大好きだから… 〜They who are awkward〜 第13話 |
「なぁ悠樹、明日なんだが」
約束の日の前日の夜、恭一から電話がかかってきた。
「明日、急な話で悪いんだが従妹がくるみたいで、面倒見なくちゃならねぇから明日は無理になった。三人で楽しんできてくれよ」
「そうなのか…。だったらいっそのこと、別に日にまた皆で行くってのはどうだ?」
「いや、美樹も多分茉莉子ちゃんも楽しみにしてただろ?その気になれば夏休み中何回も行けるんだ。とりあえず三人で行ってどんなもんか見てきてくれよ」
「うーん、そうだな。じゃあそういうことにするよ。またな」
「おう、またな」
電話を切って茉莉子にさっきの話の内容を伝えた。
「恭一さん来れなくなっちゃたんですか」
「従妹の面倒見るとかでな」
従妹か。ないとは思うが恭一、変なことはするんじゃないぞ…
「恭一さんの分まで楽しんでこなきゃだね、兄さん」
「パーッと楽しんできて恭一に羨ましがらせてやるさ」
駅前集合だったよな。遅刻しないようにしないと。
「遅刻したら美樹が怖いし、明日は体力使いそうだから俺はもう寝るな。おやすみ、茉莉子」
「おやすみなさい、兄さん」
そうして俺は自分の部屋に戻った。
「こういう時って寝よう寝ようと思うと寝れなくなるんだよなあ」
ベッドに入ったのはいいものの、寝つけずにいた俺は一人呟く。
「どうするんだ俺…」
取り留めのないことが浮かんでは消え、何に対してかわからないが言葉が出る。
ホントはわかっている。
澪先輩のこと、夢のこと。そしているかわからない姉さんのこと。
今、最優先なのは…
「澪先輩のことに決まってる」
そう、あの人はまっすぐ自分の気持ちを伝えてくれた。
俺も真摯に返事をしなければ失礼だ。
ただ、どっちにしろあの人を悲しませたくないと思うのは俺の我侭だろうか。
むしろそう思う時点でもう決まっているんだろうか…
気づいたら眠ってしまっていた。
「え!! 行けなくなったぁ!?」
朝、茉莉子からいきなり言われてしまった。寝耳に水である。
「うん……ごめんなさい」
「な、なんか用事でも出来たのか?昨日まで行く気だったように見えたんだが…」
「そう用事が出来たの…。とっても大事な用事が…」
「用事が出来たならしょうがないさ。今度は一緒に行けるといいな」
俺は茉莉子の頭をなでてやる。
「………えへへ、これじゃあまるで美樹さんとデートだねっ!!」
しばらく頭をなでられてるだけだった茉莉子が笑いながら言う。
そんな茉莉子の言葉でハッとする。言われてみれば今日は二人だけだ。
男一人と女一人が遊園地へ遊びに…どっからどうみてもデートだ。
「そんなわけじゃないから安心しろ茉莉子」
俺と美樹がデートねぇ……
ただ友達と遊びに行くとしか考えられないんだが周りの目は違うだろうな。
「そうかなぁ。兄さんと美樹さん、合ってると思うよ」
「ま、そんなことはおいといてだ。少し早いけど駅前に行ってくるよ。遅刻したら悪いし」
「いってらっしゃい兄さん」
茉莉子に見送られ俺は集合場所に向かった。
10分の余裕をもって着いたはずだが美樹は既にそこに居り、所在なさげに立っていた。
「お前早くないか?」
美樹に声をかける。
「あ、悠樹。あんたよりちょっと早く着いただけだから別に早すぎるってわけじゃないわ」
それにしては、遠目で結構待ってますオーラを感じたんだが。
「聞いたわ。恭一、来れなくなったんだって?ところで茉莉子ちゃんは?」
「そっちは聞いてたか。いや、茉莉子も実は……」
朝のことを美樹に話す。
「デ……デートぉ!?そ、そんなわけないじゃない!!勘違いしないでよ!!」
「それは俺が言ったんじゃなくて茉莉子が言ったの。よく話を聞いてくれ」
「デート…悠樹と二人で遊園地……あー……うー…」
赤くなって騒ぎ出したと思ったら今度は一人で悶え始めた。
俺は美樹にチョップを繰り出す。
「いたっ…ちょ、ちょっと何すんのよ」
「頼むから落ち着いてくれ。というかツッコミ役は美樹の仕事だ。俺がやっても違和感がある」
「む。あのねぇ私がいつも悠樹たちを殴ってるみたいに言わないでくれる?いいわ。さっさと遊園地へ行こう?」
そういうと俺を引っ張りながら駅に向かっていく。
まったく。この前行った服屋がいい例だ。美樹が変に意識すると俺も変な感じになってしまうだろうが。
口には出さず、美樹に引っ張られるまま連れて行かれたのだった。
意外と近かったな」
「そうね。その分時間あるし、めいいっぱい楽しめそうね」
電車で5分ほど、そこからバスに乗り換えて、20分程。
うん、交通の発達って素晴らしいな。早速、俺と美樹は遊園地に入場した。
最近出来たというのと休みというのもあいまって中々に人が入っているようだ。
「最初は何に乗るんだ?」
「悠樹って絶叫系は大丈夫だったっけ?」
「まぁ…人並みには」
「じゃぁいくしかないでしょ?」
そう言って指を指したのは、入った時からその存在感を主張し続けていた噂のジェットコースターだ。
世界一最恐というのは伊達ではなくその大きさと高さと言ったら………
「乗るのはいい。が、もう少しこう順番を踏んでにしないか?いきなりメインをいったら面白くないだろう?」
「そう?別に何回も乗ればいい話じゃないの?」
「い、いやちょっと待って。ほら、あの……あれだ。ほ、他のアトラクションだってあるんだからとりあえず見て回らないか?」
「うーん、それも一理あるわね。だったら、軽いものから乗っていこっか」
いきなりあんなものに乗ったら死んでしまう。
例えるなら、まだLV1の状態なのに魔王自ら勇者を倒しに来ちゃったぐらい無茶だ。
経験値を積むため美樹の言う軽いものに乗っていったのだが…
「ちょ、ちょっと悠樹大丈夫?」
「…ごめん、ちょっと休憩を……」
三つくらいだろうか。乗り終わった後、俺はフラフラだった。
まずジェットコースター。
メインのものと比べると流石に見劣りするが、それでも今の俺にはきつかった。
次に船だ。
いけると思っていたのだがそんな甘い考えは通用しなかった。
360度回転はない。
そして最後が一番まずかった。
あの縦に上がって落ちるやつ。アレはかなり効いた。
美樹は終始どのアトラクションも楽しんで乗れていたみたいだったが、ダメージがでかすぎる。
「私、なにか飲み物持ってくるからちょっと待ってなさい」
「う、ごめん……」
美樹の言葉に甘えベンチで休んでいたが、こういうのは普通、男が買ってくるのではないだろうか。
情けなさ過ぎる。そしてこの後メインが待っていると。
あれに乗ったらどうなるかは…………想像に難くないな。
「おまたせ」
お茶を買ってきてくれた美樹に感謝する。
美樹は俺の隣に座った。
「悠樹やっぱりこういうのダメだったんだねぇ」
ケラケラと笑っている。
「うう…… 少しは自信あったんだけど…」
まぁ自分でそう思ってただけだが。
「んー、今日はあれやめよっか。他のアトラクションを回ろうか」
「別にこんなのしばらくすれば治るから平気さ。美樹も楽しみにしてたろ?」
「うーん、そうなんだけどね… 悠樹に倒れられたらそっちのほうが嫌だからやめとく」
美樹が苦笑している。
「いや平気だって。次はあれに乗るぞ美樹」
男には無理をしなければならない時がたまにあるのです。
「はいはい、その気持ちは嬉しいけど今度皆と来たときにね」
そういうと美樹が俺を引っ張り横に倒す。
これは……膝枕ってやつではないか。
「膝。貸してあげるから早く良くなりなさい。後で私の乗りたいものに付き合ってくれたらチャラにしてあげるから」
プイとそっぽを向いてしまったが多分恥ずかしがっているんだろう。
だって、してもらってる俺だって恥ずかしいんだから。
既にお昼は回っていたので俺と美樹はその後、遅めの昼食を取り、残るアトラクションを楽しんだ。
が、流石に全ては回りきれず気づくともう日が落ちかけていた。
「観覧車…ねぇ」
「い、いいでしょ。友達に聞いたら次にお勧めだって言ってたし」
まぁ、美樹の趣味を考えるとそんなのを聞かなくても来たかったんだろうが。
今日の最後のアトラクションはこいつになりそうだ。
というか今気づいたが今日の美樹は、ずいぶんとしおらしいな。
「いこっ!」
「っと、わかったから」
朝と同じく引っ張られる。
意識してやったのかどうかわからない。
そんなこと気にも留めなかったから。
ただ、朝と違うのは手と手が繋がっていることだった。
「おぉー、これは綺麗だ」
感嘆の声を上げる。
日が落ちかけてるのも手伝い、外の景色がとても幻想的だった。
「でしょう?私のセンスに感謝してよね」
しばらくの間俺と美樹は外の景色を眺め続けた。
そうして観覧車が頂点に達しようとしたときに美樹が突然切り出した。
「あのさ…私達何気に長い付き合いだよね?」
「そうだな。子供のときからずっと一緒だからな」
「うん。私と悠樹と恭一と茉莉子ちゃんの4人だった。そして佐久島先輩。今の学校で知り合ってこれで五人。それからずっと5人で遊んだりしてるよね?」
美樹が確かめるように言葉を紡ぐ。
「そうだな。5人で遊んでワイワイやってるけどそれがどうしたんだ?」
「…最近悠樹ってさ、佐久島先輩と仲良いよね?確かに入院したりしたけどその少し前からっていうか… 目が覚めてからもなんか前以上に気にしてるって言うか…」
「そ、そうか?別に普段どおりじゃないか?澪先輩がスキンシップ激しいのは、いつものことだし」
「そう……だよね。ごめん」
「どうしたんだ美樹?仲が悪いほうがよっぽどマズイだろう?良いのは別に問題ないんじゃないか?」
観覧車はとっくに頂点を越え下に下がる。
「私の勝手な思い込みだったらホントにごめんなんだけど…悠樹ってさ…」
そして美樹は俺に尋ねる。
「佐久島先輩と…付き合ってる?」
「俺と澪先輩が?付き合ってないよ」
まぁ告白はされたけど。今、この場で言うことではない…と思う。
「本当?」
ふと、美樹の顔を見ると目尻に涙を湛えてこらえていた。
「お前…泣いて…」
「お願い答えて」
美樹の顔を真っ直ぐに見つめて答える。
「あぁ…俺と澪先輩は付き合っていない」
「そっか…」
美樹が少し安堵の表情を浮かべた矢先に、
「ただ……」
俺はやっぱり言うことにした。
美樹の顔を見ていたら話さなきゃと思ったのだ。
「澪先輩に、好きだって言われた」
美樹が息をのむ。
「正直、迷っている。俺はあの5人の空間が壊れるは嫌だと思っている。ただ、ずっと考えてて、そんなことを抜きにして感情だけで言うなら…」
「待って」
美樹が遮る。
「ごめん、その前に…私の話を聞いて欲しいんだ」
「観覧車、もう着くぞ?」
「あと一週だけ…お願い」
俺達は二週目に入ることにした。
完全に日は落ち、街がイルミネーションで輝き、色鮮やかだった。
「ありがと」
「気にすんな」
俺は美樹が喋るのを待つ。
少しした後、
「私、知ってのとおり馬鹿だからさ、そのいつからとかそんなのわかんない。気づいたらだった。あ、でもこの前行った服屋さん覚えてるかな?あれで、さらに意識しちゃってさ」
美樹が喋りだす。
「悠樹言ったよね?5人の場所が壊れるのは嫌だって。私もだったんだ。
だから我慢してた。でも…我慢して一番好きな人、言い方悪いけど取られるのはもっと嫌」
そして、
「私ね……悠樹のことが好き…」
一方。
「あの……私に話ってなんですか?」
「あぁすまない茉莉子。今日は遊園地だったんだろう?無理を言って申し訳ない」
「あ、別にいいんです。よくはないんですけど、でも大事なことだってのはわかります。だから兄さんにも誰にも言ってません」
「あぁ助かるな。さて、待たせるのも悪いし単刀直入に言わせてもらう。
茉莉子は――――――――――」
俺達はその後、遊園地を退場しバスと電車を利用し、自分達の街に帰ってきた。
その間は、会話に華が咲いてとても楽しく、なんてことはありえず沈黙したままだった。
駅の改札を抜け、駅前の広場まで来たところで美樹が謝る。
「今日はごめんね。せっかくの遊園地だったのに」
「恭一も言ってたが、遊園地になんてこれからいくらでも来れるんだ。だから平気さ」
「うん、そうだね…」
「もう暗いんだ。さっさと帰ろうぜ」
「うん…」
そうして、いつもの分かれ道までたどり着く。
「じゃあ、また明日な美樹」
「うん。明日…ね」
俺と美樹は各自の家に帰る。
「ただいまー」
「あ、おかえり。遅かったね兄さん」
「ん?そうか」
「ご飯は食べるよね?」
「あぁそうだな。頼む」
俺、短い文でしか返事できていないな。
それというのもやはり最後のあれだろう。
とりあえず落ち着かないと…
「私、言っちゃったんだなぁ…」
深夜、寝付けず起きていた美樹は今日のことを考える。
佐久島先輩もやっぱり悠樹のこと好きだったんだなぁ。
でも私だって…
と、こんな遅い時間にもかかわらず携帯が着信を告げる。
「誰だろう……?」
見ると、非通知だったのでしばらく放置していたが一向に鳴り止まないので出ることにした。
「はい?」
「…………………………………………」
「すいませんどちら様でしょうか?」
「…………………………ね」
「? あのもう一度お願いします」
「……………死ね」
「っ!!」
私は急いで切った。一体なんなのだろうか。
またも携帯が着信を告げる。非通知だ。
怖くなり、出ないまま切る。また着信。
切っても切ってもキリがない。
それは非通知を着信拒否に設定するまで続いたのだった。
*** あとがき ***
美樹ちゃんはベタな展開が大好きなんです。漫画的な影響で。
という設定が作者の頭の中を通り過ぎた……ッ!!
どうも、鼻水が止まらない作者です。
えっととりあえず3話目ですかね。総閲覧数が100越えました。
初めて見る人、何回も見直してくれた人色々といらっしゃると思いますが、
感激の極みです。ありがとうございます。
ってか1話より3話のほうが早くいったのね。
水着なのか!?やはりエロなのか!?それとも美樹ちゃん目当てか!?まぁなんでもいいんですが。
あと何話ですかねぇ。んーと、3話くらい?で終わるかな。
終わったら、も一個のほう書かなきゃー。
そうだ、そっちの1話もですね。閲覧数100を突破しました。ありがとうございます。
皆さんも風邪には気をつけてください。
ではでは、次回話にて
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今日はハロウィンですね。 お菓子が食べたいよー泣 そんなこんなで13話です。 |
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