真・恋姫†無双 たった一つの望み 第六話 |
誰かが聞いた
常識って一体なんでしょう?
誰かが答える
個々の価値観から生まれた思い込み、でも本当はあやふやな個々の考え
そんな思い込みが集まってできた集合的無意識
何でそんなことを聞いたのか?
その理由は知らないし、興味もない
だけど他人の目を気にしながら生きていくのはさぞかし窮屈だろう・・・
そこに誰かが言う
けど、それが人間のコミュニティってものだよ
※コミュニティ・・・基礎社会・地域組織・共同体・地域社会
「ここもか・・・」
華佗と別れてから一週間ほど、今は冀州に向かって移動中である
長沙の辺りで華佗と別れてから、最初の予定ではそのまま呉の方面に向かうつもりだった
しかし、よく考えてみたら今が三国志におけるいつの時期なのか、まったくわからない
今まで見てきた村の様子なんかをみる限りでは、黄巾の乱の前であることは確かだろう
だけどいつ黄巾の乱が起きるのかはわからない、そもそもこの世界の歴史が三国志の通りに進むかも怪しい
華佗を例にとっても、どうやら三国志と似てはいるようだが、正史か演義に近いのかも不明
それならば・・・もしかしたらと、とある小さな希望が湧いてきたがそれはまた別の話
とにかくここで重要なのは事実として、この世界の状況が詳しくわからないということだった
「しまったなぁ、こんなことなら華佗にオレの知ってる武将の事も聞いておくんだった・・・」
そもそも華佗と別れた理由は行き先が異なるという、ただそれだけのことだった
気の修行はほとんど終わり、あとは日々の鍛錬で精度を上げるくらいしか残っていない
ならば目的のために少しでも前に進もうと、南に向かう華佗と別れて呉を目指して旅を始めた・・・が
「別れてすぐ先走ったことに気付くとは思わなかったよなァ・・・」
やっとのことで力を誤魔化せそうになったところであることに気が付いた
はたしてこの世界のもつ"人の概念"はどの程度の力なら許容できるのか?
なにしろ気を使う華佗という医者が受け入れられているという前例がある
元いた世界では間違いなく異端扱いされるか、バカバカしいと一笑に付されるだろう
それがこの世界では受け入れられている、ということはある程度の"力"には寛容な可能性もある
ならば、この世界において力を持っているであろう英雄達、各国の武将を基準にできるのではないか?
そう思って一番近かった呉を目指したのであるが、前述の理由であっさりと頓挫
仕方なく三国志における序盤の黄巾の乱が終結する冀州に向かうことにしたのである
「まぁ、これで黄巾の乱が起これば少なくとも三国志に近い世界ってのは確定するしな
だけど問題は・・・漢王朝の腐敗がここまで酷いものだとは思わなかったってことか・・・」
ここでもう三つめ、賊に襲われたらしく無残な姿を晒している村だった
「相変わらず酷いもんだな、それでも人が残されてるってことは・・・」
賊に襲われた村は大抵二種類に分けられる、一つは何もかも奪われて滅ぶしかない村
もう一つはある程度の人や物を"残されて"定期的に搾取される村、ここはどうやら後者のようだ
それも賊がきてからしばらく経っているらしく、荒らされてはいるものの復旧作業が始まっている
「すまない、ここはいつ賊に襲われたんだ?
それと村の長がいれば案内して欲しいんだが・・・」
少しでも情報が欲しい、丁度近くに家を直している青年がいたので声をかける
「あんた旅人かい?長ならこの道を行って大きな木のある家だよ
だけどすぐにここから離れた方がいい、またいつ賊が襲ってくるかもわからない」
「ありがとう、だけどオレはその賊に用があるんだよ・・・」
教えられた通りに行くとなにやら大人が集まって会議をしている、中心にいる老人がこの村の長なんだろう
「それで官軍はいつになったら来るんだ?」
「早く来てくれなきゃ、いつまたあいつらが来るかわからないんだぞ!」
話を聞いてればどうやら官軍に来てもらうように要請したらしい
だが実際にはそんなことは自分たちで何とかしろと突っぱねられたらしい
村人は怒りにもえる者、悲しみにくれる者など様々だが共通するのは諦めのようだ
「失礼、話に割り込ませてもらうけど貴方がこの村の長かな?」
急に話を遮ったからか、それとも知らない人物がいきなり現れたからか、場は水を打ったように静まり返った
「確かに私がこの村の代表をしている者ですが貴方は?」
「天の御使いって呼ばれている者だよ、知らないかな?」
天の御使い、今の腐りきったこの国に舞い降りるとされた者、預言ではなにを成すかなんてなにも言われていなかった
だけどオレは華佗との修行をしている頃から何度も賊を討伐してきたし、人々の治療をしてきた
最初は天の御使いとすることでいろんなことを誤魔化すのが目的だった
だけど今は違う意味を持っている、天の御使いとして名をあげることでこの先に繋げると言う意味を・・・
英雄を見て回るという方針を決めたはいいが、よく考えたら彼らはそれなりの地位を持つ者じゃなきゃ見ることもできない
もちろんこの世界にきたばかりのオレにそんな地位を用意することなんてできるわけがない
そこで思いついたのが天の御使いという称号、大陸中に広まっている噂の人物なら彼らの興味を惹けるかもしれない
そう考えた結果、一人になってからも賊の討伐には積極的に手を出してきた
これもやっぱり華佗と別れてから思いつくのだから、もう少し考えて行動することを考えるべきなのか・・・
しかし結果として天の御使いはそこそこ有名になってきているようだ、今まで通った村でも知られていたのだから
「天の御使いというと・・・最近噂になっている流星と共に降り立ったというあの?」
「自分で名乗ったわけじゃないけどね、そう呼ばれているのは確かだよ」
これは万が一の事を考えたための処置だ
なにか問題が起きた時に自分から名乗ったのとそう呼ばれていたというのは大きく違う
「なら他の噂も聞いているだろう?
賊の事を教えてくれないかな、オレがそいつらを何とかしてあげるよ」
「何とかしてあげるとは言ったけどさ、手伝ってくれてもいいような気がするんだよね・・・」
仕方ないとは思う、村はボロボロだしできれば危険なことはしたくないし、死にたくないだろうから
実際問題としたってあの村で戦える人を集めたって20人程度が限界だろう、いない方が楽ではある
「だからって全部押し付けるのはなんか違うと思うんだよな、御礼はしますからって場所だけ教えられてもな
ま、こっちとしても自分の目的のために行動してるから人のことは言えないか」
あれから村の人を集めてもらって自分が噂の人物だと公表すると、それこそ飛びつくような勢いでお願いされた
貴方が来てくれたなら安心できる、我々を救ってくれる天の御使い様、と・・・
「漢王朝がダメになった原因は上だけじゃないような気がしてきたよ」
追い詰められているのはわかる、何かに縋り付きたいのもわかる
しかし、どこでも天の御使いの名を出すと途端に頼りきりになるのが今までのパターンだった
自分たちが何とかしようという気概はまったくなく、何もかも諦めてしまっている民を見るたびにどうしても嫌な気持ちになる
「天の御使いも楽じゃないね、目的がなかったら絶対やりたくないな」
村の近くの森を疾走しながら考えるのはそんな事ばかりだった
華佗と一緒にいた時もそうだが、自分は華佗と違って無償で施すということはできそうにない
育ってきた環境の違いもあるだろうが、北郷一刀にとって行動とは自分のためにすることであったし、これからもそうである
他人のためになにかするということは、他人の考え方として許容はできるが自分には理解できないものだった
「さてと、そろそろかな?」
深い森の中で、先はまったく見えないのに一刀は正確に賊の位置を捉えていた
その理由は、修行の末に身につけた操気法の一つで、外気を常に周辺に薄く放出しているためである
これは現代で言うレーダーの役割を果たし、自分を中心にして球形で最大で半径2qまで探知できる
一応全身から気を放出しているため気が使える人には気付かれるかと華佗にも見てもらったが問題はなかった
内気ではなく外気だからではないかと言っていたが、外気は自然に宿っているものだから探知されにくいのだろう
「なにごとも手際良くやった方が効率はいい、さようなら名も知らぬヒト」
その瞬間、地面が爆ぜ白いナニカが森の中を駆け抜けた
続いて聞こえるのは何かが倒れる音と小さな呻き声
賊の命が蝋燭の火を吹き消すように静かに消えていく
たまたま周辺の見張りをしていた男が帰ってきた時、そこにいたのは二人だけだった
一人は陽光を受けて白く輝く衣を纏う男、もう一人は自分のたちのリーダーだが後ろから首をつかまれぐったりとしている
「やれやれ、やっと戻ってきたのか?」
白服の男が待ちくたびれたとばかりに首から手を離し賊の親玉を投げ捨てる
「だ、誰だテメェ!!?カシラになにしやがった!
テメェ一人なんか仲間が来たら何もできねぇぞ!!!」
「仲間ってのはここにいた奴らの事か?
ここにいた奴らならみんなその辺でゆっくり眠ってるよ、二度と目は覚めないけどね」
「なッ・・・――テメェいったい何者だよ!?一人でそんなことできるわけねぇだろうが!!」
ヒステリックに叫ぶ男に大きなため息をついて事実を付きつける
「オレは天の御使いらしいよ?それじゃ、おやすみ」
目の前にいたはずの男の声は、なぜか自分のすぐ後ろから聞こえ、男の意識はそこでプツリと途切れた・・・――
あとがき
どうも、へたれキノコです
ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
やったまったー・・・どうしよう、なにこの一刀君まったく優しくない
それに恋姫の世界の民ってもっと暖かかったよね?
やってしまったモノは仕方ありません、それに私はまったく反省していない!
主人公が無条件にやさしいと思うなよ!?
世界の住人が誰しも綺麗な部分だけの善人だと思うなよォ!!!?
と、まぁこんな感じで他の恋姫小説とはちょっと違う感じになりそうです
ウチの一刀君は結構育ってきた環境悪いですからね、一般常識なんか知ったこっちゃねー
良い意味でも悪い意味でも意図せず"自由"にやってくれると思います
これからもへたれキノコをよろしくお願いします
さて、コメント返信のコーナー
第六話投稿時のコメントより・・・
Q1.ここからドコにいきダレに会うのか楽しみです
A1.一刀君は冀州へトボトボ・・・
ウチの一刀君は結構勢いでやっちゃうタイプなのであとから後悔することが多そうです
結構ダークな感じのキャラになるかもなんでここはコミカルな一面としてつけときたい!
Q2.どのルートも畏敬の面で見られそう。「天」とついていても見方によっては妖か妖術師みたいな扱いされそう
A2.その辺も相当曖昧ですよね、そもそも恋姫世界での妖術の扱いがイマイチわからんです
張三姉妹の舞台なんてあれ妖術使いまくってるのに民衆完全にスルーですからね
太平要術使ってた時期ならわかるんですよ、それ使ってほぼ洗脳に近いことになってるわけだから
だけどその後も誰もツッコまないしどうなってるんでしょうね?
まぁ個人的にこういったモノなんて自分に得かどうかで相対的に決まるものなんですよ
自分に害になりそうだと徹底的に排除するくせに、自分の利になるとわかると肯定するのが人間ってもんです
Q3.欠損していても治るあたり(中略)そんなまねが出来るのは(略)救世主くらいですよね、そのうちゴルゴタの丘(ry
A3.石をパンに、水をぶどう酒に変えれるわけですね!?
うーん、実は設定だけで考えるとものすごい万能なんですよこの力
電気と火が出せた時点で気付いた方も多いでしょうが、万物の元で自然そのものである外気を操れる
そうなると自然物であれば何でも生み出せることにはなるんですよね、ただし人工物は無理です
実際にはそんなことをするかって言ったら多分しないでしょうけど、チートにもほどがある
とりあえず今回は治癒の力でしたね、これは厳密には作り出してるわけではないんです
誰にでも気があると言ったように、治癒の場合その人の気の流れを強制的に正常化する処理をしているんです
だから結果として再生・復元といったように見えるだけで・・・
なにが違うのかというと、元以上にはならないってことと、元の状態にしかならないということです
単純な例で言うと老化した人を若返らせることはできないし、抜け落ちた歯は元に戻りません
なんか凄くわかりにくいですけど、スイマセンこんな説明で・・・
Q4.異形の力はどんな形で、大陸に広がっていくのか楽しみですね
A4.天の御使いを利用することでどんなことが起きるやら・・・
他の外史の一刀君ってほとんどの場合天の御使いを受け入れるんですよね
だけどウチの一刀君は仕方ないから使うかって感じです
できれば天の御使いなんてもの欲しくもないし厄介者だなぁ程度にしか思ってません
こんな天の御使いでも良いのだろうか・・・
さて、異形の力ですがもうなにこのチート、既になんだレーダーって?
もう世界観ブチ壊しですかね、だけど気って概念があるなららいろいろできる気がするんですよね
実際螺旋槍も気で回してる訳ですし、あれどんな原理になってるんだろ???
まぁそんな自由な発想で一刀君は力を使って行くので大陸大混乱は必至かなぁ・・・
以上でコメントへの回答は終了です
それではまた次回の更新で!
説明 | ||
ん゛ん゛っ・・・ どうもへたれキノコです、ついにやらかした感があります まぁこれは当初から予想してたことだったんでまぁ良いかなぁ あとはこれからどうするかですけど、矛盾だけはしないように気をつけないと・・・ そして初の戦闘ですけど短っ!!! 称号【戦闘描写は致命的】を手に入れた! |
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コメント | ||
追い詰められた群衆の心理なんて普通に考えるだけ無駄ですからね;(深緑) 次回作期待してます!!(拓ちゃん) この一刀が三国に行ったらいきなり切りかかられそうだな(VVV計画の被験者) 未知に怯えるのは知識持つ動物たる人としては当然なんでしょうね。それにしては恋姫たち、特に呉の面子は短絡的に剣抜きすぎな気もしますが。このまま行って遭遇する陣営はどこなんだろう。(FALANDIA) 恋姫の妖術の基準は自分達の無知を棚上げして少しでも理解できない知らないものなら自然現象だろうが全部です、知らない奇妙な生物は全部妖怪扱いでもあります(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) 一刀こぇぇぇぇぇぇぇwww(中原) |
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