真・剣帝夢想〜魏の章〜 第2話
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(……さて…どうしたものかな…)

 

 

青年は自分の周りを見て頭を悩ます。

そこにいるのは騎馬の群れ、その騎馬の群れが青年を取り囲んでいる。

 

 

(これほどの数になると少し面倒だな…服装や動きをみる限り先ほどの盗賊などではなく、どこかの軍隊のようだな)

 

少し特務兵に似ているかもしれない、と青年は思った。実力は特務兵には及ばないが。

先ほどの少数の盗賊なら切り捨ててもいいが、

大勢の、それに正規の軍となればそういうわけにはいかない。

それにまだここが何処の国かもわからないのにいきなりその国で指名手配などは御免だ。

 

 

(それにしてもずいぶん古風な武器と格好だな。)

 

 

導力銃のひとつも、ましてはオーブメントですら装備してないのはやはりおかしい。

オーブメント技術が確立されてない国など自分が<身食らう蛇>にいた時の報告にはなかった。

 

青年が考えに耽っていると、少し離れたところから三人の女性が近付いてきた。

 

 

「……様! こやつは……」

 

「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男だと聞いたわ」

 

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

 

 

どうやら誰かを探しているらしい。連中というからにはさっきの盗賊でも追っているのではないか。と青年は自分の中で解釈した。

 

 

「そうね……けれど、逃げる様子もないということは……連中とは関係ないのかしら?」

 

 

青年はその少女達に声をかけてみることにした。

 

 

「すまない……少しいいか?」

 

 

「……何?」

 

 

金髪の少女は話しかけられ、青年の顔を見た。

そして青年の視線を受けた三人は一瞬身震いし、顔を強張らせた。

 

 

(…なんて深い瞳をしてるの…それにまったくと言っていいほど隙がない…!)

 

 

そんなこともいざ知らず青年は尋ねてきた。

 

 

「ここはなんて言う国なんだ? それにお前たちは何者だ?」

 

 

少女は声をかけられ我に返ると、青年に言葉を突き返した。

 

 

「それはこちらの台詞よ。 あなたこそ、何者? 名を尋ねる前に自分の名を名乗りなさい」

 

「そうか。それはすまない。オレはレオンハルト。親しいものからはレーヴェと呼ばれている。

剣帝と呼ぶ人間もいるがな。エレボニア帝国出身の…流れ者だ。」

 

「………はぁ?」

 

 

レーヴェは簡単に自分の事を告げた。

しかし黒髪の少女は疑問の言葉をだした。

残りの二人も頭に?マークがつくような顔をしている。

 

「それより、ここはどこだ?ゼムリア大陸ではなさそうだが…」

 

 

わけのわからない言葉を連発された黒髪の少女は、我慢できず言葉を投げかけた。

 

 

「貴様、華琳さまの質問に答えんかぁっ! 生国を名乗れと言っておるだろうが!」

 

 

「なに?」

 

 

レーヴェは怪訝な顔をした。今説明したはずだが、少女達には通じていないようだ。

 

 

(言葉の意味が通じていないのか?それに…)

 

 

レーヴェは華琳と思わしき少女の顔を眉をひそめ見つめる。

 

 

「…どうかしたの?」

 

 

華琳はその視線に気付き声をかけたが、レーヴェはなんでもないと視線をそらした。

 

 

(……偶然…だな。名前だけでここまで動揺するとは…)

 

 

自分はもう吹っ切れているはずなんだがな、という言葉は胸の中でのみ呟いた。

 

 

「早く答えろと言っておるだろう!」

 

 

またしても我慢できずに黒髪の少女は言った。

 

 

「姉者。そう威圧しては答えられる者も答えられんぞ」

 

 

今度は青い短髪の女が姉者と呼ばれた女をなだめた。

 

 

「ぐぅぅ……。 しかし秋蘭! こ奴が、盗賊の一味という可能性もあるのだぞ! そうですよね、華琳さまっ!」

 

 

「確かにこの隙のなさはすごいわね。 相当の使い手に見えるわ。 でも盗賊の幹部…というよりは英雄たる雰囲気を感じるわ。春蘭はどう?」

 

 

「……それはまあ、確かに。でも華琳さまのほうが英雄にふさわしいです!」

 

 

レーヴェに言わせれば自分は英雄なんてそんな立派なものではないのだが、少女達はレーヴェのことを高く評価しているようだった。

 

 

「ありがと、春蘭。さて…レオンハルト……と言ったかしら?」

 

 

「ああ。」

 

 

「ここは陳留……。そしてわたしは、陳留で刺史をしている者」

 

 

聞いたことのない場所だ。<身食らう蛇>に所属していた自分はたいていのことならわかると思ったが、やはり一度も耳にしたことはなかった。

 

 

「そうか…それで俺をどうするつもりだ? オレはお前たちがさがしている盗賊などではないぞ?」

 

 

あまり手荒な事はしてほしくないんだがな、とレーヴェは答えを待った。

 

 

「盗賊でなくとも十分以上に怪しいわよ。春蘭。引っ立てなさい」

 

 

「はっ!」

 

 

春蘭は命令を受けレーヴェを捕まえようと近づいて、手を伸ばした。

 

 

しかし春蘭の手はレーヴェに届くことはなく、むなしく空をつかんだ。

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

突如消えたレーヴェの姿に三人は戸惑った。

 

 

(何処へ行ったの…!?)

 

 

三人が気付くの背後から声がかけられた時だった。

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「…遅いな」

 

 

「「「!?」」」

 

 

三人は声をかけられたと同時に振り向き少し距離をとった。

そして華琳は恐る恐る声をかけた。

 

「……貴方は何者なの?」

 

 

「さっき名乗ったはずなんだがな…。濡れ衣とはいえこんなとこで捕まるわけにはいかない…だから逃がしてくれないか?手荒な事はしたくない。」

 

 

そう言うとレーヴェはゆっくりと剣を構え、闘気を少しだけ解放した。その瞬間、誰もが体を強張らせた。少しだけ、されど華琳達を威圧するのには十分だった。

動けば殺られる。そう思う者は少なくなかったろう。

その空気に耐えられず馬上から落ちる者や座り込んでしまう者もいた。

レーヴェはこのまま何もせず立ち去るつもりだったのだが、そのなかで一人だけレーヴェに向かっていく者がいた。

 

 

「くう…!う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

「春蘭!?」

 

「姉者!?」

 

 

春蘭は自分の得物である幅広の刀、七星餓狼を構えレーヴェに突っ込んでいき得物を振り下ろした。

 

 

「華琳さまに手出しはさせんっ!」

 

 

だがレーヴェはそれを真正面からなんなく受け止めた。

 

 

(面倒な事になった。罪のない人を傷つけるのは気が引けるが…!)

 

 

「……まっすぐでいい太刀筋だ。よほどの忠義…想いがなければ動けないだろう。大したものだな。だが……」

 

 

「くっ!?うあああああああああああああああああ!」

 

 

言葉と同時にレーヴェは春蘭を刀ごと力で吹き飛ばした。

 

 

「今の俺とお前では差がありすぎる。」

 

 

華琳と秋蘭はそれをただ眺めていた。いや眺めるしかなかった。

二人はこの光景は信じられなかった。兵達も同じことを考えているだろう。

このなかで最強の、あの春蘭がまったく相手にされてないことを。

 

 

(な、なんて強さなの…!?こうなったら私が…!)

 

 

華琳は得物を手に取ろうとする自分の手が少し震えていることに気づいていなかった。

普段なら無理に戦わず逃げればいいのだが、あまりの事に全員が逃げるというまともな選択肢を失っていた。

 

 

レーヴェは地面に倒れた春蘭を一瞬だけ見るとゆっくりと華琳に近づいてきた。

華琳は得物を構え覚悟を決めた。

 

 

「か、華琳様!?」

 

 

秋蘭は声をかけるが華琳は聞いていない様だった。

 

 

(なら仕方ない…!)

 

 

秋蘭は弓を構えレーヴェに狙いをつける。

 

 

(どこまでできるかわからないが華琳様を守るためには…!)

 

 

「っ!来るなら来なさい!この曹孟徳が相手よ!」

 

 

レーヴェが華琳に近付いてくる。だがそれを秋蘭より先に遮る者がいた。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

「ふっ!」

 

レーヴェは振り下ろしてくる春蘭の得物を振り向きざまに受け止めた。

 

 

「華琳さまに手出しはさせんっ!」

 

 

「…春蘭!」

 

「姉者っ!無事だったか!」

 

 

レーヴェは驚いた。気絶させるように力を調整したはずなのに立ち向かってくるこの少女に。

このまま逃げ出すつもりだったが少しこの少女達に興味が湧いた。

思い出す。昔、勝てないとしりながらも自分に立ち向かってきたあいつを。

昔、大切な者のために戦ってきたあの頃の自分を。

 

 

「……なぜ立ち上がる?なぜお前たちは絶対に勝てない者に立ち向かう事ができる?答えろ。」

 

 

お前たち、という言葉の本当の意味には誰も気づかなかったが、春蘭はレーヴェを睨んでこう答えた。

 

 

 

「…っく、理由なんてないっ!!」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

レーヴェは剣を振るうと同時に聞き返す。春蘭はぎりぎりのところでそれを受け止めた。

 

 

「っ! 私は華琳さまを守るため!華琳さまがあぶない目にあっている今をっ!私は華琳さまと華琳さまの周りの世界を守るためにこの剣を、武を、奮うだけだっ!!!」

 

 

言葉を言い終わると同時に春蘭は得物をもう一度振り下ろした。

 

 

「うあああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

それをレーヴェはもう一度真正面から受け止める。

 

 

(理由なんてない……か…)

 

 

その時レーヴェはほんの少しだけ笑み浮かべた。

大切な者を守るためにただまっすぐに剣を鍛えたあの頃の自分と重ねて。

 

 

「なら強くなれ。主を守るために。何度でも…立ちあがってこい!」

 

「……!?うっ、か、華琳…さ……ま…」

 

 

そう言うとレーヴェは春蘭の横に周りみぞおちに拳を撃ち今度こそ気絶させ、剣を納め、春蘭をそっと抱きかかえた。

 

 

レーヴェは優しい瞳で春蘭を見つめ、華琳と秋蘭を見つめた。

 

 

(……こんな人間達がいるならまだまだこの世界は捨てたものではないな。)

 

 

レーヴェは決意する。

新たな者達と戦いに赴く決意を…

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あとがき

 

出し巻き卵です。

 

今回戦闘シーンがありましたが地の文が難しいかったです。

 

なんか華琳より春蘭のほうが目立ってますね…w

 

秋蘭にいたっては今回あまり目立ちませんでした。

 

今回シリアスだったけど次回はギャグパート?かもです。

 

あとひとつ質問なんですが拠点フェイズもやったほうがいいですかね?

 

気軽に意見募集してます。

説明
さっそく投稿してみた。

今回も文章が…でも楽しいのでいいか(おい
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コメント
春蘭が酷すぎる。自分から仕掛けたくせに。なんか痛い(歪曲王)
時の灯篭さん&gt;誤字報告ありがとうございます! 春蘭と秋蘭少しややこしいですが次から気をつけます。 恋とレン…? ハッ! 今気付きましたw 誤字報告に続きネタ投稿ありがとうございますw(出し巻き卵)
なっとぅさん&gt;誤字報告ありがとうございます! 注意してたつもりなんですが…(出し巻き卵)
誤字2P目?「秋蘭をそっと抱きかかえた。」ではなく「春蘭をそっと抱きかかえた。」ではないでしょーか?しっかし、カリンと華琳かぁ…。・・・・・・つーことは恋とレンもあるのか!?今後が楽しみすぐる!(時の灯篭)
誤字1p何処の国かもわからないのに「いきない」→「いきなり」 青年は「訪ねてきた」→「尋ねてきた」 でしょうかね。(なっとぅ)
ミッキーさん&gt;自分もどうからめていこうかと、考えるのが楽しみでもあり難しいですw(出し巻き卵)
カリンと華琳・・・この先どうやってからめていくか楽しみです!(ミッキー)
triptychさん&gt;はい、自分もレーヴェが女性になびくまでに時間をかけたいと思っています。 というか序盤でレーヴェが女性になびくビジョン(妄想)がまったくうかばないので…w(出し巻き卵)
ヒトヤ犬さん&gt;はい、本編進めます。 ですが拠点フェイズにも本編と少し関係を持たせようと思っていますので、書くことになっても2828成分だけ…というのはないかもです。(出し巻き卵)
森羅さん&gt;拠点フェイズいいですよね。 自分も早く続き書きたいですw(出し巻き卵)
拠点フェイズ、見たい……でもレーヴェがカリン(アストレイ)以外の女性になびくまでには充分に時間をかけて欲しいです。ヨシュアと戦った時にも『カリンは特別だ!』って言ってたし、余程の事がない限りレーヴェはずっとカリン一筋な気がするので。(triptych)
いえ、とっとと本編進めましょう、2828成分は他の外史でお腹一杯です!(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
拠点フェイズ希望します〜。はやく続きを書いてくれーーー!!(森羅)
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