るいは智を呼ぶ 二次創作B <第一次接近遭遇> |
お昼休みの終わり際にメンバー全員へのメールを飛ばして、僕と宮は教室に戻った。
反応は結構早かった。6時限が終わるまでの間に返事はぱらぱらと返ってきて、なんと学校を出る頃には全員分の返事がそろってしまっていた。
気になる内容はというと……
『OKであります! (≧▽≦)/』
『智ちんの友達ならい〜よ』
『了承。可愛ければなお良し』
『智の友達なら歓迎するわ。紹介しても大丈夫だと判断したから聞いたんでしょう?』
『智の思うとおりにするといい』
『好きにしろ』
『 (「`д´)「 』
以上、先着順。
最後の茜子だけは何が言いたいのかさっぱりわからないけど……OKととってもいいんだろうか?
「……ま、大丈夫でしょ。イヤならイヤって言うだろうし」
深く考えないことにした。
「……と、言うわけでですね、今日はゲストをお招きしております」
「どんどん、パーフーパーフー」
さして意味のない茜子の効果音(口で)をBGMに、僕は宮を紹介する。
「こちら、冬篠宮和。僕の学園のクラスメイトだよ」
「ご紹介にあずかりました、宮和と申します。どうぞ、よろしくお願いします」
僕の言葉に合わせて宮が一歩前に出て、流麗なお辞儀をする。
今日も場所はいつもの雑居ビルの屋上。次からの集合は誰かの家でのはずだったけど、初対面の宮を仲間とはいえ他人の家にいきなり招くのもどうかと思ったので、結局ここでご対面ということになった。都合よく今日は朝から晴れだったし、この吹きさらしの屋上でもいくらか過ごしやすい気温にはなっている。
「ほわぁ〜……」
「…………ほほぅ」
宮和の立ち振舞いは、家がお金持ちと言うだけあって上品さと優雅さにあふれている。立ち振舞い『だけ』ならまさに大和撫子と言っても過言ではない。現に、こよりなんかは感心して思わず溜息が漏れている。
洋風お嬢様の花鶏にしたって、宮和の仕種には感じ入る所があるのか、頭を下げる宮和の様子を真剣に見つめて
「……伊代ほどじゃないけど、大きいわね」
……たんじゃないんですか花鶏さんコノヤロウ。
「大きい、ですか? はて、何のことで……」
「あー! あー! 気にしなくていいから! ごめん、とりあえずこよりから自己紹介してくれる?」
「……はぇ? あ、はい、了解であります!」
放心していたこよりを現実に引き戻して、強引に仕切りなおしを図る。
再起動したこよりは元気一発、早口で自己紹介をまくし立てた。
「いちばん、鳴滝こよりであります! 特技は見ての通りインラインスケート、最近のマイブームは彩星堂のイチゴタルト、尊敬する人は智センパイ、座右の銘は『サンショウオはコショウでピリ辛いため』であります!」
「おお〜、ちびうさピンクが張り切って背伸びしまくっておりますな」
すかさず茶々を入れる茜子。しかしどういう意味だその座右の銘。
「…………えっと、皆元るい。……よろしく」
「あれ? るいセンパイ、もっと色々言いましょうよー! 鳴滝めは頑張ってたくさん自己紹介考えて来ましたのにー!」
「うう〜……そんなこといったって」
対照的に、いつもの元気とは程遠いのが人見知りのるいさん。普段の態度がアレなせいで忘れがちだけど、るいは大抵初対面の人には警戒心バリバリになる。うつむいて両手の人差し指をつんつん合わせる姿は、子犬というか子猫みたい。
「あはは、ごめんね宮。るいはちょっと人見知りなんだ。しばらくしたら慣れると思うから、気長に待ってあげてね」
「いいえ、お気になさらず。こちらこそ、末永くお付き合い頂ければ幸いでございます」
あいかわらずの柔和な笑みで、宮はるいに丁寧に頭を下げる。るいも気が楽になったようで、少しホッとした顔になった。
「ええと、次は……」
こんな感じでぎこちないながらも、自己紹介は進んでいく。伊代は呪いの制限が厳しいので、不自然にならない程度に僕が簡単な紹介をした。伊代本人も性格上もっといろいろ言いたそうだったが、こればっかりは仕方がない。
ちなみに今屋上に集まっている『ピンク・ポッチーズ』は、なんとフルメンバーの8人。恵はともかく、メールでの口ぶりだと央輝は来てくれないような気がしていたのに、ビックリだ。明らかにめんどくさそーな顔で隅っこの日陰から出てこないけど。律儀に来てくれるあたり、実はいいひとなのかも。
宮和は自己紹介の間は徹頭徹尾、いつもの笑顔を崩さなかった。むしろいつもより楽しそうだったような気もする。それ自体はとてもよろしいのですけど、花鶏の
「わたしは智のセックスフレンドよ」
「違うよ! 全力疾走で間違ってるよ!?」
という紹介と僕のツッコミにも眉一つ動かさなかった。
大丈夫だよね? 誤解してないよね?
「へぇ〜、さすが智センパイ、やっぱり学校でも大人気なんですね〜」
自己紹介が終わるやいなや、すでにこよりは世間話に入っている。このへんの気安さはさすがのこよりクオリティー。こよりの後ろに隠れるようにして話しかけるチャンスをうかがっているるいと見比べると、いつもとは正反対な感じで面白い。
「ええ、それはもう。和久津さまは学業、スポーツの優秀さに加えて、容姿や立ち振舞い、性格までも非の打ちどころのない素晴らしいお方です。学園の中で名前を知らない生徒は居ないのではないでしょうか」
「私の智だもの、当然ね。南総の学生は見る目があるわ」
花鶏は自分のことのように胸を張る。そこまで褒められると照れる……って、今日2回目じゃないかこの流れ。
僕としてはあまり学園での様子に言及してほしくないんだけど――
「今朝方も、和久津さまに彼氏がいると聞いた教室の反応といったら……」
『智(センパイ)に彼氏!!!!???』
ハモった。もののみごとに。
またですか。また引き金を引くんですか宮さん。
「ちょ! ちょっと宮……」
「ちょっと待ちなさい! 聞き捨てならないわね、智に彼氏ですって!?」
「なんと〜!? この腹黒ボク女に知らないうちに春が訪れていたとは……これはツチノコ発見並みの大ニュース! メーデー、メ〜〜デ〜〜」
「ゆるさ〜ん! トモは私のヨメだぞ!」
止める間もなく騒ぎ出す、僕の愉快な仲間たち。完全にリプレイだよねこれ。
「本当なの? この子、ついこの間まで彼氏なんていないって言ってたわよ?」
「伊代センパイ、これはきっとあれですよ、クリスマスの魔力なのです! お姉ちゃんが言ってました! ロマンチックですねぇ〜、ちょっと複雑な気もしますけど……」
「冗談じゃないわ! 智のバージンは私が頂くと10年前から決まっているのよ。そんなどこの馬の骨とも知れぬ男ごときに、横からかっさらわれてたまるもんですかってぇの!」
「智はこちらでも大人気だね」
「えーそーですね、うれしーですね」
茶化すように言う恵に半分やけくそで答える。もうどうにでもなれー。
さすがに一日に2回もやられると弁解する元気もないや。
「みなさん、ご安心下さい。実際は事実無根の妄言でしたので、和久津さまに彼氏はおりません。和久津さまは皆の和久津さまのままですよ」
いやいや、その妄言を皆の前で披露したのはあなたですから。
「なんだー、そうなのかー。ふっ、命拾いしたな、まだ見ぬ南総学園の男子諸君……」
「本当よ。まかり間違って智の(ピー:不適切な表現)が類人猿以下のオス猿に汚されでもしてたら、私はそいつをどんな手を使ってでも抹殺していたわ」
花鶏さんはそろそろいいかげんに自重してくださいませんかねえ!
「衛兵、衛兵〜! ここに犯罪者予備軍がおるぞよ! 第一種警戒態勢に移行せよー!」
「にゃ〜! にゃ〜!」
茜子の手下(猫)達まで騒ぎ始めて、収拾がつかなくなってきた。
気付けばなんだかいつもの光景だ。
「バカどもが……」
そう央輝が毒づくのさえも。いつのまにか、日常の風景になりつつある。
恵と央輝が仲間になったように、宮を含めた9人も、僕らの日常になっていくのだろうか。
それは今の僕にはわからない。
「楽しい方々ですね」
いつのまに移動したのか、宮が僕の隣にいる。日はすでに傾き始めて、宮の嬉しそうな横顔を淡いオレンジ色に染めている。
「楽しすぎてうるさいぐらいだけどね。どう? 仲良くなれそう?」
「ええ、もちろんです」
「そう、それは良かった」
宮が本心から言ってくれているのはわかる。それがわかるぐらいの時間は一緒に過ごしてきたから。今はとにかくそれが嬉しい。呪いの有無というハードルは常に存在するけど、宮なら、いつかそれさえ受け入れてくれるんじゃないかと、何となくそう思う。
ひとまず今日の対面式は成功なんじゃないだろうか。
「はっ、何か百合の気配を感じる! そこ! 2人で妙な雰囲気を作るの禁止!」
「え!? まさかとは思ったけど、あなたたちそういう関係だったの? 最初から妙に仲が良すぎるのは感じてたけど……」
「なぁにぃ〜!? 百合だとぅ!?」
「ひゃっほう! 今夜は百合百合フィーバーだぜー! ポロリもあるでよー」
そしてやっぱりいつもどおり締まらなかった。
★★ ちょっとだけあとがき ★★
はじめまして、largestです。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
まずは心より御礼申し上げます。
さて、るいは智を呼ぶ二次創作として執筆いたしました今作ですが、
正直感想はいかがなものでありましょうか。
書いていて思ったんですけど、こんだけ大人数出てくるとセリフまわしがしんどい。
しかも呪いのせいで発言に制限があるし。
原作ライターさんすげー、マジすげーよ畜生と感心することしきりでした。
特に茜子さんのイミフトークが難しい。
あんなカオスなしゃべりよく思いつくなほんと。
何とか似せて書いたつもりですが、劣化コピーにしかなってないような……
登場キャラ数といえば、タグ。
今回、タイトルと登場キャラだけで全部埋まったんですけど。
今後どうすればいいんだか。何人か抜粋するしかないのだろうか。
今回こよりちゃんが口にしている彩星堂なる洋菓子店ですが、
あれは完全にオリジナルです。ありそうでない名前をひねり出しました。
ちなみに第5案が採用。
適当に考えたはずの1〜4案がググってみたら既に存在するって
どういうことなの……
第5案にもニアピン賞あり。
おそるべし○○堂。
同じくこよりちゃんが口にしている座右の銘は盛大に間違ってます。
元はことわざです。
本来のことわざならこよりちゃんにはぴったりなんですけどね。
なにやらグチばかりになってしまった感がありますが、今回はこの辺で。
最後にもう一度、読んで下さってありがとうございました。
すばらしい原作ライターさんにも感謝いたします。
よいお話をありがとうございます。
2010.12.13 largest
説明 | ||
連続投稿3作目です。 3作品投稿で見習い脱出とのことなので、3作そろってから一気に投稿させていただきました。 今回は宮和さんを仲間に紹介しようのコーナー。 FDにもそういったシーンがあるので、意図的に少し形を変えています。 次回はきっと央輝さんをパーティーに引き込もう、という話になると思います。 駆け出しの新米物書きの端くれ(長い)ではありますが、精魂こめて書きますので、よろしくお願いいたします。 感想など頂けると嬉しいです。 |
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