ヒナタクエスト |
「ううっ〜」
「ひなた、どうしたの?」
陽向が食堂のテーブルでいつもの様に、創作に煮詰まっていると
お風呂上りの優雨が話しかけてくる。
「ああ、優雨ちゃん、いいところに!」
「新作できたの?よませてー」
創造祭の脚本の一件から、陽向は新作が出来上がると優雨に一番に見せている。優雨はどんなジャンルでも的確にアドバイスをくれるので、陽向にとっては良きアドバイザーになっていた。
そして、今では優雨と創作についておしゃべりするのは、とても楽しい時間になっている。
「いやーそれがねー設定から詰まってるの…… 助けて優雨ちゃん!」
「ひなた、今度はどんなおはなし?」
「RPGみたいなアドベンチャーをと、流行ってるからね!私も乗り遅れる訳にはいけないの!」
なぜか闘志を燃やす陽向に、優雨が首を捻った。
「あーるぴーじー?」
「う〜んと、冒険モノで、勇者がモンスターに囚われたお姫様を助けにいくお話とか」
「おもしろそうー」
「でしょ?でねーどんな人物設定にしようかなって。結構、この手の作品はあるから、ありきたりのじゃ面白くないし」
「う〜んと、勇者はかおるこがいい」
「おおっー!」
陽向は思わず、声をあげる。これまでも身近な人物を密かに、自分の作品のモデルにしてきたが『勇者=薫子』ははまり役だ。
(さすが、優雨ちゃんやる〜)
「じゃあ、やっぱりお姫様は、千早お姉さま?」
本来の趣旨とは多少ずれてるけど、調子に乗って陽向は続ける。
「ううん、ちはやはてんしさまー」
「そうきましたか!やっぱり、優雨ちゃんの中で千早お姉さまは天使なんですね。じゃあ
パーティに欠かせない魔法使いは?」
「はつねかな?」
「おお!ちょっと意外なチョイスかも。でも、みんなをまとめる役にはぴったりだね!ふむふむ、じゃあこんなお話はどう?妖精・ユウの守るお庭から世界の大事な宝物が盗まれて、それを取り戻す旅に勇者・カオルコ、従者・フミ、魔法使い・ハツネが旅立つの。そして色んな困難を乗り越えながら、ついに宝物を盗んだ魔女・カオリの城にたどり着いた3人は魔女カオリと対決するんだけど、魔女はとても強くて、カオルコ達は大ピンチ!」
「カオルコ、がんばれー」
思わず優雨も物語に引き込まれていく。
「魔女にやられそうになった、間一髪!そこで突然、光の中から天使・チハヤが現れてカオルコに伝説の剣を授けて、その剣で、カオルコは遂にカオリを倒して、世界の平和が戻ったのであったー」
「へ〜、それでその魔女・カオリって、誰がモデルなのかしら?」
「もちろん、香織理お姉さまですよ〜。あれだけ魔女が似合うお人は、なかなかいません!って、カオリオネエサマ…… いつからいらっしゃったのですか……」
ギョッとした顔で陽向がテーブルの向こう側を見ると、鬼の形相をした香織理の姿があった……
「カオルコたちが、旅立つあたりかしら?そんな事より、この話にあなたは出てないじゃない?
そうね、カジノで遊びほうけてるうちにパーティーから置いてかれた、阿呆の子の遊び人なんてどうかしら?」
「あは、お姉さま、今時遊び人が出てくるRPGなんて古いですよ!」
「ふーん、誰が古いっていうの?」
「いや、お姉さまのことじゃなくて、アイタタタッー!ウメボシはたりてますー簡便してー!」
そこへ、お風呂から上がった初音がやってきて、少し遠くで心配そうに2人の様子を眺めている優雨に声を掛ける。
「ふぁ〜〜、あら優雨ちゃん、早く寝なくちゃダメじゃない?」
「はつね、ひなただいじょうぶかな?」
「ふふっ、またやってるのですね。あの2人はあれが親愛の証って感じですからね、大丈夫ですよ。さぁ、湯冷めしないうちに寝ましょ、優雨ちゃん」
「うん、おやすみなさい、はつね、かおり、ひなた。ひなた、お話またきかせて?」
「まかせて、優雨ちゃん!では私もそろそろって、お姉さま、耳を引っ張らないで〜」
「お待ちなさい、陽向!まだ、お説教が終わってないわよ?」
ヒナタの戦い?はまだはじまったばかりであった。
説明 | ||
「おとボク2」のサブキャラでは陽向が一番好きだったりします。香織理との掛け合いが好きなので、書いてみました。 | ||
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