おしいれは魔法世界 |
「おしいれの中には魔物が住んでいるの」
「どうしておしいれの中には魔物が住んでいるの?」
「おしいれの中には別の世界とつながっているからよ」
「その世界はどんな世界なの?」
「それはね、魔法使いがいる世界……」
『魔法』という言葉が出てきたときに、疑問に思ったところで俺、松田凛人は目を覚ました。俺は自他共に認めるほどの超現実主義者の中学三年生である。ホラーやオカルトといったものは絶対に信じない。テレビで朝やっている占いというものも全然信じない。ましてや『魔法』なんてものは自分が存在を否定する最たるものである。
しかし何の因縁があるのかどうかわからないが、自分が見る夢というものはこの夢ばかりであり、非常に不愉快である。押し入れの中というものは布団や服、この年になってくるといかがわしいものなだをしまうスペースである。そんなところが違う世界と繋がっていたり、魔物が住んでいたらたまったものじゃない……と考えていると、久絵理の部屋なら魔物が住んでいるかもしれないと思った。
愛郷久絵理は俺と同い年の幼馴染である、というよりはむしろ妹とでもいったほうがよいかもしれない間柄だ。俺は小さい頃から久絵理の家に居候させてもらっている。両親は事故で死んでしまったらしいが自分の記憶にも残ってないうえに写真さえ残っていなかったのでだんな人なのかもわからない。久絵理の両親に聞いても何も教えてくれなかった。とはいえ、俺は久絵理の両親のことを実の両親だと思っているし、久絵理も兄妹の関係でいる。
そんなことを考えているうちに時計の針が七時半を指していた。
「やばい、久絵理を起こさないと」
そう独り言を残した後、心地よい自分の部屋を後にした。
久絵理の部屋は隣にあるが、俺はいつも部屋に入ることをためらってしまう。同い年の女子の部屋に入るという独特の緊張感ではない。ただ単純に部屋が汚いからである。最近よく言われている片付けられない女というやつだ。放っておくといつも大変なことになっている。
「久絵理、朝だ、起きるぞ!」
俺はあたりを見回すと、読みかけの漫画が散乱してあったり、もうすでに着た服とまだ来てない服が無秩序に混ざった服の塊が大きな山のようになっていたり、飲み終わったペットボトルが二、三本乗っかっているテーブルの上にやりかけの数学の課題が置いてある。
…まだ課題が途中で終わってやがる…
その上いたるところに中に何が入っているのかもわからない段ボール箱が積み重なっていた。
「ぷっ…はぁはぁ…死ぬところだった…。」
何とかプリントの山から抜け出した俺は、無秩序で足の踏み場のないこの部屋からどうやってターゲットを見つけ出そうかと考えたときに、服の塊が少し動いたような気がした。
「まだ、あと五分……」
案の定、久絵理の声が服の塊の中から聞こえてきたが彼女の要求には残念ながら答えることはできない。
「早く学校に行かないと遅刻するぞ!明日は土曜日だからその五分間多めに寝てもいいぞ」
「凜人のケチ!明日は必ず五分多めに寝せてよ…」
久絵理はあっさりと俺の言うことを聞いてくれたみたいだった。機嫌の悪い時は説得の時間に五分も十分もかかる時もある。
「今日はゆっくりと登校できそうだぞ」
と、服の山に向かって声をかけてみると、服の山の中からパジャマ姿の久絵理が出てきた。
「まだ寝ていても大丈夫だったじゃないのかな……」
普段は大きな目をまだ眠そうに目を細めていた。声もまだ寝言を言っているかのような声で、聞いているこっちも眠くなりそうになってしまった。
久絵理は俺と同じ中学三年生とはいうものの、とても背が低く、顔も童顔だ。しかしその割には中学三年生とは思いないほど胸が大きい。また何といっても久絵理の最大のチャームポイントは大きな目と青い瞳である。久絵理はれっきとした日本人の家系だが両親も青い目であり非常に不思議だが俺はあまり考えないようにしている。
そして久絵理は県の大会に入賞するほどの水泳の実力を持ち、水泳部のエースとして学校でも有名である。そんな彼女のことを彼らは『水の妖精』と呼んでいる奴らもいるようだ。
しかしそんな奴らでも久絵理の片付けられない女の様子振りは知る由もないだろう。
久絵理と一緒にリビングに向かう。
すでに朝食がテーブルの上に並んでいて、エプロン姿の母さん、彩芽さんが椅子に座って待っていた。愛郷家は俺を入れると四人家族なのだが、父さんは海外で出張することが多くあまり家にいない。たいていは家族三人で暮らしている。
「おはよう、久絵理、凜人。今日は早かったようね」
「母さん、おはよう」
「おはよう…お母さん」
まだ久絵理は眠そうだったが朝食を食べ始めると眠気もどこかへ飛んで行ってしまい、すっかり目が覚めたようだった。
「凜人…お願いがあるんだけど…いいかな…?」
俺は面倒なことに巻き込まれなければいいなということを考えつつ話を聞いてみることにしてみた。
「あのね…実は…私の部屋の掃除を手伝ってほしいんだけれども…お願いできるかな…」
「いくら俺が帰宅部で暇であったとしても、土日にやりたいこともある」
と、久絵理には言ったものの、実のところ土日に予定は入っていなかった。しかし久絵理の混沌としている部屋を掃除した場合、一日掃除でつぶれ、次の日はほとんど運動していない俺の肉体は悲鳴を上げて一日中動けないほどの筋肉痛に襲われるのは目に見えている。おそらく久絵理の部屋の掃除によって消費されるカロリーは成年男子が必要とするカロリーの二日分くらいと推測される。(松田凜人脳内厚労省調べ)そんな非常に面倒くさく疲れる作業はしたくない。
「…お願い…私一人じゃできないよぉ…」
久絵理はチャームポイントの大きな青い瞳に涙を浮かべ、今にでも崩れそうな表情で俺を見つめていた。
「……そんな顔をされたらやらないわけにはいかないだろう」
「…凜人…やってくれるの…?」
久絵理の表情から少しだけ曇りがとれた。
「ああ、やってやるよ」
「ありがとう、凜人」
久絵理がキラキラと輝く星のように笑顔になった。久絵理はいつもおどおどしてめったに笑顔にならないが、たまに見せる満面の笑みはとてもかわいらしたった。この笑顔が水の妖精と呼ばれるようになった所以の一つでもある。
俺は久絵理の笑顔を見るだけで、生肉をぶら下げてライオンの檻の中に入ることも、極寒の中ドーバー海峡を横断することもできるくらいの力を与えてくれる。
久絵理の笑顔は成年男子が必要とするカロリーの三日分くらいのパワーを与えてくれると推測される。(松田凜人脳内厚労省調べ)
幸せな気分になりながらトーストにかじりついた。
朝の支度を整え、久絵理と二人で登校する。
「久絵理、明日も部活があるんじゃないのか?部活を休むのなら俺が一人でやってもいいが
「……明日はプールの設備点検があって部活は休みなんだ。心配しないで大丈夫。…それに……凜人と二人でやりたいの……」
「久絵理、俺がどうかしたのか……?」
「っ…いっ、いやなんでもないの…あぁ、そう、…実はね…大切にしていた首飾りがなくなってしまったの……」
久絵理がいつもよりも動揺していた。
「あの赤い宝石みたいなのがついているやつか?」
「そう…その首飾りなんだけどね…凜人くん、最近どこかで見てないかな…?」
久絵理は昔からその首飾りをいつもつけていた。その首飾りは燃え盛る炎がそのまま石になったような色の丸い宝石が三つ付いている。友達からもらった大切なものだと昔久絵理から聞いたことがある。ここ最近は身につけてなかったので大切にしまっているものだと思っていた。
「俺も最近その首飾りをみてないな」
「そっか…明日見つかるといいな…」
「見つかるといいな…」
そんなことを話しているうちに学校に到着した。平穏無事に淡々と授業をこなし家路についた。明日に備えて俺はいつもより早く寝ることにした。
昨日に続いてまたおかしな夢を見てしまった。夢は自分の気がつかない心理状態を表すということを聞いたことがあるが、今俺はどんな心理状態なのか非常に心配だ。
今回の夢は魔法やら押し入れの中に怪物がいるとか言い出す夢ではなかった。
今日の夢はこんな話だった。ヨーロッパで見るようなレンガでできている家が立ち並び、石畳の道が、町の中心から伸びている街を、俺は傍観者の如く街の中心にある教会のような建物の上から眺めていた。街は炎に包まれて人がいる気配を感じ取ることが出来なかったが、ただ一つ街の一番大きな通りに男と子どもがいるのを見つけた。男は鎧を着ていて手には銀色に輝く長剣を持っていた。赤髪で背が高く歳も若く見えた。子どもは麻で出来たような少しくすんだ白い服を着た男の子だった。
「はやくお前たちはここから逃げるんだ!我が一族が仕えるアイザード家の当主が何とかしてくれるだろう」
「怖いよ、父様。父様もついてきて一緒に逃げようよ!」
男の子は足が竦んでいて動けないようだった。体全身で震えている様子が遠く離れている俺にも分かった。
「お前はしっかりしない!リノとクオン様の娘様を守らなきゃいけないんだ!兄だろ!男だろ!」
「でも…やっぱり怖いよ!」
「早くしないと……闇魔法の一族が来るぞ!」
「早く行くんだ!そしてこの世界のことを忘れて平穏に暮らすのだ!」
俺の真下、教会の屋根の上が黒い闇に包まれると、その闇の中から黒いローブを着た人が姿を現した。
「もう闇の者に見つかってしまったようだ。一人で逃げるんだ……。達者に暮らせよ……」
男はそう吐き捨てると剣を手に取った、黒ローブの人に向かって突進した。
「クオン・アイザードの騎士の名に懸けてここから先は通さない!」
「汝の剣は我が肉体には通用せぬ……」
男が黒ローブに切りかかったときに剣が黄金のように輝いたように見えたが、あまりの眩しさに目を覆ってしまった。そのとき何かに引っ張られるような感覚に襲われ、俺は目を覚ました。
アイザード家とは一何のことなのか……深い思考の闇の中に入っていくようだった。しかし闇魔法…騎士…完全にファンタジーの世界の物ばかりであり真面目に考えることに嫌悪感を抱くようになってきた。やはり所詮夢は夢であり現実じゃない。あまり深く考えることもないという結論に至った。
夢のことなんぞすっかり忘れてリビングに入るとすでに久絵理は起きていた。これこそ現実じゃないと思ってしまったが、久絵理の話によるとなんでも昨日の夜は眠れなかったらしい。遠足の前日じゃあるまいし本当によくわからない奴だ。
「今日はよろしくね、凜人!」
久絵理の妖精のような笑顔を俺に見せてくれた。俺だけに見せてくれた笑顔だ。たまらない。よしっ!今日は何でもやってやるぜ。どんと来い!
「どうしたの…?凜人」
「いっ…いやあ、何でもないよ。今日はがんばろうな、久絵理!」
笑顔を見たら何でもやるなんて久絵理に感づかれてしまったら、日常的に厄介なことを押しつけられるかもしれない。
「なんか変な凜人」
「ご飯が出来ましたよ。久絵理、凜人」
エプロン姿の彩芽さんが朝食を持ってきた。今日の朝ご飯は和食のようだった。
「凜人、いつもありがとう。久絵理の部屋を掃除は大変でしょ」
「いえいえ、いつものことだから大丈夫。むしろ久絵理一人に任せてたらもっとひどいことになりますよ」
「あら、そうなの」
「わたしだって一人で掃除だってできるよ!もう中三だよ!」
「そんなこと言うなら、学校の掃除で先生から『愛郷さんの掃除の後は台風が通った後みたいだ』って言われないようにしなきゃな!」
「ううう……それは」
「凜人、家の中に台風が発生しないようにしっかりと監視してね」
「もう、お母さんったら……」
「ふふっ、ところであなたたち私は今日は遅くに帰るから留守番頼んだわよ」
「
久絵理の部屋の掃除をするにあたって不用品を捨てることから始めることにした。
「久絵理、段ボールの中には何が入っているんだ?」
「中身は…たぶん…大切なものが入っているじゃないかな…?」
俺は部屋にたくさん置いてある段ボールのうち一番近くにあったやつを開けてみると、中には小さくなった消しゴム、まともに持てなくなるほど短くなった鉛筆、インクの出なくなったボールペン……などの一般の人が見たらゴミに見える代物が入っていた。
「……なぁ久絵理、本当にこれは大切なものなのか?ゴミにしか見えないのだが」
「……だって全部私がお世話になった大切な文房具さんだよ。ゴミなんかじゃないよ」
ほかの段ボールを開けてみると案の定、使い古した歯ブラシや、使いきったスプレー缶、穴のあいた靴下……どれもこれもゴミにしか見えないが、久絵理にはこれら全てお世話になった大切なものとして認識されているようだった。
「久絵理…、段ボール全部処分だ」
久絵理はショックのあまり泣きそうになったが、このままだといつしか愛郷家はゴミ屋敷になっていたかもしれない。
久絵理の部屋にあった大量の段ボール箱が撤去されたため、部屋がかなり広くなった。散らかっていたペットボトルや古雑誌を処分するとまともな部屋になってきた。
最後に残されたのは服の塊だった。さすがに家族とはいえど久絵理は女の子であるから少しばかりためらってしまった。いやしかし男たるものこのようなチャンスを逃すわけにはいかない。男、松田凜人は意を決して服の塊に手を入れた。
掴んだものはなんと……久絵理のブラだった。普段から水色が好きなこともあってか、さわやかな青空のような色をした水色のブラだった。サイズはよくわからないが……、
「身長の割には意外にも大きいな……」
俺は不覚にも心の中の言葉を口に出してしまった。そんな誰にも独り言を聞いてほしくない時に限って、他人が聞いているというものである。
「っえ、何が大きいのかって……って、えぇっ!なっ…何を持っているのかな」
久絵理は俺のほうを振り向いていた。よりによってこんなところを久絵理に見られてしまうなんて、なんとか場を取り繕わなければ。
「思ったよりお前って大きいんだな…」
俺はあまりにも気が動転していたのか、このケースで一番言ってはならない言葉を発してしまった。
「……あまり大きすぎても…、その…泳ぐときは…邪魔になるんだよ……」
「何千万という貧乳に悩んでいる女性を敵に回す発言だぞ!」
「そんなことより衣類は私が整理するから凜人は終わるまで部屋から出て行ってよ!」
久絵理から部屋を追い出されてしまった。やはり当然の結果だった。
久絵理から入室の許可が出たのはすでに夕方になっていた。部屋は奇麗に片付き女の子の部屋になっていた。しかし結局久絵理の首飾りは見つからなかったらしい。
「久絵理、押し入れの中は調べてみたか」
「調べてないよ…。押し入れは最近開けてないから…」
「どうして。押入れには普段使わない物をしまったりするスペースじゃないか。片付けが苦手な人はそこに何でも詰め込む習性があるぞ。」(実際、面倒臭がり屋な俺は押入れに物を突っ込んでいる。余談だが)
「だって…なんだか押入れって暗くて怖い…かな」
「さては久絵理、昔おいたして彩芽さんに閉じ込められたことでもあったのか」
「違うよ…小さいときにお母さんが…『おしいれのなかは怪物が棲んでいる魔法使いの世界につながっている』ってよく言っていたから…。そんなことありえないよね。やっぱり私まだまだ子どもかな」
久絵理の話は俺の夢の話と似ていた。
押入れの中、怪物、そして魔法使い。久絵理は彩芽さんから聞いたらしいが、俺の夢に出てくる女の人は彩芽さんではないように見えた。早くしないと日が暮れてしまうので、押入れの怪物については一旦忘れることにした。
「一応開けてみるぞ、久絵理」
久絵理が首を縦に振ったのを見て、一体中はどうなっているのか緊張しつつ襖に手をかけた。怪物がいるという冗談を聞いた後で嘘だろうとは思っているものの少し手から汗が出てきた。
一気に襖を開いてみると埃っぽい空気が噴き出してきた。中を見渡すときれいに片づけられている押入れが姿を現した。おそらく彩芽さんが整理したのだろう。大小さまざまな段ボール箱が中に入れられ、側面に中身が何であるか書かれていた。左下の箱に、『久絵理・五歳・首飾りほか』と書かれていたのを目にした。
「久絵理、この箱に首飾り入ってるんじゃないのか?」
「何だがあやしそうな箱だね。取り出せる凜人?」
箱の上にいくつか箱が載っていて、横にも隙間なく箱が置かれているため一つだけを取り出すのは出来なかった。
「箱を外に出して取り出すしかないな。久絵理、手伝ってくれ」
「うん。わかったよ、凜人」
久絵理と一緒に箱を取り出し、ようやく目的の箱を取り出すことが出来た。
「開けるね、凜人」
久絵理が開けた箱をのぞいてみるといろいろなものが入っていた。子どもの頃に遊んだおもちゃや、久絵理が書いたと思われる絵も入っていた。
その中に久絵理が探していた赤い宝石がついた首飾りも入っていた。
「あった!よかった…見つかって。お母さんが勝手にしまったのかな。ありがとう凜人。見つけてくれて!」
久絵理のひまわりのようなあたたかい笑顔を見ていると今日の疲れも吹き飛びそうだ。あぁ、幸せだ……。
「どうしたの?凜人。…まあいいか、きっと疲れたんだね。お疲れ様、凜人。久しぶりにつけてみようかな……。っあれ…なに?何か聞こえるよ……誰…誰なの!」
「どうかしたのか、久絵理?」
久絵理は耳を押さえてその場にしゃがみこんだ。
「聞こえるの…、たすけてって…誰かが泣いているの…。誰なの?凜人、聞こえるよね」
久絵理は息を切らして俺に聞いてきたが、俺には久絵理が言っているような声は聞こえなかった。この部屋には俺と久絵理の二人だけしかいなかった。
「わたしおかしくなっちゃったのかな、凜人」
「大丈夫だ、久絵理。気のせいだ、そんなもの。俺達以外には誰もこの部屋にはいない」
そのときだった。
押入れの中が赤く光りだした。
そして壁一面になにかの魔法陣のような幾何学模様が現れた。
「わたし……行かなきゃ……」
久絵理が何かに取り憑かれたような虚ろな目をして、押入れのほうに歩きだした。
俺はその時久絵理がこのまま帰ってこないような気がした。
「久絵理…どこに行くんだ!ちょっと待てよ!」
久絵理の手をつかんだが久絵理は止まらなかった。
「……待ってるの、私の友達が……」
「友達って、…なんで押入れのほうに行くんだよ!」
「……魔法使いの世界で待っているから」
魔法使いのいる世界……。確かにそう聞こえた。俺はそんな魔法使いのいる世界が存在しているなんて信じられない。そんな非現実な物があるわけがないと思っていた。
でもいきなり押入れの中が光りだしたり、何も書いていなかった壁に模様が浮かび上がる、そして久絵理の異変。なにもかも非現実的なことばかりだ。
もしかしたら本当に魔法があるのかもしれない。
久絵理をひとりで行かせたくない。いつも久絵理と一緒にいた。いきなり俺の隣から久絵理がいなくなるなんて……そんなこと考えられない。久絵理の笑顔が見られなくなるなんていやだ。俺は決心した。
「久絵理!魔法使いの世界に行くなら俺も付いていく!」
久絵理は俺に振り向き手を差し伸べた。
俺は躊躇うことなく久絵理の手をつかんだ。とても温かかった。
俺と久絵理のからたが光に包まれ押入れに引き寄せられる。そして目の前が歪んで見え気分が悪くなってきた。そして強い眠気に襲われた。
目を開けると暗闇だった。魔法使いの世界についたのか、それとももしかして俺は久絵理の部屋で寝ていたのか。それに久絵理はどこにいるのか。
とりあえず明かりを探そうと思うが真っ暗で動こうにも動けない。周りに何があるか手を動かしてみた。コツッと何かに当たり光が差し込めてきた。扉のようだった。俺はそこから暗闇からの脱出を試みた。
「誰かいるの!」
足音が近づき、目の前が明るくなった。
月明かりに照らされた女の子が立っていた。
「あなた、誰?」
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途中で投げたしたオリジナルラノベ。 楽しいと思ってくれる人がいたら続き書きます |
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