真夏のスノーマン 第1話「公園に佇む雪だるま」 |
「真夏のスノーマン」
第1話「公園に佇む雪だるま」
始めに、この世界は現実世界と基本的には変わりありません。
不思議な力を持つ人間が存在する以外は……。
気温35度を超す猛暑日の公園に、それはあった。
それは、夏にはあまりにも似つかわしくない物体。
しかし、真夏の公園に大きな“雪だるま”は存在していた。
雪だるまの高さは、2メートル弱。大人が余裕で中に入れる大きさである。
公園に遊びに来ていた子供たちは、冷たい雪だるまを嬉しそうにハシャギながら触っている。
何故、雪だるまがあるのか?と、子供たちは疑問すら持たずに。
最近、この街では“歩く雪だるま”の噂をよく耳にする。
歩く雪だるまが、悪い人間を氷づけにしたり、雪だるまの中に閉じ込めたりしているそうだ。
実際、この一週間の間に氷づけにされた銀行強盗犯や、雪だるまの中に閉じ込められた引っ手繰り犯はいるのである。
今や歩く雪だるまは、ちょっとしたヒーローとして子供たちに人気が出ていた。
今、目の前にある雪だるまが、その歩く雪だるまなのではないかと子供たちは、思い思いに雪だるまに話しかけたり、または蹴っ飛ばしたり、やりたい放題だった。
日が暮れて、真っ暗になった公園には、昼間の子供たちと違う人間たちが集まり始める。
酔っ払いやホームレス、会社帰りのOL。そして、それらを狙う人間。
今、公園に若い二人の男がやって来てきた。一人は鼻にピアスをつけた男。もう一人は金髪の男である。
やって来てきた二人の男は狙う側の人間。今日も駅前で獲物を物色し、獲物の後をつけて公園まで来ていた。
獲物は会社帰りの若いOL。そのOLも後をつけられている事に気がついている。
足早に公園を抜けようとするOLの前に、鼻ピアスの男が現れて道を塞いだ。
OLは今来た道を戻ろうとするも、後ろでは金髪の男が同じく道を塞いでいた。
「何ですか?あなたたち。人を呼びますよ」
睨みつけながらOLは男たちに言うも、男たちは悪びれる様子はない。
「いやぁ〜。ちょっと、おねいさんと遊びたくてね」
「そうそう。ちょっと遊びたいんだよ。いいでしょ」
嘗め回すような視線を送りながら、男たちは言う。そして少しずつOLとの距離を詰め始めていく。
OLは道横の茂みに逃げようとした瞬間、首筋に衝撃が走った。
どうやらスタンガンを押しあてられたようだった。力なくその場に倒れこんでしまった。
「へへっ、さてと」
スタンガンを持っている金髪の男がOLの鞄に手を伸ばそうとする。
「まぁ待てよ。鞄は後でもいいだろ。それよりもこの女をさ」
鼻ピアスの男が、金髪の男を止めてOLをもっと茂みの奥に連れて行くように促した。
「そうだな……んっ?」
金髪の男は下品な笑みを浮かべる。その時、男たちの視界の中に不思議な物体が入り込んできた。
視界の中に入ったのは、子供たちに炎天下のもと、やりたい放題され形が崩れかけた雪だるまだった。
「何だよ、これ邪魔くせぇ」
鼻ピアスの男が蹴りを入れて、雪だるまを壊そうとした。
しかし、今にも崩れそうになった雪だるまから突如“手”が出てきて、その蹴り足を掴んだ。
「なっ……!」
鼻ピアスの男は、突然出てきた手に驚き態勢を崩してしまう。
そして、掴まれた足からあっと言う間に、雪が上半身までまとわり付いてきて、頭と一部を残して新しくできた雪だるまに閉じ込められてしまった。
「この野郎っ!!」
それを見た金髪の男は、雪だるまにスタンガンを食らわせようとした。
スタンガンが命中する寸前、雪だるまは崩れて無くなってしまった。
その代わり、雪だるまがあった場所には学生服を着た小柄が少年が立っている。
金髪の男は雪だるまの中から現れた少年にスタンガンを向けるも、届かない。
いや、一歩も動く事が出来なくなっていた。
金髪の男は、動かなくなった自分の足を見る。
「なっっ、何だよこれっ!」
驚愕の声が上がる。足はいつの間にか膝上までカチンコチンに凍ってしまっていたのである。
「今夜も熱帯夜だから、朝までには溶けると思う」
雪だるまの中から現れた少年がつぶやいた。
「お前、何なんだ?」
金髪の男は、少年に向かって怒鳴りつけた。
「別に。あんたたちが人の避暑を邪魔したのが悪い」
つまらなさそうに答えて、少年は公園から姿を消していった。
後に気がついたOLの通報によって、男たちは警察に捕まったのであった。
つづく?
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オリジナル作品「真夏のスノーマン」です。 好き勝手に書いてみました。 |
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