ちーうーさん 継い姫†無双 季節ネタ編
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scene-漢女塾

 

「七五三?」

「うん!」

「あのな季衣……」

 話があると言うので教室に集まる一刀たち。

 壇上に上がったのが季衣と鈴々という珍しい事態に皆の注目が集まった。

 季衣が黒板に書いた文字を見て一刀が困った表情を見せる。

 

「……似合いそうだけど、七五三はもっと小さい子がやるもんだぞ」

「ちょっと兄ちゃん! まさかボクが七五三やりたいだなんて思ってないよね!?」

「え? 違うのか?」

「兄ちゃん!!」

 怒りを露にする季衣を鈴々が笑う。

 

「にゃははは。似合いそうなのだ!」

「なんだとちびっこ!」

 今にも喧嘩を始めそうだった二人を一刀が止める。

 

「そうかゴメン、鈴々の方だったのか。うん、鈴々もよく似合いそうだ」

「お兄ちゃん!?」

「あはははは! よかったじゃんちびっこ」

「いくらなんでもひどいのだ! 鈴々は大人なのだ!!」

「違うの? じゃあ……」

 見回した一刀と目が合った流琉がにっこりと否定する。

 

「もちろんわたしじゃないですよ兄様」

「う、うん。……璃々ちゃんだよね。わかってるさ」

にっこりとはしていたが目が笑ってなかったので一刀はからかうのを諦めた。

 

「あのね、こないだ出かけた時、ちっちゃい子が綺麗な着物着てお母さんたちと歩いているの見たんだよ」

「璃々も羨ましそうに見てたのだ!」

「それでね今年の七五三、まだ間に合うんだって!」

「璃々ちゃんの方は?」

「璃々がしちごさん……?」

 自分が七五三の対象となってると知り、びっくりしている璃々。

 

「璃々もやりたいよね?」

「たぶんやりたいのだ!」

「綺麗な着物着たいよね?」

「絶対似合うのだ!」

 季衣と鈴々が璃々を促す。

「うん! 璃々も七五三やりたい! ……でも、いいの?」

 

 

「ならば七五三を行いましょう」

 華琳が決定した。

「私も興味があったわ。璃々の希望ならばちょうどいい」

「華琳が?」

「むこうに戻った後、自分の子にもさせてあげたいじゃない」

 一刀に意味ありげな視線を送る華琳。だがそれも当の相手の次の発言で霧散した。

 

「華琳の子か。すっごい可愛いんだろうなお母さんに似て。うん、楽しみだ♪」

「とっ、当然でしょ!」

 華琳は途端に真っ赤になる。

 

「……ともかく、七五三をやるわよ!」

 誤魔化すように宣言した華琳に春蘭が聞く。

「はあ。……華琳さま、しちごさんとはいったい?」

 

「なれば本職でもある儂が説明せねばなるまい」

「にゃ? 師匠が七五三?」

 いつのまにか壇上に現れた卑弥呼。

 

「そもそも七五三とは神社の行事であるぞ! その名の通り、七歳、五歳、三歳の子供の成長を祝うのだ」

「ほう。だから七五三か」

「うむ。オノコは三歳と五歳、オナゴは三歳と七歳で行う。ちなみに漢女は三歳、五歳、七歳全てで祝うことが許されておる!」

「いやそんな小さい頃から目覚めちゃうもんなのか?」

 一刀の突っ込みはしかしスルーされた。

 

「本来は十一月の十五日に行うのだが親の都合などもあるのでな、近年は今頃の時期に行えばよいとなっておる」

「結構いい加減なのね。で、子供を着飾らせてなにをするの?」

「神社の管轄と言ったであろう。神社や寺を参拝するのだ」

 卑弥呼の説明に首を捻る者がいた。

 

「にゃ? でも師匠、ボクこの神社で七五三見てないよ」

「そう言えばそうやな。どないなっとん?」

「……この乙女神宮は強き乙女を育成するための神社。本来なればオナゴの七五三にこれほど相応しい神社もあるまい。なれど、近頃の客がのう」

 沈んだ表情を見せる卑弥呼。

 

「なるほど。この神社の客といえば巫女を見に来た男たちがほとんど」

 人和が眼鏡に手をかけながら説明を続ける。

「そんな男たちが群がる神社に子供を連れて行く気がしないのでしょう」

 人和の言葉に皆が納得した。

 

「そりゃそうか。みんなの巫女さん素晴らしいから奴等の気持ちもわからんでもないけど」

「うむ。若いオノコを魅了するのもまた巫女としては誇るべきこと。……しかし、七五三が一件もないとは……ググググ。くやしいのう、くやしいのう」

 歯軋りして悔しがる卑弥呼を璃々が慰める。

「うん。じゃあ璃々が七五三やってあげる」

 にぱっと笑顔を見せる璃々。

「そうか。すまんのう」

 卑弥呼は優しい目で璃々をなでる。

 

「あとは参拝が終わったら親子そろって写真を撮るのが普通であるな。それもあって子供だけでなく母親も着飾る」

「写真? そんならウチが撮ったるわ」

 真桜の申し出に卑弥呼は首を横に振った。

「いや、写真館のスタジオで本格的に撮るのだ。プロのレンズ越しのあの視線に晒されると儂など思わず脱いでしまいたくなるぞ」

 頬を染めて、もじもじくねくねとする卑弥呼に一同はげんなり。

 

「じゃ兄ちゃんもドレスアップしないとね!」

「え? 俺?」

「うん。璃々のお父さんのかわり。親子で写真撮るんでしょ? お父さん役がいた方がいいもん」

 季衣の言葉に璃々も目を輝かせる。

「いいの!?」

 

「ええと……制服じゃまずいよね?」

「儂が手配してやろう。璃々の方は馴染みの美容院で頼んでおく。着付けは大変だがいい経験になろうぞ」

「ありがとう♪」

「うむうむ。北郷殿の着付けは儂にまかせるがよい。ぐふふふふふふ」

 卑弥呼の様子に嫌な汗が流れる一刀。

 

「やった。これで長い飴が!」

「うまくいったのだ!」

 壇上ではしゃぐ季衣と鈴々。

 

「なんだお前ら、千歳飴が目当てだったのか?」

「えへへ〜♪」

「だって七五三しないと手に入らないのだ!」

「ちとせ飴? 飴と聞いては風も黙ってられないのですよ」

 いつも通りの半眼を光らせ、咥えていた飴を掲げる風。

 

「千歳飴とは子の長寿を願って長く作られた紅白の飴ぞ。七五三には付き物でな、千歳飴袋に入れて子に持たすのだ」

 卑弥呼の解説に真桜が手を打つ。

「なるほどな〜。長生きやから長いんか。となると……」

 

 

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scene-乙女神宮

 

「じっとしておれ」

「そ、そんなこと言われても……ちょ、ちょっともう少し優しく」

「ふむ。きつかったか? なればこれぐらいで……」

 

「おや、稟ちゃんどうしました? 鼻を押さえて」

「……はっ? な、なんでもありません」

 一刀を呼びに来た風と稟。しかし扉の向こうから聞こえてきた卑弥呼と苦しそうな一刀の声に思わず開けるのを躊躇っていた。

 

「兄ちゃんまだ〜? 璃々と紫苑ちゃんはもう準備できたよ〜!」

 後からやってきた季衣が勢い良く扉を開ける。

 

「そうか。すぐいくよ」

 卑弥呼にネクタイをつけてもらっている一刀が答える。

「これ、動くなというに」

 

「兄ちゃん、カッコいい!」

 いつもとは違いスーツ姿の一刀を季衣が褒める。

「そうか?」

「ええ。しかし洋装なのですか?」

 稟の疑問に卑弥呼が笑う。

「がはははは。七五三の主役はあくまで子供。子供だけが着物の方がより主役らしくなろう? だが北郷殿の男っぷりは上がっておるぞ。思わず儂もきゅんときてしまったわい!」

 

「い、急ごう。神主さん、御祓いお願い!」

 卑弥呼の熱視線から逃げるように一刀は璃々たちの所へ走った。

 

 

 

「お待たせ。……うん、璃々ちゃんすごい可愛い」

「ホント? やった〜♪」

 千歳飴袋を振り回して喜ぶ着物姿の璃々。

「一刀さんもよくお似合いですわ」

「ありがと。紫苑も……すごい綺麗だ」

 フォーマルを着こなした紫苑に感嘆する一刀。

 

「着物とってもカワイイの〜」

「でも着付けは大変だったやろ。璃々もよく辛抱したな〜」

「え〜、カワイくなるためならあれぐらい平気なの〜!」

「化粧までされるなんて」

 北郷隊の三人も着付けの感想で盛り上がる。

 

「あれ? 華琳? というかみんな?」

「なに一刀?」

 辺りに集結している一同に一刀は首を捻る。

 

「なんかみんなもめかしこんでない? 当番は巫女さんやってるけど、他は……」

 一刀の指摘どおり皆、着飾っていた。

 

「ふふっ、似合う?」

「うん。華琳は可愛いのも似合うけど、フォーマルなのもいいな」

「そう。一刀の疑問はすぐに解消すると思うわ」

 一刀の評価に気を良くする華琳に群がる者が数名。

 

「さすがは華琳さま! とてもよくお似合いです!」

「ああっ、華琳さまのハイヒール。とても痛そう……」

「いつもよりも高い靴底によろめく華琳さま。それを支えると頬を染めた華琳さまと見詰め合って……うっ! いかん! 服を汚してしまう。……しかし……」

 はぁはぁしている春蘭、桂花、稟の三人もまた華琳同様によそ行き仕様。

 

「みな考えることは同じか」

「璃々ちゃんには苦労かけちゃいますね」

 秋蘭と流琉が苦笑するのだった。

 

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scene-写真館

 

「参拝も済んだし、次は写真か」

「なんだか緊張しますわね」

 一刀の言葉に、コンパクトで化粧を確認していた紫苑が頷く。

「カメラ、すごいね〜」

 主役の璃々は緊張などとは無関係だった。

 

 

「終わったか……撮影ってされる方も結構疲れるんだな」

「あら? まだよ一刀」

「え?」

「璃々、済まないが頼めるか?」

「うん。いいよ〜」

 春蘭の問に快諾する璃々。どうやら華琳たちが何をしたいかは理解しているらしい。

 

「がんばってね璃々」

 璃々の頭をなで、紫苑が離れるとかわりに華琳がやってくる。

 

「え? 華琳?」

 まだ状況が掴めてない一刀に璃々が説明する。

「こんどは、華琳お姉ちゃんがお母さんなの!」

「……もしかしてそれでみんなもめかし込んでたの?」

 やっと理解した一刀。

「鈍いお父さんね」

「うん。お父さんにぶいの〜」

 仮の親子となった華琳と璃々が笑った。

 

「よ、よろしく頼む」

「緊張してるのか春蘭?」

「だ、誰が撮影ごときで緊張など!」

「姉者はかわいいなあ。……璃々、これを使ってみるか?」

 秋蘭が璃々に見せたのは眼帯。

「わあい。ちょうちょさん」

 喜ぶ璃々に秋蘭はその眼帯をつける。

「おそろいだね♪ 春蘭お母さん」

 撮影の間はなんとか春蘭は堪えていたが、撮影直後に感極まって大泣きするのだった。

 

「じぃ〜〜……」

「なによっ」

「じぃ〜〜……」

「わかったわよ」

 璃々の無言の視線についに桂花が折れ、嫌々そうにゆっくりと猫耳フードを被る。

「わあいっ♪」

「そのカッコに猫耳フードは似合わないんじゃ……」

「なんですって! 璃々に呼ばれ華琳さまに命じられたからあんたと撮影するのにも耐えているというのに……ふふふふふ……こうすれば似合うでしょ!」

 一刀の評価に暗く笑った桂花は、どこからともなく取り出したものを一刀と璃々に被せた。

「わあ、お父さんと桂花お母さんとおそろいっ♪」

 

「はぅあっ! お猫様のご家族っ!?」

 明命が猫耳フードの一家に感動に打ち震える。

「いいな〜、ホントの親子みたい」

「わたしたちもなにか用意すればよかったね」

「流琉はリボンがあるじゃん。ボクは……髪結ぶの無理だよね……」

 季衣と流琉も桂花たちを羨ましそうに眺めた。

「やりますね桂花ちゃん。風も負けてられないのですよ」

 風は宝ャストラップを二つ掲げる。

「宝ャ二号の出番なのです」

 

 

 

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scene-漢女塾

 

「璃々ちゃんご苦労様」

 璃々を労う一刀。

 撮影を終えた者が巫女の当番を交代、結局全員が親子として撮影をしたのだった。

 ……どう足掻いても姉妹にしか見えない者も多かったが。

 

「えへへへ。でも、さつえい楽しかったよ〜」

 着替えて一刀の膝の上でジュースを飲みながらの璃々。

「おっ。璃々もそっちの快感に目覚めた? 見所あるじゃないっ♪」

 地和が璃々を褒める。

 

「礼を言うわ、璃々、紫苑。ありがとう、あなたたちのおかげで皆満足できたみたいよ」

「いえ、私もみんなの可愛い姿を楽しませてもらいました」

「なんだか紫苑、みんなのお母さんみたいだな」

 うとうとし始めた璃々がずり落ちないよう支える一刀。

 

「それもいいですわ」

「おいおい、娘扱いは勘弁してくれ。儂はそっち側じゃろ」

「あらあら」

 紫苑と祭が笑いあう。

 

 

「さ〜て、んじゃそろそろこれの出番やな!」

 一刀以外の皆に箱を渡していく真桜。

 一刀は気にもせず、眠ってしまった璃々を部屋へ運んでいった。

 

「これは?」

「開けてみ。すごいで」

 にししと笑いながら開封を促す真桜。

 

「もったいぶりすぎなの〜。まったく真桜ちゃんてば……こ、これは!」

 ぶつぶつ言いながらも真っ先に沙和が箱を開け、その中身に驚いた。

 他の者も箱を開け始める。

 

「……」

「……」

「ふっふっふっふ。どや? 驚いたやろ! すごいやろ!!」

 自らも箱を開け中から取り出したものを高く掲げる。

 

「流琉と風の協力によって完成した『お菊ちゃんスウィート』や!」

「お菊ちゃん……スウィート?」

「せや。千歳飴は長寿祈願やろ? せやからこれはな〜」

「言わないでいいわ。で、これは飴なの?」

 真桜の説明を遮る桂花。

 

「いけずやな。ちゃんと飴やで。飴は流琉に頼んだから味は保証付きや!」

「ま、まさかこんな形にするとは思いませんでした」

 真っ赤な顔の流琉。

 

「真桜、いくらなんでも口に入れるものにお菊ちゃんはあかんやろ」

 手に持つ飴を眺めながらやはり赤い顔で抗議する霞。

「む〜。姐さん言うならしゃあないな〜。んじゃ『隊長飴ちゃん』でええわ」

 

「た、隊長? い、言われてみればこの大きさは……」

 凪は赤面しながらもじっくりと飴を観察する。

 

「兄ちゃん?」

「一刀ね」

「はぅわっ! 一刀様?」

「一刀!」

 目を輝かせて飴を見る者たち。中には頬擦りする者もいた。

 

「なんだか舐めづらいのだ」

 そう言いながらも鈴々は一刀サイズの飴を頬張る。

 

「駄目よ鈴々ちゃん、歯を立てては!」

「にゃ?」

 スイッチが入ってしまった紫苑。

「いい? こう」

 飴を咥えて実演する。

 なぜか鈴々以外のほとんども紫苑に続いて飴を口にしていた。

 

 

 

 

 長い撮影の疲れからか、璃々といっしょに眠ってしまった一刀。後日、飴のことを聞きたいそう悔しがった。

「みんながそんなのを咥えてなんて……ぜひ見たかった……」

 その瞳には涙まで浮かんでいたという……。

 

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<あとがき>

 身内の入院で遅れてしまいました。

 病状自体はたいしたことないので一安心ですが、入院は長くなるのでしばらく投稿間隔が長くなると思います。

 

 ここまで遅くなったらどうせなら11月15日に投稿するべきネタなんですが上記の理由により、時間のある内に投稿します。

 璃々に七五三は年齢的にどうなんでしょうね?

 

説明
継い姫†無双番外編です。
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コメント
深緑さんありがとうございます。ほのぼのなのも好きです。自愛はバッチリです。投稿間隔が鈍くなるぐらい……(こひ)
この集団で移動する所にしろ最後の場面にしろ側から見たら何気に凄い光景だよな^^; でもこんなほのぼのな一時は素敵ですよね^^b 後今頃ですが、ご身内の方もそうですがご自身もご無理を為さらずにご自愛くださいね。(深緑)
る〜もんさんありがとうございます。文句言いながらも実はおそろいのを用意していた桂花でした(こひ)
FALANDIAさんありがとうございます。たしかに怖い光景でもありますね(こひ)
2828さんありがとうございます。一瞬誤字だったのかと焦りました。一刀が見ていたらかわりにお(以下略)(こひ)
jackryさんありがとうございます。起きてたら実演されそうで寝ててよかったかも?(こひ)
デレないのに自分からペアルックさせる桂花w(る〜もん)
いやぁ、流石に退くんじゃないかなぁ;www(FALANDIA)
体長飴・・・・どんどん小さくなるんですねw(2828)
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