飛べ! デュッセルドフ(聖霊機ライブレード)
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    ★飛べ! デュッセルドフ★

 

 

 

フェイン=ジン=バリオン十八歳。 彼は自他ともに認めるロボットヲタクである。

 

 そのこだわりぶりは筋金入りで、戦闘に直接関係ないにも拘わらず、登場時のキメゼリフなどを

 

必死で考えていたりする。トウヤなどは、ンなもん考えてる暇があったらシミュレーションのひと

 

つもこなせよ、とか思ってしまうのだが、フェインにとってはいかにカッコ良くかつ目立った登場

 

をするかというのが重要なのだった。

 

 

 その日も、フェインはリーボーフェンの中をぶらぶら歩きながら前口上の事を一心に考えてい

 

た。

 

「・・・闇を切り裂く白銀の翼---------ハッ!」

 

 そこでハタ、と思い当たる。

 

「なぜにデュッセルドフには翼がないのだ?!」

 

 トウヤの乗るライブレードだって飛行形態があるし、考えてみれば歴代のカッコイイロボットた

 

ちには翼がなかったか? マジンガーZのゼットスクランダーしかり、グレンダイザーしかり、そし

 

てガンダムだってなんと言ったか、板みたいなものに乗っかって飛んでいたではないか。デュッセ

 

ルドフも空を飛べればさらに無敵になるハズ・・・。 なんの根拠もなかったが、フェインはそう思い

 

込んでいた。思い込みの激しさも人一倍なのである。

 

「よし! 姫にお願いしてデュッセルドフに飛行機能を付けて頂くのだっ!」

 

 ガッツポーズを取ると、フェインは第一聖霊機格納庫へと向かった。エレベーターを降りすぐさ

 

ま第一聖霊機格納庫を覗くが、そこにセリカの姿はなかった。もしやと思い仮眠室へ行ってみる。

 

「ひ、姫。フェインです。いらっしゃいますか?」

 

そう声をかけて軽くノックをする。中から返事はない。

 

(部屋の方にいらっしゃるのだろうか・・・)

 

 ところが、仮眠室にはロックがかかってなくスッと開いてしまった。

 

「ひ・・・め・・・」

 

 簡易ベッドではセリカがうたた寝していた。つなぎを腰のあたりまで下ろし、めくれ上がったTシ

 

ャツからは可憐なお腹が覗いていた。

 

「ぶふうぅっ」

 

 フェインは盛大に鼻血を噴いた。

 

(で、出直して来よう)

 

 両手で鼻を押さえると、フェインはふらつきながら仮眠室を出て行った。

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「にしても・・・あのような無防備な姿で。あれでは不貞の輩に襲ってくれと言っているようなもの

 

だ」

 

 まだ脳裏に焼き付いて離れないセリカの寝姿を振り払うように、フェインはぶんぶんと頭を振っ

 

た。

 

 エレベータに乗ろうとしたフェインと入れ違いにトウヤが出て来た。

 

「フェインじゃねえか。朝っぱらからシミュレータか?」

 

「いや、ちょっと姫に・・・」

 

「セリカに? 仮眠室にいるのか?」

 

「ああ、って、今はダメだっ!!」

 

 泡を食ったように両手をぐるぐる回して叫ぶフェインを、トウヤが怪訝そうに見つめた。

 

「なんでだよ?」

 

「て、徹夜明けで、お、お休みになられてるからに、き、決まっているだろうが」

 

「何赤くなってんの? オマエ」

 

「うるさいっ」

 

「よっぽど疲れたんだな、セリカ。昨夜ちょっと無理させたのがまずかったかな?」

 

 トウヤのこの一言にフェインが猛烈に反応した。

 

「トウヤッ! 貴様、姫にてっ、手を出したのかぁっっ!!」

 

「はぁ?」

 

 頭から湯気を吹かんばかりに興奮して怒鳴っているフェインを、トウヤは呆れて見つめた。

 

「何言ってんだ? ライブレードのマッチングを頼んだだけだぜ」

 

「マ、マッチング・・・そ、そうか」

 

 フェインは急に気が抜けたようにガクッと肩を落とし大〜きなため息をついた。さっきセリカの

 

あんな寝姿を見たせいでどうもあらぬ想像をしてしまったようである。考えてみればリーボーフェ

 

ン一鈍いと言われているトウヤが、セリカに手を出すなどあり得ないではないか。フェインは心の

 

中でそう結論づけた。

 

何げに失礼なヤツである。

 

「まあ、寝てるんなら仕方ねえな。また出直して来るか」

 

 そう言ってトウヤは踵を返し、結局フェインと一緒にエレベータに乗り込んだ。

 

「トウヤ、お前姫に何の用事だったのだ?」

 

「あ? いや、別に大した用事じゃねえよ。つか、いちいちお前に断り入れなきゃなんねーの

 

か?」

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 フェインは当然というように鷹揚に頷いた。

 

「俺は姫の身辺警護を任されているからな」

 

(身辺警護って・・・ストーカーじゃねーのか?)

 

 トウヤは心の中で激しくつっこんだ。

 

 エレベータを降りてトウヤと別れたフェインは、自室でひとしきり筋トレに没頭した。その後は

 

前口上の練習も忘れない。

 

 午後になりフェインは今一度セリカに会いに行くべく部屋を出た。今度はセリカは第一聖霊機格

 

納庫にいた。ライブレードに取り付いて何やら調整作業をしているところらしい。

 

 やはりライブレードは優遇されている!

 

 いくら主人公機だからってえこ贔屓だ。フェインはそう思わずにはいられなかった。過労で倒れ

 

てさえセリカはライブレードの微調整とヴァージョンアップは欠かさない。それは単に現存する聖

 

霊機の中でライブレードの戦力価値が一番高いからなのか。それとも、これは考えたくはないがト

 

ウヤのためなのか。

 

フェインには判断しかねた。

 

(と、とりあえずそろそろデュッセルドフもヴァージョンアップして頂くのだ)

 

「ひ、姫。あ、あの・・・」

 

そーっと近づき恐る恐る声をかけてみる。

 

「フェイン? 何?」

 

「はい。実はお願いしたいことがありまして・・・」

 

「今、手が離せないんだけど。後にして貰えないかしら?」

 

 クレーンの上からのセリカの返事はにべもないものだった。

 

「ひ〜め〜」

 

 フェインは瞳をうるうるさせて見上げている。

 

「チーフ」

 

 そんなフェインに一緒に仕事をしていたメカニックの一人が助け舟を出した。

 

「ここは私が引き受けますから、フェインさんのお話を聞いてあげて下さい」

 

「わかったわよ」

 

 セリカはふうっとため息をつくと肩を竦めた。どうせろくでもない用事だろうとは思ったが、と

 

りあえず足場から降りた。

 

「で?」

 

 腰に手を当てたまま、セリカは気のなさそうな様子でフェインの前に立った。

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「すみません、お忙しいのに・・・」

 

「そう、忙しいのよ。手短にね」

 

 フェインはひとつ咳払いをしてまっすぐセリカを見た。

 

「実は私の乗るデュッセルドフを改造して頂きたいのです」

 

「はあ?」

 

 セリカは興味なさげに眉を顰めた。

 

「どんなふうにしたいワケ?」

 

「は、はいっ! 飛べるようにして頂けたら・・・なんちゃって」

 

 セリカの顔つきが途端に険しくなった。

 

「デュッセルドフが飛ぶ必要なんてあるの?」

 

「い、いや、ですがライブレードだって飛行モードがあるではないですか?」

 

「あれは一応ゼ=オードだから」

 

「・・・・・・」

 

(って・・・理由になってませんが、姫・・・)

 

 フェインは再び瞳をうるうるさせると、必死で言い募った。

 

「飛べる聖霊機が少しでもあった方がそのゼ=オードに対抗できるのでは?」

 

 この言葉にセリカは一瞬考え込んだ。

 

(い、いい感じかもっ)

 

 フェインは今がチャンスとばかりに畳み掛けた。

 

「マジンガーZのようなゼットスクランダーを、どうか我がデュッセルドフに!」

 

「んなもん似合わないわよ」

 

「はうっ!」

 

 セリカに一蹴され、フェインは仰け反った。

 

「な、ならばダンクーガのようにアグレッシブモードを駆使して、他の聖霊機と合体できるように

 

し・・・」

 

「ムリ!!」

 

「でしたらっ、コアファイターとの空中換装をっっ!!」

 

「ワケわかんない!!!!」

 

 ムチャクチャなフェインの要求にとうとうセリカはキレた。

 

「いーかげんになさい! 黙って聞いていれば次から次へとみょうちくりんなもん出して来て! 

 

このロボットヲタク!!」

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「そんな、姫っ・・・」

 

(メカフェチの姫に言われても)

 

 そんな二人のやり取りを聞いていた作業中のメカニックたちがクスクス笑っている。

 

「だいたいね、そんなに予算に余裕はないの。あんただったら気合で飛べるでしょーが」

 

「そ、それはムリです・・・」

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、フェインの必死の陳情も空しく、デュッセルドフ飛行プロジェクト(?)は敢え

 

無く頓挫してしまったのである。

 

 

                           

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説明
★聖霊機ライブレードSS第二弾。今回の主人公は「ロボットヲタク」ことフェインですvv

なんとかセリカにデュッセルドフを改造してもらうべく、頑張っちゃうフェインのお話です。
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タグ
聖霊機ライブレード デュッセルドフ フェイン 

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