真・剣帝夢想〜魏の章〜 第3話 |
あの後すぐに華琳達の兵が数名やってきて盗賊達の三人の死体を見つけたとの報告が来た。
レーヴェは自分は華琳達に敵対する意思がないことと、少し話を聞かせてもらいたいと説明した。
華琳達はレーヴェの話も聞かせてもらうという条件で双方が合意し、近くの街にやってきた。
街に着くまでに華琳たちに聞いた話によるとどうやらあの盗賊達が南華老仙の古書という重要な物を盗んでいったらしい。だがレーヴェが盗賊たちを切り捨てていたので、南華老仙の古書は無事だったとの事だ。
レーヴェは街に着くととりあえず周りを見渡した。そして見覚えのない建物が並ぶ通りを見てレーヴェは自分の仮説がまたひとつ現実味を帯びてきた事を確認した。レーヴェは面倒なことになったと、華琳たちに気付かれないようそっと溜息をした。
少し歩き華琳たちは一つの店に入った。どうやらレストラン…みたいなとこのようだ。
華琳たちは奥の席をとり春蘭を椅子の上に寝かせ三人も席に座った。
席に座るとすぐに華琳がレーヴェに質問した。
「…それでレオンハルト…だったかしら?最初に聞きたいのだけれど…貴方は何者?」
「オレは……ただの流れ者だ。」
レーヴェは華琳の問いにすぐ答えた。
だが華琳と秋蘭は一瞬、不満げな顔をしたが、気を取り直し次の質問をした。
「……そう…では、レオンハルト、貴方の生国は?」
「…エレボニア」
「「………」」
今度もすぐに答えた。だが華琳と秋蘭はまた少しだけ不満げな顔をして沈黙した。
「……この国に来た目的は?」
「……わからない」
「「…………」」
むしろ自分が知りたいくらいだとレーヴェは思った。
華琳たちはまた沈黙した。
「………ここまで、どうやって来たの?」
「気が付いたらあの荒野で倒れていた。」
「……その後盗賊に遭遇し、盗賊達を切り捨てた後、私たちと出会った…ということかしら?」
華琳が簡単にいきさつを説明した。
「ああ」
「「…………」」
レーヴェの答えにもはや華琳たちはあきれていた。レーヴェはそんな顔されても自分にもどうすることもできないのでレーヴェもまた黙っている。
少し気まずい、レーヴェには珍しくそう思った。
「……華琳様」
秋蘭はため息交じりに声をかけた。
「後はこやつの持ち物ですが……」
そう言って二人は机に置かれた剣を見た。それはレーヴェが<身食らう蛇>に所属していた時に盟主からもらった黄金の剣だった。
「…この剣は見事なものね。どう思う?秋蘭」
「はい、こんな見事な剣は見たことがありません」
二人はレーヴェの剣を観察し、驚きそして称賛した。
「この剣はどこで手に入れたの?」
「この剣は…貰い物だ」
レーヴェはそれだけ答える。盟主からもらった外の理で作られた剣、と言っても余計に混乱するだろう。
「……そう…」
華琳は埒が明かないと思ったところで少し怒りのこもった声で皮肉の交じった言葉をだした。
「それで……何処の世界に貴方みたいなお強い流れ者がいるのかしら?」
「………」
レーヴェは何も答えない。華琳は少しイライラしレーヴェを見つめ、横に座る秋蘭が華琳を困ったようにちらちら見ている。
仕方ないのでレーヴェは自分のたてた仮説を話してみることにした。
「………という事だ」
レーヴェの説明する仮説は簡単に言うとこういうことだった。自分はとある場所、自分がいた世界で死んだはずだったが、何らかの理由で生きてこの世界にやってきた。
さらにレーヴェは自分がいた世界とこの世界が別であろう理由を説明した。
華琳は少し興味深そうに考えている。
「……秋蘭。 理解できた?」
「ある程度は……。しかし、にわかには信じがたい話ですな」
「オレも信じているわけじゃない。そう考えた方が自然だということだ」
レーヴェがここを知らないだけという可能性もあるが、それはないだろうと頭の中で否定した。
「……ん…ここは…?」
その時まだ気絶していた春蘭が目を覚ました。
「起きたか姉者。ほら水だ、飲め」
「お? おお…すまない、秋蘭」
春蘭は秋蘭からもらった水を一気に飲みほす。
「おはよう、春蘭。 さっそくだけど今興味深い話をしてるのだけれど…」
「話ですか? どんな話か私に…も……」
「……」
春蘭は華琳に話しかけられうれしそうにしゃべり始めた。目の前に座るレーヴェを見つけるまでは。
「貴様っ! なぜここに!?今度こそ私が倒して…」
言うが早いと春蘭は得物を手に取ろうとしたが、それより早く秋蘭が春蘭を羽交い絞めにした。
「やめんか、姉者!」
「止めるな秋蘭! こいつは私が仕留める!」
「落ち着け姉者!ここは店の中だ!」
「ええい!そんなわけあるか! ここが店の中など……」
秋蘭の言葉に春蘭は周りを見る。周りの客は全員面食らったかのように視線をこちらの席に向けている。
「………へ……?」
「………春蘭、席に座りなさい」
見ると華琳は少し顔が赤くなり、頬をひきつらせている。
「か、華琳さま! す、すみません!」
「……いいから座りなさい。今から説明するわ」
「は、はい! ありがとうございます!華琳様!」
「「「「「………」」」」」
春蘭は大きな声で感謝の言葉を述べた。その声にまた客の視線が集まった。
「……あ」
「……春蘭?」
華琳はもう一度、頬をひきつらせたまま春蘭に声をかけた。
「あ、す、すみません……」
今度はおとなしく席に座った。
「春蘭…後で本当のお仕置きよ」
「え、えぇ!華琳さまのお仕置き 本当って……そ、そんなぁ…華琳さまあ〜」
春蘭は自分が期待していた方のお仕置きではないとわかると途端に落ち込んだ。
レーヴェはしょんぼりしている春蘭と静かに怒りを滲みだしている華琳をながめていたが、少しかわいそうになり、本当のお仕置きというのはなんのことかはわからないが華琳に声をかけた。
「その辺で許してやったらどうだ? 元はと言えばオレがやりすぎた事が原因だ。オレのせいでもある」
「!?そ、そうだ! 元はと言えばこいつが華琳さまを襲おうとするから……おい、秋蘭!お前からも言ってやれ!」
レーヴェがそう言うと、途端に元気になり見事な変わり身を見せた。
「い、いや…一理あるが姉者……。姉者は少し慎みというものを覚えてくれ……」
「……はぁ…もういいわ春蘭。それより、少し話を聞きなさい」
自分が怒っているのがばからしくなった華琳はあきれるように言った。いや実際にあきれているのだが。
「はい! ありがとうございます! 華琳様!」
「「はぁ…」」
華琳と秋蘭はそろってため息を吐いた。
レーヴェもその姿を見て心から同情した。
華琳と秋蘭は先ほど話した事を全て春蘭に説明した。レーヴェが敵対する気はないとの事。これはいくつか春蘭がレーヴェに噛みついてきたが問題なかった。
問題はもう一つの話だった。
「……で、結局それは、どういう事なのだ?」
まるで分かっていないようだった。
「………オレは違う世界から来た人間…という事だ」
レーヴェがもう一度説明する。実際は一度や二度のどころではないのだが。
信じきれない、ということならわかるが、話をまったく理解できていないというのは初めてのケースだとレーヴェは思った。
「……ふむ…なるほど…」
春蘭は全然分かってない顔でそう言った。
「……まだ分からないのか?」
「………文句あるか」
どうやらまだ分からないらしい。
「姉者。つまり…理由は華琳さまにもわからないが少なくともここにレオンハルトがいる、という事だけは事実だ、という事だ」
「……うむぅ?」
「それで分からないなら、諦めろ。華琳さまにもお分かりにならない事を姉者が理解しようとしても、知恵熱が出るだけだぞ」
秋蘭はもうお手上げと言ったように言う。
「むむむ………」
春蘭は悔しそうに声をうならせる。レーヴェは春蘭を見て、少し弟の恋人に似てるかもしれないなと思った。
「春蘭。色々難しいことを言ったけれど……このレオンハルトは、天の国から来た遣いなのだそうよ」
華琳は少し得意げに春蘭にそう言った。いきなりの発言にさすがのレーヴェも言葉を発するのが遅れた。
「なんと! まあ、確かにあの強さなら天の遣いであっても不思議ではない……うん、そうだ!」
しかも春蘭は納得している。レーヴェは頭を悩ませた。
「いきなり……どういうことだ?」
「あら…五胡の妖術使いや、別の世界から来たなんていう突拍子もない話をするよりは、そう説明した方が分かりやすくて済むのよ」
「あなたもこれから自分の事を説明するときは、天の国から来たと、そう説明なさい」
少しうさんくさい気もしないではないが、確かに一理あるかとレーヴェは思い、返事をした。
「……なら、それでいい」
「さて。大きな疑問が解決したところで、もっと現実的な話をしていいか? レオンハルト」
「ああ。話を聞かせてくれ」
「秋蘭。ここからは私が話すわ。 ……と言っても話す事はあまりないのだけれど」
そう言いながら華琳が続けて話し始めた。
レーヴェはどういうことだと少し頭を捻ったが、でもレーヴェにはなんとなく華琳の次に言う事が予想できた。
「単刀直入に言うわ。貴方、私に協力なさい」
「……」
レーヴェはほんの少しだけ考えた。そしてすぐに答えた
「…わかった」
「ええっ!?随分と素直だな……」
あまりの素直さというか、即答に春蘭が驚いた。
「オレには行くアテがない。 それに俺に出来る事…やるべき事がお前たちとなら見つける事ができるかもしれないしな」
そう言いレーヴェは目を閉じ少しだけ笑みをうかべた。
(最初から協力するつもりだったがな……)
「……そう。歓迎するわ。あなたのその武、私の覇業の大きな助けになるでしょう」
「ああ。オレでいいのであればその覇業を叶える為の力になろう。『剣帝』の名にかけて」
「ふふ…頼もしいわね……。 そう言えば貴方、違う世界から来たのなら真名の事も知らないわよね」
真名。たぶん先ほどから三人で呼び合っているのがそうなのだろう。レーヴェにはそう言った名はない。レーヴェは華琳から真名の説明を聞いて最上級の信頼の証なのだと教えられた。
「…そうか、ならばオレのことを呼ぶときはレーヴェと呼んでくれ。それでお前たちはなんて呼べばいい?」
「私のことは華琳と呼んで良いわ」
「…オレなんかに真名を呼ばせていいのか?」
信頼の証を会ったばかりの自分に許していいのかと尋ねる。
「私が良いと言っているのだから、構わないわ。それに貴方が真名を預けたのだからこちらも真名を預けないと不公平でしょう? あなた達もいいわね?」
そう言って華琳は春蘭と秋蘭を交互に見た。最初に答えたのは秋蘭だった。
「ふむ……承知いたしましたとお応えしましょう」
「秋蘭っ! いいのか……?」
どうやら春蘭は抵抗があるらしいが秋蘭は大丈夫なようだ。
「私は華琳さまの決めたことなら従うまでだ。 姉者は違うのか?」
「くぅ…!私だってなぁ…」
「姉者。」
今度は少し力を込めて秋蘭は春蘭を呼んだ。
「くぅぅぅ…!わかった!好きにしろ!」
どうやら秋蘭の説得が効いたらしい。だがレーヴェは本当に呼んでいいのかと少し戸惑った。
「……本当にいいのか?」
「ああ!私に二言はない!」
少し気になったがどうやら大丈夫らしい。
これで三人から真名を受け取った。三人を失望させることだけはするまい、と胸に誓った。
「ヵ………華琳、春蘭、秋蘭……これからよろしく頼む。」
(……華琳…か……)
「歓迎するわ」
「こちらからもよろしく頼む。」
「く、くっそー!お前は、いつか絶対私が倒してやるからなー!」
春蘭の声が響く中、4人は歩いて行った。レーヴェはもう一度獅子の名を掲げ4人と戦いの道へと歩き出した。
出し巻き卵です。
今回は自分で書いてて少し難しい話でした。
次回から自分が大好きなキャラが出てきます。
……と言いたいのですがその前に拠点フェイズ的な物が一つ書きあがっているんですが、拠点フェイズから投稿した方がいいですかね。
まあいろいろ手直しして明日には投稿しようと思ってます。
それでは意見募集中の出し巻き卵でした。
説明 | ||
今回の話は少し時間がかかりました。 ……と言っても実は次の話の分くらいまでは書けてたりする。 意見も相変わらず募集中です。 |
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コメント | ||
レーヴェさん>意見ありがとうございます。 それもおもしろい展開になりそうですね。(出し巻き卵) 零の軌跡キャラを出すとか。ラスボスなど(レーヴェ) triptychさん>ですね。自分も今のところ白面を出す予定はないですね。それよりエステルとヨシュアの扱いをどうしようか悩んでます。桃香は確かに障害にはなりえますが、戦力としての障害もほしいんですよね。期待に応えられるかはわかりませんが、精一杯頑張ります。(出し巻き卵) ミッキーさん>明日には投稿するので楽しみにしてくださいw(出し巻き卵) 出来れば出てきて欲しくないキャラ・『白面』。3rdで見る限り復讐に執着する性格じゃないし、『超人』を作るために動くならむしろレーヴェに知られる事を避けるだろうし、大丈夫だとは思いますが。……むしろ桃香がレーヴェの最大の障害となるやも? エステルやヨシュアの言葉を受け入れた彼がこの先修羅以外の生き方が出来るかどうか楽しみです。(triptych) 拠点フェイズですか・・・楽しみですww(ミッキー) |
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