真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 第五十六話
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 晋都・?。

 

 そこに辿り着いた一刀たちを待ち受けていたのは、城門前にて膝をつき、頭をたれる一人の少女だった。

 

 「―――貴女が、司馬懿仲達、ですか」

 

 「―――はい」

 

 一刀の問いかけに、はっきりとそう答えたその少女―――晋帝・司馬懿。

 

 「そうしているという事は、降伏してくれるということで、良いんでしょうか?」

 

 「はい。五神将もその大半がすでに亡く、虎豹騎も壊滅しました。もはや、われらには戦う意思も力もありません」

 

 「……貴女については、後ほど詮議するとしましょう。まずは、先の漢帝―――劉協様は、今どちらに?」

 

 「協は、息災であるのか?」

 

 「はい。ただ今は、寝所にてお休み中にございます。……ですが、お会いになられるのであれば、少々の心構えをしていただきたく」

 

 劉封の問いに、頭を垂れたまま、そう答える司馬懿。

 

 「……何か、問題があるというのじゃな?良い、ある程度の覚悟ならば、妾にもすでに出来ておる。生きていてくれただけで、今は十分じゃ。……一刀おじ、すまぬが」

 

 「ああ。……行っておいで」

 

 「私も同行しましょう、劉封さま」

 

 一刀に許しを得、妹の下へ一足先に行こうとする劉封に、曹操が同道を申し出る。

 

 「……構わぬか、叔父上」

 

 「ああ。……頼むよ、華琳」

 

 「ええ。春蘭、秋蘭、桂花。貴女達も一緒に」

 

 『御意』

 

 曹操に対し、揃って拱手する、夏候姉妹と荀ケ。

 

 「さて、と。司馬懿さん?この街に地下があるって聞いたんだけど、知ってるかい?」

 

 「はい。玉座の間。その玉座の下に、地下へと続く隠し通路があります。ですが」

 

 「……大人数では行けない、かな?」

 

 「はい」

 

 「なら、愛紗と鈴々、蒼華に恋。あとは」

 

 「あたしも行くぜ、一刀」

 

 「……わかった。なら翠と、それから」

 

 「わたしも、連れてってくれるんだよね?」

 

 す、と。一刀の傍らに、劉備が寄り添う。

 

 「……危険、だぞ?」

 

 「それはみんな一緒でしょ?……大して役には立たないかもしれないけど、私たちはいつも一緒。約束、したよね?」

 

 「……わかった。よし、以上の面子で仲達の本拠に殴りこむ!残りのみんなは地上で待機。不測の事態に対処できるよう、十分に備えておいてくれ!」

 

 『御意!』

 

 「……ちょお〜っと、ご主人様?わ・た・し・を、忘れちゃ、い・や」

 

 「分かった!分かったから引っ付くな!耳元でしゃべんな!頬擦りはやめれーっ!!」

 

 全身に鳥肌を立てて、擦り寄ってくる貂蝉から、全力で逃げようとする一刀であった。

 

 

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 一方その頃、?の南の地平では。

 

 「ぬおおおおお!!」

 

 「ぐあああああ!!」

 

 ガギィィィィン!!

 

 呼廚線の大刀と、項羽の槍が激しくぶつかり、金属音と火花をあたりに撒き散らす。

 

 「はあっ、はあっ、はあっ。……仲達め、籍に一体、どんな調整を施したのだ?力の加減も何も出来ていない。このままでは、確実にオーバーロードを引き起こしかねん。……籍!早く己を取り戻さぬか!このままではお前は」

 

 「ううう、うあああああっっっっ!!」

 

 ごっ!!

 

 呼廚泉の言葉には何の反応も示さず、神速とも言えるその速さで、再び呼廚泉に突撃を敢行し、その槍を繰り出す項羽。よく見れば、その体のあちこちから、幾筋かの白い湯気――いや、煙を立ち上らせていた。

 

 「くっ!……もはや、自我を取り戻すことあたわぬか。……ならば!」

 

 ジャキ、と。

 

 大刀を両手で構え、気を練り始める呼廚泉。それに反応するかのように、項羽もまた、さらに気を高め始める。

 

 そして、

 

 「籍よ!誇り高き覇王、項羽よ!そなたのその呪縛の鎖、我がこの場で断ち切ろう!」

 

 「ウ、ガ、ア、アア、アアアアッッッ!!」

 

 呼廚泉に向かって、項羽は全力で走りだす。その双眸から、真紅の涙を流しつつ。

 

 「……我が名は呼廚泉。我こそは、悪を断ち切る剣なり!吠えよ!我が陸式・斬関刀!!ぬぅああああっっっ!!」

 

 「グアアアッッッ!!」

 

 天高く。斬関刀を構えたまま、一気に跳躍する呼廚泉。そして、その彼に向かって、項羽もまた、高く跳躍する。

 

 「斬関刀!雷ッ光斬りィィィィッッッ!!チェストオオオオッッッッ!!」

 

 

 一閃。――――そして、閃光。

 

 

 (……ア、タシ、ハ、コウ、ウ……。アタシ、ハ、セイソノ、ハ、オウ……。……リュ……ホ……)

 

 

 ……その閃光の中、彼女が見たのが、現か幻かは分からない。だが、彼女は確かに見た。……愛しい、男の顔を。……その、温かい笑顔を。

 

 「アアアアアアアアアッッッッッッッ!!」

 

 ドオオオオンンンッッッ!!

 

 ……彼女は爆散した。その、与えられた記憶の中で、愛しい男の腕に包まれて。

 

 「……我が斬関刀に、断てぬもの、無し」

 

 呼廚泉の瞳に、一筋の光が、つたっていた。

 

 

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 「よ〜こそ、僕の城へ。こお〜んなに簡単に辿り着いちゃとはねぇ。……さすが、三国志の英傑たち、って感じかな?アハハハハハハッ!」

 

 地下にいる筈なのに、まるで日の光の下にいるかのような明るさの中、金属製の壁に包まれた室内に、ソイツの高笑いが響く。

 

 玉座の間の隠し通路を通り、一刀たちは?のはるか地下へと進んだ。その途上、様々な妨害を受けつつも、関羽、張飛、華雄、馬超らの活躍で、それらを次々に突破し、ついに最後と思しき扉に辿り着いた一刀たち。

 

 その、金属で出来た重厚な扉は、なぜか開かれたままで一刀たちを出迎えた。

 

 ―――罠。

 

 全員の脳裏に、当然のように浮かんだ可能性。だが、劉備の一言が、みなの迷いを振り払った。

 

 「……罠があってもそれごと粉砕!……一刀の得意技でしょ?」

 

 大爆笑。

 

 天然か、それとも計算ずくかは、当の本人にしか分からないが、全員の緊張はほぐれた。

 

 そして、

 

 室内に入った一刀たちを出迎えたのは、白銀の装束をまとったその男だった。

 

 「……なんで、なんでお前が、ここにいるんだ!このななし野郎!!」

 

 「…………生きて、た?」

 

 「そ、そんなことがるものか!あいつは確かにあの時、恋の手で!」

 

 「そうだ!五体をバラバラにされて死んだはずだ!!」

 

 ソイツの顔を見た瞬間、一刀たちは驚愕の色をその顔に浮かべた。

 

 ななし。

 

 数年前、劉備の名を騙って関羽と張飛を欺き。さらに、当時并州は晋陽にて、当時の太守だった丁原に薬を盛って、操り人形にし、呂布の手で殺されたはずのその男が、彼らの目の前で、邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 「……ああ、そんなこともあったっけ。いやあ、あの時は最ッ高に楽しかったよお?五体をきざまれて死ぬなんて、めったに出来る体験じゃないし♪クククククク」

 

 「……本当に、本人だっていうのか?」

 

 「そ〜だよ、北ご、あ、いや、劉翔くん?……これで三度目だねぇ、君と直接会うのは」

 

 「三度、目?……え?」

 

 「あ。そっかそっか、僕としたことが。うっかりしてたよ。あの時は”コイツ”じゃなかったものねぇ。……これなら、わかるかな?」

 

 ザザ、と。

 

 ソイツの姿が、一瞬で、別の人間に、変わった。

 

 「……お、お、お、おま、おま、おまえ、は」

 

 「馬鹿な?!おまえ、あの時の黄巾」

 

 「ど、どういうことなのだ?!」

 

 「斐、元紹、だったか?……これは、一体?」

 

 それはやはり、数年前のこと。

 

 黄巾の乱の最中、平原の街を襲った黄巾賊。それを率いていた男、斐元紹。ソイツは、その男の姿になっていた。

 

 「なあ〜に者なのよ、あなた。……ホログラム、というわけでもなさそうだし」

 

 「アハハー。管理者の君でも分からないかい?そうだろうねえ。このシステムはボクが独自に開発したものだし。……いや、正確には、ボクじゃないボクが、なんだけど」

 

 ぺろり、と。舌なめずりをするソイツ。

 

 「……どういうこ」

 

 「パラレルワールド―――。君ら管理局の言う外史ってやつにはさ、無数の自分が存在する」

 

 「……は?」

 

 貂蝉の言葉を途中でさえぎり、一人で勝手にしゃべりだすソイツ。

 

 「そう。それぞれの世界に、それぞれの自分がね。……その自分たちと融合できたら、かなり面白いことが出来る。……そう思ったわけさ。ボクの中の、一人が、ね」

 

 ザザ、と。

 

 再び、ソイツの姿が、別の人間の姿になる。

 

 『さ、蔡瑁?!』

 

 ザザザ。

 

 驚く一刀たちをよそに、再びその姿を変える、ソイツ。

 

 「こ、今度は誰だよ?!」

 

 「……おっと、いけない。この世界とは関係ないのが出てきちゃった♪いや、失敬失敬。あははははは」

 

 蛇。

 

 そんな表現がぴったりと合う、その粘着質そうなその顔に、逆三角形の眼鏡をかけた、貴族風の服を着た細面の男の姿で、ソイツは一人、げらげらと狂ったように笑う。

 

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 「くそっ!いい加減にしやがれ!この野郎!!」

 

 「翠!うかつなことはっっ!!」

 

 「うらああああーー!!」

 

 どすっ!

 

 ソイツの態度にたまりかねた馬超が、その手の槍を、思い切りソイツの胸に突き立てた。

 

 「うぎゃあああっっ!!」

 

 ドサリ、と。

  

 その場に倒れるソイツ。その体から、大量の血が流れ出してくる。

 

 「……殺った、の?」

 

 「……なんでえ。小難しいこと言ってたわりに、てんで弱っちいじゃ」

 

 「……なーんちゃって♪」

 

 『んな?!』

 

 ムクリ、と。

 

 ソイツは何事もなかったかのように、起き上がった。その姿を、再びななしのものに変えて。

 

 「あー、気持ち良かった♪死ぬ瞬間の快楽といったら、本当に何度味わってもいいもんだねぇ。キャハハハハハ!!」

 

 今の馬超の一撃。それは、確実にソイツの命を奪ったはずだった。

 

 なのに、ソイツは何事もなかったかのように、げらげらと笑っていた。

 

 「……複数の、命」

 

 「え?」

 

 そうぽつりと言った貂蝉に、一刀たちが一斉に、その視線を向ける。

 

 「さっきコイツが言っていたことが本当なら、コイツは、無限に存在する、あらゆる外史の自分と一つになっているということ。……たとえ、その中の一人が死んでも、その瞬間に、別の一人と入れ替わる。……それこそそう、無限に」

 

 「そ、そんな……」

 

 それは、いわゆる”不死”というやつではないのか?いや、確かに死んではいるのだから、厳密には不死とは言わないかもしれない。

 

 だが、”無敵”、であるとは言える。

 

 そんなやつを相手に、自分たちはどうやって勝てばいいのか?

 

 そんな、絶望的な状況に、意気を落とす一刀たち。

 

 室内には、狂気に満ちたソイツの笑い声だけがこだまし、一刀たちは失意の表情で、ソイツをにらみ続けることしか、出来ないのであった。                           

 

   

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     次回。       

 

 

 

     「真・恋姫無双 刀香譚 〜双天王記〜 最終話」   

 

 

 

 

                               ご期待下さい。

 

 

 

 

 

説明
刀香譚、五十六話。

項羽の足止めを一刀の師匠である呼廚泉に任せ、

一路、晋の帝都・?を目指した一刀たち。

そこに待ち受けるは、はたして・・・?

では、逝ってみましょう。
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コメント
また難儀な事を考え付くやっちゃな・・・どんな決着になるか楽しみですな。(深緑)
遂に最終回ですか… ななしに対しては封印か何か?それとも滅する手段が?最終回への期待が止まらないですw(ちくわの神)
倒し方が月姫くらいしか出てこないですね。どうなるか楽しみです。(ZERO&ファルサ)
BALDRSKYを思い浮かべたw(KU−)
hokuhinさま、なるほど、その手もありますなw・・・なーんて^^。(狭乃 狼)
どっかの宝石剣みたいなもんか・・・凍り続けて動きをなくすか、どこかに閉じ込めるぐらいしかない?(hokuhin)
村主さま、確かにあれも飛んでましたわなwこれもまあ、他の事いえませんが^^。(狭乃 狼)
東方武神さま、お楽しみに、です。(狭乃 狼)
gastaborさま、さ〜て、ど〜でしょ〜ね〜?にゅふふww(狭乃 狼)
btbamさま、ジョジョ・・・?はて、なにかありましたあっけ?(ニヤニヤ)ww(狭乃 狼)
よしお。さま、で、どうやってプレス機にかけるんですか?弱点は、・・・です。クス。(狭乃 狼)
Zのあいつ・・・言われればそう思えてきました ただZは敵がアッチ側すぎて途中放棄してしまったんでw(あんまり飛んでしまうのは好きではなく) 遂に次回最終回、その結末楽しみに待ってます(村主7)
いよいよ次回で最終話ですか。楽しみに待っています。(東方武神)
見えた!ラストは一刀と劉備の石破LOVELOVE天驚拳的な技で終わらせるつもりなんだな!(gastador)
ちょっとジョジョのD4Cを思い出した。(btbam)
巨大なプレス機械で圧縮死させればいくら不死身でも流石にそこから動けないですよね!何か弱点があるんですかねー?次の話が楽しみです。(よしお)
poyyさま、はっはっは。・・・なんのことやらww(すっとぼけ)(狭乃 狼)
はりまえさま、はい、のんびりお待ち下さい。(狭乃 狼)
ス〇ロボZのラスボスみたいなやつだな。(poyy)
あれ最後か?ならば次回までのんびりと期待しながら待ってます。(黄昏☆ハリマエ)
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恋姫 刀香譚 一刀 桃香 呼廚泉 項羽 仲達 

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