真・剣帝夢想〜魏の章〜 第3.5話
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その日レーヴェは華琳たちと城に戻ると、華琳がすぐに部屋の用意をしてくれた。華琳が言うには「好きに使っていいわ」との事だった。その後はすこし遅めの夕食をとった。どれも初めて食べる物ばかりで少し緊張したが、香辛料が少し効きすぎてる感じはあったが、どれも新鮮でおいしいものであった。

 

夕食の後、華琳に仕事について聞かせてもらおうと思ったのだが、華琳はすぐに部屋に戻ってしまった。やはり国を治めるとなると忙しいのだろう。仕事は自分で探すことにした。と言っても今日はもう遅いので書庫にいる文官達から読み書きの勉強ができる本を借りると、部屋で少し勉強した後寝る事にした。

 

朝レーヴェは起きると、支度をして自分にできる仕事を探しに行くことにした。

と言ってもレーヴェはもう大体の目星はついていた。後は目的の人物を探すだけだ。

 

 

(さて……どこにいるのか…)

 

 

レーヴェが目的の人物を探すために廊下を歩いていた。すると前から紙の束を持った妹の方が歩いてきた。

 

 

「レーヴェか。どうした? そういえば仕事は見つかったのか」

 

「秋蘭か。 いや春蘭を探しているのだが……知らないか?」

 

 

レーヴェが聞くと少し困った顔で答えた。

 

 

「本来なら私と一緒に事務仕事をしているのだが……」

 

 

「………」

 

 

レーヴェはその答えに大体の事情を理解した。おおかた事務仕事が嫌になり、どこかに行ってしまったのだろう。

 

 

「……そうか。見つけたら声をかけておこう」

 

「すまないなレーヴェ。……まあ、いつもの事だがな」

 

 

そう言って秋蘭はため息をついた。その後レーヴェは秋蘭と別れると庭に向かって行った。

 

 

庭に着くと声が聞こえた。

 

「はああああっ!」

 

 

「………」

 

 

空気がビリビリ震えるほどの掛け声の合間に、空を切る刃の音が混じっている。

 

 

(こんな事ができるのは……)

 

「春蘭か」

 

 

声を掛けた瞬間、レーヴェは右に一歩だけ動いた。一瞬遅れてレーヴェの耳の横を巨大な鉄の塊が通り過ぎていった。

 

 

「ちっ! 外したか」

 

「オレじゃなければ首が飛んでいたぞ」

 

 

そう言いながら振り向くと、やはり壁に春蘭の大剣が半ばあたりまでめり込んでいた。

 

 

「? お前なら首が一つ二つ飛んだところで、痛くも痒くもないだろう」

 

「……そんなはずないだろう」

 

 

そんなわけない。いくらレーヴェが剣帝と呼ばれるほどの使い手でも、所詮は人間だ。首が飛べば当然死んでしまう。もっとも本当はもう死んでいるはずなのだが。

 

 

「貴様の都合など知るか。わたしの心は痛まんから、安心してあの世に行くが良い」

 

 

「……いや…」

 

 

春蘭の言葉にレーヴェは少し頭が痛くなった。

 

 

「で、何だ? こんな時間からブラブラ……」

 

 

春蘭はそう言いながら、壁に突き刺さる……というより、めり込んだ大剣の柄をひょいと取り。

 

 

「して…………い……っ! ……ふんっ……!」

 

(……抜けないのか?)

 

 

レーヴェは自分が抜いてやろうかとも思ったが、それより先に春蘭が行動を起こした。

 

 

「…………でええいっ!」

 

 

春蘭は思い切り壁を蹴った。そして崩れる土の壁。抜けた大剣を片手に、春蘭はものすごく満足そうな表情をしている。

 

 

(これは………どうするつもりなんだ?)

 

 

後で報告しておこうとレーヴェは思った。

 

 

「……ふぅ。で、お前はなにを昼間からブラブラと」

 

 

春蘭は崩れた土の壁をまったく気にせず話を続けた。

 

 

「いや……春蘭を探していたんだが」

 

「わたしを? なぜだ」

 

 

まったく心当たりがありませんという顔で聞き返す春蘭。

 

 

「……秋蘭が探していたぞ」

 

「え、あ、……いやそんなはずないだろう? 聞き間違いではないか?」

 

 

悪い事がばれそうになった子供のように春蘭は慌てている。

 

 

「事務仕事をサボったそうだな」

 

「い、いや、だって……」

 

 

春蘭は図星をさされてかなり焦っている。

 

 

「わ、私には事務仕事は向いてないんだ! そう! 私は華琳さまを守るためにここで鍛えていたのだ!」

 

 

言い訳が思いつかなかったのか春蘭はとうとう開き直り始めた。

 

 

「……確かに、蹴りで壁を壊す事が出来るのは春蘭以外にあまりいないだろうな。 毎日の鍛錬の賜物だろう」

 

「ふっ。そんなに褒められると、照れるではないか」

 

 

言われて少し照れる春蘭。もう先ほどの事は忘れているのか、元気な子供みたいだとレーヴェは思った。そしてもう一つの事を春蘭に聞いてみることにした。

 

 

「ふ…そういえばそんな春蘭に聞きたいことがあるんだが……聞いて良いか?」

 

「……。わたしも暇ではないんだが……何だ?」

 

 

暇ではないと言いながらまんざらではなさそうだ。

 

 

「実は仕事を探しているんだが……兵の調練を一部まかせてくれな」

 

「嫌だ」

 

「………」

 

 

まだ最後まで言ってないんだがなと思いもう改めてもう一度言うことにした。

 

 

「……兵の調練を一部」

 

「嫌だ」

 

(……話が通じてないのか?)

 

 

そんなはずはないとレーヴェはもう一度続けた。

 

 

「……いや、仕事を」

 

「嫌だ」

 

「……兵」

 

「嫌」

 

「……へ」

 

「い」

 

(……このままでは埒が明かないな)

 

 

どうやらレーヴェに仕事を取られることが相当嫌がっているようだ。

あらかじめこういう事になりえるであろうことは予想していたので、仕方なくレーヴェは最後の手段を使うことにした。

 

 

「……春蘭」

 

「なんだ」

 

「昨日の夜、調理場に忍び込んでいただろう?」

 

「!?」

 

 

春蘭はなぜその事をと言わんばかりの顔をした。レーヴェは夕べおそくまでこの世界の読み書きの勉強をしていた。レーヴェが少し気分転換に散歩をしている途中、偶然見つけたのであった。

 

 

「……華琳には黙っていてやる」

 

「! ほ、本当か?」

 

 

春蘭が希望に満ち溢れた表情をしている。

 

 

「そのかわり」

 

「え?」

 

 

どういう事だと春蘭は首をかしげる。

 

 

「ん?……!……くっ! そういうことか! ひきょう者め!」

 

 

春蘭は意味がわかるとレーヴェを罵倒した。

 

 

「構わないな? それで調練場所はどこだ?」

 

 

レーヴェは交渉が成立したとみると春蘭から調練の場所と新兵の隊を担当する約束を取り付けた。

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(……課題は山積みだな)

 

レーヴェは新兵たちの調練が終わり、街が見渡せる城壁の上で先ほどの新兵たち事を考えていた。

 

今日は自分が考えていた調練の内容はひとまず置き、普段からやっているという調練で様子を見ることにした。

 

(部隊としての動きは悪くなかった。だが……)

 

レーヴェは先ほどの新兵を思い出す。部隊としての動きはいいが、個人の戦闘力としてはまったく駄目だった。準遊撃士の方がいくらかマシだろう。レーヴェとしては特務兵ほどは無理でもせめてそれに準ずるほどの強さはほしかった。

 

その時城壁に上がってくる足音にレーヴェは気付いた。

 

 

「華琳か」

 

「あら……よく気付いたわね……。ここで何をしているの? 確か新兵の調練をしていると聞いたのだけれど」

 

「それなら終わった。 今はその新兵の事を考えていたところだ」

 

「……そう。 貴方ほどの武の持ち主ならいろいろ思うところでもあるでしょうね」

 

 

華琳はそう言いながらレーヴェの隣の壁に寄り掛かった。

 

 

「まあ……そういう事だ…。それよりオレになにか用か?」

 

「ええ。たいした用ではないのだけれど。まあそれは……後でいいわ。それよりレーヴェの方こそ聞きたい事があるんでしょう?」

 

 

まあなと言ったようにレーヴェは華琳の方を向いた。

 

 

「いや…ただ、お前が王を目指す理由を聞いておきたいと思ってな」

 

 

レーヴェは口調こそ軽いが、真剣な表情でそう言った。

華琳は少しの間沈黙したが、やがて口を開きゆっくりと語り始めた。

 

 

「……レーヴェ。何故この街で戦は起こらないのか分かる?」

 

「……曹操、お前が王として、国を守っているからだ」

 

 

レーヴェはなぜ今こんな話をするのかと思ったが華琳なりの意図があってのことだろうと、華琳の問いに答えた。

 

 

「そう。民とは弱いものよ。国は本来、そこで暮らす弱い庶民の盾となり、矛となるべきもの。その代わりに、労働力や資金を提供してもらって存在しているの。分かる?」

 

 

その通りだとレーヴェは思う。国が利に目がくらんで動けば民は犠牲になる。国家は複雑で巨大なオーブメントと同じだ。その事をレーヴェは誰よりも知っている。

 

 

「……それが税、か」

 

「そうよ。私の服も、食事も、この城さえも、彼らの血と命で成り立っているの」

 

「ああ」

 

「見なさい、レーヴェ」

 

 

華琳は街の方を見ながらそう言った。その言葉に従いレーヴェは街を見渡す。平和だ。レーヴェは素直にそう思った。そしてかつて平和な時間を過ごしていたあの頃を思い出した。

 

 

「あそこの住むのは、この国の民。私たちが守り慈しむべき、大切な宝よ」

 

「……ああ」

 

「その宝を守るためには、どうすればいいかしら?飢饉にあえがず、盗賊に奪われず、他国の侵略に怯えて過ごさせないためには」

 

「……何事にも負けない強い国にする。国が弱ければ民は苦しむことになる」

 

 

レーヴェは自分もそうだったと思った。大切な者のために、誰にも負けないように自分は強くなった。

 

 

「そうよ。掛かる火の粉は払うだけでは駄目。火種から消せるほどの力を持たないと意味がないわ。いつまで経ってもこちらには火の粉が掛かって来るばかり」

 

「戦いを終わらせるために、強くなる……それが理由か」

 

「ええ。戦う相手がいなくなれば……他国の侵略に怯える事もなくなるわ。飢饉だって、防ぐ手だても見つかるでしょう。」

 

 

華琳は少しだけ微笑みながらそう言った。

 

 

「その身に刻みつけなさい。血税は民衆の祈りよ。豊かで大きく、平和な国を作るための」

 

「……ああ」

 

 

レーヴェはもう一度決意する。華琳たちだけではなく民を守る決意を。

 

 

「その祈りに生かされてる私たちは、歩みを止めることなど許されない」

 

「俺も同じ……か」

 

「そういうこと。わたしたちの力に民は大きく期待しているわ。協力してくれるわね?」

 

 

華琳はレーヴェを正面から見据え、笑みを浮かべながら言った。

 

 

「ああ。『剣帝』の名にかけて全力で期待に答えてみせよう。華琳と……この国、全員の」

 

 

この街の民を守る。ハーメルの悲劇。あのような目にあうのは自分だけで十分だ。

オレの言葉を、最後まで聞いた後、くるりと背を向け、既に歩き出した。

小さいが、大きい背中。オレはこの背中を支え守っていこうと心に固く誓った。

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出し巻き卵です。

 

ちょっといい話のオチなし拠点フェイズはいかがだったでしょうか?

 

拠点フェイズどうしましょうかね。

 

まだ色々ネタはあるんですが、原作の2828成分もやっぱり皆さん欲しいですかね?

 

まあでも2828にできるキャラはあの3人娘くらいですかね。

 

4話はまた明日の夕方頃に投稿します。

 

みんなー!オラに意見を分けてくれー!状態の出し巻き卵でした。

説明
拠点フェイズをちょっぴり投稿。

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コメント
ヒトヤ犬さん>ですね…。人間も動物。動物は争う物ですし。それでも今自分達が平和のためにできる事をする。そこに意味があるんじゃないかと思ってます。(出し巻き卵)
実は平和とは、次の戦までの準備期間なんだよね、敵が居なくなることは無いのが現実なんだよね、統一しても違う大陸の敵も居るし内乱もある敵は無限できりがない・・・(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
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