真・恋姫無双 魏end 凪の伝 29
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「ふむ・・・それで・・・何故貴様があの幻視の詳細を知っている。そしてこれに書かれている

 

事は本当か・・・」

 

街の外の墓の場所・・・思い出のその場所に立つ冥琳の眉間の皺が深くなる。

 

目の前の町民風の男に書簡で呼び出されたのだ。

 

顔はよく分からない。

 

どこにでもいるような顔・・・特徴の無いその顔は不気味でさえある。

 

冥琳自体このような呼び出しに答えるつもりは無かった。

 

だが目の前の書簡はそれを許さない。

 

内容は────

 

「私が何故知っているのかは今は話せません・・・私も消えてしまうかもしれませんから・・・

 

しかし、それに書かれている事は"本当にあった事"・・・そして"これから起こる事"です」

 

一切の特徴の無い声・・・その声が冥琳の心臓を鷲掴みにする。

 

「これを・・・孫策には知らせるな・・・さもなくば大局に逆らう我らもまた消える運命・・・」

 

「それに逆らった事で『天の御遣い』は消えました」

 

「では、今いる『天の御遣い』はニセモノ・・・か?」

 

「いえ。彼は"紛れも無い本物"ですよ・・・ただ"記憶が違う"だけで・・・」

 

「"記憶が違う"・・・だと?」

 

「『靖王伝家』・・・あの剣の力です。あの剣の本当の力に目覚めた劉備は『天の御遣い』の

 

記憶を変えてしまったのです。全てを忘れるようにと・・・この世界の全てを忘れてしまった彼は

 

全てをやり直す・・・その時に劉備が彼を手に入れる・・・そういう筋書きです」

 

ザワリ、と肌が粟立つ。

 

怒りが込み上げるのが堪えきれない。

 

思い出される幻視。

 

共に戦った・・・彼に頼られるだけだった筈がいつしか彼を頼り、そして雪蓮を失い・・・彼無くしては

 

いられなくなった。

 

子供が欲しいと願った・・・叶わない願い・・・始めてみた幻視で感じた喪失感が拭える事無く冥琳の胸にあった。

 

「ですが・・・ここで三国同盟を解消しては劉備の思うが侭です・・・何としてもそれは防がねばなりません」

 

「随分と簡単に言ってくれる・・・報告で受けた愛紗の裏切りだけでも充分理由にはなるぞ。

 

さらには許昌の街の陥落による影響は計り知れない・・・そして・・・"コレ"か・・・正直頭が痛いな」

 

「ですが・・・くれぐれもお願いします。それが結果として孫策様と『天の御遣い様』の命を救う事に

 

なるのですから・・・では、私はこれで失礼します」

 

男はその言葉を最後に森の中に消えて行った。

 

残された冥琳は深々と溜息を吐く。

 

手に残された書簡が重く感じる。

 

それこそ両手に持っても余りある程に・・・。

 

────ガサリ、

 

草を踏みしめる音を聞いた冥琳がそっちを見て目が見開かれる。

 

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そこにいたのは白い神事服を着た于吉────

 

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一刀が宿にいた時、ふと誰かに呼ばれた気がした。

 

だがここに知り合いなどいる筈も無い。

 

不思議に思って外に出た時、一人の小さな女の子が一刀に走り寄ってきた。

 

「これをお兄ちゃんに渡してって」

 

「ん?ああ、ありがとう」

 

差し出された手紙を笑顔で受け取り、女の子がその笑顔を見て真っ赤になって走り去るのを見送り、

 

封をあければそこにあるのは地図。

 

そして────

 

「日本語・・・?!」

 

この外史に来てから見た文字は漢文のみ。

 

その中で地図の内容は"ここに来るように"と日本語で書かれていた。

 

誰かの罠か・・・?と思うが、ここで行かなければどうしようもない・・・あえて罠に飛び込むしか

 

ないだろう。

 

一刀がその地図を頼りに歩いてはいるが、自然と足がそこへ向かっているような気さえして来る。

 

まるで誰かに導かれているような・・・。

 

一刀が森を分け入り、少し開けた所に出た時一人の黒髪の女性の背が目に入る。

 

ドキリ、とした。

 

知らない筈・・・知っている筈・・・心が、ざわめく。

 

「・・・あ・・・」

 

小さく出た声にその女性が振り向いた。

 

それは冥琳────

 

だがその瞳には精気が感じられない。

 

「え・・・と・・・」

 

戸惑っている間に冥琳が一刀に近づく。

 

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「貴方を愛しています・・・誰にも・・・渡したくない・・・」

 

そして交わされる口付け。

 

後ろで誰かの気配がするのを感じる。

 

だが、一刀は動けなかった・・・。

 

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蓮華もいても立ってもいられずに庭に出た時、人の気配を感じた。

 

街を上げて雪蓮を捜索させているためあちこちに兵や侍女が走り回っているが、

 

そこにあるのはほとんど動かない、暗い気配。

 

「・・・?」

 

不審に思った蓮華が藪の隙間から覗いた時、そこにいたのは雪蓮だった。

 

「姉さまっ!どこへ行っていたんですか!随分さが・・・・・・っ!?」

 

蓮華の声が止まる。

 

庭の椅子に腰掛けた雪蓮の姿が、何故か小さく感じた。

 

伏せられた瞳が震えているような気がして蓮華は戸惑う。

 

「ああ・・・蓮華・・・どうしたの?」

 

「姉さま・・・?」

 

こちらを見て微かに笑う雪蓮の表情は今まで見た事が無かった。

 

「さっき報告を受けたわ。愛紗が敵となった・・・そして『天の御遣い』が私達の兄かもしれない・・・と」

 

「は・・・はい、それで────」

 

「荒唐無稽の話よね。ありえないわ」

 

キッパリと言い捨てた雪蓮の口調に硬いものを感じ、蓮華が訝しげに思う。

 

「あ・・・!そういえばこれが・・・」

 

そういって蓮華が出したのは、一刀の上着からこぼれた小袋。

 

それを受け取った時、雪蓮の心がズキリと悲鳴を上げた。

 

手が、震える。

 

震える手で袋を開ければ、中にあるのは・・・結婚指輪。

 

「姉・・・さま・・・?」

 

雪蓮の頬を涙が伝う。

 

声にならない嗚咽が漏れ、雪蓮がその指輪をしっかりと抱えたままうずくまるのを

 

蓮華は呆然と見ているしかなかった・・・。

 

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(やはり兄さまで間違いないんだ・・・!!!)

 

それは蓮華が結論を付けた瞬間でもあった・・・。

 

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お送りしました第29話。

 

実は前の話と合わせて前編・後編でした。

 

正式タイトルは「崩れ行く断金の交わり」でした。

 

ネタバレすぎるかと却下しましたが・・・。

 

ではちょこっと予告。

 

会議は混迷を向かえる。

 

三国同盟をどうするか。

 

だがその会議に冥琳が遅れてくる。

 

その事に雪蓮が激怒して・・・。

 

「敵対」

 

では。また。

 

説明
冥琳の前に突如として現れた書簡に書かれていた事を
確かめる為に冥琳は単独で動く。
そこで謎の男と会い・・・。
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コメント
相変わらず厭らしい所を突く導師殿ですね; 事が事なだけにこのすれ違いが致命的なモノにならなければよいのですが・・・ちなみに某次女さんと鈴さんはもう違う世界に逝っているって事で良いのかな?w(深緑)
まーくん様、一刀が最初からいれば話は違ったんでしょうけどねー。(北山秋三)
sai様、冥琳いいよね。冥琳。凪の後だけど!w(北山秋三)
中原様、どうでしょうー?(北山秋三)
よーぜふ様、そりはちょっと後で解説すると思いますw(北山秋三)
ロンギヌス様、次回も・・・多分・・・。(北山秋三)
ポセン様、誤解がとんでもない事に・・・。(北山秋三)
poyy様、しばらくは・・・シリアスが続く・・・かも?(北山秋三)
雪蓮らしくないな・・・略奪愛が真骨頂だろうにwそして蓮華はヤみ過ぎだwww自重しろwww(まーくん)
冥琳がそうなるとは。次回が気になります。(sai)
親ってまさか!?(中原)
一つ・・・重要なヒントが・・・最後のって・・・これから凄まじい意味を持ってくるかと・・・"親子"も・・・。ヘタしたらギャグだと思ってた皆さんごめんなさい!ってことになるかも(北山秋三)
シリアス・・・だとおもいねぇ、俺!w って準拠?それはどういう意味なのか・・・(よーぜふ)
蓮華のマジな考えが余計にシリアスになりきれない・・・(ロンギヌス)
今回はシリアスか、勘違いが勘違いを生んでるな〜。(ポセン)
これはシリアス一直線でいいんだよね?最後のも一応シリアスなんだよね?(poyy)
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真・恋姫†無双 北郷一刀  なぎ 蓮華 雪蓮 冥琳 

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