真・恋姫†無双 たった一つの望み 第七話
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この世に存在する人は、誰にだって必ず存在理由があるはず

 

中でも他者に"いて欲しい"と、そう望む他者が多ければ多いほど、その人の存在価値はきっと高い

 

この言葉に共感できる人は下の問いをどう思うかな?

 

高い地位に就き、裕福だが誰からも嫌われる人物

 

地位もなく名誉すらなくても、誰にでも好かれる人物

 

社会的には前者の方が上だが、上の前提では後者の方がずっと上のはずだよね?

 

だけど多くの者は前者を望むことが多い

 

その理由はなんだろう?

 

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何でこんなことに・・・

 

男の頭に中はそれでいっぱいだった

ついさっきまで仲間と一緒に酒宴をしていたのに、次はいつ村を襲おうかと仲間と笑いながら話をしていたのに

首筋に強い痛みを覚えた瞬間、体が痺れて動かなくなった

それから目だけを動かして必死に自分がどうなったのか把握しようとして・・・

 

目の前に仲間の顔があった、よく知った顔だ

出会ったのは数ヶ月前、それから何度も一緒に村を襲ったし酒を飲みながら話すことも多かった

 

そいつが目の前で死んでいた

 

体は動かせず、目の前で仲間だった奴が死んでいて、なにが起こっているかわからない

周囲に気を向けると、なにかが倒れる音とくぐもった悲鳴が断続的に聞こえてくる

突然のことに混乱していると、急に首をつかまれて体を起こされ、顔を上げさせられた

 

「君がこの賊の主導者であってるかな?」

 

話しかけてきたのは白い仮面をつけ、口元も白い布で隠した全身白尽くめの男だった

混乱で口が開かず、かといって体を動かすこともできずに無言でいると、そいつは言った

 

「もう一度だけ聞くよ、君がこの賊の指導者かい?

 答えないなら君に用はないから今すぐ死んでもらうよ」

「は・・・はひ、そう・・・です」

 

小さな掠れた声は、自分から出されたものとは思えないほど普段とかけ離れた声だった

 

「そうか、それじゃあと一人片付けたら一緒に来てもらうよ」

 

そう言うと男は自分を放り投げ、見張りに出ていた仲間をあっさりと殺した

自分の横にいたはずの男が、気が付いたら仲間の首を後ろから一突きしていたのだ

信じられなかった、今見た光景も、自分の状況も何もかも・・・

 

――あぁ、これは夢なのか

 

男は目の前が暗くなっていく中で、そんなことを思った

 

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「やれやれ、人が死ぬのなんて何度も見た事があるだろうに

 死ぬのが自分の仲間だとこれか、わからなくはないが呆れるね・・・」

 

そういって見下す先にあるのは、気を失っている様子のたった今全滅させた賊の頭だった者

何度となく村を襲って人を殺してきたはずの男でも、自分が同じ状況になればこのざまだ

 

「さっさと村に戻って報告しますか」

 

最初に首を掴んでそのまま電気を流して痺れさせた賊の手足をしっかりと縛りつける

意識さえあればそろそろ動けるようになっていたかもしれないが、気絶しているのは好都合だった

めんどくさそうに男を肩に担ぐと村へと戻ることにした

 

村へ戻ると村人たちが入り口付近に集まって、心配そうにこちらを伺っていた

噂の天の御使いに賊を任せたは良いが、本当かどうか心配になったというところだろうか

どれだけ評判を聞いていても、実際に一人で100人近い賊を討伐できるか信じられなくなるのもわかる

万が一噂が間違っていたり、賊を中途半端に刺激して討伐したと嘘をつかれても困るだろう

 

「だからこそこうやって一人連れてきたんだけどね・・・」

 

ため息交じりに小さく呟いた言葉は、そのまま風の中に消えていった

 

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

 

村に入ると無事を聞かれ、大丈夫だと伝えると村の中心にある広場まで移動した

 

「賊はしっかりと討伐しましたよ、これでこの村が同じ賊に襲われる心配はもうないでしょう」

 

そう言って肩に担いでいた男を集まった村人の中心に放り投げる

 

「証拠として賊の頭だった人を連れてきた、賊がどうなったかも聞くといい」

 

それがこの男をここまで連れてきた理由の一つ

賊を討伐したという事を討たれた本人の口から証明させるための残された一人

 

そしてもう一つの理由は・・・

 

「それとこいつの処分はあなた方に任せますよ

 この村で働かせるなり身包みを剥いで放逐するなり好きにしたらいい」

 

または怒りを発散するための生贄として殺してもいい・・・――

 

最後の一言は言葉にはしなかったが、その可能性だって十分にある、むしろ殺される可能性は高い

賊によって奪われたものの中には、二度と帰ってこない命だってあったはずだし怨みもあるだろう

 

(さて、どうなるかな?さすがに目の前に対象があれば村人の怒りも限界を超えるか、それとも・・・)

 

一刀にして見ればどちらだっていい

村人が男を殺せば、その命を奪ったという行為が賊のしてきた事となにが違うのかを問い

もしも生かすのであれば、男に殺された人々の無念を説き怨みを持つ人はどうしたら良いのかと問いかける

 

重要なのは天の御使いを村人に十分に印象付ける事

答えのない問いを村人に投げかけることで、天の御使いという存在を少しでも広める

気になることはそう簡単に頭から離れない、この話を聞いた行商人も噂を広めてくれるだろう

 

――つまり男は正しく天の御使いの生贄に他ならない

 

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一刀はあれから村を離れて、再び冀州を目指して歩いていた

路銀は盗賊が貯めていたものを回収してきているため問題はない

 

結局、男は怒りに狂った村人の手によってその命を散らした

 

男を無理矢理叩き起こし、その口から仲間が皆殺しにされたことを告げ

天の御使いに対する畏怖を村人たちに沁みこませた

その身に向けられる感情を理解したのか、謝罪の言葉を何度も吐いた

 

――それでも男はその命を失った

 

怨みもあったのだろう、誰も止める事なく男は暴力に晒された

感情で他者の命を奪う行為が終わり、しばらくして冷静になりかけてから楔を打った

 

「君たちは自分の感情を満たすという欲望に従ってその男を殺した

 だけどそれは賊が欲望のままに村を襲うのとなにが違うんだ?」

 

しん・・・と静まった広場、村人の目には困惑が浮かんでいる

 

「悪いことをした者はその報いを受けなければならない、それが普通の考え方だろう

 だから悪いことをしてきた賊は命を失うことになった、そこまではいい」

 

では、と問いかける

その賊の命を奪った君たちは自分をどう思う・・・と

 

「人が生きるということは他の種の命を奪うことだ

 命を奪うこと無しに、人は生きることも子孫を残すこともできません

 人は自分のために奪われた命の上に立って存在している」

 

それは動植物の命を奪って糧としているなら当然の事で今更確認することではない

 

「だが今奪ったその命は生きるために、存在するために奪ったものではない

 君たちが自分の確固たる意志で、"自分のためだけに"命を奪った

 その行動原理は賊となにが違う、なにを持って君たちは是とするのかな?」

 

ニヤリと隠した口元が歪み、村人たちに答えのない問いを投げかける

なにも考えず勢いに任せた者に、天の御使いとしての言葉をできるだけそれらしく告げる

 

「これは答えのない、しかし考えなければいけない問いだ

 君たちが奪ったその命、いつか自分が存在するために奪ったのだと言えるようにね

 これからは賊に襲われる事もしばらくない、これからはその問いを胸にがんばって生きるんだ」

 

そうしてすっかりしまった静かになった広場を再び盛り上げ、礼として食料を貰い村を後にした

 

歩きながら、村を出る時見送り来てくれた村の長がそっと聞いてきた言葉を思い出した

天の御使い様は奪った命をどう思っているのですか?・・・と

その質問に一刀は笑顔で返し、無言のままに村を後にした

しかし、今思うと答えてあげても良かったのかもしれない

 

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――彼らの命が天の御使いを存在させているのですよ・・・と

 

 

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あとがき

 

 

どうも、へたれキノコです

前回に引き続き完全に悪役の一刀君です

相変わらず話の進まない小説でごめんなさい・・・

今回書きたかったのは一刀君は目的のためだけに行動している事と一刀君のやり方

ここまで人の弱みに付け込む主人公ってそうそういないんじゃないだろうか・・・

だけど実際どうなんでしょうね?

他の外史でも村人巻き込んで戦わせてたりしますけど、村人が一刀君のように悩む描写って見たことないんですよ

そういう時代でそれが一般常識だって言われたらそれまでなんですけど村人にそこまでの度胸ってあるのかな?

そんな疑問から今回は村人を悩ませる一刀君を書いてみました

ちなみに一刀君の最後の台詞は屁理屈です、ぶっちゃけ一刀君も深く考えてないです

答えない問いだから深く考えてもしょうがないって感じですね

へたれキノコはこういう辺な事考えるのが好きなので、これからも読みにくい小説になるんだろうなぁ

 

これからもへたれキノコをよろしくお願いします

 

コメント返信のコーナー

 

第七話投稿時のコメントより・・・

 

Q1.一刀こぇぇぇぇぇぇぇwww

A1.ククク、いいぞもっと怖がれ!

 

その調子で怖がってください、へたれキノコが喜びますw

 

Q2.恋姫の妖術の基準は(略)少しでも理解できない知らないものなら自然現象だろうが全部です

A2.こうしてみると酷い定義だ

 

間違いなくウチの一刀君の力は妖術扱いされますね・・・

とはいえ妖術って実際どういう原理なんだろうなぁ、一応の理論体系だけでも知っておきたいものです

そうそう、ウチの一刀君の力ってよくある魔法と似てるかもしれない

内気を自分の魔力【オド】だと考えると外気はマナになるのかな?

あとはそれで電気だの火だの出して、気弾だと魔力の塊そのまま飛ばしてる感じになるのかしら?

 

Q3.このまま行って遭遇する陣営はどこなんだろう

A3.長沙から冀州に向かってるとすると・・・

 

あの世界だと長沙行ってれば孫家の誰かには会えたのになぁ

冀州か〜、冀州と言えば誰がいたかな・・・?

 

Q4.この一刀が三国に行ったらいきなり切りかかられそうだな

A4.それでなくとも基本的に刃物向けられる世界ですしね

 

原作で一刀は何回刃物向けられたことやら・・・

もしかして挨拶代わりなんじゃないかと思いましたよ、私は

 

Q5.ここの一刀は問答無用ですね

A5.原作みたいなぬるい環境で育ってないですからね

 

過去の経歴だけで考えたらこの世界の武将と大差ない感じですし

原作みたいなやさしさとかそういうものとは無縁だろうなぁ

 

Q6.次回作期待してます!!

A6.ちょっと悩みましたw

 

コレ見た時ね、次の話まだですか?って意味に辿りつく前にね

今やってるやつ打ち切りで次の書いてくださいって事かと思ったw

だって次回作とか書いてあるんだもん!

うれしさがこみ上げる前に落ち込んだというナイストラップコメントでした

上げて落とすじゃなくて落としてから上げられるとは思わなかったぜ・・・

 

以上でコメントへの回答は終了です

 

 

それではまた次回の更新で!

説明
引き続き黒い一刀君をお楽しみください
筆者は根性が捻じ曲がっているようです
それでもよろしい方は深く考えずに読むことをオススメします

byへたれキノコ
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コメント
なんというか方法も手段も選ばない一刀ですな;(深緑)
遠家が滅ばされるのか!?(根性が曲がってても良いと思います!!続きを書いてくれれば!)(中原)
冀州…袁紹?(FALANDIA)
タグ
真・恋姫†無双 北郷一刀 

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