バカと優等生と最初の一歩 第三問 |
バカテスト 英語
【第三問】
問 以下のことわざを日本語に直し、意味を答えよ
Time flies like an allow.
坂本雄二の答え
『訳 光陰矢のごとし
意味 月日が経つのは早いものである』
教師のコメント
正解です。ことわざは直訳とは違うので注意が必要ですが良く覚えていましたね
吉井明久の答え
『訳 時は飛んでいる矢が好き』
教師のコメント
間違いですが、単語毎の訳が出てきただけでもがんばったほうだと思います。
土屋康太の答え
『意味 盗撮する時間が過ぎるのは早いものだ』
教師のコメント
後の部分が大体あってる分最初の言葉が残念でなりません。とりあえず後で職員室へ来るように。
明久視点
突然修羅と化したFFF団から何とか逃げおおせた翌日、雄二からAクラスとの試召戦争があることを聞かされた
「あ〜、というわけで。このHRが終わり次第Aクラスとの模擬試召戦争、通称『吉井明久争奪戦』が行われる」
『『『吉井明久、殺す』』』
そして僕に刺さる無数の殺気がこもった視線。
「ちょっ、何それ!? ボク何も聞いてないんだけど!? え、僕いったい何奪われるの!?」
「まあ、主に命とか自由とかだな」
「……それは負けた場合?」
「勝っても負けてもだな」
最悪だ。一体どこで選択肢を間違えたんだろう。と言うか今回に限ってはそもそも選択肢がなく強制的にこのルートに入った気がしなくもないけど。確認しようにも現実にはセーブ&ロード機能がないからどうしようもないし。
僕が理不尽な現実に打ちひしがれていると秀吉がポンッと肩を叩いてきた。
「毎度毎度、おぬしも難儀じゃの」
「と言うか、なんで姫路さんと美波と秀吉のお姉さんの喧嘩に僕が巻き込まれなくちゃなんないのさ」
「……それが分からぬからこの状況になっておると思うのじゃが」
「……鈍感」
えっ、なんで? 今回僕関係ないよね、その場に居合わせてなかったんだし。なんで鈍感とか言われてるんだ?
「おいそこのバカ三人、とりあえずこっちの話を聞け。まず最初に言っておくが、今回の試召戦争ではおれは指揮するつもりはない」
そう断言する雄二。その言葉に教室中がざわめく。
「どうしたのさ雄二、前はあんなに学力だけがすべてじゃないことを証明して見せるって言ってたのに」
そう、こいつは試召戦争をしたいというだけでこの学園に来たはずだ。それが戦争直前になってこんなことを言うなんて。
「分からないか、明久。だったらそこを見ろ」
雄二が教室の一角を指差す。そこには……。
「うん、秀吉がいるね。いつも可愛いよ秀吉」
「か、可愛いとか言うでない。照れるではないか……」
「そこじゃねぇ!! いい加減現実を見ろ、明久っ!!」
キレ気味に叫ぶ雄二。仕方ないな、クラス全員が見ないようにしてたけど。そこまで言うなら見てやろうじゃないか。改めて雄二の示した場所へ眼をやると、
『ふふ、ふふふ、うふふふふふっ』
『あはははははっ』
虚ろな瞳で笑い続けている二人の姿があった。普段だったら男だらけのFクラスの清涼剤になってくれる二人だが、今は恐怖しか感じない。近いもので言えば僕が秀吉と遊んでいるとき二人が偶になる状態がそうだけど、感じる怖さは比較にならない。そばで雄二の腕輪で(強制的に)召喚させた召喚獣が同じような目で武器を砥いでいるのが一層恐怖を煽る。と言うか、あの砥石はどこから出したんだろう。
「分かっただろう、俺はあれを率いるつもりはない。負けた時が怖いからな」
堂々と男らしくないことを宣言する雄二。まあでも気持ちはわかる。さすがに今の二人に近付きたくない。一体何が二人をあそこまで変えてしまったんだろう。
「というわけで、俺は明久、秀吉、ムッツリーニを率いて遊撃隊に回る。で、他の男子はA、Bの二班に分かれろ。で、A班は姫路、B班は島田が率いろ」
『待て、坂本っ!!』
『さすがにそれは酷というものだろう!!』
『貴様、俺たちを見捨てるというのか!!』
『たとえどんな姿になっても姫路さんと一緒なら俺はっ、俺はっ!!』
雄二の編成に次々と出る不満。Fクラスの猛者達と言えども今の二人は無理か。一人頑張っているのはいつも姫路さんにラブコールを送っている誰かと思うが、そいつも今回はさすがにアウトかな。
「おいお前ら、少し落ち着け」
そう言って雄二は教卓を思いっきり叩いた。多分大きい音を出して注意を引きたかったんだと思うけど……
バキッ
雄二に叩かれた教卓は音を立てて崩れ落ちた。
バカだなぁ雄二、Fクラスの備品にそんな耐久力あるわけないじゃないか。まあ、静かになったといえばなったからいいのかな。
「いいかお前らよく聞け。さっきの説明では省いたが今回の模擬試召戦争、実質的には明久争奪戦だが、表向きには相手クラスの代表を倒したものに命令権が与えられる。つまりっ!!」
『『『つまり?』』』
「お前らが翔子を倒せば、好きなやつをデートに誘うことだってできるんだ」
『『『なんだって―――!?』』』
『ということは俺が霧島さんと映画に行っても?』
「構わん」
『おれに工藤さんの手作りのお弁当であ〜んなんてイベント発生も?』
「あるかもしれん」
『じゃあじゃあ、木下優子さんに罵倒されることも?』
「……お前がそれでいいなら」
『『『ふぉおおおおっ!!』』』
……さすがFクラス。ガタ落ちだったテンションも女の子とのデートと聞いて一気に最高潮だ。
「珍しいの明久、お主はあの集団に加わらんのか」
「やだなぁ、秀吉。僕は秀吉一筋だよ」
「……またお主は平然とそういうことを……」
ああ、赤くなってる秀吉も可愛いなぁ。ムッツリーニが写真に収めたくなる気持ちもわかるよ。後でそれ、ダースで買うからね。
まぁ、それを除いても、僕はみんなみたいに騒ぐ気にはなれないね。もちろん誘われれば断るなんて無粋なことはしないけど、みんなみたいに自分からどうこうしようとは思わないね。僕は紳士だからね。決して僕の関節が増えることを心配したのではない。だから今日の美波と姫路さんでは普段以上に悲惨な目にあわされるかもしれないなんて心配もしていない。
「お前らっ、気になるあの子とデートをしたいか―――っ!?」
『『『当然じゃあーーーっ!!』』』
「だったらお前らに言うことはただ一つ、今日こそAクラスを潰すぞっ!!」
『『『っしゃあああああっ!!』』』
優子視点
「というわけで、Fクラスから模擬試召戦争の申し入れがあったわ」
吉井君を誘うためにFクラスを訪れた翌日、アタシはみんなに今日の試召戦争のことを告げた。まあ、ほんとは向こうからってわけでもないんだけど。さすがに吉井君と如月ハイランドに行くために試召戦争起こしましたとは言えないしね。
「普通にやってFクラスに負けることはまずないわ。だからこそ向こうは普通にはやってこない。絶対に何か仕掛けてくる」
「だったらどうするの? 防御に徹する? あんまりボクそういうのは得意じゃないけど」
愛子の質問に答えたのはアタシの隣に座っている代表。
「……私たちがすることは一つ、何かする時間を与えないよう一気に攻める」
相手の策が分からない以上、防戦するだけでは心もとない。完全に防ぎきれるとは限らないからだ。だから今回取る作戦は、策が防ぎきれないかもしれないならその策を行わせなければいい、というものだ。
詳細を説明するために正面のディスプレイに校舎の見取り図を表示する。
「今回の作戦だけど、肝心なのは渡り廊下の確保。ここを手に入れればこちらに攻め入る通路はほかにないわ。さらに階段からFクラスの背後にまわり二方向から攻め入ることができる」
「逆にそこを取られた場合、Aクラスになだれ込まれてしまうということだね」
「そういうこと。特に注意すべきなのは姫路瑞希さんと土屋康太君。点数的にほかのメンバーが来ても問題にはならないけど、この二人に乗りこまれると相当厳しい戦いになるわ。だから何としてでもここの階段までは制圧するわよ」
「……私たちは負けるわけにはいかない。皆、頑張って」
『『『おぉ―――っ!!』』』
代表の激励に皆が応えて声を張り上げる。
こっちの士気は十分のようね。アタシも吉井君とのデートのために頑張らないと。
そしてアタシ以上にやる気を見せているのが一人。
「待っててくれ、吉井君。今迎に行くからね!!」
「……」
こいつだけには絶対負けるわけにはいかない!!
明久視点
キーンコーンカーンコーン
HR終了の鐘が鳴った。ついに試召戦争の始まりだ。
「行くぞお前ら、つっこめぇえええっ」
『『『ウォオオオオオッ!!』』』
雄二の号令のもと、Fクラスの面々は教室を飛び出していった。
「ねぇ雄二。Aクラスに無策で突っ込んで行って勝てるの?」
「別に無策ってわけじゃあないさ、まあ見てろ」
自信満々に答える雄二。こいつがこういうなら一気に蹴散らされるということはないのだろう。じゃあ、しばらくはここで待機してどうなるか見物してようかな。
『総員、Aクラスの奴らにFクラスの意地を見せてやれっ』
『なんだぁ、Fクラスの奴らが突っ込んでくるんだが』
『Fクラス、覚悟っ』
『ちょっ、反対からAクラスも突っ込んできてるんですけどっ!』
『お前ら、こんなとこで戦争するんじゃねぇよっ』
『くっ、人が多すぎてFクラスまで行けない……。あなたたち邪魔よ、どきなさい!』
しばらくすると廊下から怒声が聞こえてきた。でもこれって、他のクラスの人のも混ざってる気がするけど……。
「これが策の一つ目だ。この時間、しかも今週C・D・Eクラスは移動教室だ。そのうちC・Dクラスの奴らが他の階に行こうとすれば必然的に渡り廊下を使うことになる。今回はちょうどEクラスの奴らもかかってくれたようだな」
「なるほどのう、Dクラス戦の時のように他のクラスの者を隠れ蓑に使うわけじゃな?」
「……こういう状況は得意」
「そういうことだ。そしてもう一つ、こっちは策と言うほどのものでもないが――」
『ふふふっ、私の邪魔はさせませんよ?』
『ウチの前に立つってことがどういうことか、わかってんでしょうねっ!!』
『ひぃいいっ。な、なんだこいつら!?』
『ちょっと、あんなのがいるなんて聞いてない!!』
『マジ怖ぇ!! あんなのと戦えるかっ!!』
「――あの二人と対面して戦意を保てる奴はそういない」
酷い言い草だが確かにその通りなので何も言い返せない。
「じゃあワシらの仕事はないのかのう?」
「いや、そうでもない。今こちらが優勢なのは向こうがこの事態に対処しきれていないからだ。直に点数の差で押され始めるだろう」
「それじゃあ駄目じゃんっ!」
ちょっ、雄二、何平然としてるのさ!? だったら早く何か手を打たないと。
「慌てるな明久、何のためにお前たちを残したと思っている。いいか、クラス同士が正面からぶつかり合った場合、俺たちに勝ち目はねぇ。点数差があまりにも大きいからだ。だから俺たちは正面からぶつからねぇ。機を見て翔子に奇襲をかける」
「……まだそのときじゃない?」
「ああ、もうすぐその時が来るはずだ」
「じゃが、それまでもつかの?」
「そうだよ雄二、いくら姫路さんがいるからって、そんなに――」
長くもたないんじゃない、と言おうとしたところでなにやら廊下の方で変化があったのか、怒声が聞こえてきた。
『ちょっとAクラス、邪魔だからさっさとどいてほしいんだけど」
『あなた、Cクラスの小山さん……』
『っ!? Aクラスの木下優子っ!! ちょうどいいわ、以前豚呼ばわりしてくれた分、今ここで返してやるわっ!!』
『それは秀吉で、アタシじゃないわよっ!!』
『なにやら面白いことになってるじゃないか。友香、Bクラスも力を貸そう』
『げっ、Bクラスの変態代表……』
『ちょっと、変態が気安く私の名前を呼ばないでくれるかしら』
『まてっ、いくらなんでもその扱いはないだろう!?』
『とにかくっ!! Cクラス、あの集団に突撃をかけるわっ!!』
『くっ、Aクラスのみんな!! 後方からの襲撃に備えてっ!!』
『Bクラス、Cクラスと共闘するぞ!!』
『むっ、B・Cクラスが動くか。Dクラス!! 他のクラスに後れを取るな!! 我々も参戦するぞ!!』
『Eクラスのみんな、私達も負けてられないわ!! こんなところで騒ぐバカども、蹴散らすわよ!!』
『総員っ!! FFF団の恐ろしさを他クラスの奴らに教えてやれ!!』
『『『『『『試獣召喚(サモン)!!』』』』』』
「――ちょっと雄二、なんか全クラス巻き込んでの大乱闘になってるんだけど」
「予定通り、というわけでもないが、これくらいなら問題はない。それより機が来た、そろそろおれたちも動くぞ。準備はいいな」
「うん、大丈夫」
「問題ないのじゃ」
「……こっちも、いける」
「それじゃ行動開始だ」
「「「了解」」」
その言葉を最後に、秀吉、ムッツリーニは渡り廊下に、僕と雄二は旧校舎側の階段に向かって駆け出した。
あとがき
いかがでしたでしょうか、第三問、試召戦争編……前編。
今回は優子と明久二つの視点から試召戦争を進めていこうかと思ってたんですが、明らかに明久のほうに配分が偏ってしまいました。本当は優子のほうももっと長く取りたかったんですが、Aクラスはまじめで動かしづらいです。久保君はいい感じなんですが一人だと長続きしないし、霧島さんは雄二を絡ませないとあまり動かないし、工藤さんはあんまり張り切ると年齢制限食らうし、というか作者自身そういうほうに話を持っていけないんですが……、あと一人、いい感じに笑える人が出てきてくれるといいですね。
後、今回の戦争、クラス間での一対一が原則の試召戦争ですが、なぜか(まあ自分がやったんですが)全クラス入り乱れての大混戦となってしまいました。別に戦争に参加させなくても良かったんですが、このくらいのほうがらしいなというのと、他のクラスでも混戦の中おとなしく立ってるやつはいないだろうなという判断でこうなりました。まあ、一応模擬戦であるという事と他のクラスは正式に宣戦布告しての行動ではないということで見逃していただきたいと思います。
次回は試召戦争後編です。次回で試召戦争も終結させるつもりです。今回戦争に参加しなかった雄二、明久、秀吉、ムッツリーニもがんばってくれると思います。
ではまた次回お会いできることを楽しみにしております。
説明 | ||
どうも、naoです。 ようやく投稿出来ました、試召戦争編。といっても終わりきれず前後編に分かれてしまいましたが……。 まずは第三問、試召戦争前編をお楽しみください。 |
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