暮れゆく空に、手を伸ばして-呉伝-五章 |
夢を・・・見ていたんだと思う
ゆっくりと覚醒していく意識の中、なぜか漠然とそう思ったんだ
それが、どんな夢なのか
誰が出ていた夢なのか
何もわからないのに、そう“確信”していた自分がいたんだ
「ん・・・」
覚醒しはじめた頭を働かせ、体をベッドから起こす
何だか、少しだけダルイ気がする
まぁ、たぶん寝起きだからだろう
それよりも・・・
「えへへ・・・かずとぉ・・・」
「そうですか、またですか
また貴女は堂々と不法侵入ですか」
何故か今日もまた、俺の隣には雪蓮が眠っている
嬉しそうに、寝言で俺の名前を呟きながら
「まったく、相変わらずフリーダムな王様だ」
言いながら、俺は自身の頬が緩むのを抑えることができなかった
「んぅ・・・」
そんな俺の耳に入ってきたのは、もう一つの声
聞き覚えのあるその声に、俺はまた静かに笑みをもらす
「冥琳まで・・・」
雪蓮が眠るのとは反対側・・・気持ちよさそうに寝息をたてる、冥琳の姿があったのだ
大方雪蓮にそそのかされたのだろうけど、まぁいっか
ていうか、昨日みたいにクローゼットの中から出てこられるよりも何倍もマシだ
「さて・・・と」
起き上がり、思い切り背伸びする
窓から見えた空を眺め、俺はフッと笑みをこぼした
「日曜日、か」
今日は日曜日
勿論、学校は休みだ
どうやって過ごそうか・・・
そんなことを思いながら、俺は未だにベッドで眠る二人を見つめる
そして・・・深く、ため息を吐き出した
「それよりも・・・またなんでお二人は、下着だけで眠っていらっしゃるんでしょうか?」
まぁ確実に雪蓮の入れ知恵だろうけどな、ちくしょう
≪暮れゆく空に、手を伸ばして-呉伝-≫
五章 “君”が呼ぶから
「ふぁ〜・・・」
欠伸をし、軽く背伸びする
窓から入ってくる日差しが心地よい
俺はそんなことを思いながら、校内を歩いていく
日曜日だというのに校内は部活動に明け暮れる生徒で賑わっており、俺は自身が一応剣道部員だったことを思い出し苦笑してしまう
当然、剣道部も活動してるだろう
なのに俺は、今こんなところでブラブラとしている
「まるで、幽霊部員じゃないか」
言って、俺は苦笑する
まぁ、ここでもそうだとは限らないのだが
確認なんてしてないし
それに、こんな世界だ
そんな些細なことを気にしていたら、神経がもたない
さて、今の俺の状況なんだが・・・あれから、二人を起こさぬようそっとベッドから出た俺は学校へと足を向けた
折角だから、ここの情報を少しでも集めたかったのだ
「しかし・・・見れば見るほど、変わらないなぁ」
だがしかし、ここは見れば見るほど・・・俺がいた頃の学校と変わらない
変わっているのは学園長と校門の銅像くらいだろうか?
学園外で言えば、今のところサカリパークくらいだ
「どうしよう・・・すごく、係りたくないです」
さ、最悪なのしか残ってないじゃないか
だけど、このままだと何の手がかりも手に入らないし・・・
「どうしたもんかなぁ・・・」
足を止め、考える
するとふと、窓の向こう・・・見えた建物
大きな、さながら博物館のようなその建物に俺は目を細めた
「あれって・・・確か学園長の趣味で、三国時代の遺物とかが飾ってあるんだっけ?」
そういやあの世界に行く少し前に、そんなことを及川が言っていた気がするな
待てよ・・・三国時代?
「行ってみる価値はあるか・・・?」
呟き、俺は考える
三国時代の遺物が置かれているというならば、何か手がかりのようなものも見つかるかもしれない
まぁ、登場する人物が皆女の子だった時点で・・・俺が行ったあの世界は、こっちでいう三国時代とは違うのだろう
そもそも、大まかな出来事の流れ方からして違うのだ
あまり期待はできないかもしれない
けど、何もしないよりはマシなハズだ
「そうと決まれば・・・」
そう言って、俺は歩き始める
あの、大きな建物へと向かって・・・
ーーーー†ーーーー
「すごいな・・・」
あの巨大な建物
そこに入ってすぐに出た言葉がこれだった
中には所狭しと、多くの物が置かれているのだ
それらがすべて、三国時代のものだというのだから驚きだ
だが中には、本当かどうか疑わしいものもあるわけで・・・
「“趙雲が食べていたとされるメンマの入っていた壺”?
いやいや、趙雲がメンマ好きだったなんて聞いたことないぞ・・・」
いや、これなんてまだ良い方だ
“傾国の美女が穿いていたパンツ”なんて、まんま学園長のパンツじゃないか
何故飾ったんだよ学園長
「しっかし・・・こんだけ多いとなんか、期待できそうな気もするなぁ」
言葉にし、俺は静かにうなずいていた
ここまでの数の展示品をすべて見て回るなど、相当に大変だろう
だがここまでの数があるなら、もしかしたら・・・一つくらい、帰る為の手がかりがあるかもしれない
「とにかく、一個ずつ見て回るしかないよな」
しかしここは一般人に開放もしてるわけで、ちらほらと人の姿がある
あんましジロジロと見て回ってたら、なんだか怪しい人だと勘違いされないか不安だ
そんなことを考えながら、俺はゆっくりと館内を歩いていく
有名な武将が使っていたとされる武具や、日常生活で使われていたという道具
それらを、一つずつ見て歩いていく
だが、中々帰る為の手がかりになりそうなものは見つからない
まぁそう簡単にいくとは思っていないから、仕方ないと思いながら探していく
「で、このザマっすか・・・」
そんな風にして、俺は約一時間ほど館内を歩き回っていた
だが、未だにそれらしきものは見つかっていなかった
俺はピタリと足を止め、深く息を吐き出した
「ま、そうそう見つかるわけがないよな・・・はぁ」
もう、大部分は見て回ったはずだ
しかし、さっぱり見つからない
やっぱり、ここの世界の三国時代ではダメなんだろうか?
「そろそろ帰るか・・・」
もう雪蓮たちも起きてるだろうし
折角の日曜日なんだ・・・きっと、遊びたいから俺の部屋に来ていたんだろう
だとしたら携帯を置いてきてしまったのは、ちょっとまずかったかなぁ
もしかしたら、俺のことを探してるかもしれない
「だったら、早く戻らないとな」
そう言って、俺は歩き出した
ここの出口へと向かって
そんな時だった・・・
〜一刀・・・〜
「ん・・・?」
ふと、俺の視界の中
古ぼけた扉が目に入ったのは・・・
「ここは・・・」
扉に近づき、俺はその扉を見つめる
扉には“立ち入り禁止”の札が立てかけられていた
ここには何か貴重品のようなものでも仕舞われているのだろうか?
それとも、学園長の私物か何かが置いてあるのか?
「気になるな」
だけど、さすがにここに入るのはマズイだろうなぁ
ていうか、さすがに鍵がかかってるだろうし
でも・・・なんか気になるんだよな
こう、頭の隅に引っかかるようなものがあるというか
それに・・・
「呼ばれた気がしたんだよな・・・この扉の向こうから」
聞こえた気がしたんだ
誰かが、俺の名前を呼ぶ声が
馬鹿馬鹿しい、ただの聞き間違いだと
そうは思えないような、不思議な声が・・・
「いや・・・やっぱ聞き間違え、だよなぁ」
頭を掻き、俺は扉から視線を外す
それからまた歩き出した
頭の隅・・・自分でもよくわからない何かに、少しだけ表情を歪めながら
〜一刀・・・もう少し、もう少しだけ・・・私に、時間を・・・〜
ーーーー†ーーーー
「あ〜〜、やっと帰ってきた!」
部屋に入ってまず響いたのは、そんな雪蓮の声だった
彼女は玄関に仁王立ちしながら、俺のことを待っていたのだ
「もう、心配したんだからね!」
「ごめんごめん」
謝りながら、俺は部屋へと入っていく
その後ろを、雪蓮は頬を膨らませながらついてくる
「一刀ったら携帯置いてくんだもん!
せっかく朝からしっぽりムフフといこうかなって思ってたのに・・・」
「いや、何さそのしっぽりムフフって・・・」
「聞きたい?」
「もちr・・・いや、いい」
チラリと胸の谷間を見せつめながら言う雪蓮に一瞬流されかけたが、俺は前方より感じる殺気に咄嗟に我にかえる
その先には、冥琳さんがニコニコと微笑みながら立っている
そう、“ニコニコと微笑みながら”
「北郷、おかえり」
「ただいま、冥琳」
あれ?
なんでこんな怒ってんの?
笑ってるけど、確実に笑ってないよね?
「何処へ行っていたのだ?」
「ああ、ちょっと散歩してきたんだよ」
“そうか”と、冥琳が歩み寄る
それからすっと、俺の耳元に口を近づけてきた
瞬間、彼女の傍から甘い香りがした
「心配してたんだぞ・・・今度からはちゃんと、携帯は持っていけ」
「あ、ああ勿論」
“ならばいい”と、冥琳は微笑んだ
その微笑みに、一瞬見とれてしまった
そっか
冥琳は、俺のことを心配してくれてたのか
それを怒ってるだなんて・・・俺は、なんて馬鹿なんだ
「・・・で、雪蓮の胸はどうだった?」
「最高でした・・・ぁ」
「ふむ・・・そうか、なら良かったな♪」
「あの、冥琳さん、できればこう手加減的な何かをぶうぅっ!!?」
その瞬間、顎に強烈な一発がぶち込まれた
すんません、やっぱ怒ってました
ーーーー†ーーーー
「で、どうしてこうなるの?」
「日曜日だもの♪」
「日曜日だからな」
俺の言葉に、さも当然とばかりに答える二人
いや、確かに今日は日曜日だよ?
でもさ、だからって昼前から三人でベッドに寝転がってる今の状況はなんなのさ?
「あのさ、これは・・・」
「お昼寝よ」
「いや、そうじゃなくってね」
「北郷、今日は日曜日だぞ?
ならば朝はこうして、ゴロゴロしているに限るだろう」
言いながら、冥琳は眼鏡をベッドの脇に置いた
ほ、本格的に昼寝する気だよこの人!?
呉では働きすぎてたくらいなのに!?
「あ〜、ダメ・・・もう一生働かないで、このままダラダラ過ごしてたいわ」
こっちはこっちで、まさかの“働きたくないでゴザル!”宣言!?
アンタ、向こうでは一応王様だよ!?
大丈夫か、この二人!?
「ていうかさ、俺・・・眠くないんだけど」
「なら、三時には起こしてくれ」
そう言って、冥琳は俺の右腕をギュッと抱きしめる
う、腕に柔らかい感触が・・・やばい、しょっぱなからクライマックスだ
「あ、あの冥琳さん?」
「おやすみ、北郷」
途端、聞こえてきたのは規則正しい寝息
・・・ていうか、寝るの早くないっすか!?
「ふわぁ〜、私も寝る〜」
「お、おい雪蓮!?」
言いながら、今度は左腕を雪蓮が抱きしめてきた
当然、腕に伝わってくる感触はいつだってクライマックスだ
「あ、あの雪蓮さん?
このままだと俺、色んな意味で眠れないんですが・・・」
「おやすみ、一刀」
聞いてくれない!?
そして、こっちも寝るの早いし!
「ちょ、ま・・・」
「すー・・・」
「むにゃ・・・」
ああ、ちくしょう
すごく・・・大きいです
いや、どこがとは言わないけど
そして、どこがそうなったかは言わないけど・・・って、誰が上手いこと言えと!?
「いや、何馬鹿なことやってんだ俺は」
一人脳内ツッコミとか寂しすぎるだろ
此処はもうあれだ・・・無理やりにでも、眠るしかないだろ
「そうだ、俺はやればできる子だ」
呟き、目を閉じる
くっ・・・両腕から伝わってくる、この戦闘力に惑わされるな!
煩悩退散!
集中するんだ、俺!
こういう時は、そうだ・・・羊を数えよう!!
「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹・・・」
〜はぅ〜モフモフ、最高です♪〜
「お猫様が十匹、お猫様が十一匹、お猫様が・・・って、あれ?
ひ、羊はどこにいった?」
い、いつの間に羊と猫が入れ替わったんだ!?
いや、世の中には不思議なこともあるもんだ
「ていうか、何だよお猫様って
どんだけ、猫のこと好きなんだよ俺」
言いながら、俺は苦笑する
猫か・・・嫌いではないけど、様付するほどじゃないんだけどな
なんで、そんなふうに・・・
〜まだよ・・・一刀〜
「っ・・・」
ズキンと、急に頭が痛む
いきなりのことに、俺は戸惑った
〜まだ、ダメなの・・・〜
「な、にが・・・」
〜今は、眠りなさい・・・一刀〜
「“君”は・・・い、ったい・・・・・・」
聞き覚えのある声
その声に導かれるよう、俺は自身の意識を手離していった
一瞬見えた“彼女”の表情に、深い安心感を抱きながら・・・
★あとがき★
ども〜、月千一夜です
五章公開となりましたww
いや、随分とまったり進んでいきますね
自分で書いておきながら、そう思いますww
こんな展開ですが、物語は確実に進んでおります
当初の予定よりも若干増えるかな〜ってくらいですね
大体20〜25章を目安にはしてます
謎は相変わらず、増えるばかりですがwwww
うまくいけば、来月には“第弐部”にいけそうです
いや、目標達成できてない時点でうまくいってないですけどww
普通に無理でしたねww
いや、人間諦めが肝心です、はい
説明 | ||
お久しぶりの呉伝ですw 今回もまた、まったりと更新していきます どうか、お楽しみくださいww |
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コメント | ||
ZEROさん<それについては今後にご期待くださいw (月千一夜) まだ・・・か。 早く忘れてる事を思い出してほしいですね。(ZERO&ファルサ) 悠なるかなさん<少しずつ染まっていく・・・確かに、そんな感じかもしれませんね (月千一夜) 水上桜花さん<ウホッ、イイお唄ww毎回、よく思いつきますねwwww (月千一夜) mightyさん<ぶるわれるってなんすかwwww (月千一夜) poyyさん<ありがとうございますw本当はここに、カオスもプラスする予定でs(ry (月千一夜) よーぜふさん<冥琳さんがだらけるところを見てみたかったんですww (月千一夜) 呼んでいる 呼んでいる 遠く近い場所から 知っているのに 知らない 欠片はあるのに 思い出せない 幸せという世界に 少しずつ 確実に 心が染まっていく(悠なるかな) 声 誰? 君 誰? 覚えているけど、覚えていない。 わかるはずなのにわからない。 どうしよう?どうすれば? もう、覚えてすらいないのに。 願いも、希望も、想いさえ。もう、砕けて浮世に塗れているのに。 (水上桜花) 今回は真面目にシリアスかと思ったら最後に・・・(ノД・。) でもこれが、ぶる夜さんクオリティー!そこ痺れる、ぶるわれる♪(mighty) シリアスと笑いの混ざり具合が神の領域に達しているなぁ。(poyy) 冥琳さん・・・向こうの影響でこんなダメ人間に・・・ほろり そして気になる扉・・ (よーぜふ) |
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