東倣麗夜奏 5話
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東倣麗夜奏 〜 Phantasmagoria of Nostalgic Flower.

楽園の外に棲む妖怪達による些細な話。

 

 

 

5話

 

 

 

人間達が新年だの何だので騒いでいたのも終わり、本格的な冬が訪れようとしていた。

 

樹海の屋敷では、式神がひとりお茶をすすっていた。

屋敷の主はこんな冬でも相変わらずである。

自分で留守番を引き受けるとは言ったものの、屋敷にいるばかりの生活に

少々退屈しはじめていた。

 

そんな時である。

 

 

 豊爛 「あっはっは〜、正月といえばお酒なのだわ〜」

 奏 「おや、いつぞやの神様では無いですか。」

 

 楓子 「お久しぶりです。

     おや、今日はここの主は居ないのですか?」

 奏 「おお、あなたもいましたか。

    うちの主は結構前からその辺フラフラしていますわ。」

 

 

訪ねてきたのは、境界の神社で出会った神様の福寿豊爛と犬神の物部楓子だった。

神様の方はすでに出来上がっているらしく、屋敷に上がるなり寝転がってしまった。

 

 

 奏 「お二方がそろってこの屋敷に来るなんて珍しい。

    それとも、主に用事でしたか。」

 豊爛 「あ〜あ〜、そんなんじゃないわよ〜

     正月っつったら酒だっつってるじゃないのよ〜」

 楓子 「正月じゃ無くても・・・っと、もうつっこみませんよ。」

 奏 「・・・」

 

 楓子 「この辺りで少し気になる事がありまして。

     豊爛様と共に調査をしにやってきたのですが・・」

 豊爛 「んなこたぁ〜後でいいのよ。 呑むがよい」

 

 

楓子の話によると、樹海の外れにある竹林の中で

妖怪が神隠しにあう事件があったと言う。

 

 

 奏 「人間では無く、妖怪がですか。

    それは奇妙な話ですね。」

 楓子 「豊爛様にそう言われたので、調査をと思ったのですが

     この有様で・・」

 豊爛 「あんだって?」

 

 

大体こうなる事はわかってたと思うんだけどなぁ

・・と思いながら奏は楓子の話を聞いていた。

 

正直邪魔なので、調査が終わるまで豊爛を置いていきたいが

強制的に呑まされると元人間である奏では耐えられないと思い、

代わりに調査をして欲しいと言う。

 

・・滅茶苦茶な言い分である。

真面目な態度だが、やっぱりその辺は妖怪らしいなと思った。

 

滅茶苦茶な依頼ではあるが、丁度退屈していたので引き受けてみる事にした。

 

 

 奏 「やっぱり酒の神様だわ。」

 

−−−−−−−−−−

 

 奏 「さて。」

 

奏は依頼された場所、樹海の外れにある竹林へとやってきた。

とりあえず見てみない事にはわからないので、しばらく竹林の中を歩いてみることにした。

 

 

 奏 「んー。

    やっぱり同じ所か。」

 

 

その辺の幽霊を目印に竹林の中を散策していたが、すぐに異変に気がついた。

どうやら同じ場所を延々とループしているようだ。

ただ、この程度のものでは妖怪を神隠しにあわせる事は出来ないだろう。

その時である。

 

 

 奏 「おや・・?」

 

 

ほんの少し、自分の周囲の空気が変わった気がした。

そういえば、さっきから目印にしていた幽霊が見当たらない。

ループから脱出したのだろうか。 辺りを見回していると後ろから声が聞こえてきた。

 

 

 ? 「それ以上行ってはいけない!」

 奏 「おっと。」

 

 

後ろから現れたのは、境界の神社で見た事のある妖怪だった。

 

 

 奏 「おお、話をした事は無かったけれど

    あの神社で一度お会いしていますね。」

 ? 「ええ。 私は竹箆迷。 見ての通り、竹の妖怪です。」

 奏 「竹の・・? という事は、妖怪が神隠しにあったというのは・・」

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迷の話によると、神隠しにあった妖怪は忠告を無視して

この先に進んでしまい、そのまま帰ってこなかったという。

見た感じはただの竹林だが、少しだけまっすぐな筈の竹が歪んで見えていた。

 

 

 迷 「この竹林は、竹林そのものが妖怪なのです。」

 奏 「なんと。」

 迷 「この竹林の妖怪の能力は、竹林と竹林を繋ぐ事。

    つまり、一度捕まると別の竹林へ飛ばされてしまうのです。」

 

 迷 「私は竹林を一本道にすることができるので、

    迷い込んだ者がそのまま竹林を抜けるように操作していたのですが・・」

 

 

どうも最近、この竹林の妖怪の力が急速に強くなり

迷の力だけでは操作できなくなっているという。

 

 

 迷 「この妖怪は竹の花が咲いた後、一時的に大きな力を得るのです。

   この竹林の花は昨年開花したはずなので、かなり強い力を持っていると

   考えられます。」

 奏 「となると私だけでなく、あなたもそれなりに危ないのでは?」

 迷 「だから困ってるんですよ。」

 

 迷 「といっても、妖怪の力が弱まるまで竹林を行ったり来たり

    させられるだけで、神隠しに会うなんて事は無いのですが・・」

 奏 「では何故、迷い込んだ妖怪がいなくなってしまったので?」

 

 

奏の正面に見える歪みは、この竹林の妖怪の能力だけによるものでは無い。

迷はこの歪みの中に消えていった妖怪を確かに見たという。

一体どこへ消えたのかはわからないが、迷にはひとつだけ心当たりがあった。

 

 

 迷 「もし、”この世界にあって、この世界に無い”竹林へと繋がっているのなら・・」

 奏 「?」

 

 迷 「わかりませんか?

    あの大結界の向こうにある竹林とも繋がっているのなら、

    いくら妖怪でも帰って来れないかもしれません。

    開花直後のこの妖怪ならそれだけの力を持っていてもおかしくないですから。」

 奏 「なるほど・・。

    では一刻も早くこの竹林から抜け出さないと危険ですな。」

 迷 「なんとかなるかなぁ・・」

 

−−−−−−−−−−

 

迷の尽力によりなんとか竹林を抜け出した奏だったが、空はすっかり暗くなり

もう屋敷の主が帰っている時間だという事に気づいた。

せっかくなので、調査の報告ついでに迷を屋敷に案内する事にした。

 

 

 桜子 「おかえり

 豊爛 「おかえり

 楓子 「おかえり

 

 奏 「・・・」

 迷 「・・・」

 

 

奏は泥酔した屋敷の主一行を白い目で見ながら、

これでは報告も何も無いでは無いかと思いつつ迷をもてなす準備を始めた。

奏と迷は、泥酔した神様と妖怪を尻目にしみじみ呑んでいたが

主一行の仲間入りを果たすのに、そう時間はかからなかった。

 

 

幻想の竹林へいざなう妖怪。

かなり珍しいものを見た気がするが、結界の向こう側は

主が散々興味無いと言っているので黙っておくことにした。

 

 

 

 

 

表裏一体の神様

○福寿 豊爛 (Hukuju Houran)

 

結界の外に鎮座する貧乏神。

貧富の差を創造する程度の能力を持つ。

 

常時泥酔しているように見られがちだが、実はそうでも無い。

その能力は、金銭や生活の格差だけで無く精神面にも影響を与える。

精神が貧しい時に素面の彼女を見ることが出来るという。

 

 

 

呪詛百計

○物部 楓子 (Monobe Huuko)

 

結界の外に棲む妖怪。

祟りを与える程度の能力を持つ。

 

今尚語られる恐怖の妖怪、犬神である。

彼女は祟りを与える能力の他に、彼女にしか使えない膨大な量の呪術を扱う。

礼儀正しく見えるが、意外に自分勝手な性格である。

 

 

 

竹藪の一本道

○竹箆 迷(Takebera Mayoi)

 

結界の外に棲む妖怪。

直線を操る程度の能力を持つ。

 

普段は竹林妖怪の中で迷い込んだ者が居ないか監視している。

その能力はあらゆるものをまっすぐにしてしまう。

どんな分かれ道でも、最終的には合流し一直線となる。

彼女はこれを使って、竹林に迷い込んだ者を帰しているのである。

 

彼女の性格は能力の割に自信が無く、まっすぐでは無い。

説明
・オリキャラしかいない東方project系二次創作のようなものです。
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