孤高の御遣い Brave Fencer北郷伝10 |
天水一刀の自室
一刀は久しぶりに前に見た悪夢を見ていた
いや、悪夢と言うには少し雰囲気が違う
???(イツマデコンナコトヲツヅケルツモリダ)
一刀の目の前には前に見た闇がそのまま集まったような物体があり、自分に語りかけてくる
一刀「一体おまえは誰なんだ?」
???(ソンナコトハドウデモイイ、シツモンニコタエロ)
一刀「・・・・・わからない」
???(ホウ、イツヘイワニナルカワカラナイ、ジブンガドンナニアクトウヲコロシテモイミガナイトワカッテイナガラモカ)
一刀「だから俺は月の陣営に付いてみた、こうすることで他に何かできることがないか自分なりに探っているんだ」
???(アイツハトウタクダゾ、オマエモシッテイルダロウ)
一刀「ああ」
???(ソレナノニ、オマエハジブンノヤッテイルコトヲホントウ二タダシイト、ムネヲハッテイエルノカ)
一刀「・・・・・わからない、でも俺がこの世界に来たのはきっと何かを成し遂げるためなんだと思う・・・・・それが何かは分からないけれど・・・・・」
一刀は前の世界で祖父に言われていたことを思い出していた
『人が世に生を受けるは、何かを成すためにあり』
その通りなんだろう、しかし今の一刀にはその何かは、今だに分からずじまいだ
???(・・・・・マアイイダロウ、メヲサマセバベツノイミノキツイタタカイガオマエヲマッテイルンダカラナ)
一刀「ん?別の意味のきつい戦い?」
???(メヲサマセバワカル、セイゼイクロウスルンダナ・・・・・イチオウドウジョウシテオイテヤルヨ、ソンナクロウジンクン)
黒い物体は、最後にそう言い一刀の意識は覚醒していった
一刀「・・・・・う〜〜〜〜〜〜ん」
目を覚ますと天水の自室の天井が見えた
一刀「・・・・・前とは違う夢だったな、本当に誰なんだあいつは・・・・・」
夢の中に出てくる存在について自分なりに詮索してみるが
一刀「・・・・・ふぅ、考えてもわからないな・・・・・」
それはそうだろう、どんなに考えたところで結局答えは分からないのだから
一刀「・・・・・さてと」
一刀が起き上がろうとすると
ムニュン
???「ううんぅ」
一刀「・・・・・へ?」
『なんか、前に同じことがなかったか?』と思い左を向くと
恋「く〜〜〜〜、く〜〜〜〜〜〜」
一刀「・・・・・・・・・・」
天下の飛将軍こと恋が同じ布団で、しかも下着姿で眠っていた
とても史実の呂布奉先と同一人物とは思えないほどの可愛らしさである
と、そんな事はどうでもいい
一刀「(まさか、昨日の夜、恋のかわいらしさに狼になってしまったのか!?)」
一刀は順を追って頭の中を整理していく
しかし、そんな記憶は全くなかった
恋「く〜〜〜〜〜、く〜〜〜〜〜〜〜」
一刀が自問自答しているにもかかわらず恋は気持ち良さそうに眠り続けている
一刀「・・・・・(本当に可愛いなぁ)」
恋の寝姿に癒される一刀
しかし
一刀「(まてよ!?この後にやってくるセオリーは・・・・・)」
一刀の脳内妄想
バン!
自室の扉が開く
そこには天水の主要な将達がいる
月「一刀さん、信頼していたのに・・・・・」
詠「こんの性欲魔人!!///////」
華雄「な!?な!?な!?な!?//////////」
霞「おお!?たった一日でここまでの関係やんか!?一刀やるな〜〜♪」
菖蒲「やっぱり、男の人なんて・・・・・」
雫「一刀様・・・・・不潔です・・・・・」
音々音「ち・ん・きゅ・う・・・・・キーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!!!!!」
以上脳内妄想終了
一刀「・・・・・・・・・・」
コ ・ ロ ・ サ ・ レ ・ ル
一刀は、このままでは拙いと思い恋を自分のかけ布団にくるみ、お姫様抱っこで自室の扉に向かう
扉を開けてあたりに人の気配がないかチェックする
一刀「(右よ〜〜〜〜し、左よ〜〜〜〜〜し、上よ〜〜〜〜〜し、下よ〜〜〜〜〜し)」
そこまでチェックする必要があるのか分からないが、一刀は気配を完全に消して恋の部屋へ向かった
何とか誰にも見つからずに恋の部屋にたどり着いた一刀は恋を寝台に寝かせる
一刀「(これでよし・・・・・)」
何とか無事に事無きを得た一刀
寝台に寝かせた恋に綺麗に布団をかけて部屋を出て行く・・・・・・・・・・・かと思われたが
ガシッ!
一刀「・・・・・え?」
恋「ん〜〜〜〜〜、く〜〜〜〜〜〜〜〜」
『行っちゃだめ〜〜〜〜〜〜?』と言わんばかりに恋が一刀の手首を掴んだ
どうやら無意識の内にやっているらしい
そして
ガバッ!!
一刀「うわっ!?」
ムギュウウウウウウウウウウウ
恋が一刀を引き寄せ布団の中に引きずり込み『寒いの〜〜〜〜〜?』と言わんばかりに一刀の顔を自分の胸に押し付けた
一刀「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!////////」
この世の天国と地獄を味わう一刀
御想像の通り、息ができないのだ
想像していたよりも大きい恋の胸に一刀は窒息しそうである
振り払おうとする一刀だが、力では恋の方が上
恋「む〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」
一刀「ぷはっ!」
一瞬恋の力が抜け脱出を図る一刀・・・・・しかし、そうは問屋が降ろさなかった
恋「んぅ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」
一刀「え?わっ!?」
ムチュウウウウウウウウウウ
一刀「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!??////////」
『離さな〜〜〜〜〜〜い?』と言わんばかりに恋が一刀の唇にキスをしてきた
一刀は嬉しいんだけどあまりのことに混乱する
なんとか恋を振り払おうとするが、あくまで純粋な力では恋の方が上
必死にもがくが、そこに
雫「ねねさん、まだ早いです、恋さんは寝ていますよ!」
音々音「ねねはいつでも恋殿と一緒ですぞ〜♪」
一刀「!!!???」
聞こえてくる雫と音々音の声に一刀は絶句する
確実にこちらに向かってくる
この後のお約束を想像する
脳内妄想
サ ・ ツ ・ ガ ・ イ
以上脳内妄想終了
この後の展開が容易に想像できる
これじゃせっかく恋を部屋に連れてきた意味がない
一刀は何とか恋を振り払おうとするが、恋は
恋「んんぅ〜〜〜〜〜〜〜」
『い〜〜〜〜〜〜〜や?』と言わんばかりに一刀を離さない
そしてついに雫と音々音が部屋の前にやってくる
雫「恋さんは寝てますよ!」
音々音「恋殿〜♪」
ガチャ
開け放たれる扉
そこには
雫「あれ?居ませんね・・・・・」
音々音「恋殿にしては珍しいのです〜」
寝台の上には誰も居なく二人は頭の上に?マークを浮かべている
雫「厠にでもいったんですかね?」
音々音「なら探しに行くです〜♪」
バタン!
と扉を閉めて去っていった
一刀「(・・・・・行ったか)」
一刀と恋は寝台の下に隠れていた
一刀は恋にキスされたまま恋を抱いて、神業級の無音歩行術で何とかこの場を乗り切ったのだ
しかし
恋「んむぅ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・」
一刀「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!??/////////」
恋は自分の足を一刀の足に絡めてきてきた
さらに密着する一刀と恋
一刀「(お願い恋さん!!嬉しいんだけどもう止めてーーーーーー!!)/////////」
心の中で泣きそうになっている一刀
しかし恋は
恋「んちゅ、んぅ〜〜〜〜〜〜?//////////」
『あなたは私の物、誰にもあげない?』と言わんばかりに一刀に抱きつく
それから、寝台の下での一刀と恋のラブラブイチャイチャバトルは、昼まで続いたのだった
ようやく開放された一刀
しかしその後は、詠に散々に尋問され完全に意気消沈してしまう
それに対して恋は
恋「????」
と今朝のことを全く覚えていなかった
一刀は思う
一刀「(夢の中のあいつが言っていたのは、こうゆうことか・・・・・)」
こうして一刀のファーストキスは恋のものになりましたとさ(恋の初めても一刀のもの)
ある意味拠点
月&詠
こうして董卓軍の客将となった一刀
しかし、この時代は人一人といえどもただ飯を食わせてやれるほどの余裕はない
しかも黄巾党の乱が終わったばかりで、どこの地域もまだまだ治安が悪く民達は今の現状に不安を隠せないのだ
そんなこんなで一刀は、詠の執務室に呼び出しを食らっていた
詠「一刀、あんた政務はどれくらいできるの?」
一刀「う〜〜〜〜ん、やったことがないからなんともいえないな」
詠「まさか、文字が読めないってことはないでしょうね?」
一刀「それは大丈夫、賊を討っている間も手配書とかの情報収取もしていたから、よほど難しい文章でない限り読める」
雫「では、いまから簡単なものをいくつか渡しますから出来たら言ってくださいね」
一刀「わかった」
渡された竹簡に目を通していく
一刀「(・・・・・これは、町の治安に関することか)」
一刀は早速竹簡に書き込んでいった
一刀「・・・・・終わったよ」
詠「え!?」
雫「早いですね!」
一刀「間違っているかもしれないからチェッk・・・・・見直して貰えるかな」
詠「?・・・・・わかったわ」
雫「はい」
二人は一刀の書いた竹簡に目を通していく
詠「・・・・・・・・・・」
雫「・・・・・・・・・・」
一刀「・・・・・・・・・・」(どきどき)
一刀はどんな評価をもらえるのか少し不安になる
しばらくして
詠「一刀・・・・・この『割れ窓理論』というのはあなたが考えたの?」
一刀「いや、俺が前居たところではよく使われていた治安維持法で、ここで使えないかな〜て思ったんだ」
雫「この、町の区画整理の図もですか?」
一刀「それも俺の国で、昔使われていたものなんだ」
そう、そこには一刀が示した政策が詳しくかつ判りやすく書かれていたのだ
詠「・・・・・・・・・・」
雫「・・・・・・・・・・」
二人は考え込む
そこへ
ガチャ
月「あれ?詠ちゃん、雫さん、一刀さんどうしたんですか?」
この城の主が入ってきた
詠「月、今一刀に政務を手伝って貰っていたところなんだけど・・・・・」
月「?・・・・・どうしたの?」
月が頭に?マークを浮かべていると
雫「月様!一刀様は凄いです、これはわたし達では考えもしない画期的なものです!!」
月「え?え?」
詠「これは・・・・・認めるしかないわね・・・・・」
一刀「ん?それでよかったのか?」
雫「いいどころか、これほど画期的なものを簡単に出してしまう一刀様が羨ましいです!!」
そんなやりとりをしていると
詠「一刀!!」
一刀「うわっ!?」
いきなり大声で声を掛けられ驚く一刀
詠「あんたに、この天水の治安に関すること、全て一任するわ!」
月「え!!?」
一刀「なに!!?」
詠のあまりにも思い切った発言に月と一刀は面食らう
一刀「いきなり何を言い出すんだ!!?」
詠「自分の出した策なんだから、最後まで責任を持ちなさい!副官には除栄と張済を付けるわ、後は雫と菖蒲にも手伝って貰うわ、いいわよね雫?」
雫「かまいません」
一刀「でも!・・・・・わかった、自分に出来る最高の仕事をすると約束していたからな、頑張ってみるよ」
詠「それじゃ、早速実行に移しなさい、菖蒲には連絡しておくから」
一刀「わかった」
こうして、一刀は部屋を出て行った
詠「まったく、本当に何者なのよ、あいつは・・・・・」
雫「はい、これほど画期的な策、既存の知識では到底思い付かないはずなんですが・・・・・」
月「そんなに凄いものなの?詠ちゃん」
詠「正直言っていい拾い物をしたと思っているわ」
月「そんなこと言ったダメだよ、詠ちゃん!」
月はプク〜〜〜〜〜〜とフグの様な顔をする
可愛い
詠「わ、わかってるわよ!変な意味で言ったわけじゃないから!///////」
月「うん、ならいいんだよ♪」
月と詠は抱き合う
雫はそんな二人を見て、和んでいた
ある意味拠点
霞
霞「いや〜〜〜〜〜〜〜♪ええなこれ♪ごっつええわ♪」
一刀「気に入ってもらえて何よりだ」
霞が何故これほど喜んでいるのか
それは一刀が考案した鐙である
試にと思い、霞の馬で試して貰ったのだが、その抜群の安定性に霞はご満悦なのだ
ただいま全ての軍馬に装備させるために、目下大量生産中である
霞「にしてもこんないいもの、なんで今まで一刀は作らなかったんや?」
一刀「俺はこれほどのものを作れるほど器用じゃないし、作るための道具も持っていなかったからな」
霞「なるほどな、そや!これから馬上で試合しないか?」
一刀「え!!?」
霞「何でそんなに驚いとるんや?」
一刀「・・・・・いや、面白そうだ」
霞「ほな、さっそくやろか♪」
1分後
キイイイーーーーーーーーーーン!!!
一刀「あ!!?」
一刀の忠久が弾かれ、霞の飛龍堰月刀の切っ先が一刀の喉に突きつけられる
霞「・・・・・ウチの勝ち、やな」
一刀「・・・・・降参だ」
この前の試合とは完全に逆の立場になった二人である
霞「一刀どないしたんや?あんたほんまに恋に勝ったんか?」
一刀「・・・・・俺は今まで、狛煉に乗ったまま戦ったことはなかったんだ」
そう、一刀は地に足をつけて戦う一剣士である
馬上での戦いでは、流石に霞のような経験豊富な者には敵わなかったのだ
霞「なるほどな、ほな、今度は金剛刀を使ってみたらどうや」
一刀「・・・・・色々試してみるのもいいか」
一刀は忠久を拾い鞘に収め、金剛刀を構えた
霞「ほないくで!」
一刀「よし、来い!」
5分後
一刀「しっ!!くっ!!」
霞「せいっ!!はっ!!」
カアーーーーーン!!キイイーーーーーーーン!!ガアアーーーーーーーーーン!!
何とか打ち合える
しかしそれでも
ガキイーーーーーーーーーーン!!!
一刀「うっ!?」
霞「隙ありや!!」
一刀の一瞬の隙を突いて霞の堰月刀が一刀に突き付けられる
霞「・・・・・またまた、ウチの勝ちやな」
一刀「・・・・・まいった」
それでも敵わない
霞「いや〜〜〜〜ちょっと危なかったわ、一刀、これから馬上で戦うときは金剛刀を使った方がいいと思うで♪」
一刀「そうしよう、どうやら馬上では金剛刀の方が相性がいいみたいだからな」
こうして一刀と霞の馬上訓練は続いていったのであった
ある意味拠点
雫&菖蒲
ここは天水郊外の森の中
一刀と菖蒲と雫は郊外の賊の討伐に来ていた
一刀「徐栄、張済!盾隊を前面に並べろ」
除栄「はっ!」
張済「おう!」
一刀「雫!菖蒲への合図は?」
雫「はい、一刀様!万全です!」
一刀「よし、十分引き付けてからだ・・・・・今だ!銅鑼を鳴らせ!」
雫「はい!」
ジャーーーーーーーーン!!!ジャーーーーーーーン!!!ジャーーーーーーーーーーン!!!
ドラの音と共に伏兵の菖蒲の部隊が山から一斉に賊に襲い掛かった
賊は一刀と菖蒲の部隊に挟み込まれる形になり次々と討ち取られていく
ちなみに一刀の隊の名前は公式には董卓新鋭防衛隊となっているが、隊の中では北郷隊で通っている
それは何故かと言うと
ちょっと前に遡る
徐栄「北郷様!わたくしはあの時の呂布将軍と北郷様の試合を見て感動しました!」
張済「是非、あなたのことを兄と思わせてください!」
一刀「えーーーーーー!!!!?」
以上遡り終了
と言った具合に一刀の戦いぶりに感動した二人が居て、一刀の隊は自称北郷隊となっていったのだ
それに対して一刀は
一刀「(公式では董卓新鋭防衛隊なのに、あまり大声で北郷隊北郷隊て言わないでほしいな)」
あまり目立ちたくない一刀は、部下達にあまり北郷隊と言わないようにと伝えていたが、無駄に終わったようだ
そして今回の賊討伐は怪我人こそ出たが、完全勝利で終わった
一刀「・・・・・各部隊の被害状況は?」
雫「はい、董卓新鋭防衛隊の被害はたいしたことはありません」
一刀「(この部隊をちゃんと正式名称で呼んでくれる雫は偉いな〜)」(しみじみ)
菖蒲「わたくしの部隊からはかなりの数が出ました」
一刀「・・・・・分かった、怪我人を重症のものから集めてくれ」
「ぐぐぐ!!」
「い、痛い!!」
「腕が〜〜!!」
一刀「大丈夫だ!すぐに治してやる!」
一刀は懐から針を取り出す
徐栄「・・・・・徐庶様、隊長はいったい何を?」
雫「見ていれば分かります」
菖蒲「はい」
徐栄「???」
張済「???」
二人はわけが分からなかった
そして
一刀「はああああああああああああ!」
徐栄「え!?」
張済「な!?」
いきなり大声を上げる一刀に、二人は戸惑う
一刀「違う・・・・・こいつらじゃない・・・・・こいつか? いや、こいつでもない・・・・・」
雫「・・・・・・・・・・」
菖蒲「・・・・・・・・・・」
徐栄「・・・・・・・・・・」(ぽか〜〜〜〜ん)
張済「・・・・・・・・・・」(ぼ〜〜〜〜〜〜)
雫と菖蒲は慣れた表情で見守っている
突然の一刀の叫びに除栄と張済は唖然としている
一刀「見えた!貴様ら病魔など、この鍼の一撃で蹴散らしてやる!はああああああああああ!!」
周りの者達もなんだなんだと騒いでいる
一刀「我が身、我が鍼と一つなり!一鍼同体!全力全快!必察必治癒!病魔覆滅!げ・ん・き・に・なれえええええええええええっ!!」
ぴしゃーーーーーーーーーん
「あ、あれ?痛くなくなった?」
一刀「病魔、退散・・・・・」
部下のかなり深かったはずの傷は一瞬で治っていた
徐栄「( ゚д゚)」
張済「(;゚ Д゚)」
その後も一刀は自慢の五斗米道(ゴットヴェイドー)で部下達の傷を片っ端から癒していった
一刀「よし、これでおしまい・・・・・徐栄、張済、皆をを休めてくれ、俺は水浴びに行ってくる」
全ての部下達の治療を終えた一刀は、狛煉に飛び乗り水浴びをしに川の方に向かっていった
雫「・・・・・いつ見ても凄いものですね」
菖蒲「・・・・・はい」
徐栄「( ゚д゚)」
張済「(;゚ Д゚)」
五斗米道(ゴットヴェイドー)を初めて見た除栄と張済の反応はごらんの通りである
こういったこともあり一刀の人気は董卓陣営内では急上昇していったのである
雫「そろそろ一刀様が戻りますね」
菖蒲「わたくし達も水浴びに行きましょうか」
二人はそういうと一刀が向かった方向に馬を走らせた
しかし、いつまでたっても一刀と擦れ違わない
しばらくすると川の音が聞こえてきた
そこには
雫「っ!?」
菖蒲「あっ!?」
まだ水浴びをしていた一刀の姿があった
一刀は完全に生まれたままの姿で滝に打たれていた
近くで狛煉が草を食べているのが見える
雫「・・・・・菖蒲さん、来るのが早かったようですね/////////」
菖蒲「そうですね、出直しましょう/////////」
二人が引き返そうとすると
一刀「Amazing grace〜〜〜〜〜♪ how sweet〜〜〜〜〜〜〜♪ the sound〜〜〜〜〜♪」
雫「!!??」
菖蒲「!!??」
二人が振り返るとそこには
一刀「That saved〜〜〜〜〜〜♪ a wretch〜〜〜〜〜〜〜〜♪ like me〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
普段、発している声とは思えないほどの高く透き通ったどこまでも響く様な声で、今まで聴いたこともない歌を歌っている一刀の姿があった
二人はいけないと思いながらも草叢から一刀の姿を見ていた
一刀「I once was〜〜〜〜〜〜〜〜♪ lost but〜〜〜〜〜〜〜♪ now am〜〜〜〜〜〜〜♪ found〜〜〜〜〜♪」
雫「・・・・・///////////////」
菖蒲「・・・・・/////////////」
二人は見惚れ、聞惚れた
一刀の鍛え抜かれた体と腰まで伸びた髪は、水を含み、キラキラと輝く
その姿はまるで子供の頃に御伽話で両親から聞いた飛天のようだったのだ
一刀「Was blind〜〜〜〜〜〜〜〜♪ but now〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪ I see〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
雫「/////////////」
菖蒲「////////////」
結局二人は、最後まで一刀の歌を聴いていたのだった
そして帰り道
一刀「あの〜〜〜、雫さん?菖蒲さん?」
雫「///////////」
菖蒲「/////////」
一刀が声を掛けても二人は顔を赤くし全然言葉を交わそうとしない
一刀「(まいったな、嫌われたのかな?)」
とか思っている我らが鈍感王であった
一刀「・・・・・それじゃあ解散」
徐栄「はっ!お疲れ様でした!」
張済「お疲れ様です!兄上!」
菖蒲「お、お疲れ様でした」
雫「お疲れ様です、わたしは今回の討伐の成果を詠さんに報告してきます」
天水の城に戻ってきた一同は、解散宣言によってそれぞれの持ち場へと戻っていくが
菖蒲「(これからどうしましょうか・・・・・)」
数日かかると予想されていた賊の討伐はたった一日、しかも午前中に終わってしまったため菖蒲は空いた時間をどう使うか悩んでいた
一刀「・・・・・なあ、菖蒲」
菖蒲「ひっ!!?」
一刀「え?」
後ろから一刀が菖蒲に声をかけるが、その途端に菖蒲は無駄のないキレのいい動きでこちらを見据え身構えた
菖蒲「あ、あの・・・・・その・・・・・あの・・・・・失礼します!!お疲れ様でした!!///////////////」
一瞬深く一刀に頭を下げその勢いのまま菖蒲は逃げるように天水の城へ走って行ってしまった
一刀「(・・・・・まいったなぁ、本気で嫌われたらしい)」
菖蒲「はぁはぁはぁはぁ・・・・・はぁ〜〜〜〜〜・・・・・いったい何をしているのですか、わたくしは・・・・・」
男性恐怖症を治そうと武芸を習ったはいいが、自分自身がこれでは何も意味がないではないか
菖蒲「(このままでは、一刀様に要らぬ誤解を与えてしまいます・・・・・)」
いい加減この性格を何とかしなければと思い、菖蒲は足を踏み出した
一刀「・・・・・・・・・・」
サラサラサラサラサラサラサラサラ
執務室にて余った時間を案件の処理に傾けてる一刀
竹簡に凄いスピードで案件に対する指示を刻んでいくが
一刀「・・・・・う〜〜〜〜ん・・・・・駄目だなぁ・・・・・」
しかし、なんとも集中できていない
一刀「(なんとか嫌われている原因を突き止めないとな・・・・・)」
雫や菖蒲が自分のことを嫌っていると思い込んでいる鈍感野郎
この世界の歴史になるべく影響を与えないようにするという選択をするからにはこのままでもいいと思うが、一つの陣営に入ってしまった以上、居心地が悪いままでは今後仕事を進めていく上では問題がある
月「あれ?どうかされましたか?一刀さん」
詠「疲れたの?まあ、あんたに振り分けている仕事はかなりの量だし、休んでいいわよ」
月「はい、それだけ処理してくださればもう充分ですから」
一刀「いや、ちょっとした懸案事項があってさ・・・・・」
月「?・・・・・どんなことでしょう?わたくしでよろしければ相談に乗りますよ」
詠「あんたでも悩むことってあるのね・・・・・言ってみなさいよ」
一刀「ああ・・・・・俺、雫と菖蒲に嫌われているみたいなんだ」
月「え?」
詠「あんた何言ってるのよ?」
一刀「いや・・・・・討伐から帰ってくる途中なんだけど、かくかくしかじかで」
月「・・・・・・・・・・」
詠「・・・・・・・・・・」
一刀「・・・・・ん?どうしたんだ?」
キョトンとした表情をしている月と詠を見て、一刀も同じような表情をしてしまう
詠「はぁ・・・・・あんたって時々頭いいのか悪いのか解らない時があるわね」
一刀「え?」
月「一刀さん、雫さんと菖蒲さんは、一刀さんのことを嫌っているわけではありませんよ」
一刀「どうしてそんなことが言えるんだ?」
詠「そんなに心配なら、直接本人に聞いてくればいいじゃない」
一刀「・・・・・二人は今何処にいるんだ?」
月「雫さんは、北の安定に市場開放の交渉に行って頂いていますので天水にはいません」
詠「菖蒲は、練兵場で兵の訓練中よ」
一刀「分かった、まずは菖蒲の方から当たってみよう」
意を決し一刀は忠久と金剛刀を装備し執務室を後にした
詠「・・・・・どうやらあいつ、恋愛については素人のようね」
月「くすくす♪それは詠ちゃんも同じでしょ♪」
詠「ちょっと月!余計なこと言わないでよ!///////////////」
月「くすくすくすくす♪・・・・・あ、そういえば詠ちゃん、菖蒲さんの性格の事は一刀さんに話したの?」
詠「え?月は話したんじゃないの?」
月「ううん、話してないよ」
詠「・・・・・・・・・・」
月「・・・・・・・・・・」
詠「まあ、あいつなら大丈夫でしょ!・・・・・・・・・・だぶん・・・・・」
月「へうぅ〜〜〜〜〜、凄く心配だよぉ〜〜〜〜」
一刀「え〜と、詠が言うにはここだったよな・・・・・」
天水の郊外の練兵場へと足を運んだ一刀
その広い平野にて一つの団体があった
菖蒲「残り百回!!!」
「「「「「おう!!!!」」」」」
イー!!アール!!サン!!スー!!ウー!!リュー!!チー!!
詠が言っていた通り、そこでは菖蒲が自分の部隊、徐晃隊の調練をしていた
兵達は菖蒲の指示に従い、素振りに打ち込んでいた
一刀から見て後姿だが、普段の大人しそうな菖蒲の雰囲気は何処にもない
きっとその表情は凛とした武人のそれなのであろう
一刀「お〜〜い、菖蒲」
菖蒲「残り五十回です!!!」
一刀「・・・・・・・・・・」
どうやら調練に夢中でこちらに気が付いていないらしい
仕方がないので、この素振りが終わるまで待つことにする
菖蒲「終了!!!続いて郊外十周!!!」
一刀「え!?」
どうやらこれで終わりではなかったようだ
菖蒲「隊列を組め!!!駆け足!!!」
その言葉と同時に菖蒲は隊列の先頭に立ち兵達を先導して共に走り出す
一刀「・・・・・ただ待っているのも退屈だし、飛び入り参加してみるか」
そして、忠久と金剛刀を装備したまま、一刀は徐晃隊の後を付いて行った
それから、1刻後
菖蒲「休め!!!本日の調練過程終了!!!」
それから、重さ約40kgはあるであろう岩石の100回上げ、腹筋を200回、及び陣形の構築や変形の訓練を何回も繰り返し今回の調練は終了となった
「「「「「ぜはぁ〜〜〜〜!!ぜはぁ〜〜〜〜!!ぜはぁ〜〜〜〜!!」」」」」
終了の合図と共に体力を限界まで絞り出した徐晃隊兵士達はその場にへたり込み一歩も動こうとしなかった
一刀「あ、これで終わりなのか?」
もちろん、それらの訓練を一刀も一緒(自主的)に受けていたが、全く疲れた顔をしていなかった
山賊狩りの日々がこういったところで生かされるのは皮肉な話である
菖蒲「皆さん、お疲れ様でした、しっかり水を飲んで休んでください」
訓練にしっかり付いてきた者達に対しての労いも決して忘れない
これも兵を率いる者には大切な事なのであろうが、こちらが素の菖蒲のような気がする
きっと菖蒲のこの性格を知っているから兵達は彼女に付いていくのであろう
一刀「お疲れ様、菖蒲・・・・・」
へたり込む兵士達に水を配る菖蒲に後ろから声をかける
すると
菖蒲「きゃーーーーーーーーーーーー!!!!」
ブオンッ!!ブオンッ!!
一刀「うおっ!!?」
挨拶の代わりに、菖蒲の二対の大斧、鬼斬の刃が返ってきた
その不意打ち混じりの攻撃を一刀は紙一重でかわした
菖蒲「きゃーーー!!!きゃーーー!!!きゃーーー!!!きゃーーー!!!きゃーーー!!!」
ブンブンブンブンブンブンブン!!!!!
一刀「ちょっ!!菖蒲!!危な!!うおっ!!」
縦横無尽に襲い来る鬼斬の斬幕を紙一重で掻い潜る一刀
がやがやがやがや
いきなり始まった徐晃将軍と山賊狩りの一騎打ちに徐晃隊の面子はお祭りムードになる
一刀「(これやっぱり俺絶対嫌われているって!!!)」
普通に声をかけたつもりなのに、取り付く島もなければなんともならない
鬼斬を振るっている菖蒲は強く目を閉じ、何も考えず一心不乱だということを物語る表情をしている
一刀「くっ!」
ガシッ!!ビシッ!!
襲い来る二対の大斧を無刀取りで受け止める
一刀「悪かった!!俺が悪かったから!!頼むからこれをしまってくれ!!」
菖蒲「ううううう〜〜〜〜〜〜〜!!・・・・・はっ!!?・・・・・えっ?一刀様?」
ようやく目を開いた菖蒲は一刀の姿を見るなり呆然とする
一刀「菖蒲が俺のことが嫌いなのは理解したから!!この斧をしまってくれ!!」
菖蒲「え?・・・・・あ!!?これは!!そのあの!!」
自分が何をしていたのかようやく理解した菖蒲は、急いで鬼斬を引っ込めた
一刀「俺が悪かった、もう菖蒲には近づかないようにするから、それじゃ・・・・・」
菖蒲「ちちちち違うんです一刀様!!!そうではないんです!!!どうか行かないで下さい!!!」
その場を立ち去ろうとする一刀の手を掴みなんとかその場に留めようとする
一刀「いいんだいいんだ!俺のことが嫌いなんだろ!?無理しなくていいって!」
菖蒲「お願いですから話を聞いてください!!これには訳があるんです!!」
その後、天水の城へ戻る途中にて一刀は菖蒲の説明を受けていた
一刀「・・・・・つまり、昔男の子に苛められていて、すっかり男性恐怖症になってしまったと」
菖蒲「・・・・・はい」
一刀「でもさっき、普通に兵達の訓練をしていたよな?」
菖蒲「あれは、面と向かっていれば大丈夫なんですが・・・・・先ほどの様に後ろから突然声をかけられると、無意識の内に・・・・・」
一刀「そうか、そういうことだったのか・・・・・」
菖蒲「(何をやっているのですかわたくしは、結局一刀様に要らぬ誤解を与えてしまっているではありませんか)」
一刀「分かった、それじゃあ今後時間が空いたら菖蒲の男嫌いを治す手伝いをしてあげるよ」
菖蒲「え?それは一刀様が以前に使われていた五斗米道(ゴトベイドウ)を使ってですか?」
一刀「五斗米道(ゴトベイドウ)じゃなくて、五斗米道(ゴットヴェイドー)ね」
菖蒲「も、申し訳ございません!どうにも発音が難しくて!」
一刀「それはいいけど・・・・・五斗米道(ゴットヴェイドー)は、体に巣食う病魔や、怪我を治すものだから、精神的な病には効果がない・・・・・だから少しずつ男性に慣れていくようにしよう」
菖蒲「それは具体的には、どのように?」
一刀「俺がたまに菖蒲に後ろから声をかけるから、菖蒲は攻撃しようとするのをぐっとこらえること」
菖蒲「そんなの危険です!」
一刀「俺なら大丈夫さ、さっきも菖蒲の不意打ちを避けていただろ?」
菖蒲「・・・・・・・・・・」
一刀「来ると分かっていれば、いくらでも躱すことはできる・・・・・菖蒲には毎度驚かせることになってしまうだろうけど・・・・・」
菖蒲「いいえ、わたくしもこの性格を何とかしたいと思っていましたので・・・・・一刀様にはご迷惑をかけてしまうでしょうけど・・・・・よろしくお願いできますか?」
一刀「俺のことは気にしなくていい、俺が協力したいと思っているんだからさ」
菖蒲「・・・・・ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
一刀「うん・・・・・でもよかった、俺は菖蒲にも雫にも嫌われていると思っていたからさ」
菖蒲「え?わたくしはともかく、なぜ雫さんなんですか?」
一刀「だって、さっき賊の討伐から帰って来た時何度も菖蒲と雫に声をかけていたけど、二人ともだんまりだったからさ」
菖蒲「それは・・・・・」
思い出されるのは、水浴びをしていた一刀の姿
菖蒲「(そそそそそんなこと言えません!!)/////////////」
一刀「????」
両手をお腹の所で繋ぎ指を動かしながらモジモジしている菖蒲に、なんで赤くなっているんだろうと思っている相変わらずの鈍感野郎が居た
徐栄「こちらが報告書です」
雫「ありがとうございます・・・・・では、町の治安に関しては引き続きお願いします、ご苦労様でした」
徐栄「はっ、徐庶殿、これにて」
安定での任務を無事果たし帰還した雫は、天水の城の廊下にて徐栄から治安に関しての資料を受け取っていた
雫「・・・・・ふぅ、最近忙しくなりましたね」
徐栄から受け取った資料を読みながら廊下を進んでいく雫
雫「(・・・・・凄い、町の広場から裏路地、郊外、さらには街道の宿場町までみるみる治安が良くなっている)」
資料に書かれている内容は、どれも優良を示すことばかりだった
治安改善による経済的効果も目を見張るものがある
一刀の意向により、治安維持の報告書は各地に設けられた部署から3日に一度必ず天水の城に届けられることとなっていた
かつて、一刀が来る前は、天水の治安は決して褒められたものではなかった
以前から治安の悪さによる問題が浮き彫りになっていたのも周知の事実だった
もちろん、自分達も何もしていなかったというわけではない
軍から警備隊を編成し治安維持に人員を傾けてもいた
しかし、それでも広く細かいところまで手が行き届いていたわけではない
実際、月が一人で郊外に出た時、見事に賊に襲われてしまったのだから
雫「(思い返してみれば、一刀様が現れたのが、そもそもの始まりだったんですよね・・・・・)」
雫は、一刀の姿を頭の中に思い描いてみた
雫「・・・・・//////////////」
思い出すのは、水浴びをし物凄く綺麗な歌声を披露していた一刀の姿
雫「(はっ!!?わたしは、何を思い出しているんですか!!?それに男の人の裸なんて普段の調練で見慣れているはずじゃないですか!!)/////////」
よくよく考えてみれば、なぜ自分は一刀のことを様付けで呼ぶのか
彼は自分のことを天の御遣いではないと言った
しかし、客観的に考えればそうと考えれば辻褄が合う事が多い
治安維持活動に関する知識、それ以外の今まで見たことも聞いたこともない政策の数々、恋に匹敵する武、そして見たことのない生地の服
彼の人となりは短い間しか接していないが理解している
占い師管輅が言っていた『武と智と和によって乱世を平定するであろう』、この言葉に当てはめれば、彼は占いの中の天の御遣いの条件にぴたりと一致する
もしこの先、天の御遣い様に仕え今まで培ってきたもの全てを捧げることが出来たならば・・・・・
雫「はぁ、いけませんね、どうも物思いに耽ってしまいます」
辺りを見回してみると、すでに茜色が差し始めていた
雫「そうです、こんな時は♪」
雫「♪♪〜〜〜♪♪〜〜〜」
自分の執務室に資料を置き向かうのは台所
そう、雫はお菓子作りについては水鏡塾の中でもダントツの一位なのである
その腕は、もし大陸菓子作り大会が開かれれば圧倒的実力で優勝をさらってしまいそうなほど
鼻歌を歌いながらこれからどんなお菓子を作ろうか頭の中で整理していると
雫「♪〜〜♪〜〜・・・・・あれ?この匂いは・・・・・」
台所からはなんとも香しい匂いが流れてきていた
その甘くほのかな香りは人の食欲を刺激するには十分な媚薬を含んでいた
雫「(いったい誰が・・・・・)」
台所の扉の陰から中を覗き込む
雫「え!?」
なんとそこには、あの一刀が中華鍋を片手に料理に勤しんでいた
中華鍋の中の物体を空中に何回も放るその手際は、長年料理を嗜んできた雫も目を見張るものがあった
雫がその後ろ姿をしばらく呆然と眺めていると
一刀「・・・・・そこにいるのは誰だい?」
雫「っ!!?すみません、盗み見みたいなことをして!!」
一刀「雫か、見たければそんな所に立ってないで、こっちに来ればいいのに」
雫「あはい、では失礼します・・・・・」
少し後ろめたい気持ちがあったため、雫は若干あせあせしながら台所に入った
雫「いったい何を作られているのですか?」
一刀「ホットケーキだよ」
雫「?・・・・・ほっ・・・・・と?・・・・・」
一刀「ああそっか、こっちにはこんな菓子は存在しないんだっけ」
雫「一刀様、ということはそのほっと・・・・・けーきというのは天の世界の食べ物なのですか?」
一刀「別に俺は天の御遣いとか、そんな胡散臭いものじゃない、よっと」
鍋の中のホットケーキを空中で一回転させキャッチする
雫「では、このお菓子はいったい?」
一刀「これは、前に俺が居たところ、この国からいえば東の海を渡った所にある日ノ本と書いて日本という国のものだよ」
厳密に言えばホットケーキ自体、西洋から輸入されたものなのだが、細かいことは無しにしよう
しかも、今の日本は邪馬台国のはずだし
雫「この国から東の海といいますと・・・・・かつて徐福が渡ったといわれている蓬莱のことでしょうか?」
一刀「徐福?・・・・・ああ、秦朝時代、不老不死伝説の徐福のことか・・・・・そんな昔のことは知らないけど、蓬莱山は日本でも有名だから正解かもしれないな」
雫「・・・・・ということは、一刀様は天の御遣い様ではないということですか・・・・・」
一刀「そうだよ、俺は自分がそんな御大層な人間とは思わない、しっと」
雫「・・・・・・・・・・」
そう言いながら、ホットケーキを放る一刀
彼の言動には嘘は含まれていない、それは分かるが、心の中で納得できない自分がいるのもまた事実だった
一刀「おいおい、そんなに残念そうにするなよ・・・・・そういえば、雫は何でここに来たんだっけ?」
雫「あ、はい・・・・・わたしはお菓子を作るのが趣味でして」
一刀「あ!それじゃあ俺が占領していたわけか!?それはすまなかったな!」
雫「いいえ!今まで見たことがないお菓子が見れましたので、むしろよかったです!」
一刀「そっか・・・・・おっとそろそろ頃合いかな」
狐色一歩手前で焼きあがったホットケーキからはさらに甘美な匂いが
一刀「よし、なんだったら一緒に食べるか?」
雫「え?よろしかったのですか?」
一刀「構わないよ、ここに何枚か作ってあるし、誰かと一緒に食べた方が退屈しない」
雫「では、いただきます」
雫「・・・・・・・・・・」
一刀「・・・・・どうだ?味の方は?」
蜂蜜をかけたホットケーキを口に運びその味を確かめる
雫「・・・・・とても美味しいです!!/////////」
一刀「そ、そんなに美味しかったか?」
雫「はい!!今まで味わったことのないあまりの美味しさに言葉を失ってしまいました!!//////////」
今回のホットケーキは、原材料がこの国には無いものもあり、それを補うためにいろいろ工夫を拵えていたのだが、上手く作れたか不安だったのでよかった
雫「一刀様!!このホットケーキの作り方をぜひご教授下さい!!/////////」
一刀「それは別にいいけど・・・・・なんだったら、幾つか俺が前居た所のお菓子の作り方を幾つか教えてあげようか?」
雫「本当ですか!!?是非に♪是非にお願いします♪♪」
瞳を眩しいくらいに輝かせながら雫は一刀とともに台所へと向かうのだった
一刀「そう、あとは牛乳を加えて粉っぽさがなくなるまで混ぜるんだ、それを鍋に移して焼き上げれば完成だ」
雫「意外と簡単なんですね♪」
一刀「ああ、俺が前にいたところではありふれたお菓子だからな」
雫「これは、朱里と雛里にも教えなければ♪」
一刀「ん?・・・・・朱里?雛里って?」
雫「あいえ!なんでもありません!」
一刀「・・・・・・・・・・」
一刀は徐庶元直のことについて考えていた
三国志演義の徐庶といえば、劉備玄徳に諸葛亮孔明を推薦したシーンが一番有名であろう
当初は撃剣の使い手で、義侠心に厚く友人の敵討ちを引き受けるが役人に捕らえられる
後日その友人に助け出されたが、心に強く感ずるところがあったので以降は剣を捨て荊州に移住し司馬徽の門下生となった
おそらくさっき雫が口にしたのは、同門の門下生の真名なのであろう
また、晩年まで「福」を名乗っていて、その後に「庶」と改名したはずである
しかし、隣でお菓子作りに没頭している徐庶は、一刀の知っている徐庶とは似ても似つかない
雫「?・・・・・どうかされましたか?一刀様?」
一刀「あいや・・・・・ちょっと雫に聞いてみたいことがあって」
雫「なんでしょうか?」
一刀「雫は、どうしてここにいるんだい?」
雫「?・・・・・質問の意味がよくわかりませんが」
一刀「つまり、どうして月・・・・・董卓に仕えているのかって事だよ」
史実でも演義でも徐庶が董卓と繋がりがあったという事実は一切なかったはずである
なぜ、徐庶がここ天水にいるのか不思議でたまらなかったため、思い切ってこの質問をぶつけてみる
雫「ああ、そういうことですか・・・・・結論を申し上げますと、わたしは月様に救われたのです・・・・・わたしは、かつて水鏡女学院という学び舎で学問に励んでいました・・・・・そんな中、黄巾党による乱世の兆しが見え始め女学院を飛び出し仕えるに値する君主を求めて諸国を渡り歩いていました・・・・・しかし、わたしが予想していたよりも遥かに早く黄巾の乱が終わってしまい、仕官しようにもどこも相手にしてくれませんでした・・・・・」
一刀「・・・・・・・・・・」
雫「働こうにもどこにも雇ってもらえず、道中で路銀が尽きてしまい、道に倒れていたところを月様に救われたのです・・・・・そして、月様の志を聞いたわたしは、この人になら自分の知識を捧げてもいいかもしれないと思ったのです」
一刀「(・・・・・諸侯も馬鹿なことをしたもんだな)」
徐庶といえば、魏軍に壊滅的被害を与えたこともある稀代の名軍師だというのに
一刀「そうか・・・・・それじゃあ、劉備玄徳という人物を知っているか?」
雫「はい、黄巾の乱で義勇軍を立ち上げ、その功で平原の州牧となった中山靖王の末裔と聞いています」
一刀「実際に会ったことは?」
雫「ありません、わたしが知っているのは噂の中の劉備玄徳さんで・・・・・なんでも、優れた徳を持つ人物であるとしか・・・・・」
一刀「(・・・・・きっとこれは、俺がこの世界に現れたからなんだろうな)」
自分が乱世が始まる前から各地域の山賊やら水賊やらを悉く葬ったため、黄巾党に紛れ込むはずだった賊が居なくなり、本来長引くはずだった黄巾の乱はあっという間に終わってしまった
そのため、本来雫は劉備に会うはずだったのにその事実がなくなってしまった
やはり直接的にも間接的にも自分がこの世界に来た影響が出て来ているのだ
俗に言う、バタフライ効果というものであろう
北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こるというあれである
雫「一刀様?」
一刀「いや・・・・・もう生地の方は十分混ざったから、焼いてみようか」
雫「はい♪」
そしてその後、一刀は雫に自分の世界のお菓子のレシピと作り方を教えてあげた
雫の菓子作りに対する情熱はかなりのもので、瞬く間に吸収し、あっという間に一刀以上に上手く作れるようになっていった
これには一刀も相当な敗北感を味わったのだった
ある意味拠点
華雄
天水城内
華雄「ふぅ・・・・・」
華雄は少し憂鬱だった
華雄「(前に北郷にも言われたが、私には本当に素質があるんだろうか)」
最近自分の武の腕が上がらなくなってきたのだ
華雄「はぁ・・・・・わたしにはこの武しかない、董卓様をお守りするためにも早く強くならねばならないのだがなぁ・・・・・」
なんとなく城の廊下を歩いていると
華雄「ん?あれは北郷か?」
中庭に辿り着くと一刀の姿を確認した
華雄「・・・・・・・・・・」
華雄は黙り込んだ
なぜならそこには
一刀「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
中庭の端に座り込み右手と左手片方ずつに、自分の胴体ほどの大きさの岩を持ち上げ、体から淡い光を放つ一刀の姿があった
華雄「・・・・・・・・・・」
華雄はしばらくの間、一刀のそんな姿を見ていたのだった
それから半刻後(約一時間後)
一刀「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
ドスン、ドスン
ひと段落着いたのか、一刀が両手の岩を地面に置いた
一刀「ふぅ・・・・・」
華雄「終わったか?」
一刀「華雄か」
華雄「今のは何だったのだ?」
一刀「氣の鍛錬だよ、こればっかりは継続してやらないといけないからな」
華雄「北郷は、今のままでも十分強いじゃないか」
一刀「鍛錬を怠ると、金剛刀は持ち上がりもしなくなるからな」
華雄「なるほど、数多の努力があってこその強さなのか」
一刀「努力というよりは、これは俺にとっての生活の一部だよ」
華雄「・・・・・・・・・・」
一刀「そういえば、気になったことがあるんだけど」
突然思いついたように一刀は華雄に尋ねた
華雄「何だ?」
一刀「華雄にはどうして真名がないんだい?」
華雄「それは北郷も同じことだろう」
一刀「前にも言っただろ、一刀が真名みたいなものだって」
華雄「・・・・・・・・・・」
華雄は搾り出すように答える
華雄「・・・・・わたしは、もともと孤児でな、両親の顔すら覚えていないんだ、そのために私には真名がないんだ」
一刀「え!?・・・・・悪い、聞いちゃまずかったか?」
華雄「いやかまわない、このことは皆知っているからな」
一刀「・・・・・・・・・・」
華雄はそう言ったが、一刀はには少し罪悪感があった
華雄「わたしには、みなに預けられる真名がない、だから、みなの真名を決して呼ばないんだ」
一刀「・・・・・だったら華雄、自分で自分の真名を付ければいいんじゃないか?」
華雄「え?・・・・・そうか、その手があったか・・・・・」
華雄はしばらく考え込むと
華雄「ならば北郷が私の真名を決めてくれ」
一刀「なに!?俺がか!?」
華雄「自分で言い出したのだろう、最後まで責任を持て!」
一刀「うっ・・・・・」
そう言われると何もいえない
一刀「・・・・・・・・・・」
しばらく慎重に考える一刀
一刀「じゃあ・・・・・・嵐(らん)というのはどうだ」
華雄「・・・・・嵐(らん)」
一刀「ああ、嵐(あらし)のように猛る者を想像してみたんだけど」
華雄「嵐・・・・・」
華雄も考え込む
嵐「うむ、気に入った、これから私の真名は嵐だ!!」
一刀「気に入ってもらえて何よりだ」
嵐「ありがとう一刀、これからはおまえのことを一刀と呼ぼう」
一刀「ああ!これからよろしくな嵐!」
嵐「ああ!一刀!」
その後華雄は、月を含めた全員に真名を預けていった
一刀から真名を渡された華雄はそこから怒涛の快進撃で強くなっていったのであった
ある意味拠点
恋&音々音
一刀「よ〜〜〜〜しよし、いい子だな」
セキト「わふ〜〜〜〜〜ん♪」
張々「ばう、ばうっ♪」
エトセトラ、エトセトラ
一刀は中庭にて沢山の動物達に囲まれていた
恋「みんな・・・・・かずと大好き♪」
音々音「うむむ〜〜〜、こいつめ〜〜〜、動物にまで手を出すですか〜〜〜」
一刀「人聞きの悪いことを言うな」
そうしてしばらく動物達と戯れていく一刀
なでなで
セキト「わふ〜〜〜ん♪」
なでなで
張々「ばう〜〜〜〜〜ん♪」
恋「・・・・・・・・・・」(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
一刀「・・・・・・・・・・」
正直言って恋の視線が痛い
一刀「・・・・・え〜〜〜と、どうしたのかな恋さん?」
恋「恋にも・・・・・なでなでして」
一刀「え?」
音々音「恋殿!?」
一刀「う・・・・・うん、いいよ」
なでなで
恋「・・・・・♪」
恋はとても気持ちよさそうだ
音々音「恋殿〜〜、ねねもこいつのことは確かに認めていますが、誑かされてはなりませんぞ〜〜」
音々音は少し半泣き状態である
一刀「なんだ?ねねもしてほしかったのか?だったら言えばいいのに」
音々音「な!?な!?!な?そ、そんなわけないのです、子供扱いするななのです〜////////////」
顔を赤くして言う音々音
一刀「わかった、わかった」
なでなで
音々音「な?何をするかなのです〜」
なでなで、なでなで
音々音「や、止めるです〜」
なでなで、なでなで、なでなで、なでなで
音々音「・・・・・//////////////」
とうとう黙り込んでしまった音々音
恋「む〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
音々音にばかり意識が行ってしまい恋の方の手が止まってしまっていたようだ
一刀「おっと、ごめんな恋」
なでなで
恋「♪」
そんな平和なお昼を満喫していると
恋「お天気がいいから、お昼寝する」
音々音「ねねもお供しますぞ〜」
一刀が木に寄りかかり、恋が一刀の左ひざに音々音が一刀の右ひざを枕代わりにする
一刀「それじゃ、少しだけ子守唄でも歌ってやろうか?」
音々音「おまえなんかの歌を聴いても目が冴えるだけですぞ〜」
恋「かずと・・・・・歌って・・・・」
音々音「恋殿!?」
一刀「分かった」
一刀は一呼吸して歌いだした
一刀「君が笑った 僕もつられて笑った♪映し鏡みたいだ♪ 君はぼくのともだち♪君が怒った 僕も負けずに怒った♪子供のけんかみたいだ♪ 君はぼくのともだち♪」
恋「・・・・・♪」
音々音「(な、なかなかやるです)」
一刀の歌いだしたのは平○堅の『キ○はと○だち』である
一刀「僕が〜〜寂しい時は〜〜〜あと少し付き合って〜〜〜♪ うまく話を聞いてくれないか♪君の声だけが 心を軽くする♪ただ相槌をウウウ♪打ってくれるだけで♪ 離れていてもずっと♪ 胸の中にいるよ〜〜〜♪」
恋「(うとうと)」
音々音「(ま、負けないのです〜)」
セキト「ふわぁ〜〜〜〜〜」
張々「(こっくり、こっくり)」
一刀の爽やかなウィスパーボイスに二人と動物達は一気に眠たくなってくる
一刀「君が泣いてた♪ 僕も泣きそうになった♪だけどこらえて笑った♪ 元気出せよと笑った♪君が寂しい時は〜〜〜♪いつだって飛んでくよ♪うまく言葉が見つからないけれど♪僕の声が君の心を癒すなら♪ただ相槌を打つだけでもいいかい?♪」
恋「く〜〜〜〜〜、く〜〜〜〜〜〜」
音々音「ぐ〜〜〜〜〜、ぐ〜〜〜〜〜〜」
セキト「ZZZZZZZZZZZ」
張々「ZZZZZZZZZZZ」
一刀「寂しい時は〜〜〜♪あと少し付き合って〜〜♪うまく話を聞いてくれないか〜〜♪君の声だけが 心を軽くする♪ただ相槌をウウウ♪打ってくれるだけで〜〜♪君がいないと 僕は本当に困る♪つまりそういうことだ 君は僕のとも〜〜だち〜〜〜〜♪」
歌が歌い終わる頃には二人とも、そして動物達も眠ってしまった
一刀「(おやすみ)」
そして一刀も昼の陽気に身を任せて眠りに落ちていったのだった
こんにちわseigouです
Amazing graceは自分もよく歌う曲です
平○堅さんはコンサートには行ったことがないのですが、CDも持っていてよく歌っています
自分の好きなアーティストです
さて今回の話は物語に影響を及ぼすか及ぼさないかわかりませんがある意味拠点です
次回はちゃんとした続編に入ります
少し寄り道をしましたが、待て、次回
説明 | ||
董卓軍拠点(ある意味) |
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