迷宮の宴
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雪火(セッカ)が夕暮れの空のとばりを、ひとつ、ふたつ、火花とともに、降りていく。それは燃える燐(リン)で、できた炮火(ファオフェ)だ。森が途切れ、そこに拓けた地があった。やがて?喊(とっかん)の雄叫び。その叛乱軍は王都(ワンヅゥオ)に向かう。その指揮をとるものは、相貌と眼に深く憎しみの色があった。

 

対する王都軍の士気は低い。

 

よしんば、叛乱軍が王都を占拠しても、王宮を移せばいいだけのこと。と考えているものもいるに違いない。

 

南部叛乱軍1万に対して、王都直営軍が全土から動員しうる衛士ははるかに数において勝る。その数は、十万を悠々と超える。しかしそれも後方たるワンヅゥオに、憂いがない場合のみだ。今、王は病の床にある。その間隙を狙って、野心に満ちて冷酷な、第三公子ディ・サン・ゴォシは内部から、手を打とうとしていた。

 

これまで、第三公子派と王と他の公子たちの王宮派には対立があった。そのため、今、王都は二つの兵力に分かれている。その結果、王宮派の王都直営軍の士気は低く、叛乱に対して、有効な対策を打てない。

 

第三公子ディ・サン・ゴォシには策略があった。王宮派の陣営を強襲し、王宮派の指揮官や武官に対する処刑をおこなったうえで、”後方”に撤退するのである。

 

その都市は、北部第三の規模の都市”ドゥシーたるランガン”であった。そのための密かな準備をしている。

 

山岳地帯であり、第三都市「ドゥシーたるランガン」は守りに強い。

 

そしてそこに公子派の大軍を集め、独立した小国家を築くのである。

 

王都は国土の中央に位置する。さらに防衛するためには東に大河たる”春河”があるが、渇水期をむかえており、また、北から南に流れる河川であるため、南部からの侵攻の守りには、蛇行する川に沿って陣を張る以外には、ほぼ役に立たない。ただし王都は幾重にも外壁と小砦によって、守りを固めており、通常ならば叛乱軍にとって打ち崩すのは容易ではない。通常この都市に、一万の兵がいれば、叛乱軍一万によって打ち崩すのに半年以上はかかるだろう。その間に東部や西部からの守備隊の増援が成功すれば、叛乱軍を挟撃するはずである。

 

しかし冷徹にして非情な第三公子はその都市を捨てることを決意していた。王宮派の力を削ぐことを優先したのである。

 

早朝、公子派は行動を起こした。衛士たちの詰め所を襲い、指揮官を人質にとったうえで、自軍である、公子派に強制的に加えたのである。

 

その動きに対して、王宮派の兵士たちにも賛同する動きがあった。

 

しかし叛乱軍が迫る中ではその行動には限界があった。数時間後、王宮派を加えた、公子軍二万数千は整然と王都から、第三の都市「ドゥシーたるランガン」に向けて撤退する。その距離は騎馬で数週間ほどだ。

 

これは王都に住むものにとって、衝撃を与えた。防衛体制に穴が空いたためである。すでに避難は始まっていたが、その数は増える。

 

なんと愚かなことか?と王宮派は思ったに違いないのだが、さらに……数日後、ランガンの守備隊一万の叛乱によって、ランガンは、新たな国、ランガン国公子デゥ・サン・ゴォシの名による、正式な叛乱軍たる王宮派に対する討伐宣言と、さらにランガン国の独立を宣言した。こうして、王都まで達した、叛乱軍は攻城戦に持ち込ちこむことを決意する。つまり王都を包囲したのである。つまり、南部の守備隊を中核とする叛乱軍一万によって、一気に落とすことも決意したのである。

 

そして、残された、王都直営軍二万は孤立し、混乱している。そのため王宮派はさしたる戦闘を経ずして、南部の守備隊を主体する叛乱軍との、和睦に応じ、王都をあけわたした。

 

こうして第三公子を擁するランガン国と叛乱軍指揮官であった、春藍王の率いる、春宮(チュング)王朝との長い桎梏(チィグ)が始まった。

説明
南部叛乱軍一万に対し、王の病による、王都直営軍の動揺は隠せなかった。といった単純なストーリー。
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