戦国BASARA×恋姫無双 中原に羽ばたく雑賀黒鳥 プロローグ |
――本能寺
「泣くな…私よ…、泣くな…!」
俯いたまま、絞り出すように口にした。
魔王は斃れた。雑賀衆三代目雑賀孫市の手によって。
孫市にとって、雑賀衆にとって魔王打倒は悲願だった。
石山本願寺にて二代目雑賀孫市を弔った日から。
――その日から、孫市は本当の名を捨て、雑賀衆の頭領となった。
もう果たされることのなかったはずの敵討ち。
本能寺の変で、家臣だった明智光秀の謀反で地獄に落ちた織田信長は、
正真正銘の魔王として蘇った。
孫市は、魔王復活の報を聞き、直ぐに東軍を抜けた。
己の感情のままに本能寺へ赴き、魔王を斃した。
それは、「雑賀孫市」のみ知る者なら理解できない行動だったかもしれない。
「サヤカ!!」
「孫市!!」
自分を呼ぶ声を聞き、孫市は顔を上げた。
そこには、幼馴染で自分を「サヤカ」と呼び続ける長曾我部元親と、
東軍大将で、元親の友である徳川家康がいた。
「…もうお前達はいいのか」
孫市は自分の感情を悟られまいと、二人に問うた。
「…ああ。大谷と毛利とはケリをつけてきた。どういう風の吹き回しかは知らねえが、
石田は家康と停戦協定を結んだぜ」
その問いには元親が答えた。更に家康が続ける。
「元親の部下の墓参りに、お前も誘おうと雑賀荘に行ったんだが、
お前は本能寺に行ったとそこの者に言われ、ワシらはここまで馬を飛ばしてきたが」
家康はそこで一度言葉を切る。
「…まさか、信長公が生き返っていたとは…」
激しい戦闘の痕を見て、家康は思わず息を呑んだ。
「だが、それももう終わった事だ。魔王は私が斃した。それだけの事。
いつもの戦と変わりは無い」
孫市は二人の間をすり抜けようとしたが、元親に腕を掴まれる。
「…っ、何を」
「嘘付くんじゃねえよ。お前ぇ、泣いてんじゃねえか」
「!」
孫市の両目から、抑えることのできなかった涙が溢れ出していた。
「…離せ、元親!今泣いてしまったら、私は私でいられなくなる!」
孫市は必死に元親の手を振りほどこうとするが、碇槍を軽々と振り回す
元親の力に敵わず、その抵抗も弱弱しくなっていく。
「今日ぐらいはいいじゃねえか。二代目の為に泣いてやってもよ」
元親は穏やかな口調で、諭すように孫市に語りかける。
「ワシもそう思うぞ。お前のその気持ちも分かるが、死んだ者にとっては
それは寂しいのかもしれん。その人のために涙を流すのはむしろ大切なんじゃないか?」
家康は孫市の肩に手を置いて言った。孫市は涙を必死にこらえながら、
二人の言葉に首を横に振った。
「違う、違うのだ」
怪訝な表情をした二人に、孫市は話し続ける。
「このままでは、私は『雑賀孫市』ではなくなってしまう!
私は雑賀衆の頭領だ!なのに、今私はどうしたらいいのか分からない…!
こんな事、今まで一度も思ったことも無かったのに、なぜ今になって…!」
孫市はもう涙を抑えることができなかった。その姿を見て、
元親と家康の孫市に触れる手の力が強くなろうとしたその時。
――三人の視界は、光の濁流に押し流された。
「!」
「なっ!?」
「これは!?」
その光が消えたとき――
「「孫市(サヤカ)が…消えた…!?」」
孫市は、この場所から消えていた。
煙鳥翔華 雑賀孫市
一人のHEROが、戦国乱世の世から消えた。
説明 | ||
戦国BASARAの雑賀孫市が恋姫無双の世界に飛びます。孫市が本能寺で信長を討ち、長曾我部元親の緑ルート終了後という設定です。 …すいません、恋姫キャラを出せませんでした。 |
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戦国BASARA 恋姫無双 雑賀孫市 長曾我部元親 徳川家康 | ||
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