真・恋姫無双 魏end 凪の伝 28
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亞莎が村に到着した時に見た物は、一面の赤。

 

そして無残にも破壊された防壁と門だった。

 

散らばる死体の殆どが黄色かったと思われる布を身に付けていた事から、

 

黄巾党のものだと分かるが何が起こったのか分からない。

 

周りの兵達も動揺を隠せず、ざわめいている。

 

激しく鼓動する心臓を抑え、先陣を切って村に入れば村人達が片付けをしている所だった。

 

だがその様子がおかしい。

 

皆一様にやる気を見せているのだ。

 

とても戦いの後とは思えない程、力に満ち溢れている。

 

『孫呉の為に』

 

その事をスローガンのように掲げながら走り回る村人達に、亞莎や兵達は戸惑っていた。

 

「何があったのでしょうか・・・『天の御遣い様』はいずこに・・・」

 

キョロキョロと辺りを見回すと、そこへ一人の男が近づいてきた。

 

「これは呂蒙様!ようこそいらっしゃいました!」

 

恭しく一礼した男にちょうど良いと声を掛ける。

 

「これは何があったのですか?そして『天の御遣い様』がいらっしゃる筈ですが、どちらに・・・?」

 

「ああ、これは全てみつか・・・あ、いえ。北郷様の力によるものです!殆どあの方一人のお力で黄巾党

 

を全て倒してしまわれたのです!」

 

「「「な・・・!!!???」」」

 

にこやかに笑う男の言葉に亞莎と兵達が驚愕した。

 

『三国同盟の立役者・天の御遣い』

 

三国でその存在を知らない者はいないだろう。だがこれ程の力を持っている等聞いた事が無い。

 

目の前の男がペラペラと昨日の事をまるで我が事のように力説するのを聞きながら、亞莎は混乱する。

 

それと同時に男の最初の言葉が気に掛かった。

 

「あなたは何故、『天の御遣い様』の事を北郷様、と言い直したのですか?」

 

わざわざ言い直したのが気になる。

 

「それは・・・ですね・・・」

 

何故か困ったような顔をする男を不思議に思うが、他の村人も同じような曖昧な表情だった。

 

「どうやら北郷様は蜀の公孫賛様と夫婦となり、子供もいるのでそれを内密にしたいようで、

 

御自分を『天の御遣い』では無いとおっしゃっています」

 

「「「ぶはっ!!!???」」」

 

一斉に吹き出す。

 

「それと・・・どうやら北郷様は孫策様方の兄上だった、という噂が・・・」

 

「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!??????????」

 

さすがに兵達全員が吹っ飛ぶ。

 

それを最後に亞莎の意識が途切れた。

 

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再び亞莎が目覚めた時、それはガタゴトと揺らされる馬車の中だった。

 

「あ、あれ?」

 

体を起こして周りを見ればすでに暗い。

 

近くには何かの箱が置かれ、どうやら荷物と一緒に寝かされていたようだと思うが、どうして

 

ここにいるのかが分からない。

 

側にあった箱の蓋がずれていたので月灯りを頼りに中を見れば、何故かウエディングドレスがあった。

 

他に何点かひらひらの付いたエプロンが見える。

 

??????理解が出来ずにしばらく考え込む。

 

(何か凄い衝撃を受けたような・・・)

 

あまりの衝撃に一部の記憶が飛んでいた。

 

何があったっけ・・・?と思い、周りを見た時にふと人の気配があるのに気が付く。

 

暗いので顔までは分からないが、どうやら一人は寝かされ、もう一人はその側にいるようだ。

 

ただもう一人の方の気配から子供だと分かった。

 

「きがつきましたか・・・?」

 

その子が口を開く。

 

どうしてここに子供がいるんだろう?と思うが、そもそもにして今の状況が飲み込めない。

 

頭の中にさらに疑問符が並ぶ。

 

「えっと・・・ここはどこ・・・?」

 

「これからけんぎょうにいく、ばしゃのなかです」

 

「あ、そ、そうなんだ・・・って・・・あ!『天の御遣い様』が!?」

 

急激に記憶が蘇えり、慌てる。

 

「隊長ならすぐうしろをうまでついてきてますよ」

 

隊長?と思うがどうやらそれが『天の御遣い様』の事だと理解してそっと幌をめくる。

 

瞬間────

 

馬に跨った一刀の姿が目に飛び込む。

 

風呂上りに髪を後ろに流し、オールバック状態の一刀が明るい月に照らされ、幻想的にすら見えた。

 

横の兵と何か話しをしているようで亞莎には気が付いていないが、ふいに一刀が笑う。

 

それを見た亞莎の体温が急激に上がる。

 

思い出される幻視。

 

一緒に勉強した。

 

一緒にごま団子を作った。

 

悩んでいる時、一緒に悩んでくれた。

 

優しく膝枕をした・・・。

 

優しい・・・幻視────

 

────そして苦しんでいる幻視・・・。

 

涙が、こぼれた。

 

"そこにいる"

 

彼が、そこにいる。

 

ただそれだけで嬉しかった。

 

その時、一刀と目が合う。

 

一刀は覗き込む亞莎の姿を見て少し驚いた顔をしたが、フッとその顔が笑みを作る。

 

その笑顔を見て亞莎は再び意識を手放した。

 

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建業の街についたのは翌日の昼過ぎ。

 

白蓮となぎは明命に連れられて城の医務室に向かったが、一刀は街の宿に待機する事となった。

 

「蓮華様・・・北郷様を城までお連れしなくてもよろしかったのでしょうか・・・?」

 

「本当ならばすぐにでもお連れしたいけれど、亞莎の様子からやはり幻を見たのは私達だけでは

 

無い様子・・・とすれば、想像できない動きをする人が一人いるでしょう?」

 

はぁー・・・と溜息をつく蓮華に、思春の脳裏に即座にある人物が浮かび上がる。

 

「まずは"あれ"を牽制しなければならないわ。"私達"の為に!」

 

「確かに」

 

キッ!と決意を新たにする蓮華に思春が頷く。

 

「これから激しい戦いが始まるわ・・・思春、私について来てくれるかしら・・・」

 

「私は何があっても、ただ蓮華様のお側にいるだけです」

 

「ありがとう思春・・・では、行きましょう!私達の戦いはこれからよ・・・!」

 

颯爽と歩を進める蓮華の姿に、思春は「御成長なさいました・・・」とそっと微笑んだ。

 

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玉座の間に来た蓮華と思春が見たものは、ぐるぐると紐で縛られた祭と穏だった。

 

二人とも丁寧に亀甲縛りをされ、さらには猿轡までされている。

 

そして上を見上げれば小蓮が逆さに吊られていた。

 

「し・・・ぬ・・・おねえ・・・ちゃん・・・しぬ・・・」

 

「な、何があったの・・・?」

 

小蓮の青い顔を身ながら呟いた時、思春が祭の猿轡を外した。

 

「ぷはっ!・・・おのれ策殿!冥琳が出かけた途端に我らを縛り上げおった!!

 

狙いは『天の御遣い』の独り占めじゃ!!!」

 

「な、な、な、なんですってーーーー!!!」

 

顔を真っ赤にして怒る祭の言葉に蓮華が慌てる。

 

「そ・・・ろ・・・そろ・・・・しぬ・・・」

 

想像できない動きをするとは思っていたが、そこまでやるとは思わなかった。

 

「思春!すぐに追っ手を差し向けて!生死は問わないわ!!」

 

「ははっ!」

 

「ま・・・て・・・たす・・・け・・・」

 

地獄の業火のようなものを背負った蓮華の迫力に思春が即座に玉座の間を飛び出し、

 

手持ちの精鋭達を呼ぶ。

 

「おのれ、姉さま!やらせない!やらせはしないわよ!」

 

ギリ・・・ッと歯を噛み締める音が聞こえる。

 

「あ・・・母さま・・・え・・・?むかえ・・・に・・・?」

 

「誰か!誰かある!!」

 

「は・・・ははっ!」

 

蓮華の叫びに数人の兵が飛び込む。

 

「貴様達は城内の捜索と、城下の一斉捜索!!それと冥琳への報告!必ず姉さまを捕らえなさい!!」

 

「は・・・はいぃぃ!!」

 

巨大な覇気を纏う蓮華の姿に恐れをなして兵達がばたばたと駆け出す。

 

「やーーらーーせーーわーーしーーなーーいーーわーーよーー・・・姉さま・・・・一刀兄さまは

 

私のもの・・・くっ・・・くっくっく・・・あっははははははははは!!!」

 

はーっはっはっは!!!と高笑いをする蓮華の上で一人の命が終わりを告げようとしていた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・がくっ」

 

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「ふんふんふーーん♪なーーんか、こっちにいる気がするのよねーーー♪」

 

その頃雪蓮は街の外へと飛び出していた。

 

勘がささやく。彼はこっちにいると。

 

ドキドキとする想いはまるでウブな乙女のようだと思うが、それもまた心地よかった。

 

もうすぐ彼に会える・・・・。

 

高鳴る胸を抑え、走りながら思い出すのは幻視。

 

諦めなければならなかった想い。

 

自分が言い出した事なのに、彼が他の女と一緒にいる事が辛かった。

 

彼を連れまわし、街を駆けずり回っている間は二人でいることが出来る。

 

それが嬉しくてよく出かけた。

 

そして・・・想いが叶ったかに思われた途端の別離・・・。

 

最後に見たのは彼の泣きそうな表情。

 

愛しい、愛しい・・・ただひたすらに、愛しい人・・・。

 

離したくないと思った。

 

でも・・・それ以上に自分は孫呉の王として後に続く者へ未来を託さなければならなかった。

 

冥琳の腕に抱かれ、目を閉じるまで・・・王だった。

 

でも、今の自分は違う。

 

すでに王の座は蓮華に渡してある。

 

自由。

 

彼と一緒にいるのも自由。

 

自然と笑みがこぼれる。

 

だがふと気になる事があった。

 

勘を頼りに走っているが、今向かっているのは間違いなく母様の墓のある場所。

 

何故彼が・・・?と思うがとりあえず行ってみるしかないとさらに足を進める。

 

やがて墓の近くまで来た時、雪蓮は一度息を整え、自分の身だしなみも整えた。

 

顔が熱くなる。

 

体が早く、早く、と先を進める。

 

心が・・・何より彼を求めた。

 

この木の向こうに彼がいる。

 

だが────

 

「・・・え・・・?・・・」

 

木の影から覗き見た雪蓮の口から息が漏れる。

 

雪蓮の見たもの・・・それは・・・。

 

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一刀と冥琳が口付けをしている姿────

 

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お送りしました第28話。

 

『正史の凪』最大の強敵"達"の登場ですw

 

ある意味桃香達をも上回るかもしれません・・・。

 

それからどうなった♪

 

というわけで続きをお楽しみに!

 

では、ちょこっと予告。

 

一刀と冥琳の口付けしている姿を見た雪蓮は思わずその場から逃げ出してしまう。

 

何が・・・?見間違い・・・?と戸惑うが、それは間違いなかった。

 

次回「冥琳」

 

ではまた。

 

 

説明
村に到着した亞莎達だがその惨状に言葉も無い。
そして亞莎達を見た村人が笑顔で近づく。
その姿は・・・。
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コメント
誰かシャオ助けてあげなさいよ・・・普通に気絶できる亞莎は幸せなんだろうな; 感のずば抜けている一見皆を出し抜いたかの雪蓮の行動ですが、その上をいく冥琳の知略は流石としか^^(深緑)
シャオ………哀れw(氷屋)
シャオオオオオオオオオオオオオ!死ぬな、呉の数少ないひんぬー要員がwww(BX2)
シャ、シャオ・・・シャオオオオオオオオオオwそれにしても孫呉の系譜は情熱がイキすぎてヤン化しやすいのが玉に瑕ですなw流石血に酔える姫君達www雪蓮の抜け駆けを更に上回った冥淋凄過ぎw孫呉の血で奪ったれや、雪蓮!!!(まーくん)
小蓮だけ逆さ吊りとは・・・雪蓮、妹を殺す気ですかww(sai)
ヤンデレ祭りじゃあwwww つか一刀後ろから刺されないように!!(ブレイド)
なにがなんやらwww(中原)
なにがあった(VVV計画の被験者)
逆さ吊りはあのスカートだとパンツが・・・フヒーヒW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
poyy様、さて・・・果たして・・・。(北山秋三)
shirou様、その通りです!(北山秋三)
よーぜふ様、実はゲームに準拠してたり・・・ああっ、ネタバレがw(北山秋三)
きのすけ様、さて・・・どうなるか・・・。(北山秋三)
FALANDIA様、さて・・・どうなるでしょう・・・w(北山秋三)
堕落論様、ありがとうございます!ホントにプロットに少し肉付けしただけなんですよね。細かい描写がない分楽で・・・w(北山秋三)
ポセン様、次話で詳細が・・・。(北山秋三)
シャオ死ぬなーーーーーー!!そして冥琳さすが策士だな、どうどうと抜け駆け。(poyy)
冥琳居なくなる>それを見て雪蓮二人を縛る・・・・・・だから縛ってる間に悠々と会いにいってたわけですね。(shirou)
しゃ、シャオーーー!!!!! てか冥琳さん・・・ もう呉陣営むちゃくちゃだねw(よーぜふ)
冥琳神速!(きの)
小蓮が・・・。(FALANDIA)
あいかわらず良いテンポで進んで読んでいて気持ち良いですね〜(堕落論)
冥琳抜け目ないな〜(ポセン)
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