真・恋姫無双another 風ストーリーその19 |
河北を追われ、袁術さんの元に来てかなり経ちました。
特に大きな争いなどもなく、周瑜さんと色々な話をする毎日を送っています。
そして、この日も今までと同じ日になるはずでした。
いつもは朝食をとり自室で少し時間をおいてから、周瑜さんと話をする場所に行っているのですが、今日は違っていました。
「程c様、張勲様がお呼びです。至急玉座の間へお越しください」
いつも通り周瑜さんと話をするまでの間自室にいた私を兵士さんが呼びに来ました。
張勲さんがいったい何の用事でしょう。
「分かりましたよ〜。すぐに行くのでそう伝えてください〜」
私は兵士さんにそう言うと少し考えました。
そう、張勲さんが私を呼ぶ理由です。
周瑜さんと話をしているだけの私に何の用事があるんでしょうか。
いくら考えてもわかりようはありません。
「特に大変な事でもないでしょう〜」
そう独り言を言うと、私は玉座の間にいくために自室を後にしました。
玉座の間に着くとそこには張勲さんや袁術さんを始め、お兄さんや星ちゃん、霞さんに華雄さんとそうそうたる面々がすでに揃っていました。
その中には、孫策さんや周瑜さんの姿もありました。
「風が一番遅かったみたいですね〜」
「いや、私達も急だったから同じようなものだ」
星ちゃんの言葉に安心しました。
「それで、張勲さん。用事は何でしょうか?」
色々回りくどいのはいやなのでいきなり本題をぶつけてみました。
「それがですねぇ。西方の邑でお嬢さまに反抗的な勢力が立ち上がってきているようなのです」
「全く、妾の偉大さが分かっておらぬ」
張勲さんの言葉に呼応するように、袁術さんが玉座から立ち上がってその小さな腕を振り上げて言いました。
「それを風達で鎮圧しろということですか〜?」
こういった話をする時はだいたいがそういったことを要求すると決まっています。
「そうしようと私は思ったんですけどね」
そう言いながら張勲さんはお兄さんの方向を見ました。
「いきなり鎮圧なんて高圧的な事やらなくても、話し合いで解決できるんじゃないかって言ったんだけど……」
そう言うお兄さんに意外な人が賛同しています。
「一刀がそう言うならそれが正しいと妾も思うぞ!!」
そう、袁術さんです。
お兄さんと一緒にいる間に、いい影響を受けてしまった様子です。
「お嬢さまがこういうものだから……」
張勲さんとしては手っ取り早く武力による鎮圧を考えたんでしょう。
ですが、お兄さんがそれに反対して、さらに意外な事に袁術さんもそれに賛同したということでしょうか。
「それで、風達にその話し合いをしてこいと、そういうことですか〜?」
「そうじゃ。一刀がこういったことはお主が得意と言っておったからの」
そう言って、袁術さんは胸を張りました。
その横でお兄さんが何度も頭を下げます。
どうも謝罪の態度のようです。
私は少し考えた後言いました。
「分かりました〜。風でよければその役目受けますよ〜」
「おぉ、やってくれるかの」
「ただし、お願いがあります〜」
「なにかの?」
「お兄さんも一緒に同行させて欲しいのです〜」
「なんと!! 一刀をか!!」
私の言葉に袁術さんが驚きます。
お兄さんも私の言葉に少し驚いているようです。
「なんでじゃ。一刀がおらんでも、お主だけでなんとでもなろう」
「確かに、こういった交渉は風達軍師の仕事です〜。ですが、今単に行っただけでは袁術さんの使者という形になってしまいます〜」
「それでいいではないか」
「いえいえ〜。相手は袁術さんに対して反抗的な勢力ですから〜、袁術さんの使者という形では会うことも難しいかもしれません〜」
「それで、なんで一刀を連れていくのじゃ?」
「ここで有効に働くのがお兄さんの天の御遣いという風評ですよ〜」
私の言葉に袁術さんは首を傾げます。
「袁術さんの元に天の御遣い、つまり天の加護があると知れば、反抗的な人達も納得するかもしれません〜」
「じゃがの〜」
袁術さんはお兄さんの方向を向いて言いました。
お兄さんを連れて行くと言うことが心配なようです。
と、ここで張勲さんが言いました。
「お嬢さま。程cさんの言うとおりですよ」
「な……七乃?」
「話し合いに行くのなら成功するにこした事はないですから。程cさんの言うとおり、ここは一刀さんにも頑張ってもらいましょう」
張勲さんの言葉に、袁術さんは少し考えた後言いました。
「うむ。七乃がそう言うならそうしよう。一刀、頑張るんじゃぞ」
「……わかったよ」
お兄さんも渋々答えました。
こうして、私とお兄さんは袁術さんに反抗的な人達が居るという西方の邑へ向かいました。
道中、私とお兄さんは馬車で移動することになりました。
これは、袁術さんの正式な使者であると同時に、天の御遣いの姿を簡単には見せないという意味合いがあります。
それと、念のため護衛に星ちゃんと華雄さんとお二人直属の兵士さん数名が付いてきています。
ある種物々しい感じになってしまっていますが、仕方ありません。
問題の邑までは結構時間がかかるので、久々のお兄さんとの二人だけの時間を楽しむことにしました。
しかし、お兄さんは馬車から見える外の景色ばかり見て、私を見ようとしません。
そこで、私は場所を移動してお兄さんに気付かれないように隣に座りました。
そして、体をお兄さんに寄せました。
「ふ……風?」
お兄さんは驚いて避けようとします。
ですが、ここは狭い馬車の中。
避けようにも場所がありません。
私は、お兄さんが私を避けようとした事が少し悲しくなってしまいました。
「お兄さん、風と一緒にいるのはイヤなのですか〜?」
「いや……そう言うわけじゃ……」
「ですが、先ほどから風の事を避けているように見えますよ〜」
「そんな事は……」
私からの問いに、お兄さんの回答は要領を得ません。
少し戸惑っているようにも見えます。
「――連れてきてしまった事を怒っているのですか〜?」
私の言葉にお兄さんが驚いたように、こちらを見ました。
「怒ってはいないよ」
「ではなんで、風と顔を合わせてくれないのですか〜?」
「それは……」
何か別の事に引っかかりがあるようです。
私も見当がつかず、しばらく黙ってしまいました。
そして、お兄さんが話しかけてくれました。
「こうやって、風と一緒にいるのが久し振りすぎて何を話していいのか分からないんだ」
そう言って、お兄さんは頭をかきました。
意外な事に戸惑っていたようです。
ここは、私が少し前に出るのがいいようです。
「風も話す事なんか何もありません〜。ただ、こうやってお兄さんと一緒にいられる事が何よりも嬉しいんですよ〜」
「風……」
お兄さんの言葉を聞いて、私はお兄さんに顔を寄せて口づけをしました。
突然の事にお兄さんは少しのけぞりました。
私は笑顔で言いました。
「お兄さんはまだまだ皆さんのものです。今はこれで我慢しますよ〜」
この言葉を聞いてお兄さんは顔を真っ赤にして外を向きました。
問題の邑には数日かかって到着しました。
一帯には田畑が広がり、一見するとそのような争いが起きているようには思えません。
まず、私達は邑の代表に会うために彼の家に向かいました。
あらかじめ使者を立て、私達が来る事は知っているはずです。
ただし、それは袁術さんの使者という事にしておきました。
これで、実際に会ったときにその使者が天の御遣いと知れば、より効果があると思ったからです。
ただ、その分邑の入り口で揉めたりするかもというのがありました。
それは、この邑が袁術さんに対して反抗的な意識を持っているに他ならないからです。
ですが、それは杞憂に終わりました。
あっさりと邑に入る事が出来て代表の人の家に行く事も出来ました。
家に入って驚きました。
そこにはたくさんのご馳走が用意されていたのです。
これだけの歓迎を受けるという認識はなかったので、私達は唖然としてしまいました。
「何をされているのですか? ささ、どうぞ」
代表の方に促され、私達は席に着きました。
兵士さん達は外で待機してもらっていますが、彼らにも料理が振る舞われるそうです。
「まずは、天の御遣い様の到来を祝って乾杯!!」
その言葉に合わせて皆が杯を掲げます。
そして、杯に入った飲み物に口を付けました。
と、ここで私は疑問に思いました。
私達は、袁術さんの使者です。
天の御遣いだという事はまだ一言も話していません。
なのに、彼は天の御遣い様の到来と言いました。
これはおかしいです。
この疑問を皆に話そうとしたのですが、星ちゃんはメンマに夢中。
華雄さんもいい感じに酔い始めています。
お兄さんは、美人さん二人に囲まれてこちらもいい感じに酔っているようです。
これはまずいと思った時はすでに手遅れでした。
私はそのまま意識を失ったのです。
気が付くと、周りが石に囲まれた場所に寝かされていました。
そして、手足には麻縄と思われる縄で縛られていました。
最初は薄暗かったのですが、しばらくして目が慣れてくると星ちゃんと華雄さんがいるのが見えました。
「星ちゃん!! 華雄さん!!」
二人の名前を言うと、少しうなり声を上げながら二人が起きました。
「おぉ、風」
「ん? これはどういう事だ?」
「どうもよくない状況のようですよ〜」
まだ寝ぼけている感じの二人に話します。
「どうも、風達は騙されたようです」
「くそっ!!」
「全くもってふがいない……。そういえば一刀は?」
華雄さんの言葉で思い出しました。
今この場にいるのは、私、星ちゃん、華雄さんの三人だけです。
お兄さんの姿が見当たりません。
「もしや、一刀は……」
華雄さんの言葉には不安がにじみ出ています。
ですが、私にはそこまで不安はありません。
「おそらく、お兄さんは大丈夫ですよ」
「なぜ、そう言える?」
「まずは、私達が生きているのがその一ですね〜。お兄さんを殺すのであれば、私達も同じです〜」
「なるほど」
「その二に、お兄さんはここの人達にとっての切り札です〜」
「切り札とは?」
「おそらく、袁術さんとの交渉にお兄さんの存在をちらつかせるのでしょう〜」
「なるほど、交渉を有利に進めるためだな」
「そうですね〜。武力では袁術さんに敵うはずもありませんから〜」
「だが、ここでこうしているわけにもいくまい」
「そうですね〜。早くここから逃げなければ〜」
逃げ出すにも縄で縛られていては自由に身動きが取れません。
そう思ったのですが、それは取り越し苦労でした。
「私を抑えるなら、もっと違うモノを用意するべきだろうな」
「全くだ」
そう言いながら星ちゃんと華雄さんは、縛られていた縄をあっさりとほどいてしまいました。
ほどいたと言うよりは、ちぎった感じですが。
私の縄も二人にほどいてもらいました。
「それでは、行くか!!」
「おう!!」
「そうですね〜」
私達は、こうしてお兄さんを捜しに行きました。
お兄さんは実にあっさりと見つかりました。
先ほどの人が邑の中央に作られた広場で、人々に対して演説をしています。
その横に、お兄さんが立たされていました。
「皆の者!! 遂にこの時が来た!! 長く我等を苦しめたあの袁術に対する切り札が手に入ったぞ!!」
「切り札とは何です?」
「こちらの方だ!!」
そう言って、お兄さんが促されます。
お兄さんは一歩前に出ると頭を下げました。
「あやつは何をやってるんだ」
その姿を見て華雄さんがうなだれました。
「お兄さんが無事だったからいいじゃないですか〜」
「まあ、それはそうだな」
私の言葉に華雄さんは素直に答えています。
「しかし、このまま放っておく訳にはいくまい」
星ちゃんの言葉に華雄さんが頷きます。
私はそんな二人をたしなめました。
「もう少し様子を見ましょう〜。お兄さんに危害を加える感じもありませんし〜」
「それはそうだが、私達が逃げ出したと分かれば厄介ではないか?」
「それでもお兄さんに危害が加わることはまず無いでしょう〜」
「うーん」
私の言葉に疑問を持ちつつも二人はもう少し様子を見てくれるようです。
そんなやり取りをしている間に、お兄さんが天の御遣いだと紹介され会場では大歓声が上がっていました。
飛び跳ねる人や、お兄さんに手を合わせて拝んでいる人もいます。
会場はまさにお祭り騒ぎです。
これは絶好の機会だと思いました。
「この騒ぎに乗じて、お兄さんを助けに行きましょう〜」
「もう少し様子を見るのではなかったのか?」
「そのつもりでしたが、この騒ぎは動き出すのに絶好の機会だと思うのですよ〜」
「確かにな」
「それに、あそこを見てください〜」
そう言って、私は会場内を指差しました。
「あっ!! あれは!!」
星ちゃんも声には出しませんでしたが、気付いたようです。
「例の白装束の連中か……」
そうです、そこには人々に混じって例の装束姿の連中がいました。
これで納得がいきました。
「これで納得がいきましたよ〜。お兄さんの力を借りたいのであれば、私達を拘束する必要はないはずです〜」
「たしかにな」
「おそらく、あの人の考えではなくて、白装束の連中の入れ知恵でしょう〜」
「そういう事か」
「だが、あいつらの元々の狙いは?」
「お兄さんの命です〜」
「一刀殿が危ないな」
「そうですね〜。様子を見るなどと悠長な事は言ってられません〜」
「よし!! ならば私が突撃して救ってこよう!!」
そう言って華雄さんは今にも飛び出しそうにしました。
「待って下さい〜!!」
そう言って私は華雄さんの腕を掴みました。
持っていかれそうになりましたが、星ちゃんも逆の腕を掴んでくれたので事なきを得ました。
「なぜ止める?」
「今闇雲に突っ込むのは得策ではありません〜」
「なぜだ? 所詮相手は素人共だ。私の武の相手にはならないだろう」
「そうですが〜、あの白装束軍団は侮れませんよ〜」
「確かにな。私も洛陽では後れを取った」
「星がか!?」
「うむ。恥ずかしい話ではあるが」
「それなら突撃するのは得策ではないな」
実際、星ちゃんが後れを取ったのは、白装束軍団ではなくそれを束ねているらしき人物なのですが、ここは黙っておきましょう。
「ならば、どうするのだ?」
「そうですね〜。まずはお二人の武器を返してもらいましょう〜」
そう言って、私はお兄さんの居る後方を指差しました。
そこには、星ちゃんの槍と華雄さんの斧が置かれていました。
あれでは奪ってくれといっているようなものですが、それを色々考えている余裕はありません。
「まずはあの後方に移動して武器を奪い、お兄さんの安全を確保します〜」
「うむ」
「お兄さんの安全を確保できたら、あの人を問い詰めましょう」
「よし」
「わかった」
こうして、お兄さん救出作戦が始まりました。
星ちゃんと華雄さんには左右に分かれて、お兄さんの居る場所を目指してもらいました。
二人一緒より別れた方が効果的と思ったためです。
天の御遣いの登場で浮かれている皆さんは、二人が居ることに案の定気付いていません。
そのまま、二人は予定していた場所に到達しました。
ここで、私が様子を見て合図を送る手筈になっています。
騒がしさが少し収まって代表の人が話し始めました。
これで、皆さんの注目はあの人です。
あとは合図を送るだけです。
二人の存在に気付いても、なるべく時間が稼げる時がいいです。
その時が来るまで、私は息を潜めました。
華雄さんが飛び出さないか心配でしたが、大丈夫でした。
そして、しばらくしてその時が来ました。
演説が終わり、村人に近づきました。
僅かですが、お兄さんへの意識が外れました。
「今ですよ〜!!」
私は立ち上がり、星ちゃんと華雄さんに合図を送りました。
突然の言葉に、唖然となる皆さん。
この隙に、華雄さんが二人の武器を取り槍を星ちゃんに投げました。
そして、星ちゃんはお兄さんと代表の人の間に立ちました。
「さあ、これで終わりだ!!」
「私達を捕らえ、主殿を謀った罪を償ってもらおう」
二人は各々の得物を向けて言います。
得物を向けられた代表の人は一歩も動けません。
そして、周りで見ていた村人達もそれは同じでした。
これで、終わりです。
と思ったのですが、そうは上手くいきませんでした。
私が居る位置は、会場からは結構離れていて、それほど危険とは思っていませんでしたがそれは甘い考えでした。
突然、後ろ手に捕まれて身動きが取れなくなりました。
「風!!」
星ちゃん、華雄さん、そしてお兄さんの声が重なります。
油断しました。
白装束の人達が居るわけですから、この人も居てしかるべきでした。
そう、星ちゃんすら相手に出来なかった謎の人物です。
「思った通り、奴を助けに来たか」
「この展開、分かっていたのですか〜?」
「ふん」
話をして少しは時間を稼ごうかと思ったのですが、どうも無理のようです。
「おい!! その槍で北郷を刺せ!!」
そう言って、星ちゃんに促しました。
星ちゃんは、この要求には二の足を踏んでいます。
「まあ、こいつを殺してお前らを殺しても構わんのだがな」
そう言って、私を押さえている腕に力が入ります。
「ぐっ」
その強さに声を出してしまいます。
「風!!」
「私はいいですよ〜。お兄さんを助けてください〜」
今はこう言うしかありません。
私が居なくても、お兄さんがいればこの大陸に平和をもたらしてくれるはずです。
「風の居ない世界なんて俺は考えられないぞ!!」
そう、お兄さんが叫びます。
凄く嬉しいですが、今はその好意は必要ありません。
「お兄さんは、この大陸に必要な人間ですよ〜。風は居なくても代わりはいくらでも居ます〜」
そう、稟ちゃんに任せてもいいかもしれません。
桃香さんのところには伏龍と鳳雛の二人が居ます。
他にも風よりも凄い人達はたくさんいます。
「風の代わりなんて居ないよ!!」
「お兄さん〜」
「させるか!!」
私とお兄さんがやり取りをしている間に、星ちゃんがこちらに向かってきていました。
ですが、白装束の人達に囲まれてしまい、思うように動けません。
「……茶番はもういいか」
低くそして暗い声で、謎の男が言いました。
「今この時をもってこの世界は消滅する!! この傀儡、そして北郷一刀の死をもってな」
そう言って謎の男の拳が振り下ろされました。
私は覚悟を決めました。
衝撃は全くありませんでした。
それどころか先ほどまで感じていた圧迫感もありません。
死ぬとはこういう事なのでしょうか。
そう思ったのですが、どうも違ったようです。
「くそっ!! またお前か!!」
「ぐふふ。オイタはダメよん」
「貂蝉!!」
私の後ろに立っていたのは、そこにいないはずの人でした。
貂蝉さんです。
先ほどまで私を押さえていた謎の男が遠く離れた場所でかがんでいました。
貂蝉さんの蹴りで飛ばされたのでしょうか。
何が何だか分かりませんが、私達はまた貂蝉さんに助けられたと言うことです。
「風ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫ですよ〜。ありがとうです〜」
「それはよかったわ」
私に笑顔でそう言った貂蝉さんは、謎の男を見ました。
「お前はなぜ邪魔をする!!」
「前にも話したでしょ。自分の思い通りにならないからって好き勝手しちゃダメって」
「この世界はイレギュラーなのだ!! 早く手を打たねば手遅れになる!!」
「それを決めるのは私達じゃないわ」
「何甘いことを言ってる!!」
先ほどから何の話をしているんでしょう。
私には分かりません。
聞き慣れない言葉も、時々出てきます。
お兄さんなら分かるのでしょうか。
「お前と話しても埒があかないな。引き上げだ!!」
謎の男はそう言うと、煙のように消えてしまいました。
それと同時に、村人内にいた白装束の軍団と思われる人達は、土になってしまいました。
その状況に、村人はもちろん私達も唖然としてしまいました。
しばらくそのままでいたのですが、星ちゃんの言葉で我に返りました。
「貂蝉よ。なぜ奴を倒さぬ!! あやつは主殿の命を二度も狙ったのだぞ!!」
そうです、あの謎の男は洛陽でもお兄さんの命を狙いました。
さすがに倒しておくべき人物でしょう。
「ごめんなさいね。私じゃ痛めつけることは出来ても倒せないのよ」
笑顔でそう言う貂蝉さんですが、私にはそうは思えません。
私達には言えない何か事情がありそうです。
「星が後れを取ったというのはあいつのことか? 確かにただ者ではなかったな」
華雄さんが冷静に分析しています。
何とも言えない空気の中、お兄さんが言いました。
「まあ、いいじゃないか。みんなが無事だったんだし……。貂蝉、ありがとう」
「あらぁ、ご主人様。私にお礼なんて嬉しすぎて倒れてしまいそう」
そう言ってよろける貂蝉さん。
ですが、この人はどんな事しても倒れそうにないと感じるのは私だけでしょうか。
こうして、白装束の皆さんは居なくなったわけですが、当初の目的がまた果たせていませんでした。
袁術さんに反抗的な勢力との話し合いです。
ですが、この状況だとどうも白装束のあの人がこの一件に絡んでいるようです。
現に、先ほどまで息巻いていた代表の人は、愕然としています。
早速話し合いを持ちましたが、それは呆気ないほど簡単でした。
やはり思ったとおり、あの白装束の人に言われ袁術さんに反抗的な態度を取ったということです。
確かに不満はあったので、話に乗ってしまったようです。
ただ、お兄さんが来るかどうか分からないはずなのですが、その人は言いました。
「あの謎のお兄ちゃんが絶対に来ると言ってました」と。
あの人は、未来を読み取る力でもあるのでしょうか。
それとも……。
いくら考えたところで答えは出ません。
それよりも、華雄さんを止めるのが大変でした。
この邑の代表の人を殺そうとしたためです。
私達を捕らえ、お兄さんを危険な目に遭わせたと言うのが罪状のようですが、それはお兄さんの一言で無くなりました。
「みんなが無事だったんだからそれでいいだろ」
この言葉に、星ちゃんは笑いました。
華雄さんも、呆れたような表情で空笑いをしてました。
とにかく、話し合いは大成功。
邑の皆さんの不満も聞き、責任を持って袁術さんに伝えると約束しました。
その晩はまた宴会でしたが、私達は食事になかなか手を付けられませんでした。
あとがき
ようやく19話をアップです。
この程度にどれだけ時間かかっているんだと、改めて自分の力の無さを痛感しています。
今回はちょっとありがちな美羽に不満を持つ勢力を一刀達でなだめさせるというような趣旨になるわけですが、それに白装束達が絡んでくるという分かりやすいと言えばそんな話です。
もうちょっと違う展開を考えていたんですが、どうにも話がうまくまとまらない。
この展開でもまとまっていないような気もしますが、その辺は……ね。
次は話を先に進めていく予定です。
またいつになるか分かりませんけど、お待ちいただけると幸いです。
今回もご覧いただきありがとうございました。
説明 | ||
真・恋姫無双の二次作品です。 風視点で物語が進行していきます。 よく見たら10月は一回もアップしてなかったんですね。 すみません<m(__)m> 今回は、久々に風と一刀との絡み…のはずがそこまで書ききれませんでした。 自分の力の無さを痛感しっぱなしです。 よかったら感想など寄せていただけると励みになります。 |
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一刀一行様は流されすぎだろ^^; 随分直接的にきましたな・・・風もそうですが誰も犠牲になることなく行って欲しいですね。(深緑) つか簡単に毒盛られたらだめっしょw(きの) 遂にイケメン(匙)が直接行動に打ってきましたかw しかし風・・・確かに漢女はどうやっても倒れそうにも無いですがw的確すぎて吹いた(村主7) この世界が無印の様に消えない事を祈ります(うたまる) 風が助かってよかった……続きが楽しみです!(よしお) |
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