虚々・恋姫無双 虚参 |
「にゃ〜〜」
にゃー
「おお」
陳留の街、賑やかな曹魏の本拠地のある人通りがない曲がり角は、猫たちや良く日向ぼっこをするため集まるスポットがいた。
そこに、今日はなんとお客さんが訪れたのであった。
にゃー
「おお、機嫌を損ねてしまったのです。失敬、失敬」
が、のんびりと日向ぼっこをしたいお猫たちには、人間の少女なんて邪魔でしかならなかった。
「はてさて、こうしてどんな意味合いかも分からずにゃあにゃあと言い続けたところで、この子たちを陥落することは道遠いようですが。どうしましょうか」
なんだか猫と仲良ししたいような口ぶりをして、猫の鳴き声を真似してみるのだったが、人間が猫の言葉を知って言うわけではない。人間が適当ににゃーとか言ったところで猫がそれを良い意味に聞くか悪い意味に聞くか、それともただの意味のない鳴き声に聞くのかは、人間には分からないものだ。
「困りましたね……」
………
「……ぐー」
寝るな!
と、ツッコミをいれたところで聞こえるはずもないのでスルーしよう。
「……むむ?」
日に背を向けて立っていたはずなのに、突然眩しさを感じて少女は寝たふりをやめて前を見た。
そこには、先まではいなかった少年がキラキラする服を着て立っていた。
「……」
「おお、びっくりしたのです」
「??」
突然と現れた少年はふと少女を一度見て、その下で転がっている猫たちを見た。
「……」
……
猫も新しい人間が現れたことに気づき、少年を見た。
「……<<パチッ>>」
……
その中の猫一匹に向けてそろりと瞬きをする少年。
「……<<バチッ>>」
……
「……<<バチッ>>」
……<<ばちっ>>
「おお?」
しばらくしていたら、猫も少年に瞬いた。
「……」
何回かそう猫と瞬きを返し合っていた少年はそろりと猫に手を近づけようとした。
「あ、あ、ひっかかれるとすごく腫れて……」
少年はそっと猫の頭に手を載せても、猫はじっとしている。寧ろその手に甘えてきた。
「おお、素晴らしいのです」
少女は少年が直ぐに猫を懐かせたことに感嘆した。
「これ、<<バチッ>>猫の挨拶」
「おお、なるほど。そうですか、挨拶は人の触れ合いの基本ですし。それじゃあ風も……」
少年にそう言われて、自分を風と言った少女は他の猫に先少年がやったみたいに瞬きをして見せる。
「<<バチッ>>」
……
「早くしちゃ駄目。そろりと」
「こうでしょうかね<<バチン>>」
……<<バチッ>>
「おお、返されたのです」
「……もう触っても大丈夫」
「それじゃ……」
少女が恐る恐る指先を猫に近づけていたら、今度は猫の方からそっと少女の指に近づいてきて、その指の匂いを嗅ぐ。
「うぅぅ……くすぐったいのです」
「……<<にっこり>>」
それを見た少年はにっこりと笑って、自分は立ち上がった。
「おお、どこへ行くのですか?」
猫と遊んでいた少女が問い詰めたら、
「人が多いと猫たちが休めないから」
といって、少年はその場をさりました。
少年が消えたら、ふと少女は自分が猫たちがいるところに影を作っていることに気づきました。
「おお……これは気が聞きませんでした」
そう言って少女も立ち上がって、
「にゃぁぁあああ」
と猫の声を真似してさようならと言うつもりで鳴いてから少年に続いてその場をさりました。
その後ろから、「にゃああああ」という声が返されましたから、きっと少女の言いたい言葉はちゃんと通じただと思います。
がしっ
「??」
「一人で行ってしまうとは、猫たちに一人だけ迷惑者扱いされてしまったのです」
大通りに出た少年を追いついてきた少女は少年を掴まえてそう言った。
「……む?」
「??」
「……どこかで見たような顔ですが、こう、頭の隅っこにうすらと映るのが………あ、いえ、それは昨日食べた夕飯なのです」
脳内に人の顔についての記憶と昨日の夕飯のメニューが一緒においてあったようだ。
「…よく分からない。ボクは長い間ここに居なかったから、よく覚えていない」
「そうですか。むむむ……どこかで見たような顔なんですけどね。そのいつ誰にでも笑いそうな顔……とんでもない無節操者になりそうなのです」
「それちょっとひどくない!?( ゚д゚)」
さりげなくもなく酷いことをいう少女であった。
「まぁ、思い出せないことなんてそんな大事なことじゃないですよ」
「……うん、そうだろうね……」
少年は少し苦笑しながら周りを見回りました。
「賑やかなところだね。ここは」
「まぁ、魏の都ですからね。一応……珍しい服を着てますね」
「うん、これ?…来る時はこの服じゃなかったんだけど。良く分からない」
少年が着ている服は日の光に反射してすごくキラキラする服であった。
とても、普通の庶民や旅人が着そうな服じゃない。
「なんかこう、頭のどこかで引っかかって出てきませんけど、本当にどこかであったことないですか?」
「言ったでしょう?ボクはここに来るのは七年ぶりだよ。人の顔なんて覚えてない」
「七年前だと風もここにはいなかったのです」
「じゃあ、きっと見たことがないんだね」
そう言った少年は向こう側を見た。
「ボクの記憶が正しいと……あそこにすごくおいしいラーメン屋があったんだけど、七年もしているかは分からないけどね」
「おお?」
そう言った少年は少女の手を掴んで引っ張った。
「どこに連れていくんですかー?」
「昼頃だし、ラーメン食べに行こうと思って。一緒に食べない?」
「…風も一緒に食べるつもりなんですね?」
「違うの……そういうんじゃないの」
そんな冗談を言うのなら、そうしないことは分かって言ってるんだろう。
「あるじゃん。さすがだよ。あんな美味しいのになくなったはずがないけどね」
少年は本当に七年ぶりにこの世界に来たかのような懐かしい口ふりをして店に入った。
「おじさん、大盛りで……お姉ちゃんは何にする?」
「あぁ、風は………風がお姉ちゃんなのですか?」
「多分?」
背ではほぼ差がない二人であった。
「言葉使いがすごく大人っぽいし。きっと年上だなぁと思った」
「そうですか…まあ、それじゃあ風も同じものをお願いしましょう。普通盛で」
「おっさん普通一つと大盛り一つください!」
「あいよー!」
ラーメン屋のおじさんは達者な腕前でラーメンを作り始めた。
「ここのラーメン本当に久しぶり。楽しみだな」
「……」
少女はずっとこの少年が誰なのかを思い出すのに熱心のようだ。
「あ、自己紹介まだだったね。ボクは北郷一刀だよ」
「程cですよ……むむ?かずとというのも、なんだか変な名前なのに聞いた覚えがありますね」
「程cお姉ちゃんはあんなところで何していたの?今頃戦争の準備中じゃないの?」
「やはり、風のことを知っているですね」
「へい、お待ちー」
「あ、ラーメン出た」
話の途中、ラーメンが出てきたので一刀ちゃんの視線はそっちに向かった。
「……じゅるる……<<パァー☆>>」
その年になってもまだそんなエフェクトを出すようです。
「何?」
「何かあそこで光ってない?」
そして相変わらずの宣伝効果である。
「おじさん、あの子が食べてるのと同じヤツくれよ」
「店主、こっちも頼むよ」
「いきなり人が増えてきたな…こんなことは本当に久しぶりに……」
急に忙しくなってきたラーメン屋の店主は、ふと変な感覚に陥った。
昔、それほど昔ではないが、こんなことがあった。
「……坊や、もしかして……」
「お久しぶり、おじさん」
「………御使いのぼっちゃんか」
周囲が静まる。
「おお、思い出すたのです。北郷一刀、二年前天の御使いとして陳留に来て一年前の反董卓連合軍の時に洛陽で行方不明になった……」
「天の御使いだって?」
「御使いさまが帰ってきた!」
そして、直ぐに騒がしくなっていく。
「急に居なくなってごめんなさい、色々あったの」
「…一年もいなかったぞ。一体今までどこにいたんだ?」
「ちょっと里帰り」
一刀ちゃんは指で空を指しながらそう言った。
「皆ここにいたんだね」
そして周りを見回した。
そこで一刀ちゃんを丸く囲んでいる店の人たちがいた。
「皆待っていてくれた」
「当たり前じゃねぇか。ぼっちゃんが戦争について行って死んだという噂が広がってたからな。初めては街が死んだかのように静かだったんだぞ」
「大変たったんだね」
「それに、ぼっちゃん、今喋ってるじゃないか」
「いいでしょ?やっぱ自分の口で話せるって素晴らしいと思うの」
そこまで言った一刀ちゃんは座った場から立ち上がった。
「もっと皆と話したいけど、今はそれどころじゃないの。程cお姉ちゃん」
「…思い出したのです。あの時、風と稟がおいてまま行った、」
「うん、あの時の子供だよ」
「でも、先は七年前って言いましたね」
「『ボクには』七年だったよ。って……これぐらいの騒ぎだったら、そろそろ来てくれるかな」
「む?」
程cが頭を傾げた際に、あそこから街の騒ぎの報告を聞いて走ってくる、警備隊の人たちの姿がいた。
「これって一体何の騒ぎなの?」
「何か大食い大会とかでもやっとるんか?そんな報告は聞いてへんやけど」
こちらは警備隊小隊長の沙和こと于禁に、真桜こと李典。
二人が兵士たちの報告を聞いて現場に到着した際に、街には大きな集まりが出来ていて街の交通を大きく邪魔していた。
騒ぎがある、という報告だけを聞いて来た二人はまだ何故このようなことが起きたのか分からなかった。
「于禁さま、李典さま」
「どないしたん?」
「街の人たちが、『天の御使い』が帰って来たと騒ぎだして……」
「「!?」」
兵士の報告を聞いた二人は硬直した。
「天の御使いって……一刀ちゃんが」
「帰って……来た?」
見たい。
今直ぐ確認しなければならないと、二人は同時にそう感じた。
「真桜ちゃん」
「ああ!」
二人は騒ぎを鎮めることなく、そのまま騒ぎの中へと突っ込んだ。
「一刀ちゃん!」
「一刀ちゃん!!」
・・・
・・
・
その次の場所に行く時には、もう日が暮れ始めていた。
「……で?街の人たちを鎮静することはおろか、逆に騒ぎを大きくした際にそれを兵士たちにほったらかしにしてここに一刀ちゃんと風さまだけを連れてきたというのか?」
「あ、あれ?凪、なんでウチらって跪いてるの?」
「その理由が分からないのか!」
「ひゃうっ!!」
警備隊長、凪こと楽進が卓子にヒビが入るほど強く叩いて、正座していた沙和と真桜は肩をすくめた。
「あの、凪お姉ちゃん、何もそこまで怒らなくても…最初から騒ぎが起こるとわかってやってボクが悪いんだし」
「一刀は少し黙っていて……」
「はい」
そしてその更の横にはこの騒ぎの元凶である一刀ちゃんが何だか正座していた。
「……真桜は早く行って華琳さまたちにこのことを報告。沙和は街に行って皆を落ち着かせるように」
「……」
「行け<<ゴゴゴ>>」
「「はい!!」」
拳に気が集まる凪を見て、二人は驚いて急いで警備隊の凪の政務室を出た。
「あぁ……凪お姉ちゃん本当に怒ったの……」
「御使いさんは思ったより中々人の心を読むのが苦手なのです」
「程cお姉ちゃん?」
「風でいいですよ」
正座している一刀ちゃんの横で黙って状況を見ていた風は二人が出て行ったことを見て自分の外に出ながら言った。
「凪ちゃん、それじゃあ私も行きますので、しばらく二人で仲良くちちくりあって下さい」
「え?」
「………」
風が出ていって、一刀ちゃんと凪二人きりになった途端、
がしっ
「!」
「一刀……!」
「凪お姉ちゃん」
「よかった……無事で…本当に………」
「……凪お姉ちゃん…」
正座したままの一刀ちゃんを抱きしめた凪は、誰も見ていないそこで思いっきり涙を流していた。
「相変わらず凪お姉ちゃんは感情表現が苦手だね」
「だって……だって……」
そうは言っても、一刀ちゃんにも想像はついた。
いきなり戦場で姿を消した自分。
どこを探してもいないなら、戦場のどこかで野垂れ死にしたとしか思えない。
だというのに死体すら見つからない。
魏の武将ほぼ皆が大切していた一刀ちゃんのことだった。このような別れ方は、魏の皆に大きな傷であった。
普段感情を表すことが少ない凪お姉ちゃんなら、他の人の何倍も辛かっただろう。
「急に消えたりして、ごめん」
「うぅ……ぇぐ……」
「もうそんなに泣かないで、子供じゃないんだから……」
一刀ちゃんはそう言いながら朝に猫にしたみたいに凪お姉ちゃんの頭に手を見せて頭を撫でた。
暫く、二人でそんな風に居続けた。
「あの、凪お姉ちゃん。そろそろ落ち着かないと、他のお姉ちゃんたちが来ちゃうかもしれないよ」
「…うん、そうだね」
そしてやっと落ち着いたのか、凪は一刀ちゃんを放してくれた。
「今まで、一体どこにいたの?」
「……色々あったの。後で説明するよ」
がちゃっ
「一刀ちゃん!」
その時、城に戻っていた真桜が帰ってきた。
「あ、真桜お姉ちゃん、ど」
「今ヤバいって、早く逃げ……」
「はぁあああーー!!!!」
ばしゃーー!!
と、執務室の壁が崩れる音がした。
そしてそこには……
「!」
「北郷、死ねー!!!」
「春蘭お姉ちゃん!?」
門が側にあるのに、こんなことをする人は魏に一人しかいないのである。っていうかこんなこと出来る人もそう居ないのだが。
というか、歓迎されるかと思ったらいきなりピンチである。
「春蘭さま!」
「凪、そこを退け!その偽物を斬る!」
「落ち着いてください。偽物ではありません!」
春蘭は何か勘違いしているようだった。
通常運行(いつもどおり)だ。
「ねぇ、ねぇ、真桜お姉ちゃん、どうしてボク偽物扱い?」
「行って話していたら皆信じなくてなんとか話しているうちに変なことになって…ああ、そりゃどうでもええわ!春蘭さまはウチらが止めてるから一刀ちゃんは…」
「ちょっと待ってて」
「って、ちょっ、一刀ちゃん!?」
一刀ちゃんは真桜が言うことを無視して、逆に春蘭に近づいた。
「お姉ちゃん」
「!」
「見て、ボクが偽物に見える?だったら斬ってもいい」
「一刀!」
「ふん!どこの馬の骨かは知らないが、大体北郷は唖(おし)だったのだぞ。なのに貴様はしゃべっているではないか!」
「うん、そうだね。確かにボクは話せる。それで?」
「しかも、北郷は貴様よりももっと小さかったし」
「いや、そこはもう一年経ったんやから…」
「それで?」
「それに、貴様は……………喋れるだろ!」
「それ先やったやんか…!」
「うん、それで?……お姉ちゃんはボクを斬るの?」
「………は?」
「夏侯惇元譲、魏のどんな武将よりも曹孟徳のことを愛し、その身も心もあの人に捧げ、愛する人の覇道のためなら例えその身がバラバラになって悲惨な模様になって死ぬとしても懸念しない、魏の大剣。頭悪くて、五分前に自分が食べた昼ごはんの献立も思い出せない馬鹿だけど、自分の主と双子の妹のことを誰よりも大事にする人。ボクはお姉ちゃんと昔あまり親しくもなかったし、ちゃんと会話できたこともない。ボクは唖だったし、人にちゃんとした話をする方法も分からなかったから。だからお姉ちゃんはボクのことあまり覚えていないかもしれない」
「………」
「……それで、お姉ちゃんはボクを斬るの?」
「あ、ちなみにあの時お姉ちゃんと食べた蟹炒飯は美味しかったね」
「…本当に、北郷、なのか?」
「どう思う?春蘭お姉ちゃんは?疑いがあったら人の真名を勝手に言うこの無礼の首、切り落としても誰も何も言わないよ」
「………むむ……」
春蘭は、よく分からないように躊躇った。
だが、いつも頭より身体が先に走る彼女の行動を止めただけでも、凄いことと言える。
「……わからん、一応斬ってから考えるか?」
前言撤回。
「斬って違ったら、秋蘭お姉ちゃんや華琳お姉ちゃんに嫌われるかもしれないじゃない?」
「む……それもそうか」
そして納得。
「……あ、お姉ちゃん、ちょっと顔ちゃんと見せて」
「な、おおい、何を……」
ふと一刀ちゃんは自分より頭は一つ半ぐらいは背が高い春蘭の前に、椅子をおいてそれを踏み台にして春蘭と目線を合わせた。
一刀ちゃんは、その顔を暫く見ていた。
紫水晶(アメシスト)のような双眸が光っていた。
「……良かった」
「は?」
「ううん、何でもない」
自分がしたことに悔いはない、一刀ちゃんはそう思った。
「でも、ボク疑われるとしたら、そうだね…一度出直した方がいいかも」
「いや、私たちと一緒に行こう。皆さま突然のことだから」
「ううん、華琳お姉ちゃんが呼ばなかったら行かない」
「つーか、一刀ちゃん今までホンマどこにいたん?」
「華琳お姉ちゃんに会ったら話す」
一刀ちゃんはまずは華琳に会うことを最優先にしていた。
今直ぐにでも華琳お姉ちゃんのところに行きたい心は山々だけど、どうも状況はそれを許してくれそうにない。
「春蘭さま、華琳さまはどのようにおっしゃっていましたか?」
「む?ええと……」
ここに誰よりも早く突っ走ってきた春蘭がそんなことを覚えているはずもない。
「どうも言っとらんかったわ。あ、後で風ちゃんが来てたから風ちゃんが説明したかもしらへん」
「…やっぱ今日は出直そうかな」
「いや、一刀ちゃんは黙ってここにいな。ウチがまた行ってなんとかしてみるから……」
「その必要なないぞ」
その時、秋蘭が現場に着いた。
「しゅうらん!」
「秋蘭さま」
「秋蘭お姉ちゃん」
「……北郷……なのか?」
「…うん、ボクだよ」
崩れた壁を通って入ってきた秋蘭は一刀を見てちょっとずつ近づいてきた。
「……大きくなったな」
「うっ!」
その「大きくなった」の意味には、凄いタイムラグは存在した。
「どうした?」
「ううん、別に……秋蘭お姉ちゃんは一目に見てわかるの?ボクって」
「……ああ」
「喋ってるのに?」
「これからはいつも竹簡と筆を持ち歩かなくてもよくてよかったな」
「……そうだね……あの、華琳お姉ちゃんあ今、どうしてる?」
「自分で行ってみたらどうだ?華琳さまも北郷を待っているぞ。風が状況をちゃんと説明してくれたおかげで皆落ち着いたしな。一番早く「北郷の真似をするヤツなど許すものか」と出て行った姉者はわからんがな」
「しゅ、秋蘭!私がいつそんな……」
不意を突かれた春蘭は顔が赤くなって否定した。
「違うのか?」
「ち、違う!」
「そっか……ありがとう、春蘭お姉ちゃん」
「ど、どうして貴様が感謝するんだ!私はお前を殺そうとしたんだぞ?」
「ボクの真似なんかをするヤツは許せないほど、ボクのこと心配してくれてたって意味で聞いたけど。それともやっぱり春蘭お姉ちゃんはボクが居なくてもなんともなかった?」
「あ、ああ当たり前だ!貴様なぞ居なくても、私はなんともないぞ」
「……そうだね、春蘭お姉ちゃんは強いからね」
「ううむぅ……」
「…姉者……」
秋蘭はお気の毒と言いたそうな双眸で姉を見つめていたが、もう強張ってしまった以上はどうしようもない。
「<<にっこり>>それで秋蘭お姉ちゃん、ボクは華琳お姉ちゃんに会いに行っても大丈夫なの?」
「ああ、しかし、覚悟はしておいた方が良いぞ。一年も居なかったからな。一体今までどうしていたんだ」
「後で皆居るところで話すよ。その方が、説明し易いしね」
一刀ちゃんはそう言って、昔良く見せたそんな微笑みをそこにる皆に晒すのであった。
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一刀ちゃんは凄く平然です。 |
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