真・恋姫無双 魏end 凪の伝 19
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※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、

 

記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。

 

後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も

 

多々ございますので、その点も御容赦下さい。

 

 

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馬を降りて防壁に向かって来る『にゃあ黄巾党』の男達に向かっていくつもの竹槍が

 

飛んでくるが、それは矢とは違う重さの所為か男達の手前程にしか届かなかった。

 

竹槍は地面に刺さるよりも転がる方が多い程だ。

 

「馬鹿が!!ロクに準備もできなかったみてえだな!!」

 

「馬からさえ降りちまえばそこらへんに転がってる竹なんか怖くねぇんだよ!!」

 

笑いながら転がる竹槍を蹴り飛ばした男がその妙な感触に首をひねる。

 

竹槍とは思えない程重かったのだ。

 

蹴飛ばした竹槍を見れば横に開けられた栓が外れ、そこから黒い液体が漏れ出している。

 

その匂いは────

 

「油だ!!!」

 

その男の叫びに周囲に居た者達もギョッ!とした顔でその様子を見た時、そこに向かって

 

次々と火矢が掛けられる。

 

その火はあっという間に一人の男を巻き込み、のた打ち回って別の竹槍に触れた瞬間────

 

バン!!!

 

という小さな爆発が起きて竹槍に触れた指が吹き飛ぶ。

 

「な、何だ!!??」

 

他の男達が慌てふためく中も火矢が掛けられ、その火が他の竹槍に燃え移った途端に

 

次々と小さな爆発が起こる。

 

「ぎゃああああ!!!!」「うわぁぁぁぁぁぁ!!」「た、助けてくれぇぇぇぇ!!」

 

絶叫と爆発音が辺りに響き渡る様は、まるで現代の銃撃戦のようだった。

 

竹槍の中に詰められたのは火薬と油。

 

今、建業やその近くの村や町では祭の帰還を祝して真桜印の花火が大量に運び込まれており、

 

それをほぐして竹槍の中に詰めたのだ。

 

火薬の量は竹槍一つに付き爆竹程しか入っておらず、殺傷能力はほとんど無い。

 

だがこの時代の人間からすればまるで銃撃戦のようにバン!!バン!!と立て続けに起こる爆発は

 

凄まじい恐怖心を引き起こし、男達の動きが止まる。

 

そこをさらに弓矢が襲い掛かった。

 

弓矢で頭を打ちぬかれて崩れ落ちる仲間を見捨てて、生き残った男達が逃げ出す。

 

動けば火と爆発に巻きこまれ、動かなければ防壁の上から弓矢で狙い撃ちされる。

 

その攻撃にどうする事も出来ず、半数まで減った先遣隊は本隊に合流するべく撤退を開始した。

 

転がるように逃げ出す男達を尻目に一刀は第三作戦を発動させる。

 

ガラガラと荷台を運ぶ音を聞きながら一刀はさらに続く第四の作戦を進めるよう明命に指示した。

 

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その頃後方の白蓮となぎは、村人達のために食事の用意をしていた。

 

とはいえ、三歳程のなぎがうろうろしては邪魔にされるだろうし、何より逸れては危険だと

 

白蓮がおんぶしているのだが。

 

なぎは体こそ三歳児だが、心はほぼ元のままなので恥ずかしさで顔が赤くなる。

 

白蓮は"いい人"だった。とてつもなく"いい人"なのだ。

 

本気でこちらを心配して気遣う姿に嫌だとも言えず、なぎは白蓮の背におんぶされていた。

 

その姿はまさに優しげな若妻が子供を背負っている姿にしか見えず、食事の支度を手伝う村の女達にも

 

暖かな笑みが広がる。

 

「すみません、公孫賛様にまで手伝っていただいて・・・」

 

食器を運ぶのを指示していた恰幅のいいおばさんが申し訳なさそうに白蓮に声を掛けた。

 

「いやぁ、こんな時だからね。気にしないでください」

 

食材を切る手を止める事無く白蓮が笑顔で答える。

 

「助かります────なぎちゃんも大人しく背負われててえらいねぇ」

 

ニコニコと笑うおばさんの笑顔に

 

「うう・・・」

 

とますます顔を赤くして呻くしか出来ないなぎだった。

 

"『天の御遣い』と『公孫賛』は夫婦で子供もいるが、それは三人の為にも秘密にしなければならない"

 

それが思春より広められた話である。

 

その話をした時の思春の顔が何か思いつめたような表情だった事と、一刀が頑なに自分は『天の御遣い』じゃない

 

と話していた為、村人は深い事情があるのだろうと考えてあえて事情を聞く事はしなかった。

 

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トントントントンと軽快なリズムで野菜が切られ、鍋に送られる。そしてまた食材を切る音。

 

その手つきはとても慣れたものだった。

 

包丁のリズムを聞きながら白蓮の背で揺らされるのは、まさに母におんぶをされているようで気恥ずかしいが、

 

同時に亡き母を思い出して嬉しくもあった。

 

(いいにおいがする・・・)

 

なぎは白蓮の背の温かさを感じてふと、寂しい感情がある事に気がついた。

 

全身どころか顔ですら傷だらけの自分。

 

学がある訳でもなく、戦いばかりだった。

 

"職務に忠実で真面目な上に堅物な性格"

 

それが自分に与えられた評価で、その通りであろうとしてきた。

 

口下手な自分は真桜や沙和のように気軽に部下と話す事も出来ず、そこは二人に頼りっぱなしだった。

 

少しは女らしくしようと思い、どんなに料理や裁縫を頑張っても自分より上手な人は沢山いる。

 

得意な筈の戦いは霞様や春蘭様に遠く及ばず、恋においてはその足元すら見えない。

 

料理は流琉や華琳様に勝てる筈も無い。

 

愛した隊長の苦しみすら理解できずに失った。

 

その失ったものの大きさに耐えられず、今も消えた隊長の跡を追うことしか考えていない自分・・・。

 

あまりにも中途半端な自分・・・。

 

それに対して白蓮も他の者に中途半端、影が薄いと言われていたが、それはひたすらに足元を支えているからだ。

 

政務もそこそこにこなし、戦いでも堅実な戦法で派手さこそ無いが確かな戦果を上げている。

 

料理の腕も流琉程ではないが、なんでも普通に作れるようだ。

 

何より周りの者達に合わせることが出来る。

 

それは個性の強い蜀の者達の中で一種の調和剤として作用していた。

 

羨ましいとすら感じる。

 

「なぎ、疲れたかい?」

 

ふいに掛けられた白蓮の優しい声に思わず慌てるが、なぎは小さく「だいじょうぶです・・・」と答えた。

 

その声の寂しげな響きに気付いた白蓮が指で頬を掻きながら言葉を選ぶ。

 

「ええーっと・・・だな。私はこれでも以前、幽州にいた時に城を持っていてな。その時は親を亡くした

 

子供達も預かったりしていたんだ。その時によく『白蓮お母さん』とか呼ばれたりしてな、ハハハ」

 

少し照れくさそうに笑う白蓮の言葉に、やっぱり"いい人"だったんだろうな、となぎは思う。

 

「なぎも・・・もし、よかったら白蓮お母さんって呼んでくれていいよ」

 

「え・・・」

 

「一刀に預けられたといってもずっと、って訳じゃないんだろ?もしその後に行く所が無かったら、

 

私の所に来ないか?蜀の国になるんだけど、また私が子供達を預かっているんだ」

 

白蓮は一刀の話した嘘の話を信じているのだと気付き申し訳無いと思うが、それ以上に白蓮の優しさが

 

嬉しく感じた。

 

なぎの瞳からポロポロと涙がこぼれるが、白蓮は答えを急かす事無く微笑みながら仕込みを続ける。

 

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「ありがとう・・・ぱいれんおかあさん・・・」

 

背中から聞こえた小さな声に白蓮は優しく「あいよ」とだけ答えた。

 

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『にゃあ黄巾党』の本隊が村の正面に集まるのを見て、どうやら『にゃあ黄巾党』の本隊はその物量で

 

一気に正面の門から攻め込むつもりのようだと確信する。

 

その動きを見た一刀は第三作戦の最終チェックをするために門の側に来ていた。

 

そこには人が入れそうな程大きな黒い筒が数台の荷台に乗せられ、その周りに石と土が盛られている。

 

「こうなると、門を破壊された事が逆に思い切った作戦ができるな」

 

「まさかこんな使い方をするとは思いませんでした・・・」

 

一刀の呟きに、明命が感心したような声を出す。

 

ほぉー・・・と感心している明命の様子を見て、フッと笑った一刀の横顔に明命はドキッとするが、

 

慌てて平静を装う。

 

「いっちょ、派手に行きますか」

 

一刀のその言葉に明命は「はい!」と両手をポンと合わせた。

 

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村の広場に戻り、第四作戦の指示を出す蓮華に思春がスッと近づき、人がある程度いなくなったのを

 

見計らって蓮華の耳元に囁く。

 

「蓮華様、非常に申し上げにくいのですが・・・やはり兄妹というのはマズイのでは・・・」

 

「思春。私は前からどうして書物の世界に入れないのだろうと思っていたのよ」

 

蓮華の言葉に思春が愕然とする。

 

「でも・・・それは、こういう事が実際にあるからだったのね♪」

 

ふふふふふふふふふと歪んだ笑みを浮かべる蓮華に、

 

(駄目だこれ、早く何とかしないと・・・!)

 

と思う思春だった。

 

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お送りしました第19話。

 

書いてて段々と凪と白蓮のダブル√でもいいんじゃね?

 

と思ったのは内緒です。

 

ではちょこっと予告。

 

「夜中の激戦」

 

では、また。

 

 

説明
真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
凪すきーの凪すきーによる、自分の為のSSです。ご注意ください。
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コメント
白蓮お母さん・・・新鮮な響きだ・・・白蓮が嫁さんになったら何でもそつなくこなす自慢の嫁さんだな^^b 後最後の某お人に色々待てと言いたいw(深緑)
サイト様、このコンビは好きなんですよー。(北山秋三)
きのすけ様、止まりますか・・・。(北山秋三)
茂夫様、何事も普通にこなせるってそれはそれですごいですよね。(北山秋三)
zanetta様、これからも行くと思いますw(北山秋三)
ヒトヤ犬様、無性に入りたい時ってありますよねー・・・。(北山秋三)
ロンギヌス様、あっれー?これがイメージの暴走ですかねー?(北山秋三)
まーくん様、白蓮がどんどん可愛くなっている気がします。(北山秋三)
中原様、篭城戦ですから後方も色々あるという事で・・・。(北山秋三)
naganaga様、さぁどうなることやら・・・色々考えておりますw(北山秋三)
FALANDIA様、答えは次話に!(北山秋三)
2828様、思春ですから・・・。(北山秋三)
ryu様、思春ですから蓮華を甘やかしそうですよね。甘寧だけに・・・。(北山秋三)
poyy様、まだまだですよ・・・w(北山秋三)
いやいや!駄目なのは貴女を含めた二人ですよ思春さんw(サイト)
蓮花を止めないとww(きの)
ハムさんと結婚したいですww(茂夫)
病華だし、村人も勘違いwww、行けーーもっとだ!www(zanetta)
皆、俺はどうしてパソコンの、二次元の世界に入れないのだろうと思っていたんだ・・(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
何か、皆が揃って他者から想定外の属性を付与されていくなwww(ロンギヌス)
もう手に負えないな・・・ヤン華・・・orz白蓮おかあさんのオカン度が10向上したっ!!(まーくん)
本当に戦闘中とは思えないなぁ。(中原)
土嚢と黒い筒って・・・大砲?(FALANDIA)
本当になんとかしてくださいw(2828)
思春、そう思うなら早く何とかしなさい。(ryu)
白蓮、あんた最高だよ。そして蓮華、どんどん壊れていってるなぁ。(poyy)
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真・恋姫†無双  北郷一刀  なぎ 白蓮 思春 蓮華 明命 

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