バカと優等生と最初の一歩 最終問題 |
バカテスト 数学
【最終問題】
問 120km先のゴールにA君は自転車に乗って時速20kmで向かい、A君がスタートしてから3時間 後にB君が車に乗って時速60kmでゴールに向かいました。A君とB君、先にゴールに着くのは どちらでしょうか。
島田美波の答え
『A君はゴールに着くのに120÷20=6で6時間かかり、B君は120÷60+3=5で5時間かかるのでB君のほうが先に着きます』
教師のコメント
正解です。島田さんはまだ漢字になれてないせいか文章題でよく間違えていましたがよくできましたね。読み書きはもう大丈夫でしょうか。この調子でがんばってください
吉井明久の答え
『A君の体力が続かないのでB君のほうが先に着く』
教師のコメント
どちらが早いかという部分だけはあってますが、これはそういう問題ではありませんので不正解とします。
坂本雄二の答え
『A(kihisa)君は90km地点でB君にはねられるので、B君のほうが先に着く』
教師のコメント
わざわざB君の追いつく地点まで答えてくれましたが、吉井君と同じ理由で不正解です。これがどの科目の問題なのか思い出しましょう
土屋康太の答え
『A(kihisa)君ははねられたあと病院へ運ばれ、B君は警察に連れて行かれたのでどちらもゴールできない』
教師のコメント
これは数学の問題です
「Aクラスの勝利です」
アタシ達のクラスにA・Fクラス全員が集まったところで高橋先生がアタシ達の勝利を告げた。それと同時に歓声を上げるAクラスのみんなと、対照的にがっくりとうなだれるFクラス。でもFクラスもよくやったと思う。今回もアタシが入れ替わってたのがばれたら危なかったもの。だからそんなに落ち込まなくても……。
『くぅ、せっかくのデート権が……』
『……手作りのお弁当……』
『優子さんに罵ってほしかった!!』
……前言撤回。存分にそこで反省してなさい! とくに最後の奴、アタシをどんなキャラだと思ってるのよ!?
「ゆーうこぉー」
「きゃっ、ちょっと愛子、危ないじゃない」
「べつにいいじゃん。勝ったんだからもっと喜ぼうよ」
急の抱きついてきた愛子に注意するけど聞いちゃいない。妙にハイテンションでアタシにまとわりついてくる。そしてアタシだけに聞こえるよう耳元でささやいてきた。
「それに、これでようやく吉井君とデートできるんだからさ……ちゅーの一つくらい奪ってきなよ」
「……!! 愛子っ!!」
まとわりついてくる愛子を引きはがして怒鳴ると、キャーッとわざとらしい悲鳴を上げて人混みの中へ入っていった。一応追いかけようとしたけれど、入れ替わるようにこちらへきた坂本君に呼び止められてそれもできなかった。
「よお、おめでとうさん。……なんか妙に顔が赤いが、大丈夫か?」
「……別に、何でもないわ。気にしないで」
息を整えつつあたりを見渡してみたけど、愛子の姿は見えなかった。坂本君に呼び止められなければ見失わなかったのに……でもちょうど良い、彼には聞きたいことがあったのよね。
「ねえ、坂本君? Cクラスで会ったとき、なんで秀吉か確認しなかったの? 見た目は完璧アタシだったでしょ」
その一点だけが疑問だった。あの中で坂本君が一番用心深そうだから、何らかの方法で確認しようとしてくると思ってたのだけれだど……。
「ああ、俺もそこのところ聞きたかったんだ」
「……? どういうこと?」
「正直、木下だったらあの場面ですぐ突っかかってくるか人を呼ぶかすると思った。でもそうはならなかった、明久が召喚しようとしたときも特に反応しなかったしな。それで秀吉なんだと思った。何でだ?」
そういうことだったのね。直前にアタシの振りをしてた秀吉を見つけたからそのままで行っても大丈夫だとは思ったけど、全く不審に思われなかったのはそのせいか。確かに、言われてみればアタシらしくなかったかもしれない。
「……てっきり代表あたりに見逃すよう頼まれたかと思ってた」
「あいつはそういうことはしねぇ。こういうことに関しては、良くも悪くも一直線だからな」
「代表のこと、よくわかってるのね」
「ただの腐れ縁だ……それで、どうなんだ」
「そうね、普段だったらそうかもしれないけど。今回はアタシが坂本君を倒さなければならなかったから」
何もなければ誰が倒そうが関係ないから、迷わず人を呼んだでしょうね。でも、今回はあたしが勝つことが必要だった。あの場で戦うと一対三になるうえに、そのうちの一人は土屋君だ。土屋君がAクラスどころか教師レベルの点数を持つ保健体育勝負じゃあまず勝ち目がない。だから、気づかれたら戦うしかないけれど、気づかれないうちは秀吉の振りをしていた方がいいと判断した。
そう説明すると坂本君は納得がいったというように頷いた。
「ああ、そういうことか。クラスにとっての勝利条件ばかりみておまえの勝利条件を忘れちまったってことか……」
そういってカラカラと笑う。
「ずいぶん軽いわね。負けたんだから、ほかの連中みたいにもう少し悔しがったらどうなの?」
「今回は俺にとってのマイナス要素はないからな。ま、あいつの不幸っぷりでも楽しませてもらうさ」
ああ、そういうこと……、確かにアタシが吉井君を誘えばあの覆面集団が黙ってないでしょうね。それを横で眺めているんだけでいられるなら、今の坂本君の態度もわかる。けど……。
「マイナス要素はない、ね。本当にそうかしら?」
「どういう意味だ?」
やっぱり気付いてないのかしら。今回の戦いがどういうもので、アタシが勝ったってことがどういうことなのか。ちょっと考えれば気づきそうなものなのにね。教えたところでどうにもならないでしょうけど、一応注意しときましょうか。
「後ろ、気をつけた方がいいわよ」
「はっ? 後ろ?」
「坂本君? 何がそんなにうれしいのか教えていただけないでしょうか?」
「アンタなんでよりにもよってAクラスの木下に負けるのよ!?」
だって後ろには妙に禍禍しい雰囲気の二人が立っているから。
「ちょっ、待てお前ら。これはFクラスの一員として勝利に貢献しようとした結果であって、そんなふうに迫られるような――ぐあぁ!」
「……雄二、女の子に迫られるなんて、許さない」
「待て翔子っ、同じ迫られるでもお前の考えてるようなもんじゃなく――」
『なに、坂本が女子に迫られているだとっ!?』
『しかも姫路瑞希、島田美波、霧島翔子の三人にだとっ!?』
『許せんなッ!!』
『よくよく考えたらこの状況も坂本が負けなければなかったんじゃないか?』
『なお許しがたいなッ!!』
「ふざけんなおまえら。この三人の相手がどんだけ大変かわかってんのか!?」
「坂本? ちょっとそれ、どういう意味よ」
「……雄二、こっちにきて」
「坂本君、向こうに席を用意してますから、ゆっくりお話を聞かせてくださいね」
「っざけんな!! どう見ても十字架じゃねえか!!」
「じゃあ坂本君、がんばってね〜」
「まてっ、木下! いや、待ってください!! 俺をこの状態で放置す、げふぅ」
巻き込まれてもたまらないし、さっさと退散させてもらうわ。
何か坂本君が言ってたようだけど、覆面かぶった一人に運ばれてったから何を言おうとしてたかまではわからなかった。
しばらく眺めていたら坂本君が十字架に磔にされてしまった。今坂本君は代表たちから尋問されている。最初は気絶してるから無理なんじゃないかなって思ったけど、どうやらその振りをしてただけらしく、代表がスタンガンをちらつかせるとすぐに起きた。
「まったく騒がしいわね、Fクラスは。まあ、そこに代表も加わってるから、あんまり強く言えないんだけど……」
「まああれくらいの方が僕たちらしいよね」
「それもそうじゃの」
「よ、吉井くんっ!? いつからそこに!?」
「……? 今来たところだけど? 木下さんに用があったし……」
独り言のつもりでつぶやいていたら反応があってびっくりした。しかもよりにもよって吉井君って……あたし変なこと言ってなかったわよね?
「……姉上、ワシもおるのじゃが……」
「あ、いたんだ秀吉」
「その扱いは酷くないかの!?」
「べつにいいでしょ……そ、それで、吉井君。アタシに用って?」
吉井君から用って何だろ? 特にこれといって思いつかないんだけど……はっ、ひょっとしてデートのお誘いとか!? 今回アタシがんばったし、結構かっこいいとこ見せれたんじゃないかしら。だとしたらそういう展開もなきにしもあらずってことで……どうしよう、まだ心の準備が……。
「あ、うん。ほら、今回の試召戦争、木下さんが雄二を倒したでしょ? だから賞品、っていうか命令は何にするのか聞いておこうと思って。うちのクラスの代表はあんな感じだから」
……まあ、そんなことじゃないかと思ってたわ。っていうか普通そうよね。まあでも、だったらアタシから言えばいいか。元々そういうつもりだったし、ちょうど命令権っていう便利なものも手に入ったことだし。
「じゃあ吉井君に命令させてもらうわ」
「……えっ、僕……?」
「ええ、そうよ」
自分が対象にされると思ってなかったのかしら。指名されたことに戸惑ってる吉井君。そんな吉井君にチケットを差し出して、
「吉井君、今度の日曜に――」
如月ハイランドに行きましょ。そう言おうと思ったとき、ふとCクラスの前で聞こえてきた言葉が頭をよぎった。
『僕、秀吉のお姉さんのことよく知らないし』
『無理矢理デートさせるっていうのも違うと思うし』
「……」
「……?木下さん、どうかしたの?」
「……えっ? ううん、なんでもないわ」
慌ててチケットをポケットの中に押し込む。
そうよね、まだアタシは吉井君の中では友人の姉、まずはそこから変えていかないと。
「アタシからの命令だけど……」
「うん」
改めて命令と聞いて体を強ばらせる吉井君にはっきりとアタシの望みを告げる。
「これからはアタシのこと、『優子』って呼んでくれる? アタシは『明久君』って呼ぶから」
「…………へっ? えっと、それだけでいいの?」
キョトンとした顔で尋ねてくる吉井君。目に映る範囲では、周りのみんなも似たような感じだ。さっきまで坂本君を取り囲んでた集団すらも動きを止めている
「ん〜、じゃあ二つになっちゃうけど、今のにプラスして、今度からあたしも愛子とかと吉井君たちのところに遊びに行っても良いかしら?」
少し愛子や代表、Aクラスのみんな(久保君を除く)に悪いと思わないこともない。今回の試召戦争はアタシのわがままで起こしたようなものだから……。
でもこれでいいと思う。だって――
「うん、もちろんだよっ! これからもよろしくね、優子さん」
――吉井君の満面の笑みが、他の人でも秀吉役のアタシでもなく、木下優子っていう女の子に向けられているんだから。
「……こちらこそ、これからよろしく。あ、明久君」
恥ずかしくてちゃんと吉……明久君の顔が見れない。きっとすごく顔が赤くなってると思う。さっきまでは平気だったのになぁ。誰かが明久君の笑顔はずるいって言ってたけどその通りだと思う。見てるだけでこんなにドキドキさせられるんだもの。向こうは全くそんな意識がないっていうのも質が悪いし。
「優子、それでよかったの?」
吉井君の前で赤くなってうつむいているアタシに愛子が話しかけてきた。その表情はいたって真面目で、だからアタシも自分の本心を伝える。
「別に良いわよ。アタシはアタシに胸を張れるよう、正々堂々行くわ」
そうはっきり告げると、愛子も笑ってくれた。
「うん、そっちの方が優子らしいね」
「愛子……」
「それじゃあみんなにもそう言っとかないと……みんなぁ、手伝ってもらって悪いけど、優子はこれで満足だってさっ!!」
『えっ? せっかくのデート権放棄したの?』
『おいおい、それじゃあいったい何のためにがんばってたんだよ』
『まっ、本人がいいって言うんならそれでいいんだよ』
『それより、赤くなってもじもじしてる優子さんもかわいかったよね』
『そうね、普段のきりっとしたのもいいけど……』
『ああ言うのをギャップ萌えって言うのかしら』
『あんなかわいい木下さんが見られるなんて、吉井君がうらやましいわ』
「……ちょっと愛子、これはどういうこと?」
「いや〜、昨日試召戦争やることになった後Aクラス全員に、優子が吉井君とデートしたがってるから手伝ってって――いひゃい、いひゃいっれわ」
「……そんなおしゃべりな口はこうしてやるわよっ!!」
なんてことしてくれるのかしら、こいつは。宣戦布告されたって言ったときもすんなり受け入れるし、特にメリットもない勝負なのに勝って歓声上げてるのも何でだろうなと思ってたけど……まさか全員知ってただなんて。
まあ決着が付いて吉井君誘ったらばれることだから良いといえば良いんだけど、何となくしゃくだから愛子のほっぺたをおもいっきり引っ張ってやる。
「ねえ、今僕の名前が聞こえた気がしたけど……、それにデートって?」
愛子とじゃれていると不意に明久君の声が聞こえてきた。
ってそうだった、すぐそばに明久君がいること忘れてた!! どうしよう、今の全部聞かれてたかしら……。いや、なにをうろたえているの、優子。これはむしろチャンスよ。今この場で明久君をデートに誘うのよ。そう、ポケットからチケットを取り出して、チケット手には入ったから一緒に行かない?、っていえばすむこと。さあ、言うのよ、優子!!
「ねえ明久君、アタシこの前如月ハイランドのペアチケットもらったんだけど……よかったら今度の日曜日、アタシと一緒に行かにゃい?」
……!? 噛んだ!? この場面で噛んだ!! さっきとは別の意味で顔が赤くなってくのがわかる。アタシのばかっ、何でここで噛むのよ!! そしてすぐ後ろで笑いをこらえている愛子……後で絶対シメる!!
まあ、幸いというか明久君は気づかなかったようで、とくに反応することなく返事をくれた。
「ごめん、その日は秀吉とデートの約束してるんだ」
その台詞を聞いたとたん、空気が凍りついたように感じた。さっきまであった顔の熱も嘘のように引いていった。
……今、吉井君はなんて言ったのかしら。
「……ふ〜ん、そうなんだ。秀吉と、遊びに行くんだ。それじゃあ仕方ないわね」
「明久っ!?おぬし、なんてことを――」
「秀吉、ちょっと話があるからこっち来てくれる?」
こいつは……!! アタシに化けて人を罵倒したり、アタシよりも男子にモテたりするだけじゃ飽き足らず、せっかく勇気出して誘ったデートすら邪魔するっていうの!? これは綿密な話し合いが必要ね。
「ま、待つのじゃ姉上。別にワシは姉上の邪魔するつもりはな――」
「問答無用っ」
うっさいわね。面倒だから襟首掴んで引っ張ってやる。さて、いったいどうやってこの弟に分からせてやればいいんだろうか。
『これより異端審問会を行う』
『異端者には死を』
『ちょっと待ってよ、みんな。なんで僕を縛り上げてるのさ』
『明久君、ちょっとお話がありますからこちらに来てくれますか?』
『アキ、やっぱり木下が良いって言うわけ!?』
『二人とも!? かなり怖いんだけどっ!?』
振り返ってみれば、どこからともなく現れた覆面集団と女子二人に引きずられてく明久君の姿が見えた。
うん、女の子の誘いを断って秀吉と遊ぶなんて言う明久君は少しお仕置きされたほうが良いと思う。
「……バカ」
思わずそんな言葉が漏れた。
あの吉井君を振り向かせないといけないなんて、ホントこれから大変そうね。でも、楽しそうだとも思う。
だってアタシは、ようやく最初の一歩を踏み出せたのだから。
あとがき
というわけで、いかがでしたか、バカと優等生と最初の一歩最終問題
まずはお詫びを。前回の作品投稿時に土日までにはといっておきながら過ぎてしまいました、申し訳ありません。……研究室がっ、研究室がっ!
それはさておき、今回の話ですが、前回の試召戦争の終了後の、いわば戦後処理の段階ですね。Aクラスが勝ってFクラスが負けて、優子がささやかな願いをかなえて今回の試召戦争は終結となりました。
今回のオチっていうのは読者の皆様的にはどうなんでしょうか。割とありふれた特にひねりのないオチとなったように思えますが。なんていうか、明久を誘った場合、すんなり行くようには思えなかったんですよね。命令権をデートに使わなかった優子も優子ですが。この話はこういう風な流れにしようとはだいぶ前から思っていたので、第二問あたりでも秀吉がそれっぽいことをいってたと思います。大体の人はこのあたりでもうわかっちゃってたんじゃないかと。まあ、女心がわからないから(自分もわかりませんが)明久なんだろうと思います。そして優子は途中からキャラがぶれたような気がします。ほんとにこれでよかったんだろうか……。
何はともあれ、これでバカと優等生と最初の一歩はおしまいとなります。ずいぶん長く書いていたようにも思えましたがまだこれだけしかかけてないんだなぁと今かみ締めています。
次は何を書こうかまだ決めていないと現実の忙しさでしばらく投稿できないかもしれませんが、まだ明久と優子のデートとかも書いてないし、他作品でも書きたいのがあるのでこれからも書き続けていくつもりです。
それでは、次回お会いできることを楽しみにしています
説明 | ||
どうも、naoです。 お待たせいたしました。土日には投稿するとか言っておいて間に合いませんでした。申し訳ありません。 今回は試召戦争後の話になります。一応ここでひとつの話の区切りとなります。ここまでお付き合いくださりありがとうございました。それでは明久と優子の物語、バカと優等生と最初の一歩、最終問題をお楽しみください |
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コメント | ||
乙です。楽しませてもらいました♪(tanaka) namenekoさん、ありがとうございます。まだまだ書いてみたいと思う話はありますので、頂いたメッセージを励みにこれからも執筆活動を続けていきます。(nao) 続きも出来れば読みたいです これからもガンバっ!!(VVV計画の被験者) |
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