黙々・恋姫無双 拾陸黙 『一刀ちゃんパート』 |
さっちゃんが来て七日が過ぎたよ。。
なのに、まだ帰ってこない。
劉備お姉ちゃんたちは洛陽に着いた後、たまに出撃することはあるけど、長い時間は陣の中で過ごしてるよ。どうやら防衛している董卓軍のところの攻撃が厳しくて、他のところより弱い劉備お姉ちゃんみたいなところはどうしようもないみたい。
孔明お姉ちゃんと?統お姉ちゃんが難しそうな顔をしていたからちょっと覗いてみたけど、
「あ、一刀君」
「……」『疲れてる?』
「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?とりあえずここでお茶でも……はわ?」
「朱里ちゃん、先全部なくなったの」
「……」『お茶持ってくる』
「あ、ううん、そうしなくても…ってもう居ない」
と、いって答えは聞かずに(きっと断るから)ローラーブレードで逃げるように場を消え去る。
周りは荒野だし、軍たちが建ててる天幕や武器庫や兵糧を集めてるところ以外には何も見えない。
とても面白いものがあるようには見えないけど、それでも僕が心配でいっぱいな顔をしてると皆もボクのこと心配するから、敢えて笑っていたほうがいい。
別に実は泣きたいのに笑っているとかじゃないよ。嬉しいから笑うんじゃくて、笑うから嬉しいってよく言うし…それに、ボクが笑ってると皆も笑って返してくれるから、そんな風にでも皆に笑ってもらわないと…
「うん?北郷ではないか」
「……」『趙雲お姉ちゃんはまたお酒なの?』
お茶と(あとお菓子もあったらもらおうと思って)配給組に行ってみたら、また趙雲お姉ちゃんがつまみ食いしてるよ。
『関羽お姉ちゃんにメンマ没収されたんじゃなかったの?』
「だからこうして取り返しただろ。まったく愛紗のヤツ、呂布に負けたのが悔しくて側で酒を呑んでいた私に腹癒せでメンマを没収すると来るとはな」
『趙雲お姉ちゃんがそこで大笑いしたのがいけなかったんじゃない?』
あの時の関羽お姉ちゃんの顔は鬼だったよ、この世にあってはならない姿だったよ。
「……そうだ、北郷。おぬしも食わないか?」
『要らない』
そのメンマを食べるに席に座ると即座で酒も呑まされそうだからヤだよ。
この前天和お姉ちゃんたちに勝って戻ってきた時、凪お姉ちゃんたちに付き合ったら真桜お姉ちゃんたちに呑まれて酔った凪お姉ちゃんに酒呑まれて、起きてみたらなんと不思議華琳お姉ちゃんがボクを襲うとしている。これどういうこと?
とにかく酒に絡んだらろくなことがおきそうにないから嫌。
「そうか、残念だったな。お主のために蜂蜜水を用意しておいたのだが」
『ねえ、甘いもので子供を釣るのって酷いと思わない?』
「という割には迷いもなくひっかかったではないか」
汚い。流石(?)趙雲お姉ちゃん、汚い。
あ、蜂蜜は美味しかった。戦場にどうして持ってきたのかはしらないけど。
「なあ、北郷」
「?」
「お主、私に怒ってはいないのか?」
「………」『怒ってほしいの?』
「そんなことではないが、だが…」
『怒ってないよ。言いたいことは分かってるけど、ボクは別に趙雲お姉ちゃんに怒ってるつもりもないし、恨んでなんかもないよ』
趙雲お姉ちゃんが言っていることはつまりあれでしょ?
趙雲お姉ちゃんはこの世界にボクが始めて会った人だから(それ以前に誰かに会った気もするけど、あくまで気がするだけ)。
なのにあまり別れ方はあまりよくなかったよ。
きっとあの時ボクは泣いていた。ここに来て初めて頼れそうな人にあったのに、その場でボクを見捨てて自分たちの道を行ってしまった。
あの時それは、ボクにとっては絶望以外の何でもなかった。
『だけど、おかげで華琳お姉ちゃんたちに会えたから。それに、あの時趙雲お姉ちゃんはボクみたいな子供にかまってあげてる暇なんてなかったんでしょ?』
「……今に考えれば、勿体ないことをしてしまったがな」
『そうなの?』
「ああ……」
ボクはどうだったんだろう。
もしあの時、華琳お姉ちゃんにあわなくて、そのまま趙雲お姉ちゃんについて行ってたら……ボクはどうなってたのかな。
『趙雲お姉ちゃんは、あの以来どうしてたの?』
「私か?聞いてあまり面白いことではないと思うがな」
『聞きたい』
「そうか……まあ、いいだろう」
その後しばらく趙雲お姉ちゃんの話を聞いたよ。
ボクと離れた後一緒にいた他のお姉ちゃんたちと近くから離れて、南にメンマを探しに行った話。
その後、この前見た孫策さんというところに士官しに行ってそのまま帰ってきた話。
そこからまた北に上がってるうちに金がなくなって、公孫賛さんに会ってそこで客将になった話。
そして回りまわってここ。
趙雲お姉ちゃんはこの大陸を全て見回ったかのようにたくさんのことを知っていたよ。
ボクなんて見られなかった、もしかしたらこれからもずっと見られない場所までも………
ボクは………知らないことばかりだった。
趙雲お姉ちゃんと話をしていたら、孔明お姉ちゃんたちと約束したのをすっかり忘れちゃってたよ。
遅くなったのに気づいて慌ててお茶の準備してお姉ちゃんたちのところに向かったよ。
サシュッ!!
「?」
何の音?
ガチャン!!
!
何!?
いきなり矢が飛んできて持っていたお盆の上の湯飲みが……
びっくりして後ろに倒れちゃったよ。
サシュッ!
また……
「はぁあああああっ!!」
ガチン!
「一刀!」
「!」
凪お姉ちゃん!
「そこか!はぁああっ!」
と、凪お姉ちゃんは何も見えないところに向かっていきなり気弾を投げた。
「くはっ!!」
「!」
何も見えなかったのに突然女の人一人が凪お姉ちゃんの攻撃が当たって倒れたよ。
この人って……確かこの前ボクの夢にずっと出ていたあの人?
「あ、あなた……何故私の姿が見えたのです?」
「?…何を言っている。何故もなにもそこに居ただろ」
「!……左慈……!最後までわたくしめの邪魔をなさるおつもりですの?!」
「一刀には傷一つも与えさせない!」
「何事だ!……お主は…!」
「何なのだ?」
騒ぎを聞いて関羽お姉ちゃんや張飛お姉ちゃんが外にでてきたよ。
「一刀、大丈夫か?」
『うん、大丈夫』
「お主は……」
「曹操軍の楽進と申します。司馬懿さまの命令で……」
「くっ……定められた運命から逃げることもできぬ傀儡の分際で……!!」
お姉ちゃんたちが話しているうちに、倒れていた人がまたたったよ。
「邪魔は入れさせませんわ!」
サシュッ!×2
ガチン!
「にゃにゃっ!!」
「くっ!」
関羽お姉ちゃんと張飛お姉ちゃんは立ち上がった女の人が打った矢をギリギリで武器で防いだ。
サシュッ!×5
それでも矢が続いて飛んでくる。
「何なんだ、この矢は……!」
「飛んでくるのがむちゃくちゃなのだ!」
「とりあえず今は一刀を安全なところへ……」
「逃がしませんわ!」
サシュッ!
「!!」
「一刀!」
弓がボクの頬を擦れていった。
この人、本当にボクを殺すつもりで……
「これ以上の真似はさせん!」
――失せろ
「!!」「なっ!」
何?関羽お姉ちゃんたちが突然固まった。
「な、何なんだ、これは……身体が……」
「重いのだ……!」
「……」
女の人は動けない関羽お姉ちゃんたちを通って凪お姉ちゃんとボクの前に来たよ。
「貴様、何者だ!」
「…そう……、あなたは左慈のお守りを受けているようですね……」
「はぁああっ!」
「遊んであげてる暇はありませんわ!」
ガチン!
凪お姉ちゃんと夢の人が戦ってる。
他のお姉ちゃんたちは動けないし、ここでボクが下手に動いたらどうなるか……そうだ!
――地よ、我が目の前の敵を縛りあげろ
「!」
「あの子の言霊はわたくしめが教えたものですもの。負けるはずがありませんわ」
「くぅっ……!一刀!逃げろ!!」
凪お姉ちゃんもやられた!
「さあ、茶番は終わり。あなたを殺せばあの子も自由になれますわ」
夢に出てきた女の人がこっちに歩いてくる。
とりあえず逃げよう。
部屋にまで行けたらアレがある!
「っ!!」
「逃さないわ!」
シュッ!!
「!!」
凪お姉ちゃんの気弾が…!
「一刀には……行かせない」
凪お姉ちゃん!
「その身体でまだも無茶をするのですね。死にますわよ?」
「一刀、早く!」
「……(コクッ)」
ごめん、凪お姉ちゃん、直ぐに帰ってくるから。
・・・
・・
・
部屋に入った。
確か、さっちゃんがくれた弓が……
あった。いつも枕元においておいたから。
これをあてればあの人を止められる。
「うぅぅっ……!」
「知ってます?『管理者』は『外史』の存在を殺すと『削除』されますわ……だけど」
ブスッ!
「ぐはっ!」
「それはあくまで『死ななければ』良い話ですの。ここで腕も脚も折られて、一生人の助けがないと外に出るのさえできない身体にしてあげましょうか」
「うぅぅ…………」
「ありえませんわ……あの人があなたたちのような傀儡と子供を守るために命を賭けるなんて……あってはならないことですの!」
ぶっ!
「ぐおぉっ!」
「やめろ!!」
「卑怯なのだ!」
「卑怯でもかまいませんわ。今のわたくしめには、あのバカな人の命を守ることしか頭にありませんから」
凪お姉ちゃん!
「!か、一刀……」
「!」
凪お姉ちゃんに何をするんだよ!
「あら、態々探しに行く手間を省けてくれるのです?かたじけないですね」
「……」【凪お姉ちゃんたちを放して】
「ふふっ、嫌だと言ったらどうします?」
こうする!
ズーー
「!それは……」
「……」【お姉ちゃんたちを放して】
「何だ、あれは。何もないところから弓が……」
狙うところには絶対に当たる弓って言ったよね。
気絶するだけだと言ったけど、使ったことないから知らない。
本当に打つかどうかもわからないし。
「そう……あの人はそこまでの覚悟をしていたということですの……?」
【早く放して。じゃないと本当に撃つ!】
「子供が気が強いですわね………ふふっ」
?
「……うふふふふふふふふっ……ふははははははっ!!!」
な、何?
「何がおかしい!」
「これがおかしくなくて何がおかしいですの……」【あなた、その弓がどういうものかわかってないでしょう?】
「……?」【どういうこと?】
突然、女の人が他のお姉ちゃんには聞こえないように頭の中に声をかけていたよ。
【わからないでしょうね。わかるはずがありませんですわ。あの人がそれが何かあなたに説明してあげたわけがない!それが何か知ったら、あなたはそれを絶対に撃てないでしょうから!】
何を言っているの。
【北郷一刀…あなたが今わたくしめに向けているその弓は、我々の世界で戦争があった時使われた、『命をつがえる弓』、別称『カミカゼ弓』ですわ】
カミカゼ……?
【その弓は人の命をコストにした矢を撃つ。撃った矢は狙った相手の心臓を貫き、矢の材料となった魂を持った存在と、それに撃たれた存在を必ず殺すという呪われし武器ですわ】
「!」
【それをあの人が持っていたのも驚きですけど……まさか、自分の魂まであなたの手の中に宅していたとは思いもしませんでしたわ】
この矢がさっちゃんの魂……だとしたらこの矢を撃ってあの人に当てると、
あの人もさっちゃんも死ぬ……!
「さあ、撃ってみなさい。北郷一刀。あの人と一緒に死ねるならそれ以上の幸せはありませんわ。さあ、撃て、撃ってみなさい!!」
「………」
……撃てない。
弓をそのまま下げた。
「一刀殿!!」
「ですわね。あなたにそれを撃てる覚悟があるはずがありません。あの人の命がかかっているんですもの」
「何をしているのです、一刀!早く、早くその矢を撃ちなさい!」
無理だよ!
そんなこと…そんなことしたらさっちゃんが……
「最初からあの人が命を賭ける価値もなかったのですわ。このままここで死になさい」
「一刀!!」
「一刀殿!」「一刀ちゃん!」
ボクは……
ガーン!
「うっ……!」
バタン
……え?
女の人がいきなり倒れ……なんで。
「お前らは何をしているんだ?」
「星!」
「おお、もう身体が動けるのだ!」
女の人が倒れた足元には趙雲お姉ちゃんが立っていたよ。
「こいつは一体何者なんだ?」
「わからん、とりあえず今は…」
「一刀!」
凪お姉ちゃんがこっちに走ってきて、ボクをおもいっきり抱きしめたよ。
「無事で良かった……本当に……どうかなるかと思ったよ」
「……」
でも、今のボクの頭には凪お姉ちゃんや、今目の前に起きたことより、今ボクの手に握られているコレのことしかなかったよ。
「はわわ……これはひどいです」
「暫くは何もせずに休んだほうがいいです」
後で女の人が縛っておいたけど、気づければ姿を消していて、見つけることができなかったよ。
一番怪我をした凪お姉ちゃんは、あの人に蹴られてどうやら肋骨が何本が折れてしまったそうだけど……
「私の怪我では今重要ではありません。問題なのは、一体アイツはなんだったのか、何故一刀を狙ったのかということです」
「うむ、アイツの声を聞いただけで、私も鈴々も指一本動けなくなっていた」
「妖術使いか。しかし、言葉だけで人の動きを阻むとは厄介なものだな」
「……」
劉備お姉ちゃんと孔明お姉ちゃんたちも皆が怪我したと聞いて皆集まっているよ。
「一刀ちゃん、大丈夫?」
「……」
「アイツは一体なんだったんだ?一刀殿は何か知っているのか?」
「……」
「愛紗、あまり北郷に聞かない方がいい。命を狙われたのだからな」
「うぅむ……」
「……」
『凪お姉ちゃん』
ボクはふと思いついたことがあって凪お姉ちゃんを呼んだよ。
「どうした?」
『凪お姉ちゃんはなんでここにいるの?』
「そうなのだ。曹操軍の武将なのに、鈴々たちよりも先に一刀ちゃんが危険だと知ったなんておかしいのだ」
「隊長に命じられて参られたまでです」
「隊長?誰のことだ?」
「司馬懿さまです」
「お姉さまですか?」
「どうやっておわかりに……」
「わかりません。ただ、すごく焦っておられました」
さっちゃんが……
『さっちゃんは今どうしてる?』
「………」
凪お姉ちゃんが返事をしてくれない。
『凪お姉ちゃん、言って。今はさっちゃんはどうしてるの?』
「……実は…一週間前から意識を無くし、今日やっとお目覚めになったところです」
「!!」
カラン!
あまりにも驚いて、むかついて持っていた竹簡を地面に投げちゃったよ。
「ごめんなさい!でも、話すと一刀がきっと心配するからって」
当たり前じゃない!一週間も意識になかったと聞いたらボクそのまま走ってそこまで行ってたよ!
ボクはここで一体なにをしていたんだよ……!今早くさっちゃんのところに。
「あぁっ、一刀ちゃん、駄目!」
でも出ようとしたら劉備お姉ちゃんに止められた。
「北郷、今お主は命を狙われているんだよ。下手に出歩いてはならん」
趙雲お姉ちゃんも…
「ここに居ても安全とは言えんがな」
「にゃ……鈴々、あの時何もできなかったのだ」
「………」
さっちゃんが一体何を考えているのかわからない。
この矢のことも、倒れて一週間も目を覚めない状態になるまで。
さっちゃんは一体何をしようとしているの?
「……ぅぅ」
「はっ!一刀ちゃん!」
「一刀!」
「はわわ!楽進さんが動いたら駄目ですぅ!」
さっちゃん……ボクはどうすれば……
「北郷!おい、しっかりしろ!北郷!!」
「一刀ちゃん!」
・・・
・・
・
ガーンガーンガーン!!!
……ここは、
「ふふっ、やっぱ楽しいな。全力で戦える相手がいるっちゅうことは。血が滾るわ」
これって……この前見てた夢…
「うむ!貴様ほどの使い手を制したとあらば、きっと華琳さまも喜んで下さるだろ」
春蘭お姉ちゃん!
駄目、早くそこから逃げて!
「そうはいうがな、お前、これからどんぐらい戦えそうな?」
駄目、夢の中だから…聞こえない
「ふん!貴様の倍は合数を重ねてみせるわ!そんなこと気にせず、かかってこい!」
でも、もしこれが本当に起きたら…
「ふっ……ええ、ええなん、あんた、良い。良すぎるわ。なら遠慮せずにいくでー!」
ボクはどうすれば……
「応ッ!」
「姉者!」
もうみたくない!!!
サシュッ!
「!!」
……え?
バタン!
「これで……これでいいんですよ」
何……ボクが知っていたのと違う。春蘭お姉ちゃんが目を撃たれなかった。
一体どうやって……
「一刀ちゃん、どうして泣いているのです?」
!あそこにいるのは……さっちゃん?それにボクも…
さっちゃんが後ろに倒れている。
ボクは……先の弓を持ってさっちゃんを見下ろしながら……泣いている。
「後悔しないって、約束しましたね」
ボクが頷きながらも、泣いている。
まさか……撃ったの?春蘭お姉ちゃんを撃とうとする兵士さんを、その矢で撃った?
ボクか?
「最後に、一刀ちゃんのにっこりと笑う顔がみたいのです」
いや、ボクは……ボクはそんなことしない。できない!
「さようなら、一刀ちゃん」
もうやめて!
!!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
今のは………
ボクは……ボクは春蘭お姉ちゃんが傷つくのがみたくなかった。
身体の一部を、人として完全でないことがどれだけ辛いことなのか知っているから。
ボクは小さい頃からずっとそうしてきた。
こんなになってしまってから、お父さんお母さんを失って、人たちから疎くなっていた。
友たちと話ができない自分が嫌で、嫌で嫌で仕方がない時もあった。
だから小さい頃から熱心で文字の練習をした。
でも、やっぱり自分の声がいないことは辛かった。
嬉しいことも、悲しいことも、言葉で伝えたかった。でもできなかった。
もし春蘭お姉ちゃんもそうなるかな。
目が一つ無くなると、春蘭お姉ちゃんもボクみたいな思いをするようになるかな。
それは嫌だ。なんとしてでも止めたいと思った。
でも、
……そのせいでさっちゃんが死んだら……?
おかしい…
おかしいでしょ?
何でそうなるの?何で何か守ろうとすると何かは失っちゃうの?
春蘭お姉ちゃんも、さっちゃんもボクには大事なのに……どうして………
「……」
左側を見たら、凪お姉ちゃんが側で寝ていた。
右側を見たら、あの弓がおいてある。
………嫌。
そんなこと……
何か別の方法があるはずだよ。
春蘭お姉ちゃんも助けて、さっちゃんも死なずに済む方法があるはずだよ。
だからこの弓は要らない。
ボクは弓を持って部屋をでたよ。
どこに行くのかはわからなかったよ。
でも、この弓をどこか目に見えない、手に届かないところにおいてきたかった。
見ていると、使ってしまいそうだったから。
さっちゃんを失っちゃいそうだったから。
「こんな夜にどこに行くんだ?」
「!」
振り向いたら、凪お姉ちゃんがいたよ。
『ここんなところでなにしてるの?動いたら傷がもっとひどくなっちゃうよ』
「一刀も早く部屋に戻ってくれ。今また狙われると、本当に危ないから」
「………」
そうだ。これ、凪お姉ちゃんに預けよう。ボクに見えないところに保管してって言ったら……
『凪お姉ちゃん、これ』
「これは……あの時の弓か?」
『これ、どこかボクが知らないところにしまっといて』
「構わないけど……何故そんなことを……?」
『いいから、凪お姉ちゃんが持ってて』
「………」
そしたら凪お姉ちゃんは何も言わずにボクのことをじっと見ていたよ。
「一刀、あの時、どうしてアイツに矢を撃たなかったんだ?」
「!」
「言って。言わないと、この矢はもらわない」
「………」
『この矢を撃つと、さっちゃんが死ぬの』
「……え?」
『この矢にはさっちゃんを命が番えられてるの。だから。この矢を撃ったらさっちゃんは死ぬ』
「そんな……そんなことができるはずが…」
『お願い、凪お姉ちゃん。これ、凪お姉ちゃんが持っていて!でないとボク、これ使ってしまいそうなの。さっちゃんを殺してしまいそうなの!』
お願い……この弓……早くボクの前から消して……お願いだから……
「…一刀……」
ボクは……ボクはどうすればいいんだよ…何もできない。さっちゃんも春蘭お姉ちゃんも傷つけたくないのに……どうすればいいの……
涙が……涙が止まらない。
何もできないボクが憎らしい。
「……一刀」
「……」
気づいたら、凪お姉ちゃんがそっとボクを抱いていたよ。
「その弓は……一刀が持っていて」
どうして……
「隊長がそれを一刀にもたせたのは、きっと隊長が一刀のことを守りたいって思っていたからだよ」
だけど……ボクは。
「私は……私は一刀にどうしてとは言えないけど……隊長はきっと、一刀がそれを他の人にあげてしまうことだけは望んでないと思う。だから……どうするかは一刀が決めて。……私も、一刀がそれを使わないように頑張るからさ」
「………」
ボクは……決める……
さっちゃんを殺して、春蘭お姉ちゃんを助けるか。
春蘭お姉ちゃんを見逃して、さっちゃんを生かせるか?
そんなの……
どっちだってできるわけがないじゃない………
ガーンガーンガーン!!
「!」
結局朝から全然眠れずに寝過ごした。
何の音?
「何事です!」
起きた凪お姉ちゃんが外にでたよ。ボクもついて外に出てみた。
「董卓軍が動き出したそうだ」
「!!こんな時間に……早く皆に教えなければ……!」
あ、凪お姉ちゃん、どこに…!
「一刀殿は部屋の中にいてくれ。絶対出てくるんじゃないぞ!」
関羽お姉ちゃんもボクに絶対中にいなさいって言ってどこかへ行ってしまったよ。
………え?
そういえば、先の夢って……
時間が朝早くに変わっていた。
日がまだ登っていない時間!
じゃあ、今春蘭お姉ちゃんは……!!
「な、何だあれは!」
「子供?どうしてこんなところに……!」
「子供に構ってる暇はない!敵に集中しろ!」
「ぐあぁっ!!」
サクッ!
ローラーブレードで走っていると、所々から人の悲鳴が上がっている。
誰かが知らない誰かを殺している。
ただ敵だという理由だけで人の命を簡単におとしてしまう。
ボクも……ボクも今この手に持っている矢を撃ってしまったら………
「……ぁぁぁ!!!」
わかんない、わかんない、わかんない!!
今ボクはどこに走っているのか、走っていった先何をしようとしているのか、何一つもわからない!
だけど……今行かないと駄目な気がする。
あのまま部屋の中に篭って何もしないままだと、全部投げ捨ててしまう気がして……どっちも選ばないまま、選択することを諦めて逃げてしまう気がして………
……ここは……
何でボクはここで止まったんだろ。
そうだ。この城壁の位置。
日の高さ。
丁度ここだよ。
この辺り、この時間に………
ガチン!!
ガチン!!
「はああああっ!!」
「いやああああっ!!」
ガチン!
春蘭お姉ちゃん!
戦っている。
紫色の髪をして、袴を着て上には包帯を巻いている豪快そうな人……夢と同じ!
「はぁ……はぁ……!」
さっちゃん…!やっぱり来てた!
早く行ってさっちゃんに………
……なんというの?
春蘭お姉ちゃんを助けてあげたいから代わりに死んでって?
……ううん、ボクは何考えているの?さっちゃんだよ!
きっと何か考えがあるはずだよ!
いつもそうだったもん。
ボクが困ったらいつもいい知恵をだしてくれたじゃない。だから今回もきっと……
そんな思いをしながら、ボクはさっちゃんの服の裾を引っ張ったよ。
「……一刀……ちゃん?」
さっちゃん。
説明 | ||
一刀ちゃんSIDEです。 続きは書いてます。 今日のうちできるといいですが…… |
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コメント | ||
文法的にどうなのでしょう…よくわかりません(TAPEt) 誤字? 2P 即座で酒も→即座に酒も(中原) OUCH!(TAPEt) 9Pの「お願い、凪お姉ちゃん。これ、凪お姉ちゃんが持っていて!でないとボク、これ使ってしまいそうなの。さっちゃんを殺してしまいそうなの!」が『』になってませんよ。(山県阿波守景勝) …………え?きこえませんよ?(鬼ですか、あなたは)(TAPEt) 全然本編とカンケーないですが、星が一刀ちゃんを拾う√もみてみたいです(よーぜふ) |
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