〜魏志恋姫伝〜15
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第15話水関の戦い

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先の軍議で先鋒は孫堅軍が勤める事になった。

孫堅軍は準備が整い、水関に進軍した。

 

「蓮葉。先陣切って水関に乗り込むのは良いのじゃが、ちと焦り過ぎではないか?」

「大丈夫よ、祭。私の勘がそう言ってるんだもの。」

「はぁ。蓮葉、策殿とは違いお主の勘は当たった試しが無いではないか。」

 

孫堅軍の長、孫堅こと蓮葉は自信満々で言うが、副将の黄蓋こと祭は大きくため息をついた。

確かに蓮葉は呉の中では右に出るものがいないほどの武士である。

天性の戦上手ではあるのだが、こう言った勘や占いの類は悉く外れるのだ。

 

「何よ?祭は私の勘が信じられないわけ?」

「信じられんな。」

 

祭の即答に蓮葉は口の中で苦虫をすり潰したような顔をする。

 

 

「ぶーぶー。祭が苛めるー。」

「なら、蓮葉。お主の勘が当たった事を言うて見るんじゃな。」

「むー。」

「祭。あんまり母様を苛めないでね。」

「策殿。苛めてなど下りませぬ。ただ真実を申したまでです。」

「そういう事ね。」

 

話に入って来たのは長女の孫策こと雪蓮だ。

その後ろには軍師の周愉こと冥琳の姿が見える。

 

「布陣が整いました。」

「ありがと、冥琳。さてこの水関どうやって落とすか、よね?」

「はい。両壁は段外絶壁。守備に徹せられれば苦戦するでしょうね。」

「そうね。後の虎牢関の事も考え被害は抑えたいですからね。」

「関を守るのは誰じゃ?」

「猛将華雄です。先ほど戻ってきた斥候の情報ですので間違いないかと。」

「何とかして華雄を引きずり出さなきゃね。」

「そうね、全軍に通達。攻撃開始。」

 

蓮葉の声に孫堅軍の兵士たちは攻撃を開始した。

 

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開戦から十日両陣営、一進一退の攻防を続けていた。

孫堅軍が水関に攻撃を仕掛けるも泗水関の兵は防戦に徹し中々攻略の糸口が掴めないでいた。

 

戦況を関の上から見下ろす一人の女性がいた。

董卓軍の猛将、華雄である。

彼女は弓を使い次々と敵兵を射抜いていく。

敵兵からはさまざまな罵倒が飛び交うなか黙々と弓を射ていた。

そこに一人の男が階段を駆け上がり、華雄の元まで走ってきた。

 

「将軍。もう我慢ができません。それに兵を抑えるのも限界です。どうか、出撃の命を。」

 

彼女の横から補佐役の男が進言する。

開戦からずっと董卓や華雄に対する罵倒が飛び交い、彼等は堪忍袋の緒が切れる寸前だった。

しかし、華雄は彼に対し諭すように答える。

 

「この布陣、どう思う?少し焦りすぎだとは思わないか?」

「布陣ですか?攻め急いでる気はしますが、普通ではありませんか?」

「では聞くが、彼らの強みは何だ?」

「強みですか?兵数や、兵糧が豊富なところですか?」

「そうだ。では、我々も強みは?」

「防戦を得意としたこの水関、虎牢関でしょうか?」

「そうだ。ここでひとつの仮定ができる。此方は防戦に徹すればよほどの事がない限り負ける事はない。

それなのに相手は苛烈に攻撃をしてくる。つまり相手方には時間が無いと見える。

その理由は何だと思う?」

 

彼女の質問に彼は単純に答えた。

 

「兵糧が無い、でしょうか?」

「十中八九そうだろ。まあ連合も一枚岩じゃないって事だ。

一応間諜を放ち、相手方を探れ。結果次第では一気に敵を急襲する。

兵達にはそう伝えてくれ。」

「はっ。」

 

男はすぐさま伝令を放つため関を降りていった。

 

―ふん。ようやく面白くなってきた。

 

彼女は緩んだ口に手を当て、すぐさま表情を引き締めた。

 

2日後、彼女の読みは当たり、先方を務めている孫堅軍の士気は最悪なものであった。

この知らせを聞き華雄はようやくその重い腰を上げた。

 

「さて、諸君。間諜からの知らせによると、孫堅軍は袁紹軍からの補給が滞っているようだ。

敵軍にはかわいそうだが、明朝より一気に孫堅軍を蹴散らす。

本日は酒を好きなだけ飲んでも良い。ただし、明日の軍行を乱さない程度にだ。

いいな?私からは以上だ。」

「−−−−−−−−」

 

華雄の言葉に兵達は沸きあがり、一気に士気が上昇した。

彼女はやる事は終わったと、自分の天幕に戻り一人明日の戦いに胸を躍らせ一人晩酌を始めた。

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蓮葉は今の現状にため息をついた。

袁紹から兵糧は送られて来ず、兵達の士気は最悪、この連合に対して疑心暗鬼になっていた。

このままでは、戦いどころではない。

ここで決断しなければ取り返しのつかない事になりかねない。

そう思った蓮葉は緊急に軍議を開いた。

 

「このままではいたずらに兵を失うだけだわ。ここは撤退すべきだと思うけど、冥琳はどう思う?」

「私も同じ意見です。」

「わしも同じ意見じゃ。」

「泗水関を最初に抜け、名を獲ろうと思ったんだけどね。」

「しかたありません。こうなってしまっては戦どころではありません。

最悪の場合連合を抜けることも視野に入れておかねばなりませんね。」

「そうだな。」

 

蓮葉はため息を吐くと、全軍に撤退命令を出した。

 

しかし、時既に遅く、明朝と共に華雄軍の急襲を受け、多大なる損害を被ってしまった。

祭、雪蓮、冥琳たちの活躍により壊滅は免れたが、連合軍の集合場所に帰還したときには孫堅軍は最初の約半分の兵を失ってしまった。

 

連合軍のところに戻ってきた蓮葉は南海覇王を抜き袁紹の天幕に向かった。

今回の戦いについて袁紹が兵糧を送らなかった事を知っている諸侯は誰も蓮葉を止めようとはしなかった。

袁紹の天幕に着くと顔良と文醜がいた。

 

「二人とも其処をどいてくれるかしら?」

 

蓮葉とても素敵な笑顔を二人に向ける。しかし彼女の目は邪魔をするなら容赦なく切り捨てるといっていた。

 

「孫堅様。落ち着いてください。」

「剣をお納めください。」

 

蓮葉は目を閉じ、一呼吸置いて目を見開く。

 

「退け。下郎が。」

 

二人には蓮葉の剣筋が見えなかった。

自分達が宙を舞っていた事に気がついたのは、背中から地面に落ちたときだった。

肺の中の空気が押し出され、呼吸がし辛い。

 

蓮葉は二人を一瞥すると何でもなかったように天幕の中に入っていった。

 

「さて言い訳を聞きましょうか。袁本初。」

 

そういうと南海覇王を袁紹に突きつけた。

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連続投稿です。コメント待ってます

説明
「私にこれがかけるかな?」
「セキト殿の文才は未知数です。いい作品が書けるか保障できません。」
「はっきり言う。気にいらんな。」
「すいません。気休めかも知れませんがセキト殿ならいい作品が書けると思います。」
「その言葉信じよう。さぁ。華琳、私を導いてくれ。」
どもセキトです。今回は連続投稿です。
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コメント
華雄が猪じゃないだと!?(メルクリウス)
華雄さんが覚醒しとる!?それに馬鹿の運命はいかにw(サイト)
きっとどこかの紳士がそっと「がくしゅうそうち」を華雄さんに差し上げたのではw そして名族(笑)の運命はどうなるやらw(村主7)
華雄が凄い……(十狼佐)
偽華雄だ!としか思えん位に冷静な対応だ。(mokiti1976-2010)
…華雄さん何食ったんだ!?(りょんりょん)
あれ?華雄が・・・なんか悪いモンでもくったのか・・・?(森羅)
華雄何があった?(ルルーシュ)
孫堅さんやっちまえ!無能な総大将はいらない(ryu)
華雄が冷静だと!?(poyy)
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