真・恋姫無双 魏end 凪の伝 36
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城内の廊下を、祭を先頭に紫苑、桔梗、そして少し遅れて桂花と流琉が続く。

 

桂花と流琉は相当な衝撃だったのだろう。

 

俯き、その足取りは重い。

 

その様子をチラリと見ながら紫苑が祭に近づき、そっと何かを耳打ちする。

 

祭は一瞬驚いたような顔をしたが静かに頷き、紫苑は足を止めて桂花と流琉の横に並ぶ。

 

「──── 流琉ちゃんは、白蓮に会ってどうしたいの?」

 

紫苑の発したその問いに、驚いたように顔を上げた流琉の表情は今にも泣きそうだった。

 

「そ、それは・・・」

 

桂花も足を止めてのろのろと顔を上げ、虚ろな目で二人を見る。

 

何も考えれなかったし・・・考えたくない。

 

紫苑と流琉の会話は、ただ桂花の耳を通り過ぎるだけとなる。

 

流琉も、ただ話を聞けるのが白蓮しかいないと思っただけだった。

 

「それ・・・は・・・」

 

再び流琉が俯く。

 

答えは無い。

 

だがそれは紫苑も理解していた。

 

答えなど出る筈が無い。

 

しかし、今の状態のまま白蓮と会わせるのは危険ではないかとも考える。

 

今の状態で白蓮に会えば、錯乱するかもしれないという恐れを感じた。

 

目の前の少女は体こそ一番小さいが、本気の力を出せば恐らくこの中の誰よりも力がある。

 

そして白蓮は怪我人だ。

 

最悪の事態を想定しても考えすぎという事は無い。

 

「・・・正直に言うと、今の状態の貴方達を白蓮に会わせるのはあまり賛成できないわ。

 

白蓮から『天の御遣い様』の話を聞いて、冷静でいられるかしら・・・」

 

右手を頬に当てて話す紫苑の言葉に、二人ともただ俯くしかなかった。

 

「・・・すまない、遅れた」

 

そこへ稟が駆け寄るが、桂花と流琉の余りにも暗い様子に訝しげな顔をする。

 

「稟ちゃん。今、二人にも話していたんだけど、今の精神状態でこのまま白蓮に会わせるのは危険と

 

判断せざるを得ないわ」

 

「・・・・・・・・」

 

紫苑の言葉に稟も返答に詰まる。

 

二人の様子を見れば、それを納得するしかない。

 

そしてそれは自分も・・・。

 

しばらくの沈黙が続く中で、稟は一つ大きな溜息をつく。

 

頭がうまく回らない。

 

いつもの癖で眼鏡に手をやった瞬間、自分の手が震えている事に気がついた。

 

何故だか、無性におかしくなる。

 

視界がぼやけるのを感じながらそれを必死で堪えようとするが、一滴の涙が稟の頬を伝う。

 

『一刀に子供がいる』

 

その事実が想像以上に自分に重くのしかかる。

 

三国同盟以前、あれだけの事をしていたのだから誰か一人くらいは子供がいてもおかしくは無かったが、

 

実際は誰も子供がいない。

 

そしてこの三年間、何度も思った。

 

子供が欲しいと。

 

一刀の子供が欲しかったと・・・。

 

叶えられなかった願いを、この先にいる女性は叶えている・・・。

 

その事を思うだけで胸が張り裂けそうに痛む。

 

これがまだ魏の誰かであればよかった。

 

切にそう願わずにはいられない。

 

「・・・わかり・・・ました・・・今日の所は────」

 

「あっ!まだ動いたらだめです!」

 

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その叫び声はこの先の廊下の曲がった先から聞こえた。

 

全員が廊下の奥に走り寄って見たのは、腹を押さえてうずくまる白い服を着た白蓮の背中と、

 

その周りで何とか白蓮を留めようとする看護の者達だった。

 

「ぱい────!」

 

「いいから!大丈夫だ!一刀となぎが連れて行かれたんだろう!こんな所で寝てられない!」

 

桔梗が掛けようとした声が止まる。

 

看護の者達も困った顔で白蓮を留めようとしているが、白蓮の必死の気配に手が出せない。

 

「し、しかし公孫賛様、まだ完全に傷が塞がった訳では・・・!」

 

「いい!私は、母親なんだ!なぎは昨日だって私の横で寝てたんだ・・・!」

 

看護の者の言葉を遮り、白蓮が叫ぶ。

 

だがその額には脂汗が大量に流れ、髪がへばりついている。

 

呼吸も荒い。

 

そして・・・押さえた腹からは血が滲んでいた。

 

あの戦いからなぎは日替わりで白蓮と一刀の寝台に潜り込んでいる。

 

白蓮はもちろんだが、一刀も左腕が動くようになったとはいえ、時々麻痺があった。

 

その為、なぎが日替わりで気を当てて治療の手助けをしているのだが、それは他から見れば

 

父と母の間を行き来する子供にしか見えなかっただろう。

 

「────あぐっ!」

 

立ち上がりかけた白蓮が再びうずくまる。

 

そもそも生死を彷徨う程の傷が一週間程で治る筈もなく、最近ようやく寝台から少しだけ歩けるように

 

なったばかりだった。

 

そんな時に聞いたのは、『王頭なる人物が北郷様とその子供を誘拐した』という話。

 

王頭の正体は雪蓮と知れている為、看護の一人が冗談交じりで話しているのを白蓮が聞いてしまったのだ。

 

そして白蓮は一刀が恋並みの力を持っているのは知らない。

 

実際手合わせして技も教わったので、そこまで強いとは考えれなかった。

 

純粋に二人の危機だと思ったのだ。

 

「・・・なぎは・・・まだ小さいんだ・・・背中に・・・背負っても、隠れるくらい小さいんだ・・・」

 

それはもううわごとだったかもしれない。

 

一度幽州を失った白蓮は、その時に何人かの孤児を失っている。

 

戦火に巻き込まれ、生死すら分からない。

 

その事を悔やみ、もう二度と同じ事は繰り返したくないと思っていただけに、一刀となぎの誘拐は白蓮を

 

無理にでも進ませる。

 

その姿は子を想う母のような────

 

床を這うように進むが、やがてその体がくたりと倒れ込む。

 

倒れ込んだ白蓮に紫苑と桔梗も駆け寄り、看護の者達も医者を呼びに走り回っていた。

 

その中で、桂花と稟、そして流琉はただその光景を見ているしかない。

 

壮絶な母の愛を見せ付けられたようなものだった。

 

自分達には無い、母の愛・・・。

 

「・・・戻りましょう」

 

稟の言葉に桂花も流琉も頷く。

 

今行ってはいけないような気がした。

 

廊下を歩く三人の足取りは重い。

 

ぼんやりとした頭で桂花は思う。

 

(華琳様に・・・どう話をしたらいいの・・・)

 

と・・・。

 

誤解が・・・加速して行く。

 

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ひた走る馬に乗った雪蓮の腕から吊り下げられた『なぎ袋』で揺られながら、なぎは確かに危機を迎えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「も・・・ら・・・す・・・」

 

顔を青くしたなぎの小さな呟きは雪蓮の爆笑で掻き消される。

 

「あーーーーーーーーっはっはっはっはっはっ!!!やーーーーってやったわよーーーー!!!

 

うっは!!!これで私もお母さん!!!ひゃっはーーーー!!!」

 

「雪蓮さまっ!!つ、次は私ですよ!!」

 

「雪蓮では無いッ!!王頭だッ!!!・・・もちろんよ、明命!!たまには三人もいいんじゃない!?」

 

「はいっ!!」

 

雪蓮の少し後ろをもう一頭の馬が走り、その上にはにっこにこ顔の明命が乗っていた。

 

その様子を見ながら、雪蓮の後ろに横の状態でくくりつけられた一刀は思う。

 

(こいつらダメだ・・・)

 

と。

 

(・・・ん?雨か?)

 

水滴のような何かが顔に当たり、空を見上げるが空一面の星空。

 

不思議に思う一刀は気がつかなかった。

 

『なぎ袋』が微かに震えたことに・・・。

 

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「会議までに一刀を取り戻せるか、微妙な所だと思うのだが・・・」

 

冥琳の言葉に蓮華がフッと笑う。

 

「私は"善処させている"と言っただけだ・・・そして、取り戻したとしても、会わせるとは一言も言っていない」

 

玉座の間に残った二人は明日の会議の方針を話し合っていたが、『雪蓮だからな・・・』と少し不安に

 

なった冥琳の言葉に蓮華はあっさりと答えた。

 

「いいのか・・・?」

 

「思春に追わせているからいずれ居所は分かる。むしろ、ここに一刀兄さまがいない事はこちらにとっては

 

有利に働くかもしれない」

 

一度目を閉じた蓮華の瞳がもう一度開かれた時、そこにいるのは小覇王を超えた紛れも無い『覇王孫権』

 

「────そうか・・・だが、くれぐれも同盟破棄はできない。そこの所は徹底して欲しい」

 

あまりの気配に冥琳でさえ、わずかに身震いをする。

 

「分かっている・・・同盟の"破棄"はしない」

 

冥琳はそれを誤魔化すように手にした書簡に目をやり、次の議題に進む。

 

「・・・では、次の話だが────」

 

書簡を見ている冥琳は気が付かない。

 

蓮華が微かに嗤った事を。

 

謎の男に渡された書簡に掛かりきりになっていた冥琳は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亞莎が軍備を整えている事を。

 

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お送りしました第36話。

 

秋三はでんせつのじゅもんをとなえた!

 

        *'``・* 。

        |     `*。

       ,。∩      *    もうどうにでもな〜れ

      + (´・ω・`) *。+゚

      `*。 ヽ、  つ *゚*

       `・+。*・' ゚⊃ +゚

       ☆   ∪~ 。*゚

        `・+。*・ ゚

 

いろいろ諦めた!

 

スキル『不貞寝』を使った!

 

翌朝ホントにどうでもよくなった!

 

あーハイハイ。着りゃーいーんでしょ。着りゃー。ハイハイ。

 

アッハハハハハハハハハハハ。

 

色々治まったらどうでもよくなりました。

 

挿絵は次話です。

 

では、ちょこっと予告。

 

夜にある村に到着した雪蓮達だが、そこで意外な二人の人物と出会う。

 

「にゃあ黄巾党」

 

ではまた。

 

 

説明
医務室へと向かう五人だが、紫苑が一行を止める。
その訳は・・・。
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コメント
まーくん様、実はもーっと黒い方がいらっしゃいますよね・・・っと。(北山秋三)
2828様、もう何処へ行くのかわかりませんw(北山秋三)
KATANA様、どんどんへこみますw(北山秋三)
sai様、ハムさんがどんどん可愛くなっていく・・・。(北山秋三)
ロンギヌス様、紫苑より白蓮の方が"新妻"合いそうですからw(北山秋三)
FALANDIA様、どんどん酷く・・・着ないとうっとおしいことこの上なく・・・。(北山秋三)
yosi様、実は意外と最凶なのは蓮華ではないかと(北山秋三)
よーぜふ様、やがて誤解は"真実"ではなく、"事実"となる・・・と。(北山秋三)
BX2様、この時代だと2〜4歳は栄養が足りずに、ほとんど見分けがつかないかな?と。後、誰も聞けない状態にあえてしていますw(北山秋三)
poyy様、一度こじれた誤解はもはや解くことはできず・・・。(北山秋三)
Djトク様、なぎですからw(北山秋三)
天覧の傍観者様、あれかも・・・?(北山秋三)
中原様、いつの間にかこういう事に・・・w(北山秋三)
いやはや、雪蓮最高っす、まじぱねえっすwwwはむさんの言動が、誤解を有頂天の天元突破にwwwなんか恋姫の姫君達の黒さがすでにデフォになりつつあるなw(まーくん)
何処に向うんだw(2828)
白蓮の“愛”がいいですね。そしてなぎ・・・頑張ってw(sai)
後半の呉の皆様の跳躍具合も凄いが、白蓮の仮初めながらも見せる“母の愛”がなんか心にクる(ロンギヌス)
病化がパッシブ・・・。これはひどい。  え、着たんですか・・・?(FALANDIA)
蓮華様KOEEEEEEEEE(yosi)
誤解が誤解を生み誤解し続ける・・・そして凪の雫はどこまでも・・・w(よーぜふ)
凪・・・・・ガンバ。あと、凪の年齢は伝わってないないのだろうか?まぁ、あっちの緩さは赤子なm(ドグォ!ゲフッ!(BX2)
誤解は加速を続ける…。(poyy)
蓮華さんコエー!それってあれですよね!!あれなんですよね???!(天覧の傍観者)
凪・・・・マタカ。(中原)
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