異世界冒険譚 魔法少女リリカルなのは月 A`S 22話 |
nanoha side
私達がユエさんと戦って4日経った日。
「ねえ、なのは……」
「どうしたの? アリサちゃん。」
休み時間にアリサちゃんが話しかけてきた。
「どうしたの? じゃないわよ。ほんとにどうしたのよ、あいつは……」
アリサちゃんが後ろを向いて言う。その視線はユキくんを見ていた。
そのユキくんはというと。
「………………」
机に座って俯いている。目は虚ろだし、顔は無表情。机に出ているのは1時間目の教科書だ。
「ううん。わかんない。」
「休んでる間に何かあったのかしら?」
「…………」
ユキくんは3日前から休んでいて、今日、やっと家に朝ご飯を食べに来たから何があったのか私には分からなかった。
「本当に雪人君どうしたんだろうね?」
「何か辛い事でもあったのかな?」
フェイトちゃんとすずかちゃんもユキくんの事が心配みたい。
「あ〜もう! まどろっこしいわね! あいつに直接聞いてみましょう!」
ア、アリサちゃん。それ拙いんじゃないかな?
「え!? でも、思い出したくない事なのかもしれないし……」
すずかちゃんもそう思ったみたい。
「もしそうだとしても、あんな風にうじうじしてるより話しちゃったほうが気が紛れるわよ!」
うう……それはそうかもだけど。
「私はアリサに賛成。」
「フェイトちゃん!?」
「雪人が辛い思いをしてるならそれを何とかしてあげたい。もし、原因が私達にはどうしようもならなくても、辛さを分けてあげたい。」
フェイトちゃんはそう言って私を見た。
「なのはが教えてくれたことだよ?」
! そうだったよね。私、何迷ってたんだろう? 友達が……大切な幼馴染が苦しんでるなら私が力になってあげなきゃ。ユキくんが昔、私と一緒に遊んでくれて本当に嬉しかった。家では寂しかったけど、ユキくんが傍に居てくれたから私は辛くなかったんだ。なら、今度は私の番!
「そうだね。ユキくんが悲しんでるなら何とかしてあげたい。辛さを分け合ってほしい。」
「良し! そうと決まれば行くわよ!」
「うん!」
私達はユキくんの所まで行った。
「ユキト!」
「!?」
――バッ!
アリサちゃんがユキくんにしゃべりかけるとすごいスピードでこっちを見て、左手で何かを取り出すようなしぐさをして、何かをこっちに向けるような動作をする途中で止まった。
「……なんだ。皆か。」
ユキくんは私達だと解ると目に見えてホッとした様子だった。
「何だじゃないわよ。あんた、どうしたの? 久しぶりにあんた見たけど……変よ?」
ユキくんは少しビックリしたように目を丸くした。けど、また元の無表情に戻る。
「別に……何でもない。」
「何でもない訳無いじゃない! あんた、明らかにないかあるでしょ!?」
「ア、アリサちゃん。そんな大声出したら雪人君ビックリしちゃうよ。……でも、本当に何があったの? 皆心配してるよ?」
「別に……心配しなくてもいい。君たちには関係の無いことだ。」
「アンタね!」
「アリサちゃん!」
少し焦れてきたアリサちゃんをすずかちゃんが嗜める。するとユキくんは呆れたようにこう言った。
「あまり騒がないでくれるか? それと、喧嘩するなら余所でやってくれ。」
「アンタ……いい加減に……」
「お、落ち着いてアリサ! ……雪人。本当にどうしたの? 今日の雪人は凄く辛そう。」
「俺にだってそういう日ぐらいある。放っておいてくれないか。」
フェイトちゃんにも今日のユキくんは冷たい。
「……ユキくん。本当にどうしたの? 悩みがあるなら私達に言って欲しいな。」
「そんな事をして何になる。」
「もしかしたら私たちが協力すれば解決できるかもしれないし、辛いことがあったなら私も辛さを分け合いた」
――ガタン!
私がそこまで言うと、ユキくんが急に立ち上がった。その表情は俯いていてわからない。
「うるさいな……」
「ユキくん?」
「うるさいって言ってるんだ!」
「ひっ!?」
初めて聞くユキくんの怒った声。
「さっきからゴチャゴチャと言いやがって……」
「ユ、ユキト?」
「雪人君?」
アリサちゃんもすずかちゃんもその光景に驚いている。
「お前ら……何なの? 俺は秘密を作っちゃいけないってか? ああ!?」
「あ……うう……」
怖い……
「何が協力すれば解決するかも?だ。お前らが何の役に立つって言うんだ。アリサ!」
「ひっ! な、なによ!?」
「例えば俺が人を殺していたとしたら……お前は何ができるんだ?」
「……え?」
ユキくん……今、何て?
「お前の家から俺が殺したやつらの遺族に金払ってくれんのか? ただのガキでしかないお前が? 笑わせるな!」
「ひっ!?」
「すずか!」
「……ぁ……」
すずかちゃんは震えていて声が出せていない。
「例えば俺が吸血鬼に狙われたとして……お前はどうしてくれんだ?」
瞬間、すずかちゃんの顔が青くなる。
「お前の家に匿って守ってくれんのか? 高町の兄にも頼んで俺を守ってくれんのか?」
すずかちゃんは大きく目を見開いて後ずさりする。その顔は今にも倒れそうなくらい真っ青だ。
「フェイト!」
「な、なに?」
「お前に何ができる? この世界の右も左も分からないお前が……ふざけるな! お前には何も出来ねえよ!」
「っ!」
「高町なのは!」
わたしの番のようだ。
「お前に何が出来る? 話を聞く? 解決方法を一緒に探す? 辛いのを分け合う?」
ユキくんはそこで言葉を切る。
眉間にしわが寄っていく。
「ふざけるな! この問題は! 二度目が絶対にあっちゃならねえんだよ! それを分け合うだと!? ふざけるな!」
――ズシン!
ユキくんが両手を机に叩き付ける。
「はぁっ……はぁっ……ごめん。俺がここにいると教室の空気悪くなるよね。」
そう言ってユキくんは教科書をかばんにしまう。
「先生には、適当に言っておいてくれ。」
「ユキ……くん?」
ユキくんはかばんを持って教室を出ようとする。
「今日は帰る。また明日。」
ユキくんはそう言い残して教室を出ていってしまった。
「ユキくん……」
「な、なのは……」
アリサちゃんが私を呼んでユキくんの机の方を指さした。
そこには……
「つ、机が……」
「沈んで……?」
机の脚が床に埋まっていた。
教室がしんと静まり返る。
わたし……またユキくんに迷惑かけちゃったな……また明日、学校に来たら謝らなくちゃ。
でも……ユキくんが聖祥小学校に来ることは二度と無かった。
クリスマスの前の日。
わたしが翠屋に来た時だった。
ドアを開けると中から声が聞こえてきた。
「そうかい。寂しく……なるね。」
「そう言って貰えると嬉しいですね。」
中に居た人を見てわたしはビックリした。
「ユキ……くん?」
そこにいたのはもう2週間も会っていない友達の姿だった。
「なのはちゃん……」
「あの!「士郎さん。俺はこれで失礼します。この事はくれぐれもご内密に。」……あっ。」
ユキくんはそう言うと翠屋から出て行ってしまった。
ユキくん。私の事嫌いになっちゃったのかな?
「なのは。ユキト君はなのはの事嫌いになんかなってないよ。」
「え?」
なんでわたしが思ってる事、分かったんだろう?
「なのはの思ってることはすぐに顔に出るからね。」
うう……そうなのかな。
わたしがそう思っているとお父さんは翠屋の外を見て言った。
「ユキトはなのはの事がすごく大事みたいだな。今日も少し話があるって言っただけなのに殆どがなのはの事だったぞ?」
でも、ユキくん私の事避けてるみたいだし……
「ユキトも年頃の男の子だ。調子が悪かったり機嫌が悪いときだってあるさ。」
そうなのかな……そうだよね。わたし、ユキくんがなんでも出来る大人な人だと思ってた。でも、ユキくんも迷うんだよね。調子だって悪い時があるんだよね。
「だから……もう少し待ってあげてくれないか?」
「うん!」
ユキくん。わたし、もう少し待ってみるね。ユキくんが自分から話してくれるその時まで……
side out
yukito side
クリスマス。
キリストの誕生日。
日本では恋人たちがキャッキャッウフフする日。
俺の視界には恋人たちが仲睦まじく体を寄せ合っていたりするのが映っている。
俺の願いはただ一つ。
カップル爆発しろ。誰か! お客様の中にメテオ(FF7仕様)を唱えられる方はいらっしゃいませんか!? そう声を大にして叫びたい。いやマジで。
え? この前と雰囲気一変しすぎ? いや〜だってこの前からもう2週間位たってるんだよ? そりゃあ整理くらいつくよ。はははははははっ…………はあ……
うん。そんな訳無いよ。こんな短い時間で整理が付いたらカウンセラーはいらないって。
気を取り直して俺ははやてたちの方を見る。
ここは病院から1キロ離れたビルの上。
もう少しで日が沈みそうだ。
なぜ俺がここに居るかはアニメを見ればわかると思うが、今日は夜天の書が完成する日。つまり、なのはちゃんたちがはやての病室にサプライズプレゼントを持ってくる日だ。
まあ、もしかしたら来ないかもとか思わなくもない。それならそれでヴォルケンリッターは夜天の書を完成させられる。どっちに転ぼうと俺の計画に不備は無い……はず。
ん? どうやら本当に来た。ただ……皆、元気がないように見える。
俺のせいだよな。
「くそっ!」
そうして自己嫌悪やらなんやらをしている間にアリサとすずかが帰った。
そろそろか。
突然、ビルの一角が爆発。炎上した。
そこからはまさに怒涛の展開ってやつだな。
戦闘が始まったと思ったら、仮面の男が出てきて、それが二人に増えて、……シグナム達を蒐集してっ!
――ギリッ!
俺はシグナム達を助けに行かないように必死でこらえる。
俺の計画は、彼女が現れてからが始まり。
今、ここでヴィータ達を助けに行ったら計画が崩れる。
いくら彼女たちが死なないからと言ってもリーゼたちへの憎悪と、自己嫌悪が湧き上がってくる。
…………シグナム達の蒐集が終わった。
そして、あいつらはなのはちゃん達に成り代わってはやてを追いつめ始める。
OK。そんなに死にたい訳だな?
自分たちの姿でやればいいものを……
そろそろ行くか。
俺はその場から動き出し始める。
side out
nanoha side
――ギシッピキピキ…バキィン!
数分かかってようやくバインドを外して外に出れた。
「はやてちゃん!」
「はやて!」
私達ははやてちゃんに呼びかける。
さっきのは私達じゃないんだよ。って。
でもわたしが言おうとした言葉は……
「うぅ……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
少女の叫びによってかき消されてしまった。
――ドオン!
はやてちゃんから魔力が湧き上がる。
離れてても分かる。巨大な魔力。その中心にはやてちゃんは浮いていた。
「我は闇の書の主なり……この手に力を。」
はやてちゃんがそう言うと夜天の書がはやてちゃんの手に現れる。
「封印……解放。」
[解放。]
夜天の書がそう言うとはやてちゃんの体に変化が起きる。
身長が伸びて、髪の毛が伸びて、胸が大きくなる。
ベルトみたいなものが手足に巻きつく。
そして紋様が浮かび上がって、羽が生えてきた。
「……ぁっ。」
その姿は画像で見せてもらったユエさんの姿と似ていた。
「また、全てが終わってしまった。いったい幾たび、こんな悲しみを繰り返せばいいのだ?」
「はやてちゃん!」
「はやて……」
わたし達ははやてちゃんに呼びかける。
「我は闇の書。」
それを否定するように彼女は名前を言った。
「我が力の全ては……」
彼女は右手を挙げそこに魔力を集中しだす。
球状の黒い魔力はどんどん範囲を広げていく。
「主の願いの……そのままに。」
あとがき
どうも〜おはこんばんにちは〜
この頃寒いですね。
部屋にいても毛布やストーブが必要になってきますた。
できればもっと晴れの日が欲しい……
さ〜て今回の異世界冒険譚は!
最初に雪人君がブチ切れて登校拒否になった後は怒涛の展開(手抜きとも言えなくはない)
一気にクリスマスまで跳んで、なのはちゃん達とシグナムたちのバトル。
仮面の男登場。その場にいた全員が捕まる。
シグナム達蒐集。
はやて発狂。
闇の書の封印が解ける←イマココ!
シグナム達を見捨てた雪人、移動する先は!?
雪人が居ることによって夜天の書の運命はどう変わるのか!?
待て次回!
説明 | ||
交通事故によって死んでしまった主人公。しかし、それは神の弟子が起こした事故だった!?主人公はなぜか神に謝られ、たくさんの世界へ冒険する。 そして物語はA`Sへ・・・ |
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コメント | ||
田仁志さまコメントありがとうございます。盛り上がってきましたね! 次もお楽しみに。(RYO) 雪人のことも気になるけれど、物語も盛り上がってきました!!! 次が楽しみ!!(ペンギン) brid様コメントありがとうございます。ええ、来ました。A'Sのラストが。(RYO) とうとうきたね・・・・この時が・・・(brid) 黒幕様コメントありがとうございます。この時はまだ名前がありませんね。次回は戦闘。超頑張るぜ! by雪人(RYO) COMBAT02様コメントありがとうございます。俺もワクワク!(RYO) つくよみ様コメントありがとうございます。ええ。雪人はシグナム達の蒐集を止めません。何故かというと……作者の都合です。(RYO) ZERO様コメントありがとうございます。ユエはどう動くのか?次回もよろしくお願いします!(RYO) そういえばまだリインフォースって名前じゃ無かった。忘れてた。 さて雪人。ここからが本番だ、超がんばれ(黒幕) ワクワク!!ワクワク!!(COMBAT02) あ、雪人はシグナム達の蒐集止めないんだ(つくよみ) ユエはなにをするんですかねえ? 次も待ってます。(ZERO&ファルサ) |
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