魏√after 久遠の月日の中で 11
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「………………」

 

「姉者」

 

「………………」

 

「姉者!!」

 

「……おぉう!どうした秋蘭?」

 

今私は姉者と共に兵達の調練を行っている。

華琳様の仰っていたとおり、予定通りの仕事だ。

本当ならば北郷を探しに私も出たいのだが、華琳様の命には逆らえない。

霞と凪ならばすぐに見つけて連れて来てくれるだろう。

それよりも……

 

「そんなだらしない顔をしていると、兵達に笑われてしまうぞ?」

 

「んなっ!!私が北郷の事を考えてだらしない顔をしているだと!?」

 

「……姉者……」

 

姉者が朝議からずっとこの状態なのだ。

兵達に指示を出してはだらしない顔で呆けている。

 

「北郷の事など私は言っていないし、呆けていたのも事実だろう。姉者がそんなでは北郷に笑われてしまうぞ?」

 

「しゅ、しゅうらん〜」

 

気落ちする姉者もかわいいなぁ……

だが仕事に関しては許しはできない。

 

「北郷に笑われるだと?…………許せん!!」

 

怒り顔で兵達に檄を飛ばし始めた。

どうやら想像して腹を立ててしまったようだ。

兵達には悪い事をしたが、これも訓練だと思って頑張って欲しい。

 

「あら、随分と張り切っているようね」

 

声に振り向くと、華琳様が姉者を見つめていた。

 

「どうかされましたか?」

 

時間的に、華琳様はまだ自室で仕事をしているはずだ。

 

「今日の分の仕事が終わったの。だから稟達の方を手伝いにいくところよ」

 

「なんと……」

 

まだ昼時前だというのに、華琳様はもう仕事を終えたというのか。

加えて配下の将の手伝いにまで、自らがでるとは……

 

「ふふ……」

 

「……何よ秋蘭」

 

「いえいえ、何でもありません」

 

どうやら張り切っているのは姉者だけではないらしい。

北郷。お前はここまで皆に思われているというのに、何故すぐに帰ってこないのだ。

何か理由でもあるというのか?……いや、だとしても関係ないな。

再会の際には、きついお灸を据えてやるとしよう。

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「……うぉっ!」

 

「ん、どうした?」

 

「いや、何か急にすごい寒気がして……」

 

何だったんだ一体。

まぁいい、俺は気を取り直して辺りに注意を向ける。

 

今俺と華雄は深い森の中にいる。

理由は単純明快。迷ったのだ。

細い獣道を進んで行くため、纏風からは降りている。

纏風は手綱を持たなくても着いてきてくれるため、とても助かっている。

 

華雄が言うには、この森には獰猛な獣が群れで住んでいるらしく、とても危ないらしい。

森に入ってからそれを聞いたため、出ようとした頃には既に迷っていた。

 

時刻は既に夕暮れ、森の中で夜を迎える事になりそうだ。

何処か落ち着ける場所を見つけないと、本格的に危ない。

 

と、辺りが暗くなってきた頃大きな洞窟を見つけた。

華雄と纏風を残して松明を持ち中を調べる。

前に入った温泉の洞窟とは違い、中は直ぐに行き止まりになっていて、高さ広さが十分にあった。

枝の束や、火消し跡、恐らく前に森に迷った人が使ったのだろう。

 

どうやら今夜はここで過ごせそうだ。

 

 

 

「一刀は、恋や愛を知っているのか?」

 

「ぶっ!!」

 

夜。洞窟で一夜を過ごす事になった俺らは、火を囲んで座っていた。

内部の広さから纏風までも入る事ができ、洞窟の脇で膝を折って休憩している。

そんな中、華雄からとんでもない事を聞かれた。水を飲んでいた俺は軽く噴出してしまった。

 

「げっほげほ……急になんでそんな事……」

 

「いや……前立ち寄った村で、一刀は複数の女と抱き合っていたではないか」

 

「……見てたのか」

 

「あぁ、別に複数の関係をとやかくいうつもりは無い。だが私は、知っていると思うが男女の関係というのに疎くてだな……できるのであれば、教えて欲しいのだが」

 

「教えるって……」

 

華雄の事だから、色恋沙汰は「必要無い」とばっさり切り捨てると思っていたのだが……

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「私も今まで関心は無かったんだが、一刀と出会う前に古い友人に言われてな……」

 

静かに目を瞑り思い出すように話す華雄。

 

「そいつも子供の頃からずっと武芸一筋でな。恋もしたことがなかったらしく、悩んでいたらしい」

 

パチパチと火種が爆ぜる音が洞窟に響く。

華雄も水を飲み、再び口を開いた。

 

「その気持ちが知りたくて、そいつはある男に頼んでみたんだ。結果は……想像以上だったらしい。それからはもう、そいつはその男に夢中だそうだ」

 

可笑しそうに笑う華雄。

俺は釣られて笑う事が……できなかった。

華雄の旧友、子供の頃から武芸居一筋で、『甘い時間』というのが知りたくて俺に頼んできた彼女が思い浮かんだのだ。

 

「だから私も、そいつにそこまで言わせる恋というものが気になったんだ」

 

だから……

と頼む華雄に、俺はある質問をした。

 

「その人は、今も幸せそうだった?」

 

俺の質問に、華雄の顔が曇る。

 

「……そいつの思い人は、数年前行方不明になってしまったらしくてな。私も会って見たかったんだが叶わなかった。幸せそうかと聞かれると、何とも言えん」

 

「……どういう意味?」

 

「本人は、その男を愛した事に後悔は無いと言っていたが……たまに浮かべるそいつの顔が、見ているこっちが哀しくなるほど痛々しいんだ」

 

華雄の言葉に、胸に深い痛みが走る。

彼女と交わした約束。

いつか二人で羅馬へ旅に出るというもの。

その約束を俺は守れなかったのだ。

 

「そっか……」

 

自分の不甲斐無さに嫌気がさす。

俺は緩む涙腺を必死に抑えた。

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華雄の申し出はもちろん断った。

今の自分にそんな資格なんて無いのだから。

 

持っていた保存食で夕食を済ませ、明日の事も考え俺達は早めに床に着いた。

 

 

 

「おぉおおおおおおおお!!!」

 

大きな雄叫びに目を覚ます。

同時に、体に纏わりつく様な強い殺気を感じ飛び起きた。

洞窟内を見回すが、警戒するように立っている纏風が居るだけで、華雄の姿が無い。

急いで一心を掴み外へ向かう。

 

 

強い朝日を手で遮りながら洞窟を出ると、華雄が熊と立ち回っていた。

その熊が、尋常じゃない大きさだ。

体長は五メートルを程だろうか。

この世界は人だけでなく動物も規格外らしい。

 

「華雄!」

 

「一刀か!!」

 

華雄が熊の一撃を金剛爆斧で抑えながらこちらを向いた。

と、熊の瞳が怪しげに光る。

 

「華雄!前だ!!」

 

「なっ……ぐ、あぁああああぁあああぁああぁぁああああああ!!!」

 

抑えていた手をそのままに、熊が鋭い牙で華雄の肩を喰らった。

 

「くそぉおおおおお!!」

 

全速力で両者へ向かい、そのまま熊へ一撃見舞う。

熊は華雄から離れそれを躱した。

その隙に華雄を抱き洞窟前へ後退する。

 

「ぐ……うぅ……!」

 

華雄の傷は浅くは無い。血が多く流れ、今すぐにでも手当てをしなければ危険な状態だ。

熊へ視線を向ける。

口の周りについた血を、舌なめずりしていた。

次はお前だ。と言わんばかりに俺を見て唸っている。

 

「……ごめん華雄。少しだけ待ってくれ」

 

華雄を寝かせ、一心を構える。

怒りが沸々と湧いてくる。華雄を傷つけた熊に対して。そして注意を逸らせてしまった自分に対して。

 

四肢を地に置き牙を剥く熊へ向かい、俺は地を蹴った。

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あとがき

 

 

 

どうもふぉんです。

幾分落ち着いてきましたのでupです。

内容はいつも以上に薄いですが、ご了承を。

 

突然ですが、自分はどうやら音々音がかなり好きみたいです。

ロリコンではないです。多分……

 

殆どがツンを占めるキャラの、デレの破壊力は以上だと思います。

桂花然り、思春然り、ねね然り。個人的に詠はデレが多いかな、残念。

 

ではまた次回作で会いましょう。

説明
魏√after 久遠の月日の中で11になります。前作の番外編から見ていただければ幸いです。

それではどうぞ。
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コメント
魏のお歴々が虎視眈々と獲物(?w)を狙う雌豹の如く漲ってきていますな・・・それを考えれば目の前の大熊がそんなに怖く感じないのは何故だろう?w(深緑)
まぁ昔にはいたらしいねぇ・・・それくらいのひぐま・・・(七夜)
え!熊狩りはこの外史では常識とおもってたから以外だw(サイト)
一刀は熊に勝つ自信があるのでしょうか?そして魏の皆さんはりきりすぎですね。(mokiti1976-2010)
ふむ、まぁ熊に関しては置いとくとして・・・やはり華雄姐さんも餌食になるんですかねぇ? (よーぜふ)
お〜っと、なんだなんだバトルか、霞か凪の乱入フラグですか?(ポセン)
一応1200kg弱のおヒグマが確認されてるらしいからギリギリいてもおかしくない。が、人間ではどうにもならないな。ぶっちゃけ機関銃持っててもやりたくないw(hyde)
5メートルって家ぐらいの大きさなんじゃwww(中原)
一刀の奮闘に期待、続きを待ちます。(kanade)
あれ? ヒグマって大きいのでも3メートルくらいだよな・・・  5メートルだと・・・(きの)
一刀に勝機はあるのか!?(poyy)
5mを超える熊って事はグリズリーの倍近くになるのか……って勝てるのか!?(イタズラ小僧)
タグ
真・恋姫無双 一刀 華琳 春蘭 秋蘭 華雄 

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