俺の妹の友達がこんなに可愛いわけがない(3) |
―あやせの人生相談―
第3話
俺は、あやせと二人で、自分の家に帰っていた。
あやせはギュっと俺の腕にしがみついている。うーんこれは幸せかもしれん。
「ちょっと、言っておきますけど、これは、仕方なくやってるんですからね!」
「ニヤニヤして気持ち悪い!」
そう言いつつも顔は真っ赤である。
俺も同じだが・・・。
「おまえねぇ、嫌がってると怪しまれるからもっとラブラブしてるみたいにしろよ」
「わ、わかってます」
あやせの家に行ったあと、どうなったかというと、
けして問題が解決して、俺とあやせが恋人同士になったわけではない。
そうなったのならどれだけ幸せなことか、状況は一向に好転してはくれなかった。
とりあえず、PTAの会長であるあやせの母と鉢合わせになるのだけは避けようと、
家を出ることになったのだ、そして、その状況をどうにかするために相談した相手
というと、ズバリ俺の毛嫌いしている妹、高坂桐乃である。
俺がそれを相談すると、多分兄妹の縁を切られかねないので、ここはあやせから話てもらった。
まぁってわけで、他力本願というか、結局なんにもしていない俺であった。
「うん・・そう・・・ありがとう!桐乃・・うん・・・うん・・・じゃぁすぐ行くね」
電話を切るあやせ
「どうだった?」
「今日はウチに泊めてくれるって。」
「そうか。それじゃぁ行くか、もうお腹ぺこぺこだ」
そして俺達は高坂家へ行くことになった。母親には電話で
友達の家に行くと言って了承してくれたらしい。桐乃も
親友のあやせのことだから、なんとか言い訳するのも上手くいったみたいだ。
手錠のことは俺の親父に助けを求めれば、なんとかなるかもしれないしな・・・その前に殴られそうだが(-_-;)
2人は当然手錠でつながれているので、どこに
行くにも一緒ってなるわけだが、手錠しているのを外の人に見られると変な誤解を
受けるかもしれない。だったら、いっそ恋人のフリをして手錠を隠して外を歩けば
変な誤解はされないだろうってことだ。俺達は、手錠が人の目に見えないように
隠すために、腕を組み、まるでラブラブカップルのようなみてくれを装った。
途中すれ違う男性からは、非常に嫌な顔をされるな・・・まぁそりゃぁこれだけ可愛い
モデルの恋人がいれば羨ましいだろう。
俺は優越感にちょっとだけひったていた。
こんな時間がずっと続けばいいのに、そんなことを思っていたおれはその数秒後、後悔することになる。
「お?あやせじゃんこんな時間に何やってんの?」
「か、加奈子!?」
俺達は加奈子にばったり出くわした。いきなり知り合いに見つかってしまった。
「あっれ〜?もしかしてデート?あらあらあやせって意外と遊んでんだね?クククッ」
う・・まずいな・・・俺はなるだけ顔を見られないように
そっぽを向いた。コイツにはいろいろ面識があるんだが、この前桐乃と二人で歩いていたのも
見られてるんだよなぁ。
「その人彼氏?」
「ち、違うわよ何言ってんの?」
「いや、そんな腕に抱きついて言われても説得力ないんだけど」
「・・・・・・・・・・」
まったくその通りだ。どっからどう見ても今の俺達は恋人同士、いや、バカップルだった。
「ふーんなるほどねぇ〜」
ニヤニヤしながら遊び道具を見つけた子供のように妙な笑顔を浮かべていた。
「じゃぁ貸しひとつってことでいいかな?」
「クッ・・・しかたないわね」
この2人の間で悪魔の契約が結ばれたみたいだ。おーこわっ。
「あ、あんたもう夜遅いんだから、早く帰りなさいよね!」
「わーったよ、もう帰るわ、じゃーねー」
そう言って加奈子と別れてた。なんだかんだ言って心配はしているようである。
そして、やっと我が家に到着したのであった。
「ただいまー」
「お、お邪魔しまーす」
家に帰ると、桐乃が仁王立ちで立っていた。
ものすごい形相でこちらを睨んでいる。この顔を何かに例えるとすれば・・・そう「般若」である。
「(お、おいあやせ!ちゃんと説明したんだろうな?なんかめっちゃ怒ってるぞ!!)」
「(しましたよ、お兄さんこそなんか変なことでもしたんじゃないですか?)」
うーんまったく覚えがない。こいつは急に怒り出すからな。何考えてるか全然わからん。
・・・・とりあえず怒ってることだけは確かだ。
「ふん、ケッ上がれば〜?」
ここは俺の家だぞ。
上がったとたん、あやせは桐乃に抱きついた
「きりの〜〜〜〜!!」
ガバッ
「うわっどうしたの!?」
「あ、あのね、聞いて!!このお兄さん私と2人っきりになってるのをいいことに、
性的虐待を強要してくるの!!」
「「な、ななななにぃ〜〜〜!!」」
俺と桐乃声がハモった
ギロりと俺をにらむ桐乃
「あ、あんた!とうとう私に嫌気がさして犯罪行為に走ったのね!!」
「バッ!ちげーよ!!」
とりあえず、簡単に事情は説明したが、一向に桐乃の機嫌は治らなかった。
くっ・・・仕方ない、機嫌の悪い桐乃はほっといて、とりあえず、状況を確認したい。
「それで、親父やおふくろは帰ってるのか?」
「はぁ?・・そんなの自分で確かめればぁ・・?」
「・・・・・・」
機嫌悪っ!!
家の中からは親父やおふくろの話声が聞こえた。
とりあえずいるみたいだが・・・ちゃんと説明はしたんだろうな?
もし事前に説明がなく、この状況をあの2人に見られたらどんな誤解をうけるか・・・
リビングに入り、親父とおふくろに一瞬変な顔をされたが、とりあえず説明はしていてくれたらしい
「こんばんは、お邪魔してます」
「ああ、こんばんは、いつも桐乃がお世話になってる」
「ふぅー」ったくなんでいちいちビクビクしなきゃならないんだよ(-_-;)
まぁ説明してくれただけ、ほっとしたよ。
なんだかんだ言って頼りになるやつなのだ俺の妹は。俺の扱いがちょ〜〜っとばかし悪いだけで。
「あのさぁ親父、これなんだけど・・・・」
俺達は、親父に今一番問題のものを見せる。
ガチャリ
「ふむ」
まじまじと見ている。・・・ゴクリ・・自分の生唾を飲む音が聞こえた。なんだか凄くドキドキする・・・やっぱり本物なんだろうか?
本物だとしたら、最悪警察ざたなんてことにならないだろうな・・・。
俺は緊張しつつもぶっちょう面の親父の答えを待った。
その考えてる様子は、重々しく、自分がまるで取り調べを受けている犯罪者のようだった。
「本物みたいだな」
「ええ!?マジかよ!!」
「いや、まぁ正確には警察が一般的に持ってるような物とは違う
ただ、似ているがこれはどこか個人で作られた物だろう。材質は似てるが。そういう意味で本物って事だ。」
「そ、そうか、なんだまさか言えないような出どころだったらと思っていろんな想像しちまったぜ」
「はい、実はネット通販で取り寄せたものなんです」
ぐ・・・それならそうと最初から言えよ!変な誤解しちまったじゃねーか、っていうか
なんでも手に入るネットって怖え〜〜
「で?これ今すぐ外したいんだけど、」
「そうだな、明日知り合いの自転車屋に行って外せそうな器具を借りてくるからそれで問題なく外せるだろう」
「ほんとですか!」
「マジか!」
2人手を叩いて喜んだ。さすが親父!頼りになるぜ!
そう思ったが、ひとつ重要なことに気づいてしまった。
”明日”だって!?
「今日は??今日はこのままってことか!?」
「まぁ仕方ないだろう、今日は自転車屋も休みでやっていないし、旅行に行くと言っていたので
連絡してもつながらないだろう。明日になれば帰って来ると言っていた」
「そうですか・・・」
あやせが残念そうにしていると
「すまなかったな、ウチの息子がバカなことをして」
そう言って頭を下げた
う・・なんだかほんとに俺が一番悪いみたいだ。
「いえいえ!いいんです!元々私が持っていた物だし、わざとこうなったわけではないので、
京介さんのせいじゃありません!」
なにこの差。ねぇひどくない?なんで俺だけこんな扱いを受けなきゃいけないわけ!?
・・・・・・・・・・・・・
はぁ・・・見ていていたたまれなくなってきた
今回は俺のせいじゃないんだが、いろいろコイツには悪いことしたと思う
「俺からも悪かったな。こんな嫌な男と繋がってるなんて、さぞ嫌だっただろう」
俺も、頭を下げて謝った。
そりゃおれが全部悪かったなんて思わないけどさ、こいつが受けた苦しみに比べれば、不幸以外の
何者でもないわけで、もう二度と口聞いてもらえないだろうが、たとえ理不尽な状況でも
謝らなければいけないだろう。
「京介さん・・・」
その時俺はもうどうとでもなれという気分だった。
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その後、食事を終え、リビングでテレビを見ていた。あやせの隣りにいる桐乃は相変わらず機嫌が悪い。
そこで風呂に入ることになるわけだが。
ひとつこの先を予想してみよう。この後俺があやせに風呂に入ろうと提案するとしてだ。
■■■■■■■■■■■
「無理です」
風呂に入っていいと言われた所で、あやせがそうつぶやいた。まぁそらそうだわな
「じゃぁ、今日は風呂入らないってことでいいか?」
「そ、それも嫌です。だ、だって今日いっぱい汗かいたし、これから京介さんと一緒に一夜を共にするわけですから」
「じゃぁどうするんだよ・・・別に俺は汗の匂いなんて気にしねーよ?」
「私がするんです!!」
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「はぁ・・・じゃぁ目隠しでもなんでもしてくれよ」
・・・・・・・・・
「京介さん?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと、京介さんってば!」
あやせは俺の腕を揺さぶり聞いて来るが、おれは何のリアクションも出来なかった。
どこからだろう、俺はひどく落ち込んでいた、あやせに嫌いだと言われた時だろうか?桐乃の機嫌が悪いから?
それとも親父に頭を下げられた時だろうか?はっ笑っちまうぜ・・・まるで、ガキの頃に戻ったみたいだ。
なんて俺は情けないんだろう。胸糞悪い・・・クソッ・・・・クソ・・・・!!
あやせに嫌われて・・・良い所を見せようとしても、何にも出来てないじゃないか・・・
結局・・俺は何一つ出来もしない、なんて無力なんだ・・・こりゃ妹に嫌われるわけだな・・・
悔しくて泣けて来るぜ・・・。
「もう・・・さっきから暗い顔して・・・そんな顔されたら、見てるこっちが辛くなるじゃないですか」
表情をうかがうように、訪ねて来たあやせには気づかない状態になっていた。
チャリチャリ・・
鉄の鎖が揺れる音がした。繋がれた手をぼーっと眺める。
今俺が出来ることってなんだろうな・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
俺は、左手の手錠の部分を持って一度深い深呼吸をして――――
そして―――
このとき俺は、どうしてこんな行動をとったんだろう・・・これでことが収まるのなら
安いもんだ・・・なんて思っていたんだろうか。
自分じゃ思いもよらないぐらい根っこの部分では追い詰められていたのかもしれない
左手を無理矢理に引き抜こうとした。
ギチギチ!!
「ちょ!ちょっとお兄さん!?何やってるんですか?」
「黙ってろ、ちょっと無理矢理とるから」
「なっ!そんな無理矢理だなんて!これ、本物と変わらない強度なんですよ!?そんなひっぱったぐらいじゃ」
「ぐあっ!!」
俺が異常な行動をとってることの異変に気づいた桐乃が寄ってきた
「あ、あんた何やってんの!?」
「は、何かって?無理矢理引き抜こうとしてるのが見て分らないのか?」
「ちょっと!そんなことしたら肉が削げるわよ!?」
桐乃は流石にびっくりしたのか、神妙な表情でうったえる
「なに、肉がそげて骨がちょっと折れるぐらいなんてことない。幸い利き手じゃない方だし、
なんとかなるだろ!」
昔漫画でこういうシーンを見たことがある。案外なんとかなるんじゃないだろうか?
そう自分に言い聞かせながら力を込めた。
やっぱ痛ってええええええええええええええええええええええええええええええええーっ!!!!!
ミシミシと皮が削げる音がする。
「ぐああああああああああああああああああああああああーっ!!!」
手首の付け根から、一筋の血の雫が手の甲を伝って流れ落ちた
「あ、あ、あ、あんたなにバカな事やってんの!?」
「俺だってなぁ・・馬鹿で、情けなくて、役立たずな兄貴かもしれないけどなぁ!!
これぐらいのことは出来るんだよ!!」
桐乃とあやせは目を見開いて氷ついたような表情を見せ、その次の瞬間ハッと我に帰る
そして、俺が今何をしようとしていたのか、
その狂言と行動を2人は本当の意味で理解した
「馬鹿兄貴!!!」
「ぐはっ!!」
ドンガラガッシャーン!!
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・。」
「いててて・・・」
なんだ?何が起こった!?頭がくらくらする。目を開けると、天井が見えた。
どうやら、床にに寝転がってるみたいだ、そして胸のあたりに重みを感じる。
「いててて・・・桐乃・・お前何やって」
顔を下に向けると、そこには桐乃が俺の胸の上で馬乗りになってのしかかっていた。
表情を見てギョッとした。涙目で袖口を掴んでいたのだ。
「あ、あんたねぇ・・・バッカじゃないの?・・・やっていいことと悪いことの区別ぐらい・・・つけなさいよっ」
「そんなことして・・・あやせや私が喜ぶとでも思ってんの!?」
カナキリ声だった。イテテ・・・左手には痛みと、なぜか柔らかい感触があった
見るとそこには、大事なものを抱きしめるように左腕を胸に抱きかかえているあやせの姿があった。
顔は前髪に隠れていて表情は伺えない。
「どうしたお前ら・・・何をそんなに慌ててるんだ。」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ぐスッ・・・ひっく・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい」
声が震えていた顔を見なくても泣いてるとわかった。
「いやぁ・・こうすればあやせに嫌われなくてすむかな〜なんて思ってな・・・あはは・・」
2人の泣き顔を見て俺は、我に帰った。俺は・・なんてことしちまったんだ・・・。
「お兄さん!」
「は、はいなんでしょう!?」
あやせが急に大きい声を出したのでビクッとした
「今度こんなことしたら、絶交ですからねっ!」
目は涙でいっぱいに溜まっていた表情からポロポロと雫が飛んでこぼれた。あやせは必死の表情で俺を見据えていた。
「・・・・・・わかった・・・ごめん・・・俺、どうかしてた」
「ひっく・・・ひっく・・・」
桐乃が重かったので、どかして起き上がり、桐乃の頭を撫でた。
そして、あやせの胸にひっついている左手も離そうとしたが、なかなか離してくれない。
はたからみれば俺があやせの胸を無理やり触ってるようにしか見えんぞ。
「ふぅ・・・」
俺は勘違いをしていたのかもしれない。みんな俺が嫌いだと。兄貴なんて、いないほうがいいって
思ってるんじゃないかと勝手に思っていた―――――だが、どうやら俺の被害妄想だったらしい。
この2人のリアクションを見て、思い知らされた。俺が傷つくことにこんなにも必死になって
止めてくれるなんて・・・少なくともただ嫌いなだけではこんな行動には移ったりしない。
それは間違いない。そう思えて、心の枷がとれた気がした。
左手を見ると血こそ流れているが、皮がすこし剥けたぐらいで、どうやら軽傷で済んだようだ、痛みは
あるが、それほどでもない。まぁこいつらが止めなくても、自分一人の腕力で、骨や肉を引きちぎるなんて
最初から出来なかったのかもしれない。
「ぐスッ・・ひっく・・・うぅ・・・」
つーか・・・「うわ・・・やべ・・泣かせちまった・・・」こんなところ、親に見られたら・・
ガチャリ
「お風呂空いたわよー?ってあんた何泣かせてんの!!!?」
遅かったか・・・・
その後、俺はこっぴどく叱られ、右頬に青痣を作り、小一時間説得なのか説教
なのか分からんような言い合いがあってやっと開放された。
ちなみに親父はその間風呂に入っていた。親父・・・まぁこの状況でさらに怒られなかっただけマシか。
「つかれた・・・・」
2人共いい加減泣きやんだみたいだが、どうしようかね・・俺としては一刻も早く寝ちまいたいんだが・・・
「おい、そろそろ寝るぞ」
「はぁ?あんた何言ってんの?」
「いや、他に何するってんだよ」
「そんなの決まってるでしょ?」
「風呂よ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
忘れてた・・・そういえばそんなイベントもあったな
【つづく】
説明 | ||
実は黒猫好きです。あやせも好きだけど・・・原作にあやせあんま出てこないんで、作ってみました。 今週中には最終話上げます。多分。 | ||
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手錠から無理やり抜くんじゃなくて台所にあるアレで手首から落とせばいいのに(VVV計画の被験者) | ||
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