のようですので各々の奮戦に期待ですね^^(深緑)
マッドサイエンティストここに極まれり…ってとこですねw(ちくわの神)
はたして五神将に恋姫たちの力が何処まで通じるのか、楽しみです。(hokuhin)
くぅっ!ドタバタ系がないとコメントできない自分が嘆かわしいです! まぁなにはともあれ、各地で一刀以外の将は五神将相手にどう戦っていくのか・・・次話楽しみにしてます。(よーぜふ)
紫電さま、まずは各方面での戦いの様子から入ります。最初はどこでしょうかね?おたのしみに^^。(狭乃 狼)
はりまえさま、戦闘力は変化しないですよw 世界観については、ま〜その、とりあえずスルーの方向で・・・え?駄目?(狭乃 狼)
ZEROさま、ですから、メンテ中のあの娘ですってば。五神将の。(狭乃 狼)
封印解いたら一刀君も超野菜人並の戦闘力に早変わりという都合のういい話はないだろうな。何か世界観どんどん科学じみてきたような・・・・・(黄昏☆ハリマエ)
最後に出てきたのは何でしょう? それが何を引き起こすのか楽しみですね。(ZERO&ファルサ)
瓜月さま、メンテ中のあの娘ですよwwさて、眠り姫が目覚めて踊るその相手は?(狭乃 狼)
村主さま、はい、次回からいよいよ戦いが始まりますです。・・・難産は確定でしょうがorz(狭乃 狼)
それにしても程良い狂いっぷりと申しましょうか、まさにマッドサイエンティストの鑑かと>仲達 いよいよリベンジですな、五神将とどの様に対峙するのか、次回も楽しみにしております(村主7)
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