真説・恋姫演義 〜北朝伝〜 幕間・その参 『武に酔いて、酒に酔いて、愛に酔う』 |
「おおおっっっ!!」
紅い光を纏った巨大な斧が、彼にめがけて猛烈な勢いで振り下ろされる。
「……ぬるいですよ」
「!?」
する、と。その剛撃を紙一重で交わし、相手の背後へと、彼は瞬時に回りこむ。
「チッ!」
グンッ!と。殴りつけるべき相手ではなく、地をえぐったその斧の柄を、まるで棒高飛びの棒のようにして、百八十度体を回転させながら宙を舞い、相手と再び距離をとる。
「……中々。流石ですね、蒔さん」
それを見た一刀が、そのとっさの機転と動きに感心し、素直な感想を漏らす。
「ふふ。そういつもいつも、遅れをとってばかりいられないからな。……”手加減”されているとあれば、なおさら、な」
その大斧を構え直し、微笑を一刀に返す徐晃。
?の城の練武場にて、一刀と徐晃はかれこれ半刻ほど、模擬試合を行っていた。両者ともに、練習用の棍ではなく、実際の獲物を使っての、実戦形式で。
とはいえ、全力を出している徐晃とは違い、一刀のほうは実力の半分も出してはいない。それでは失礼じゃないかな、と。始め一刀は徐晃にそう言ったのであるが、
「……お前に全力でこられたら、修行になんかなりやしないっての」
と、少々悔しいがな、といいつつ、徐晃がそれを拒んだのである。
「……しかし、正直もう、あたしのほうは限界が近い。……次の一合で、最後といこうか」
「いいですよ」
朱雀と玄武を両手に構え、それらに自身の気を込め始める。主人の気を込められた朱雀と玄武が、まるでそれに応えるかのように、蒼く輝き始める。
「……いつもながら、綺麗な気だな、一刀の気は。……惚れ惚れするよ」
「そいつはどうも」
軽口をたたきながらも、互いに打ち込むタイミングを計る両者。
『…………』
そこに、一枚の枯葉が、二人の間を舞った。
『!!』
それを合図に、二人が同時に、地を蹴る。
「おおおっっっ!!」
「はああっっっ!!」
一閃――――――そして。
地に臥し、天を仰いだのは、徐晃であった。
「……はあ〜。やっぱり負けたか。あたしもまだまだ、修行が足りないな」
天を仰いだまま、爽快な表情で、ははは、と笑う。
「正直なところ、蒔さんに後足りてないのは、やっぱりスタミナ……いや、持久力、でしょうね。……野菜って、普段からちゃんと摂っていますか?」
と、タオルで汗をぬぐいつつ、徐晃にそう尋ねると、
「野菜だあ?んなもんより、肉食っていたほうが、よっぽど体力つくだろう?」
まじめな顔で、不思議そうに聞き返す徐晃。
「肉も確かに、大切なエネルギー源ですけど、それ以上に野菜は大事ですよ。……よかったら、おれが野菜たっぷりのスタミナ料理、作ってあげましょうか?」
「……料理なんて、出来るのか?」
「向こうに居た頃は、寮で一人暮らしでしたしね。最低限のことは出来ますよ」
「へ〜え。それじゃ、その”すたみな料理”とやら、ご馳走になろうじゃないか」
立ち上がりつつ、一刀にそう言い、歩き出す。
「ちょ、どこ行くんです?」
「どこって、メシ、作ってくれるんじゃないのか?」
「……今すぐは無理ですって。材料の買出しもしないとだし、仕事だって残ってますから。蒔さんだって、この後は警邏の仕事があるでしょう?」
「……あ」
一刀に仕事のことを言われるまで、完全に忘れていたという感じの徐晃。
「あ。じゃないですって。料理は……そですね、夜にでも作って、蒔さんの部屋に持って行きますから。まずは仕事、がんばってくださいね」
「しょーがないか。うし!それを楽しみに、気合入れて行ってくっか!」
そんな約束をしたこと。
それが、一刀にとっての、とんでもない一夜になるとは、この時は夢想だに、していなかったのである。
「いやあ〜。食った食った。まさかこんなに旨いとはな。いや、畏れ入った!はっはっは!」
「お褒めに預かり、光栄です」
あはは、と。
笑顔を交わす、一刀と徐晃。ただし、一刀の方は少々、引きつり気味の、ではあったが。
昼間の約束どおり、一刀は考え付く限りの、野菜たっぷり料理を作り、徐晃の部屋を訪れた。だが、勢いに任せて作ったため、その量はおよそ十人前ほどの、超デカ盛りになってしまった。
いくらなんでも作りすぎたなと。そんな心配をした一刀であったが、それは要らぬ心配に終わった。……徐晃は、”一人で”、それを全て、平らげたのである。
(どんな胃袋してんだ、この人は?……どこぞの大食い芸人じゃあるまいし)
と、半分あきれている一刀。現在は、食後の酒を、二人でゆっくりと酌み交わしている。
そして、いくらか酔いも回ってきたころ、徐晃が突然、こんなことを聞いてきた。
「……それで、一刀?……お前、輝里”にも”手を出してるのか?」
「ぶっ!げほっ、げほっ!……な、何を突然……!?」
「別に隠さんでもいいさ。怒っているわけでもないしな。……あたしが聞きたいのは、だ。……一刀、お前……”胸が無いほう”が、好きなのか?」
ズイ、と。
一刀の顔に自身の顔を近づけ、そんなことを、真剣な表情で問いかける。……少々赤みを帯びた、色気のある顔で。
「別にそういうわけじゃ」
「じゃあ、何であたしには手を出さん?」
「いえ、だから、何でって言われても……。蒔さん、酔ってるでしょ?」
「酔ってちゃ悪いか?酒を飲んでるんだから、酔うのは当たり前だ。で?胸の大きさは別に関係ない。……そうなんだな?」
「……はい」
迫力に押され、思わずうなづく。
「ならばよし!……じゃ、”脱げ”」
「は?」
「恥ずかしけりゃ、あたしが脱がしてやる!おら!おとなしくしろ!」
「ちょ!ま、待って!ひええっっ!!」
ぽいぽいと。あっという間に一刀をひん剥き、ついでに自身も、着ている物を次々と脱ぎ、あっという間に下着姿にまでなってしまう。……というより、上は”何も”着けていないので、ほぼ全裸に近いが。
「(で、でかい……)……ゴク」
徐晃に”押し倒されたまま”、その、二つの”たわわな実り”に、思わずつばを飲み、みとれる。
「どうだ?輝里や由と違って、中々のもんだろ?……ちょっとばかり、硬いかもしれんがな」
ふ、と。一瞬とはいえ、少々悲しげな色を、その顔に浮かべる。もちろん、それを見逃す一刀ではなく、
「……コンプレックス・いえ、なにか劣等感みたいなものでも、あるんですか?……とても綺麗な体なのに」
「綺麗、か。生まれて初めて言われたな、そんな台詞。あたしに向けられるのは、いつも大体相場が決まってるからね。……大女、とか。男勝り、とか。色気が無い、とかね」
一刀を押し倒した状態のまま、徐晃がそんなことを言いつつ、自嘲気味に笑う。
「蒔さん……」
「だからさ、酒でも飲まなきゃ、こんなこと出来やしないんだ。……惚れた男に、言い寄るなんてこと、な」
徐晃のそんな、憂いを帯びた表情を見ているうちに、気がつけば一刀は、上体を思い切り起こし、彼女をしっかりと抱きしめていた。
「かず、と?」
「……大丈夫。普段の蒔さんも、”今”の蒔さんも、十分魅力的な女性ですよ。……とっても、可愛いです」
「……馬鹿たれ」
そのまま、その場に倒れこむ二人。その瞬間、部屋の明かりを、隙間風が全て消し去る。暫くした後、暗闇の中に徐晃の妖艶な声が、聞こえ始めるのであった。
それから一刻ほどして。
”こと”が済み、二人で寝台に横たわり、その”余韻”に浸っていた、その時であった。
「蒔ねえさん、一刀さん来ていませんか?」
「明日の朝議のことで、話があんねや……ねん、け……ど……」
『あ』
突然、徐庶と姜維が、徐晃の部屋を訪れた。そこには、素っ裸で、寝台の上で抱き合う、男と女の姿。……どういうことなのか、察しない人間は、まず居ないであろう。
『……〜っの、節操なしいぃぃっっ!!』
「あっーーーー!!」
と。
いつものパターンで、一刀が二人にオシオキされる。
とは、ならなかった。
「ちょっと待て、二人とも」
『ふえ?』
徐庶は一刀の髪を、姜維はその足をつかんだ状態のまま、徐晃の制止の声に、ピタリとその動きを止める。
「そうやって、お前たちが嫉妬するのはよく解るけどな。だからといって、そういつもいつも、一刀ばかり責めなくてもいいだろ?」
「せ、せやけどねえさん」
「じゃ、どうしろって言うんですか?」
「……ここに居る全員、揃って一刀に惚れている。それは間違いないな?」
「……うん(せや)」
「で、一刀も、ここに居る三人を、それぞれに好いてくれている。……そうだな?」
「……うん」
「一刀さん……///」「カズ……///」
きっぱりと。徐晃の問いに、真剣な目で答える一刀。それを聞き、顔を赤らめる、徐庶と姜維の二人。
「だからな、今後はちゃんと、平等に、全員を、均等に、愛してもらうことにすればいい。……さしあたって、今夜はこのまま全員に”等しく”、してもらおうじゃないか」
『……って。ええっ?!』
本人としては画期的な、周りとしてはとんでもないその提案を、満面の笑みで口にした徐晃。
「……あの、等しく”する”って、何を”する”んでしょうか?」
おそるおそる。分かりきっている問いを、一刀がする。
「そんなもん。ついさっき”した事”に決まってるだろ?お前たちはどうする?見られるのがいやだって言うんなら、あとから別々に、してもらったっていいしな」
「……ど、どーする?輝里?」
「どーするって……。そりゃ、一刀さんに、ちゃんと愛してもらえるんなら、その……」
「なら決まりだな!一刀。これからは頑張って全員を、平等に、愛するように、な?」
「……あの、俺の意見は……?」
『全部却下(や)』
「ですよねー……」
そんな決まりごとが決まった、ある日の夜のことでありました。
「……幸せ、なんだよな、俺……?」
……幸せに決まってるだろうが(怒
〜了〜
あー、やってらんね。・・・さくしゃでーす。ども。
「なに初っ端からやさぐれんてのよ?どもー。輝里でーす」
「自分で話し書いといて、何を焼餅やいとん。おっす、由やで〜」
自分で書いてたからこそだけどさー。ギャルゲの主人公って、どうしてこう・・・・。
「それは言わないお約束」
「そーゆーこっちゃ」
わかってます。・・・じゃ、気を取り直して、今回のお話。
「結局、蒔ねえさんもお仲間入りしちゃいましたね」
「第三夫人あたりかな?ま、正妻はウチやけど♪」
「何言ってんの!一刀さんの正妻はあたしです!洗濯板はひっこんでなさい!・・・あ、もう引っ込んでるかww」
「・・・殺る気ぃか?」
「殺らいでか♪」
・・・・えーと。
とりあえず、痴話げんか?っは向こうで勝手にやってて貰うとして、次回から再び、本編に戻ります。
おーい。次回予告だけしてからしろよー。
「それでは次回、真説・恋姫演義 北朝伝!」
「第二章・序幕、『陰謀胎動』や!」
ということで、今回はこれにて。コメント等、ご意見ご感想、お待ちしてます。
ほら挨拶!それでは皆様、
『再見〜!!』
「死なーす!!」
「こっちの台詞ー!」
・・・・・・・・はあ。
説明 | ||
拠点のその参。今回は蒔さん編です。 修行中の蒔さんと一刀。 そしてその後の・・・。 それでは、どうぞ。 P:s:3P、一部、文を追加しました。(12/17 20:40) |
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コメント | ||
東方武神さま、生き血を飲んでも追いつかなかったりしてwww(狭乃 狼) hokuhinさま、死にはしませんよ、一刀なんですからww(狭乃 狼) はりまえさま、そうですとも!希望こそ未来につながるのですよ!(狭乃 狼) mokiti1976−2010さま、サア、後何人になるでしょ?そのたびに一刀は干からびていくわけですがww(狭乃 狼) ・・・後で一刀にスッポンとか送っとこう・・・。(東方武神) ついに三人の共通財産&種馬の義務になりましたか一刀w人数増えたら死にますなw(hokuhin) sayさん・・・・・・ごめんなさい私が愚かでしたm(TT)m泣き言言わずに未来に希望持ちます!!(黄昏☆ハリマエ) まあ三人共一刀のものになるのはお約束ということで。あと何人ハーレム入りするのか?正妻の座は誰のものに?(mokiti1976-2010) 根黒宅さま、止まるわけないじゃないですかwwさて、犠牲者は誰でしょうねー。くすくす^^。(狭乃 狼) よーぜふさま、とりあえず、”蒔”さんの字、間違ってますよー。で、あの二人にナニを吹き込む気で?(狭乃 狼) ふむ、じゃあ次の犠牲者は三姉妹か、あの袁紹軍の二人かな?種馬が三人で止まると思わないんだけどw(根黒宅) はっはっはっ、ええ、どうせこうなるのはわかってましたよ、ええ。 まぁ薪さんも結ばれてよかったです。 さて、由サンと輝里サンにはこれからもことあるごとに・・・にやにやw(よーぜふ) 村主さま、そですね。どろどろはさすがにね・・・wwwさて、今後は嫉妬の女神が三人になって、それでもやっぱり一刀は一刀なんでしょうけどね^^。(狭乃 狼) シンさま、外史の中の人間には手出しもできない・・・。漢女も今回はいないし。・・・チッ。(狭乃 狼) 砂のお城さま、・・・聞こえてくる音は×3なわけで。・・・ま大丈夫か、種馬だしww(狭乃 狼) Kabutoさま、搾り取られてカスだけになっちまえ、って感じですねww(狭乃 狼) メタな話になりますが・・・まあ「お約束」です罠w 中でも一刀は優遇というか、ここまでの流れで嫉妬はあっても修羅場は(程度の差はあれ)無いのが・・・ まあ恋姫でどっかのboatみたくドロドロの奪い合い・最低主人公っぷりを発揮されても困りものですがw(村主7) はりまえさま、そのモテナイ奴代表なんですけどね、書いてるのはww(狭乃 狼) 森羅さま、ホントデスヨネ・・・ッケ!(笑。(狭乃 狼) 一刀め、モテナイ男性全てを敵にしたな。自分たちの憎しみと恨みを教えることができたら……(シン) 蒔の姉さんきたあああ!!!幸せかだって?幸せ以外の何だっていうんだ!まあ、搾り取られるけどねwww(kabuto) モテナイやつが聞いたら全員殺意の波動に目覚めるぞ。このやろう殺意を具現化できたら・・・・・・・・・(黄昏☆ハリマエ) ・・・ッケ!!もげちまえ!!(笑)(森羅) 紫電さま、激怒する気持ち、よ〜っくわかりますwwさて、また更なる犠牲者が出てくるのか?四人はそうなったらどうするのか^^。今後にご期待くださいww(狭乃 狼) |
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