鬼姫武者 最終話 |
鬼姫武者 最終話
現代
東京タワー前に空間の歪みが生じ、そこから一刀が現れた。
「ここは、東京タワー…」
「一刀!」
一刀が声をするほうを見るとそこには現代に飛ばされた愛紗と朋絵がいた。
朋絵は駆け出して、一刀も駆け出す。
「朋絵!」
「一刀!」
二人は抱き合った。
「お帰りなさい」
「ただいま…」
感動の再会に二人は浸るが……。
「ちょっと悪い」
「一刀?」
一刀は離れて愛紗の方に行く。
「愛紗…」
「一刀…」
「話は阿希から聞いた。私は自分の世界に戻って、始皇帝を倒す」
「俺も行こう。一緒に始皇帝を倒そう」
「いや、駄目だ。時と世界のねじれがお互いだけを正しい時代と世界へと戻そうとしている…」
そう言うと愛紗の体が一刀のように光りだした。
「朋絵…」
愛紗が朋絵に近づく。
「あなたのこと、忘れないわ」
「私もだ。一刀の仲良く暮らせよ」
「ええ」
「……」
愛紗は二人から離れていく。
「愛紗」
愛紗が一刀の声を聴いて振り返る。
「勝つんだぞ」
「ああ。さらばだ、異国の友よ」
愛紗の体が半球体が包み込んで、愛紗は光と共に消えた。
「それじゃあ、帰るか」
「ええ。ところでその篭手は?」
「え?」
一刀が朋絵に言われて、篭手を見ると、篭手は一刀の体から自然に外れていった。
「…どうする?」
「愛紗との大事な思い出だ。取っておこう」
「そうね」
過去(愛紗にとっての現代)
愛紗は光と共に洛陽に戻ってきた。
「あの時と変わらんな…」
愛紗は思い出す。
時と世界のねじれ装置で飛ばされる前の時を……。
「では行こう。始皇帝を倒しに…」
愛紗は阿希と共に再び、玉座の間へと入っていった。
玉座の間では一刀と行動を共にした愛紗を殺した始皇帝が居た。
「逃げおおせたか、あの男め…」
始皇帝は少々苛立ちを見せていた。
するとそこへ……。
「エイ趙!」
始皇帝が声をする方を向くとそこには自分が殺したはずの愛紗が立っていた。
しかも見たことない服装と髪型で……。
「戻ってきたぞ」
「貴様…死んでなかったのか?」
「何?」
「そこにいるのはお前であろう?」
始皇帝が指差す方向には殺された愛紗が居た。
「確かに私だな」
愛紗がゆっくりと死んだ自分に近づき、死んでいる愛紗の鬼の篭手と自分の鬼の篭手を合わせる。
すると二つの篭手は共鳴し、球が光りだした。
そして光が止むとそこには長くて白い髪に金色の目をし、鬼の服と真の鬼武者のみが持てる偃月刀『鬼武者真偃月刀』を持った一人の愛紗がいた。
そう、過去と未来の愛紗が一つになったのだ。
「性懲りもない。再び地獄に叩き落してやろう」
「再び地獄に行くのはお前だ」
「ふふふふふ、はははははははは!」
始皇帝は笑うも、愛紗はものすごい速さで始皇帝に接近した。
「な…に…」
愛紗は鬼武者真偃月刀を目にも止まらぬ速さで振るい、始皇帝を何度も斬りつけた。
「ぬぅ……!」
始皇帝は再び倒れそうになるが、倒れなかった。何故なら途中で止まったからだ。
始皇帝はその倒れそうな体を起き上げた。
「ふふふふふ、ふふふふふふはははははははは。まだ、こんなものではないわ」
「そうか…」
「ぬぅうううううあああああああ!!」
始皇帝の体が光りだした。
光が止むと愛紗と始皇帝は先ほどとはまったく別の場所にいた。
それは何もない場所で小さい地面が円状にあるだけの暗い空間であった。
そこは始皇帝が作り出した空間であった。
「ぬううううううううう!!」
始皇帝の体は燃え始める。すると始皇帝の体は先ほどのような人間の面影がなくなるような変身をしだした、
その姿は幻魔王と呼ぶに相応しい幻魔の姿で炎の鬣を携えていた。
「ふん!」
始皇帝の体の一部が四つに分離し、その四つのものは氣弾を出したり、炎を出したり、レーザーを出したり、体当たりしてきたりと愛紗が始皇帝に近づくのを阻んでいた。
愛紗は始皇帝に近づけずにいたが……。
「どあっ!」
始皇帝は愛紗に近づいて来て、愛紗を剣で襲った。
愛紗は紙一重で避け、始皇帝を攻撃しようとしたが、分かれた体に邪魔されて攻撃は届かなかった。
そんな攻防が続き……。
「ならばこれでどうだ?」
始皇帝の剣は緑色に光りだす。
そして剣からは緑の竜巻が三つほど現れ、愛紗を襲う。
愛紗はそれらを何とか避けた。すると始皇帝の剣は次に青色に光だし、剣からは雷球がいくつも現れ、それらは上空へと飛んでいき、そこから雷を愛紗に向けて落とした。
愛紗はその攻撃も巧みに避ける。始皇帝の剣は今度は赤色に光、愛紗に向けて炎を走らせた。
愛紗はギリギリ避けきれずにその攻撃を受けてしまったが、戦闘に支障が出るものではなかった。
「ならば!」
始皇帝はもう一度同じ攻撃をするも愛紗に避けられてしまう。
「隙あり!」
愛紗がその始皇帝の攻撃の隙をつき、始皇帝の手から剣を弾き飛ばした。
「ぬぅ!」
愛紗は始皇帝の剣を取り、鬼武者真偃月刀と合体させた。
その名は『鬼斬り偃月』。負の力で満たされた剣に鬼の力と鬼武者真偃月刀が同化した最強の武器であった。
「ふうううん!」
始皇帝は鬣の炎をさらに強大にさせ、その鬣からでる炎が愛紗を襲うも愛紗は巧みに避けた。
始皇帝は床を伝って自身を炎化させて、愛紗に一気に近づいた。
「もらった!」
始皇帝が炎を纏った拳を愛紗に向かって振るった!
「…そこだ!」
愛紗はカウンターのように始皇帝の攻撃を避けた同時に背後に回り込んだ。
「な!」
「終わりだ!」
愛紗は鬼斬り偃月で始皇帝の体を斬った。
「ぐうぇあ!」
始皇帝はその場に倒れた。
始皇帝が倒れると二人は元の場所に戻っていた。
そして二人の姿も……。
愛紗は倒れている始皇帝を見る。
「人間は…短い命の割には多くのものを望む。だが、それは幻魔も同じだ。ふはははははは!!」
始皇帝は笑い出す。すると始皇帝の体からどす黒いものが噴出してきた。
「見事なものよ!」
愛紗は右手にある鬼の篭手を前に出した。
すると鬼の篭手は始皇帝を吸収し始めたのだ。
鬼の篭手は吸収を終えると、始皇帝はその場にはいなかった。
「愛紗!」
「約束は果たしたぞ、一刀。…そして鬼の一族よ」
すると玉座の間が崩壊を始めた。
「愛紗、逃げなきゃ」
「ああ」
愛紗は玉座の間から脱出した。
洛陽での戦いは反董卓連合の勝利に終わり、逆賊董卓は処刑された。
これがこの外史で伝えられる歴史。しかし実際は違うものだという事は世間には伝えられなかった。
それから数日が経った。
愛紗は一人で川原に居た。
「ふぅ…」
「愛紗」
そこに阿希が飛んでくる。
「愛紗はこれからどうするの?」
「さあな、とりあえずは姉上達のところには戻ろうと思っているが…」
愛紗は鬼の篭手を見る。
「この篭手に封じられた始皇帝の魂をきちんと封じねばならないからな…」
「だったら…」
そう言うと阿希は体を大きくした。
「あたいが封じに行ってあげるよ。愛紗は仲間のところに戻っていいよ」
「本当に良いのか?」
「あたいだってやれば出来るよ。それに愛紗も普通の生活に戻りたいんじゃないの?」
「戻りたくないといえば嘘だな。…ならば頼む」
愛紗は何とか鬼の篭手を外し、阿希に預けた。
「それじゃあね…」
阿希はそこから立ち去っていった。
「気をつけるのだぞ!」
阿希は後ろを向きながら手を振った。
「さてと、私も皆の所に戻るとしよう…。私を待ってくれている皆の所に…」
愛紗もその場から立ち去っていった。
こうして愛紗と幻魔の永きに渡る戦いはここに幕を閉じた。
一刀のいる現代
一刀と朋絵は西城家の墓に来ていた。
「兄さん…」
朋絵は自分の兄の入っている墓を見る。
「俺達、何とかやっていけるよ」
「だから安心して私達を見ててね」
一刀と朋絵が空を眺めながら言う。
場面は変わって一刀の寮部屋
一刀の部屋には一刀と戦いを共にした鬼の篭手が飾られていた。