魏√アフター 一刀の決意 |
「華琳ーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
自分の叫び声で目が覚めるとそこは見慣れたはずだが最近迄は記憶の片隅に押し込められていた景色
「ハハ・・・本当に還ってきちまったんだ・・・」暗い部屋を見回せば一人用のベッドに学習机、テレビに制服の掛ったハンガーラック。
「そうか・・そうだよな・・・俺・・最後に・・うっ・・うっぅ・・」思い出すのは愛しい女性の凛とした後ろ姿。
「うっぅ・・華琳・・それに皆・・・」目覚める迄には確かに自分の周りに居てくれたかけがえのない仲間たち。
「確かに精一杯やった事に悔いは無いよ・・・」自分の存在と引き換えに最愛の女性の覇道の手助けをした。
「でも、でもね・・・今は・・今だけは・・俺・・少しだけ後悔しても良いよね・・・うっぅっ・うぅっ・・・」声を押し殺し、止まる事を忘れたかの様に流れ続ける涙を拭いもせずに。
少年はもう二度とは戻れないであろうと思う彼の地での今となっては懐かしくも大切な思い出の一つ一つを反芻しては丁寧に記憶の奥底に仕舞い込む。
一つ一つの思い出を涙と共に整理しだしてどのくらいの時間泣き続けただろうか、やがて気分も落ち着きを取り戻し窓の外も幾分白みだし始めた頃、誰かに勇気づけられるような声を聞いた様な気がした少年は気力を振り絞り顔を上げる。
「そうだよな・・華琳。君ならいつまでも泣いている俺の姿は見たくないだろうしな・・『泣いて歩みを止めるよりもそれを乗り越えて次の目標に向かいなさい!!』って絶対言う筈だからな。」
少年の記憶の中での少女は凛とした立ち姿でいつも前を見ていた。そして己の立ち位置をいつも見誤る事無く誰よりも苛烈な道を当然の様に進んでいた。その少女の傍らに立っていた少年は恐らく他の誰よりもその少女の事を理解していた。
「だから俺はもう泣かない・・・悲しくないのか?と聞かれれば悲しいし悔しいけれどそれで何時までもウジウジしている俺を君は絶対に許してくれそうにないから・・・」二、三度頭を強く振って弱気になっている自分自身に喝を入れなおす。
恐らく自分が彼の地から消失してしまった事で自分が愛しまた自分も愛された少女達全員が悲しんでくれるだろう事は自惚れではなく間違いないだろうと思う。
「今の俺に出来る事はあの世界から消えてしまった事を嘆くんじゃなくて、いつかまたあの世界に戻れる事を信じ続け精進して次に皆に逢った時に胸を張って『ただいまっ!!』って言えるような男にならなきゃ。」少年は先程迄気力も何もあったものじゃない様な目から今は彼の地に在った時の様に真っ直ぐな目を取り戻しつつある。
「こうやって考える事が自然に出来る様になれたのも君のおかげだな・・・・・華琳」恐らく全てを失った事についてふっきれたかと言えば間違いなく否であろうし今後もそれは無いと少年は断言できる。何よりも彼の地で有った事や出会った人達を忘れるなどこの心優しい少年は出来よう筈もない。
「君の事を思って泣くのは今だけの事にするよ。俺は君達があの戦乱の日々の中で教えてくれた数々の事を現在に活かして自分を鍛えていくよ。そしていつの日か必ずあの世界に戻ってみせるよ。だから・・・・・」少年は決意を込めた言葉を自分と今は此処にいない淋しがりやの少女にむけて語る。
「だからいつか再びあの世界で君にめぐり合う為に俺も自分の現在の世界の物語で精一杯頑張るから華琳も新しく紡いでいく華琳の世界の物語で頑張ってくれよ。」力強く誓う彼の目には学生寮の窓から見える朝日は彼の地に続いているように燃えているように思えた。
少年の名前は北郷一刀、覇王曹猛徳の脇に侍る事を許されし天の御遣いと呼ばれた少年である。
「そういえば・・・俺があっちの世界で居る間ってどのくらいの時間だったんだ??」一刀は枕元の目覚まし時計を手に取ってみる。
「おわっ!!全然時間が経ってねえじゃん・・・俺確かあっちの世界で年単位でいた筈なのに・・・・ハァ〜まさに【胡蝶之夢】って奴かよぉ」一刀が驚嘆するのも無理はない、実際彼の地で過ごした体感時間は有に五年以上は経っているのにこちらの世界で目覚めてみればそれはたった一晩程でしかないのだった。
「マジで夢だったって事はないよなぁ〜・・・あんなにもリアルな夢って考えられないもんなぁ・・・」一刀は必死になって自分があちらの世界にいた印を探そうとする。
「あっそうだ・・制服、制服をずっと着てたんだよなぁ俺って・・・へっ??」素っ頓狂な声をあげてその場で固まってしまう一刀。
「えっ・・・なんで?これって俺、部屋着のままじゃん??あれ?制服は??」目が覚めてから落ち込んで、復活して、決意する迄にかなりの時間を要している筈であるのに自分の着衣に全く気がつかなかった事を呆れつつもあちらの世界では替えも無かった為に多少、いやかなりクタクタであった制服を探すが・・
「でぇぇぇぇっ!!綺麗なまんまじゃん!!」それは部屋の片隅のハンガーラックにキチンと掛けられていた。
「そ、そんなぁ・・・・」先程迄新たな目標に向かい意気揚々とした途端にこれである。このままでは自分と華琳達が過ごした時間が記憶の中だけになってしまう。いや記憶の中だけでも良いのだろうが一刀は何か形有る物が欲しかった。
これから未熟な自分がこの世界の物語を紡いでいく中で何度も何度も挫折があるだろう、その様な時に自分の心を奮い立たす為にも記憶だけでは悲しすぎると一刀は思ったのだった。それに記憶はいつか風化し自分の都合の良い様に形を変えていく、それも一刀は良しとはしなかった。
「何か、何かなかったっけ??」無駄だとは分かっていながらも制服のあちこちを触って確かめてみる・・・すると・・
「あれ??内ポケットになんかあるような・・・あぁぁぁぁぁっ!!」一刀の手に触れたものそれは髑髏の形をした指輪であった。「そっかぁ・・こいつだけはあっちから持ってくる事ができたんだぁ」一刀は喜びが隠せない顔でその指輪を見つめる。それは定軍山で秋蘭の危機を救った後に華琳から預けられた物であった。
最も華琳の指から直接抜いて渡された為に一刀の指には合わないので制服の内ポケットに入れて肌身離さずに持ってはいたのだが・・・・一刀は今一度その指輪を強く握りしめ己の心に誓いをたてる
「うん、これがあれば頑張れる!!つらい時でも苦しい時でもこれさえあれば・・・たとえ住む世界が遠くに離れていたとしても君と一緒に歩いていると思う事が必ず出来るっ!!」
今はまだまだ悲しみに浸っていたいと思う気持ちが残っているけれど恐らくあの少女は自分の今の姿は望んではいないであろうし自分も嫌だ。今からの日々をとにかく悔いの残らぬ様に精一杯生きていこう間違いなくそれがこの世界での自分がしなくてはいけない事であると一刀は思う。
指輪をまた制服の内ポケットにしまいこみ今一度その指輪に制服の上から触れて目を閉じて自分の決意を確認する。
「よしっ!!」再度目を開けた時に一刀の目には遠く彼の地が、そして彼の地に住まう愛しき人達の姿が映っていた。
≪終≫
あとがきのようなもの・・・
真恋の魏√アフターで現世に復帰直後??の一刀君を書いてみようと思ったのですがやはりほぼ全体に亘って構成その他諸々が甘いですねぇ・・・まあ背伸びしたってド初心者ですし今から一歩一歩進んで行くしかないんですよねぇ。はぁ文才欲しいなぁ・・・
閑話休題
自分が思う一刀像って特に魏√の終盤は一生懸命だけれど何処か達観しているって思ってます。それ故に華琳様と別れて現世に戻ってきても(原作には戻ったかどうかは書いていなかった様な・・・)悲しみで虚脱状態になる一刀って想像できないんですよね。だからこの話でも前向きな一刀君を目指したつもりなのですが、作者の未熟さ故にただの脳天気みたいになっちまってます・・・グスン
次回投稿っていつになるかはわかりませんがまだまだ勉強が足りないようです。サイト内で見かけてやったらまた色々ご指導宜しくお願いいたします。ではまた次回の投稿で・・・
説明 | ||
真恋の魏√アフター話のつもりですが・・・ またもや文才の無さに辟易しております。(泣) 少しでも一刀らしさが出ればとは思って書いた筈ですが出来たものは?? |
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コメント | ||
想いもさることながら、何某かの証が在る事によって人は随分勇気付けられますからね〜。華琳達と生きた時間がしっかり一刀の内に息づいてますな^^b(深緑) | ||
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魏√アフター 一刀 | ||
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